ヒトリシズカのつぶやき特論

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ノーベル物理学賞を受賞された天野浩さんのご講演を拝聴しました

2015年02月14日 | 汗をかく実務者
 2015年2月12日から13日まで東京都千代田区で開催された新エネルギー・産業技術総合化発機構が主催した「NEDO FORUM」の中で、開幕時のゼネラル セッションの特別講演に、名古屋大学大学院教授の天野浩さんが登壇し、ガリウムナイトライド(GaN)の将来像を講演されました。

 2014年のノーベル物理学賞を受賞された天野さんは現在、追究している青色LED開発の基になったガリウムナイトライドの未来像をお話しになりました。



 天野さんは、ガリウムナイトライド製のパワー半導体の実現に挑戦している理由は、インバーターといった電力変換器のエネルギー損失を大幅に削減できるからだそうです。天野氏によれば、「現行のシリコン(Si)パワー半導体からガリウムナイトライド製のパワー半導体に置き換えることができると、電力損失を1/6以下にできる」と解説します。



 以下はかなり専門的な内容です。天野さんが取り組むのは、ガリウムナイトライド基板上にガリウムナイトライド系半導体をつくる「GaN on GaN(ガンオンガン)」と表記されるパワー半導体です。ガリウムナイトライド製のパワー半導体の製品は現在、シリコン基板上につくられています。これを、ガリウムナイトライド基板に換えることで、耐電圧を高めやすくなります。例えば自動車への用途では、300ボルト系の応用にはシリコン基板品を適用する一方、650ボルト系の用途に対してはガリウムナイトライド基板品を適用する、という使い分けを考えているそうです。

 GaN on GaN技術で重要になるのが、ガリウムナイトライド基板になります。残念ながらガリウムナイトライド基板製品は「HVPE法」と呼ばれる気相法でつくられているために、「コスト低減が難しい」そうです。そこで、コスト低減が可能な、「アモノサーマル法」「ナトリウムフラックス法」という液相法に着目しているそうです。ナトリウムフラックス法の開発では、新エネルギー・産業技術総合化発機構の研究開発プロジェクトとして進めている中で、口径150ミリメートルのガリウムナイトライド基板の試作に成功したところだそうです。まだ、実用化までには時間がかかるようです。

 コスト面以外の課題では、パワー半導体に利用するにはガリウムナイトライド基板の品質のバラつきが大きな問題になっています。「現状では、結晶作成メーカーごとに特性が異なる」そうです。

 一番の課題は、ガリウムナイトライド基は材料として、まだ未解明な部分があり、その研究開発には、多くの研究開発者の参加が必要であり、その事業課には多くの企業などの参加が不可欠です。

 天野さんは最近の日本の電機メーカーと半導体メーカーの事業不振が気になるそうです。大学人として、日本の電機メーカーと半導体メーカーの復活を願っているそうです。

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2 コメント

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天野教授 (柚子こしょう)
2015-02-14 17:43:37
天野教授が研究しているガリウムナイトライド製のパワー半導体に期待したいです。
そして、天野教授がおっしゃるように、日本の電機メーカーや半導体メーカーが復活してもらいたいものです。
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天野教授 (INPUT)
2015-02-14 21:57:19
以前に、このブログにコメントとして一回書いたことですが、2014年のノーベル物理学賞を受賞された3人の中で、天野教授が一番若く、日本にいるために、国内の様々なところから、講演依頼が殺到し、2日に一度は講演しているという過熱ぶりだそうです。
こうなると、いくらか加減を考える必要があります。
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