ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

名古屋大学教授の東山哲也さんが進めている、生きた植物細胞観察の話しです

2016年01月06日 | 汗をかく実務者
 日本の有力大学・大学院は、基盤研究で優れた研究成果をいくつも上げています。こうした基盤研究で優れた研究成果を上げている教員・研究者の代表格のお一人が名古屋大学のトランスファーマティブ生命分子研究所(ITbM)の副所長・教授をお務めの東山哲也(ひがしやまてつや)さんです。

 この“トランスファーマティブ生命分子研究所”は、文部科学省が有力大学に設置した「世界トップレベル研究拠点(WPI)」として設置された合計9カ所の研究所の一つです。

 平成19年度(2007年度)に設置された、世界トップレベル研究拠点(WPI)の一つは、東京大学の国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU)です。この研究機構には、2017年10月にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章 (かじたたかあき) 教授が主任研究員として参加しています。こうした最先端研究を担う研究所・研究機構が日本でも活動しています(影の目的は、日本人を含めた各国のノーベル賞受賞者を増やすこととみられています)。

 以下は、名古屋大学のトランスファーマティブ生命分子研究所で研究されている東山哲也さんの研究成果の“さわり”です。研究内容はかなり難しく、学術用語の説明だけで終わりそうです。

 2015年12月に、東京都内にある某機構で、東山哲也さんのミニ講演を伺いました。実は3年前にも一度、お話を伺っています。理解するのが難しい研究テーマです。



 トランスファーマティブ生命分子研究所の研究目標は、かなり大まかに説明すると「動植物の生産性や生体機能を精密制御する分子を開発する」「生命現象を自由自在に可視化する画期的なバイオイメージング」などを実現することです。そのゴールは生命科学・技術を根底から変える革新的機能分子「トランスフォーマティブ生命分子」を生み出すことだそうです。

 東山さんが担当する研究内容の一番の核心部分の一つは植物の受精です。めしべの先に、おしべの花粉が付くまでは、誰でも知っていることですが、その後に、花粉から花粉管が伸びて、めしべの根元にある胚珠に向かって伸びていきます。胚珠は“種になる部分の基”です。この花粉管が胚珠に向かって伸びて行く“方向を決める仕組み”がよく分かっていません。
 
 花粉管が、胚珠の中の助細胞に到達すると、花粉管先端から二つの“精細胞”が放出され、その“精細胞”の一つは“卵細胞”と受精し、胚(根、茎、葉などの基になるもの)をつくります。もう一つの“精細胞”は胚珠(種子が発芽する際の栄養分)になります。

 実は、植物は動物のように脳や神経を持たないために、植物全体を構成する個々の細胞は、全体での役割を担うために、ホルモンを使った細胞間同士のコミュニケーション(ホロニックコミュニケーション)をしていますが、その実態はまだよく分かっていません。

 植物の細胞間同士のコミュニケーションの始まりである受精や発芽、成長の仕組みを解明するために、植物の生きた細胞での受精卵を生きた状態で観察するライブイメージング技術を確立し、受精卵を生きたままで観察することに成功しています。

 ここまでが研究成果の“入り口”です。植物の生体を構成する各細胞と全体の相互作用の解明は始まったばかりです。

 興味深いのは、東山さんは植物の細胞を生きたまま観察する手段として、レーザー顕微鏡とマイクロデバイスという装置・仕組みを自分たちで開発している点です。工学的な手法を開発し、植物の基本を解明しています。ここでいう、“マイクロデバイス”とは、半導体分野のものとはかなり違います。工学応用の利用法という程度の説明しか、ここではできません。植物の基本を解明するために「異分野融合が不可欠」と、東山さんは説明します。
 
 こうした植物の細胞間同士のコミュニケーションを解明するために、東山さんは文部科学省傘下の科学技術振興機構(JST)から戦略的創造研究推進事業のERATO「東山ライブホトニクス」プロジェクトを任されています。
 
 以下は独断的な説明です。

 最近、研究成果として応用が出始めているiPS細胞も、現時点での応用分野は薄いシート状です。実は動物の細胞が各機関の構成細胞をどうつくっていくかもあまり解明されていません。人類は解明すべき生命現象の入り口に立っている感じです。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
基盤研究 (曖昧模糊)
2016-01-06 07:56:10
最近は、人工知能などの基盤研究のさわりを伺っても、各分野ごとに想像を超える内容で、難しい内容です。
バイオテクノロジーも専門用語を理解するだけで、疲れるほど、難解です。
分野が異なる専門の研究者同士の会話がどうなるのか、気になります。
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ニュートリーノ (因数分解)
2016-01-06 08:45:26
素粒子の一つであるニュートリーノは、強大な装置で検出され、研究しています。
このニュートリーノ研究はすぐには役にたつ対象ではないのですが・・
だいぶ前に、電波が発見され、電子が研究された時も、何に役立つかは不明でした。
基盤研究はいずれ、神の領域に踏み込みます・・
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基礎研究 (GTO)
2016-01-06 11:03:34
ノーベル賞を受賞した方々の基礎研究内容をきちんと理解できる方々はそんなに多くはないのでしょう。
各分野での基礎研究はどんどん進んでいきます。
各分野の内容を、大学で学ぶことも大変なことなのでしょう。
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科学技術の進展 (そばがき)
2016-01-06 16:27:31
科学技術の進展によって、人工知能が人間の能力を超える日が来るとの議論が起きています。
人間は、科学技術の発展をコントロールできるのかどうかが議論の焦点です。
理解できない科学技術が増えると、誰が判定するのかも、大きな問題です。
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