ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

話題の林原は、トレハロースの用途特許パテントプールをつくっていました

2013年12月14日 | イノベーション
 昨日2013年12月13日編では、岡山市のバイオテクノロジー企業の林原が研究開発活動とその事業化の際に実施した知的財産マネジメントについて拝聴したとお伝えしました。その続きの話です。

 林原は微生物がつくりだすさまざまな酵素に着目し、この酵素を用いてデンプンを分解し、多糖類などをつくり始めたのは、1961年に林原健さんが新社長に就任した前後のようです。



 林原健さんは、本業の水あめ製造業では同業他社との安売り競争に陥るために、他社が挑戦しない独創的な研究開発テーマとして、高付加価値な機能性素材という製品開発を狙い、同時に独自の製法を確立するという技術経営方針を打ち出します。この結果、独創的な研究開発成果を特許として出願することを強化し、知的財産マネジメントを実施します。ベンチャー企業と同様の考え方です。

 1968年に「麦芽糖」と呼ばれるマルトースの新製造法を開発した経験が研究開発体制の基盤を築いたようです。

 1994年に、ある酵素を利用して、デンプンからトレハロースをつくることに成功します。林原が見つけた、ある酵素によって、デンプンから多数のグルコース分子が直鎖状に並んでいる高分子のアミロースをつくり出し、これに「マルトオリゴシトハース生成酵素」によって、トレハロースを含む直鎖状の高分子をつくり、これにトレハロース遊離酵素をつかって、トレハロースを切り離す工程を繰り返す手法だそうです。

 トレハロースは2個のα-グルコースが結合してできた二糖類です。トレハロースは、炭水化物(デンプンなど)やタンパク質、脂質に対して品質保持効果を発揮し、強力な水和力を持つために、乾燥や凍結からも食品を守って食感を保つことなどのさまざまな機能を持つそうです。トレハロースは予想以上にさまざまな機能を持っています。

 この結果、トレハロースは食品添加剤としての用途や、臓器移植時の臓器保護液などに利用されています。

 林原はトレハロースを食品添加剤として普及させるために、当時は当時、1キログラム当たり数万円していたトレハロースを、1キログラム当たり300円と安価で供給します。この戦略が当たって、トレハロースは売れます。

 このトレハロースを普及させる事業戦略では、最初に他社が保有していたトレハロースの用途特許を普通実施権のライセンスを有償で集めます。この用途特許群がある程度集まると、次は他社が持つ用途特許を無償でクロスライセンスによってさらに集めます。他社も、林原にトレハロースの用途特許のパテントプール(特許群)が管理されていると、特許係争が起こる可能性がなくなり、トレハロースを安心して販売できます。

 知的財産マネジメントの識者の方は、林原が作成したトレハロースの用途特許のパテントプール(特許群)は第三者へのサブライセンス権を持たせていたので、「トレハロース利用の“プラットフォーム”ができ、食品メーカーは安心してトレハロースを利用できる環境になった」と解説します。

 当時、パテントプール(特許群)という高度な知的財産マネジメントを実施した林原は、高度な事業戦略を実施していたことは確かなようです。この高度な研究開発能力と事業能力を評価して、長瀬産業は林原の救済に乗り出し、子会社化したようです。

最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
トレハロースのCM (となかい)
2013-12-14 10:01:56
数年前まで、林原は(たぶん)トレハロースのCMとして、子供の宇宙人が出てくる奇妙なCMを流していました。
トレハロースの効用を伝えるものだった気がします。良く覚えていませんが・・
返信する
酵素 (ベイスターズ好き)
2013-12-14 16:14:56
最近の洗剤には、酵素の力を利用しているとうたっています。
酵素は意外と身近にあるように思います
返信する
専門用語 (小池さん)
2013-12-14 21:23:01
今回の御ブログは「パテントプール」「サブライセンス」などと、特許についての知識が無いと、理解できないレベルです。
一般の方には難しいのでは?
返信する
パテントプール (Rhapsody)
2013-12-15 02:10:34
小池さんという方がコメントとしてご指摘するように、パテントプールのことをブログに書く方はほとんどいないと思います。
興味深く読ませていただきました
返信する

コメントを投稿