インディオ通信

古代アメリカの共感した者の備忘録8年。

背伸びの人生

2014-05-02 06:44:47 | 身の回り
  雅太は、小さめのイカをタマネギ、豆腐、椎茸、油揚げ、卵と一緒に煮込み、味ぽんで仕上げて、朝食を作った.定番のメニューであり、みそ汁こそ無いが、ブロッコリーやパセリなども添え、栄養面では問題は無かった。問題なのは雅太の脳みそであり、それを築き上げたこれまでの生活スタイルということになるか.

 修行ということを意識すれば、どんな奈落の状態でも訓練場ということになり、それなりの意義があるだろう.しかし雅太の場合、単なる個人の執着、背伸びをしてでも覗いてみた世界、ということにでもなるか.まさに今では「古代メキシコの呪術的世界」というのが、それに相当するであろう。

 それは難関高校、難関大学、そして難関資格、難関試験へと発展し、さらには、作家への新人賞へと展開して行くのである。難しいものには価値があると思い込んでいたのは、雅太の無知と世間知らずによって育まれたのであろう。ど田舎で育ったがために新聞テレビの宣伝に流され、それが肉体労働者の無邪気な両親によって助長されたのかもしれぬ。さらに一人息子であったために、雅太は人一倍可愛がられ、甘やかされて育ったわけで、そのツケを、この十数年間、支払い続けているのかもしれぬ。

 ペーパーテスト、紙切れを読み書きするたぐいでは、キリンが首が長くなったように、高いところを見渡せるようになったのだが、実生活ではまだまだかもしれぬ.まだ背伸びをしているところがあるのだろう。ちょこっと夢の中で神秘体験をしたぐらいで、それがどうしたというのだ。実生活で神秘的なことがばんばん起こらねば、本物とはいえぬのではないか。

 そこまで考えたところで、雅太は出勤の支度をするのであった。