うたことば歳時記

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直立歩行ということ(人と猿の違い)

2024-09-06 04:59:05 | 私の授業
 以下のお話は、近くの小学校における、私のボランティア授業の様子で、「 」内は生徒や担任の発言です。

 皆さんお早うございます。「お早うございます」。久しぶりだね。九月になったのにまだ暑いけど、こういう暑さを何て言うのかしってるかな。「残暑って言うんだよ」。よく知ってるね。さすが5年生だ。「今日は何を持ってきたの」。これはね、大きなトンカチさ。「それで何するの」。今日は、人と猿はどこが違うかっていうお話をします。
 さあ、みんな考えてごらん。動物園に行って、猿をじっと観察していると、いろんな事に気が付くことでしょう。まあここは動物園じゃあないけれど、行ったつもりになって考えてみよう。さあ、気が付いたことから、どんどん言ってみようか。「猿は毛が生えているけど、人は生えていない」。うん、確かにそう見えるけど、よくよく見ると、人にも短い毛は生えているんだよ。さあその他には。「人は話ができるけど、猿は話せない」。本当に猿は話せないの?。でも何か言っているよ。確かに猿の声に意味があるのかないのかわからないけど、ひょっとして猿と猿は声で何か合図をしているかもしれないよ。猿語かもしれないよ。人がわからないだけでさ。例えば何か美味しい物があることを仲間に知らせたり、危ないことがあることを知らせたり、雄が雌を呼んだりする声には、何か違いがあるのかも知れない。まあでもね、言葉を話しているのかもしれないけれど、複雑なことを言えないのは確かだろうね。他にはどんなことがあるかな。「猿は服を着てないけど、人はいつも着ている」。「でもチンパンジーのパン君は着てるよ」。「あれはね、着せられているんだから、着ているのとは違うよ」。いろいろ出てきたね。みんなが言ってくれたことはどれも正解だけど、私が一番大きな違いと思っていることがまだ出てきていません。先生、何だと思いますか?。「人は立って歩くけど、猿はいつも立って歩くわけではないと思います」。そうです。よくできました。さすがは先生ですね。「だって先生、猿も立って歩いてたよ」。確かに立って歩くこともあるけれど、そうではない時もある。でも人は赤ちゃんや訳あって歩けない人はともかく、普通はみな二本足でまっすぐ立って歩いています。そう、これが猿と人の大きな違いなんです。
 さあ、話は今から何百万年も前、人が誕生する頃のことです。ここでトンカチが役に立つ。この先の鉄の部分が頭だとしましょう。四つん這いで歩くということは、トンカチを水平か、少し斜めに持っているということだ。だけど真っ直ぐに立っているということは、トンカチを直立させて、この様に持っているということです。どっちが重いかな。同じトンカチだから重さは変わらないはずなのに、ほら持ってごらんよ。まずは水平に。次ぎに真っ直ぐ立ててごらん。重さはどうだった?。「真っ直ぐの方が軽かった」。でもおかしいよね。同じのはずなのに、感じ方が違うのは。だれかその理由を説明して下さい。「水平に持つと、持っている手の部分にトンカチの重さが集中して、重く感じてしまうけど、真っ直ぐに持つと、トンカチの重さを腕全体で支えているから、重く感じないのだと思います」。うわー、そのとおり。よくできました。言葉で説明するのは難しくても、みんな経験としてはわかるね。
 さあこのことを、人の誕生に当てはめて考えてみましょう。つまり四つん這いで歩いているうちは、頭がある一定の重さ以上になれない。首が疲れちゃう。でも真っ直ぐに立つと、大きな重い頭を身体全体で支えられる。頭が重くなるということは、つまりどういうことかな?。「脳が発達するから大きくなるのかな」。そうだね。脳が発達すればいろいろ考えるから、四つん這いの時にはできなかったことができるようになる。例えばどんなことがあるのかな?。「言葉を話せる」。でも猿語があるかもしれないから、話せるかどうかではなく、複雑なことが話せるようになるとしておこう。他には、「火をおこせる」。うんこれは大事なことだ。でもね、いくら頭で考えても、火をおこせるわけじゃあない。火よ起これって思っても、火は起きない。火を起こす道具が必要だ。それには手がなければなりません。二本足で立つということは、前足、つまり手は歩くためのものではなくなるということさ。それで歩くことに使わなくなった前足の指が発達して、それに発達した脳で色々考えて、手や指で何か道具を作ることができるようになるというわけだ。だからさっき君が言ってくれた火をおこすこともできるようになるというわけだ。そうすると人と猿の違いを、道具という言葉を使って表してみよう。「人は道具を使えるけど、猿は使えない」。うーん、でもね、猿の手が届かない所に餌を置いて、近くに棒を置いてやると、その棒を使って餌を採ることができるという実験があるんだ。つまり猿は道具を使えることもあるんだ。だから猿は道具を使えないとは言いきれない。だけど道具を○〇することはできない。さあこの○〇に入る言葉を考えてみましょう。「あっ、わかった。道具を作ることができないだ」。そうだね、簡単な道具を作ること、例えば棒を折って長さを調節するような、利口者もいるかもしれないけれど、それは例外としておいて、人は発達した脳と手や指を使って、道具を作って使うことができるけど、さすがに猿にはそこまではできない、ということだね。
 さろそろまとめてみようか。まず二本足で立つようになると、脳が発達する。そして発達した脳によって複雑な言葉が使えるようになる。また歩くことに使われなくなった手や指が発達し、脳の発達と一緒になって、道具を作って使うようになる。その結果、長い時間がかかることだけど、いろいろな文化ができてくると言うわけだ。さっきあなたが答えてくれた服も、文化の一つだ。二本足で歩くことは、難しい言葉を使って、直立歩行ということがあります。でもね、何百万年もかかって本当にわずかずつ変化ををしてきたのだから、今から急に前屈みの姿勢を真っ直ぐにしたって、脳が発達して頭がよくなるわけじゃあないよ。「wwww」。でもね、姿勢がよいということは、それはそれでよいことだから、猫背にならないようにしましょう。さあ今日のお話はちょっと難しかったけど、真っ直ぐに立って歩くと言うことが、人の誕生にとってどんなに大切なことかわかったかな?。「わくわかりました」「わかったよ」。それじゃあ今日のお話はおしまいにしましょう。