ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

緑陰で読むミステリー本として、作家の東野圭吾さんの精進に感心しました

2011年08月15日 | 
  お盆休みの盛夏の最中は、夏休みの“宿題”がつきものです。その宿題の合間に、緑陰で読むミステリー本は息抜きとしてとても楽しいものです。ミステリー作家の中で、ここ10年ぐらいは、東野圭吾さんが書かれた新作の単行本は発行直後に買うことにしています。原則、新作を出すと読む作家の一人になっています。

 今年の春に電車の釣り広告に、東野さんの単行本3作品が異なる出版社から、それぞれ次々と発行されると、出ていました。その3作品とは、3月3日発行の「麒麟の翼」(講談社発行)、6月6日発行の「真夏の方程式」(文藝春秋発行)、そして9月9日発行予定の「マスカレードホテル」(集英社発行)です。

 出版不況で単行本が売れない時代に、一定数以上の販売部数が確実に読めるミステリー作家として、東野圭吾さんが選ばれ、合同の広告になったと想像しました。AmazonのWebサイトには、単行本「マスカレードホテル」の新刊予約の受け付けが始まっています。



 当然、「麒麟の翼」と「真夏の方程式」は読み終えています。「麒麟の翼」は書店で手に取った時は、タイトルの意味が分かりませんでした。



 読み始めて、単行本「新参者」の刑事の加賀恭一郎が主人公として謎解きをするストリーだと知りました。読み始めて、各エピソードは面白くで引きつけられるのに、ミステリーとして話がどう展開していくのか読めない所に、作家東野さんの文章力を感じました。日本橋から人形町にかけての下町の人々の生き様が、今回も巧みに織り込まれて描かれています。読んで楽しい読後感が得られる作品です。

 「真夏の方程式」は天才物理学者である“探偵”の湯川学が活躍するガリレオシリーズの最新作です。



 「真夏の方程式」は話の展開が当にどうなるのか読めない作品でした。今でも、探偵役の湯川がトリックを見破ったきっかけが分かりません。でも、作家、東野さんの文章力のうまさは十分に堪能しました。ただし、「麒麟の翼」と「真夏の方程式」はミステリーとしてはある程度のでき映えです。例えば「容疑者Xの献身」の方ができは優れていると思います。

 さて、今回書きたいことは、たぶん「麒麟の翼」の購入時に書店でもらった「東野圭吾公式ガイド」という文庫本サイズの販売促進グッズを読んで感じたことです。東野さん自身が自作のミステリーについて感想を書いているものです。

 ふだんは、こうした販売促進グッズを読まないのですが、何かの弾みにパラパラとめくってみました。1990年に出した「仮面山荘殺人事件」では、東野さんは「まあまあの自信作です。(途中省略)ノベルスで初版2万で重版なし、というがっかりの結果です」と語ります。1993年に出した「同級生」は「久しぶりに売れましたね。最終的には2万部を超えたはずです」と語ります。今を時めくベストセラー作家の東野さんが初版の刷り部数が2万部で喜んでいたことに驚きます。1995年に発刊した「天空の蜂」では、「しつこくいってますけれど、とにかく本が売れなくて」と、つらい時代を語っています。この売れない作家だったころの作品は文庫版でしか、現在は入手できません。

 たぶん、東野さんが売れるミステリー作家になったのは、1998年発行の「秘密」や1999年の「白夜行」、2004年の「幻夜」などからではないでしょうか。ある意味、ミステリーではなく読み物を提供するようになったころです。登場人物が魅力的になりました。その後、ミステリー色の濃いものとそうでないものを書いています。そして作品が映画やテレビ番組になることで、売れっ子作家に定着しました。

 東野さんがミステリー作家になる、きっかけとなった江戸川乱歩賞を受賞した、1985年発行の「放課後」から苦節15年経って、現在は売れっ子作家になっています。

 ミステリー作家に専念してからは、かなり苦労していることが「東野圭吾公式ガイド」に載っている自作へのコメントがどれも物語ります。努力し続けるといのうのは簡単ですが、自分を信じて精進する姿勢が東野さんの魅力の一つです。