ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

ライフロボティクスが製品化した多関節ロボット「CORO」の話を伺いました

2016年07月05日 | 汗をかく実務者
 ライフロボティクス(Life Robotics Inc.東京都江東区)を経営する尹祐根(ゆんうぐん)さんから、同社が2015年12月に製品化した多関節ロボット「CORO」のお話を伺いました。

 尹さんは、公的な研究開発機関の産業技術総合研究所の主任研究員です。2007年に独自の多関節ロボットの研究開発成果を基に、ベットの側で、患者の意思に従って動くロボットアームのプロトタイプを開発しました。患者が水の入ったペットボトルがほしいと指示すると、その水入りペットボトルをつかんで患者に渡すなどの補助動作をします。

 尹さんは、まず2007年12月にライフロボティクスを産総研のある茨城県つくば市で創業し、翌年の2008年1月には産総研から「産総研技術移転ベンチャー」との称号を取得します。

 複数のベンチャーキャピタル(VC)の方々の勉強会で、尹さんにお目にかかったのは、このころです。

 その後、日本の有力なベンチャーキャピタルである日本テクノロジーベンチャーパートナーズから出資を約束されたようで、2015年4月に現在の事業拠点がある東京都江東区富岡に引っ越します。

 さらに、2015年11月には、日本テクノロジーベンチャーパートナーズなどから出資を受け、資本金を合計約2億8000万円まで増資します。

 日本テクノロジーベンチャーパートナーズは創業時のDNAに出資したことなどの実績豊かなベンチャーキャピタルです。

 2015年12月には、独自の多関節機構を持つ「CORO」を発表し、発売します。



 「CORO」の本体質量は26キログラムで、可搬質量は2キログラムです。

 尹代表取締役COE(最高経営責任者)は「従来の多関節ロボットのように“肘”(ひじ)部分を持っていない機構のために、ロボットの近くで人間が協調作業をしても安全」と説明します。

 この結果、食品や化粧品などをつかんで(ピッキングして)、目的に場所に置くなどの軽作業が得意だと説明します。

 尹代表取締役COEは少子高齢化が進む日本では、化粧品などの日用品や食品などを詰める作業などの“軽作業”を担う人材が少なくなっていると説明します。

 実際に、ロイヤルホストや吉野家などの外食産業大手から、「CORO」の引き合いがきていると説明します。もちろん、オムロンやトヨタ自動車などの大手メーカーからの引き合いがきているそうです。

 少子高齢化が進む日本では、軽作業を担当する工程で人手不足になり始めています。こうした軽作業向けの、人と一緒に働く軽作業ロボットが求められています。

 日本は、自動車の溶接工程などの生産工程向けの産業用ロボットはお家芸で、多くのロボットメーカーが市場をつかんでいます。このロボットの多くは“肘”部分を持つ多関節ロボットです。人間との協調作業には適していません。

 これに対して、軽作業用ロボットは動作のエネルギー(力)を控えめに設計し、人間との協調作業ができる仕組みにしています。

 ロボットに実際の動作を教える“ティーチング”用ソフトウエアも簡単だそうです。

 ライフロボティクスの尹代表取締役COEから、軽作業用に性能などを絞り込んだ「CORO」の製品化のお話しをお伺いしてから約1週間経ちました。

 2016年7月3日に発行された日本経済新聞紙の朝刊には見出し「トヨタ、家庭用ロボ量産」との記事が掲載されました。2019年度から高齢者向けの生活補助用途に商品化するそうです。

 また、ソニーもロボット再参入を発表しました。

 これからは頑丈な産業用多関節ロボットではなく、人間の側で働く軽作業用ロボットの商品化が盛んになる模様です。

 ベンチャー企業のライフロボティクスが独自の市場をつかむことを祈念しています。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
人手不足 (だんご3兄弟)
2016-07-05 07:01:05
少子高齢化が進み、介護施設や農業現場などで、かなり人手不足が目立つようになっています。
こうした人と一緒に作業するロボットを活用し、軽作業分野では人手不足が解消できるといいですね。
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人手不足 (羅針盤)
2016-07-05 08:27:34
少子高齢化によって、コンビニやファーストフード店では、アジア系外国人の店員が増えています。
そして、お客には見えないバックヤードでは、簡単な作業をロボットに任せることが増えているそうです。
回転寿司の寿司の原型は、寿司ロボットが握っています。
軽作業用ロボットは、目につかない場所で普及し始めています。
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介護ロボット (影武者)
2016-07-05 15:37:27
介護施設などでの深刻な人手不足を解消させるために、政府は介護ロボットの導入を進めるとアナウンスしていますが、実際にはどんな介護ロボットが導入されるのか、まだ実態はみえませんね・・
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外国人労働者 (スマグリ)
2016-07-05 18:00:58
羅針盤さんのコメントに書かれているように、コンビニやファーストフード店では、アジア系外国人の店員が増えています。
その上、近くのパン工場やお弁当工場では、実際に働いている方々は、やはり、アジア系外国人の方々です。
朝、迎えに来るバスを待つ列をつくっている方々は中国語を話しています。
既に、軽作業(?)では人手不足が激しく、アジア系外国人を雇用して対応しています。
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