既に高校教諭を退職して、月に2回程、近くの小学校でボランティアでミニ授業をしています。近年学校では、一斉講義式の授業は一方的な知識の注入であり、遅れた授業であるとして批判され、生徒が主体的学びをするような授業がもてはやされています。結果として先生が語る部分が極めて少なく、時間をかけて生徒が互いに考え教え合い、答にたどり着くような授業が行われるようになっています。
しかし一斉講義式授業をしてきた私は、それが遅れた授業法とは決して思いません。否、これこそ授業の基本であると信じて疑いません。一斉講義式を批判する人自身が、自分の授業をつまらない物にしてしまったのではないかと思っています。
以下の授業は対象は小学校一年生で、先日行ったものを会話もほとんどそのままに再現してみましょう。生徒との会話はありますが、終始主導権は私が掌握し、生徒が授業の進め方について主体となることはありません。しかしその質は決して遅れたものとは思っていません。なお「 」内は生徒や担任の先生の話です。
皆さんおはようございます。この前も皆に会いましたね。何の話をしたか覚えてますか。「麦の話」。そうだったね。よく覚えていましたね。今日は何のお話をしようかな。ほうら、見てごらん。野菜をたくさん持ってきましたよ。さて、名前を知ってるかな。これは? 「大根」「人参」「きゅうり」「白菜」「アスパラガス」「ブロッコリー」。よく知ってるねえ。今日はね、野菜を食べるというお話でーす。ほら、美味しいよ。「あれ、本当にかじっちゃった」。家の犬はね、白菜が大好きで、生でむしゃむしゃ食べちゃうの。
ちょっと黒板に草の絵をかくから、下手くそだけどよく見てね。ほら、土の中にあるところを何て言うのかな。「根っこ」。そうだね。それじゃあここは何て言うのかな。「葉っぱ」。これは。「花」。そして花が終わると何かができる。これは何かな。「実」「種」。うん、どっちも当たりだね。それじゃあここは。「茎」。わあすごいねえ。茎を知ってるとは驚いたなあ。
それでは、今日持ってきた野菜は、この草の絵のどこを食べるのか、どこと同じことなのか考えてみましょう。まずは大根から。大根の食べるところは、花かな、種かな、葉っぱかなそれとも。「根っこ」。うんそうだね。よくできました。それじゃあ人参は。「茎」。えっ、茎? 畑にオレンジ色の人参がにょきにょき生えているのかな。「やっぱり根っこかな」。そうだね。人参も根っこだよ。それじゃあ他に根っこを食べる野菜には何があるかな。「ごぼう」。そうだね。色も根っこみたいだもね。
白菜はどこを食べるのかな。「葉っぱ」。そうだね。この白菜はね、縦に半分に切ると、ほうら、葉っぱが何枚もあるのがよくわかるでしょ。葉っぱを食べるのは他には。「キャベツ」「ほうれん草」。そうだね、葉っぱはみな緑色になってるからね。「先生、大根は根っこなのに、上の方が緑色になってるよ」。面白いことに気が付いたね。大根畑を見たことあるかな。大根の一番上のところは、少し土から上に出てるんだよ。それで緑色になっちゃうんだ。
きゅうりはどこかな。「実」。そうだね。花が終わるとね、花の下のところがだんだん大きく成ってきて、実ができるんだ。それじゃあ実を食べる野菜を考えてみよう。「トマト」「なす」「ピーマン」。
ブロッコリーはどこを食べるのかな。緑色だけど葉っぱじゃないし。茎でもないし。実かなあ。「違うよ」。
「花」。今花って言ったのだあれ。花で当たりなんだけど、どうしてわかったの。「ブロッコリーをそのままにしてたら、花が咲いちゃったから」。お家でブロッコリー植えてたの? よーく見てたね。近寄ってよく見てごらん。この小さいつぶつぶは、皆ブロッコリーのつぼみなんだよ。「へーえ、知らなかったよ」。何色の花が咲くのかな。「黄色の花が咲く」。そうだね。それじゃあ一つ問題を出します。大根の花は何色かな。「見たことないよ」。それじゃあ先生に答えてもらいましょう。どうですか。「わかりません」。「先生、知らないの」。先生だって知らないことはありますよ。「何色の花が咲くの」。それは答えないことにしておきましょう。大根畑に行くとね、大きく成りすぎた大根を抜かないままになっていることがあってね。花が咲くことがあるんだよ。答は自分で探してみるように、今日は秘密にしておきます。
最後にアイパラガスはどこを食べるのかな。近くによってよーく見てごらん。ほら、上の方につぼみみたいのが着いてるよ。ということは、どこかなあ。「茎」。当たりー。よくできました。よくできました。この辺にはアスパラガスの畑はないから見たことないけど、これがね、地面からにょきっとのびてくるんだよ。
さあもう時間がなくなっちゃうね。野菜といっても色々種類があって、食べるところも色々あることがわかったでしょう。これからはね畑で野菜を見たら、どこを食べるのかよーく見てみましょう。お店で見てもいいしね。それじゃあ今日のお話はここまででお終いです。大根の花の色は宿題ね。
私は終始主導権を握っています。会話はたくさんありますが、基本は一斉講義式です。これが最高とは言いませんが、遅れた授業とは思いません。アクティブラーニングのやり方で20分でこれだけのことができますか。時間をかければできるでしょう。しかし限られた時間では不可能です。生徒達は知識を一方的に注入されているだけですか。大根の上部が緑色であることに気付くなど、面白い発見をしています。
一斉講義式を遅れた授業として批判する人に問いたい。つまらない授業にしてしまった一因は、あなたにもあったのではありませんか?
しかし一斉講義式授業をしてきた私は、それが遅れた授業法とは決して思いません。否、これこそ授業の基本であると信じて疑いません。一斉講義式を批判する人自身が、自分の授業をつまらない物にしてしまったのではないかと思っています。
以下の授業は対象は小学校一年生で、先日行ったものを会話もほとんどそのままに再現してみましょう。生徒との会話はありますが、終始主導権は私が掌握し、生徒が授業の進め方について主体となることはありません。しかしその質は決して遅れたものとは思っていません。なお「 」内は生徒や担任の先生の話です。
皆さんおはようございます。この前も皆に会いましたね。何の話をしたか覚えてますか。「麦の話」。そうだったね。よく覚えていましたね。今日は何のお話をしようかな。ほうら、見てごらん。野菜をたくさん持ってきましたよ。さて、名前を知ってるかな。これは? 「大根」「人参」「きゅうり」「白菜」「アスパラガス」「ブロッコリー」。よく知ってるねえ。今日はね、野菜を食べるというお話でーす。ほら、美味しいよ。「あれ、本当にかじっちゃった」。家の犬はね、白菜が大好きで、生でむしゃむしゃ食べちゃうの。
ちょっと黒板に草の絵をかくから、下手くそだけどよく見てね。ほら、土の中にあるところを何て言うのかな。「根っこ」。そうだね。それじゃあここは何て言うのかな。「葉っぱ」。これは。「花」。そして花が終わると何かができる。これは何かな。「実」「種」。うん、どっちも当たりだね。それじゃあここは。「茎」。わあすごいねえ。茎を知ってるとは驚いたなあ。
それでは、今日持ってきた野菜は、この草の絵のどこを食べるのか、どこと同じことなのか考えてみましょう。まずは大根から。大根の食べるところは、花かな、種かな、葉っぱかなそれとも。「根っこ」。うんそうだね。よくできました。それじゃあ人参は。「茎」。えっ、茎? 畑にオレンジ色の人参がにょきにょき生えているのかな。「やっぱり根っこかな」。そうだね。人参も根っこだよ。それじゃあ他に根っこを食べる野菜には何があるかな。「ごぼう」。そうだね。色も根っこみたいだもね。
白菜はどこを食べるのかな。「葉っぱ」。そうだね。この白菜はね、縦に半分に切ると、ほうら、葉っぱが何枚もあるのがよくわかるでしょ。葉っぱを食べるのは他には。「キャベツ」「ほうれん草」。そうだね、葉っぱはみな緑色になってるからね。「先生、大根は根っこなのに、上の方が緑色になってるよ」。面白いことに気が付いたね。大根畑を見たことあるかな。大根の一番上のところは、少し土から上に出てるんだよ。それで緑色になっちゃうんだ。
きゅうりはどこかな。「実」。そうだね。花が終わるとね、花の下のところがだんだん大きく成ってきて、実ができるんだ。それじゃあ実を食べる野菜を考えてみよう。「トマト」「なす」「ピーマン」。
ブロッコリーはどこを食べるのかな。緑色だけど葉っぱじゃないし。茎でもないし。実かなあ。「違うよ」。
「花」。今花って言ったのだあれ。花で当たりなんだけど、どうしてわかったの。「ブロッコリーをそのままにしてたら、花が咲いちゃったから」。お家でブロッコリー植えてたの? よーく見てたね。近寄ってよく見てごらん。この小さいつぶつぶは、皆ブロッコリーのつぼみなんだよ。「へーえ、知らなかったよ」。何色の花が咲くのかな。「黄色の花が咲く」。そうだね。それじゃあ一つ問題を出します。大根の花は何色かな。「見たことないよ」。それじゃあ先生に答えてもらいましょう。どうですか。「わかりません」。「先生、知らないの」。先生だって知らないことはありますよ。「何色の花が咲くの」。それは答えないことにしておきましょう。大根畑に行くとね、大きく成りすぎた大根を抜かないままになっていることがあってね。花が咲くことがあるんだよ。答は自分で探してみるように、今日は秘密にしておきます。
最後にアイパラガスはどこを食べるのかな。近くによってよーく見てごらん。ほら、上の方につぼみみたいのが着いてるよ。ということは、どこかなあ。「茎」。当たりー。よくできました。よくできました。この辺にはアスパラガスの畑はないから見たことないけど、これがね、地面からにょきっとのびてくるんだよ。
さあもう時間がなくなっちゃうね。野菜といっても色々種類があって、食べるところも色々あることがわかったでしょう。これからはね畑で野菜を見たら、どこを食べるのかよーく見てみましょう。お店で見てもいいしね。それじゃあ今日のお話はここまででお終いです。大根の花の色は宿題ね。
私は終始主導権を握っています。会話はたくさんありますが、基本は一斉講義式です。これが最高とは言いませんが、遅れた授業とは思いません。アクティブラーニングのやり方で20分でこれだけのことができますか。時間をかければできるでしょう。しかし限られた時間では不可能です。生徒達は知識を一方的に注入されているだけですか。大根の上部が緑色であることに気付くなど、面白い発見をしています。
一斉講義式を遅れた授業として批判する人に問いたい。つまらない授業にしてしまった一因は、あなたにもあったのではありませんか?