ノンストップの子育てに日々向き合う中で、
私にとって支えになっている「マインドセット」のひとつに、
ジェームス・ストックデール氏の教えがあります。
ちょっと「強いイメージ」なので、
受け付けない方もいるかもしれませんが、
5人の個性の強い子ども達と日々もみくちゃになりながら暮らす私自身にとって、
底のところで力になってくれてます。
今日は、紹介させてください!
パイロットだったストックデール氏は、
ベトナム戦争時に撃墜され不時着し、
囚人となります。
7年半の囚人生活、
2年間足かせをつけられ、
窓のない1m×2mの部屋に閉じ込められたり、
頻繁に拷問を受ける日々だったといいます。
生還したStockdale氏が、
ビジネス・コンサルタントのジェームス・コリンズ(James C. Collins, III )氏に話した内容が、
コリンズ氏の著書『Good to Great』にまとめられています。
以下引用です:
「私は、決してストーリの結末への信仰を失うことがありませんでした。
私が囚人生活から生還するということを疑わなかっただけではありません。
私は最後には勝つということを、
そしてこの囚人体験が私の人生の決定的な出来事であり、
振り返り、かけがえのないものだった思えるようにするということを、
決して疑わなかったのです。」
そこで、「どういう人が、生き抜けなかったのでしょう?」と聞くコリンズ氏に、
こう答えます。
「それは簡単です。楽観主義者です。
クリスマスには出られるだろうといい、クリスマスがくると、
復活祭には出られるだろうといい、復活祭がくると感謝祭にはといい、
そして再びクリスマスが来て、やがて失望し亡くなっていきました。
これは、とても重要なレッスンなんです。
決して、最後には勝つという失うべきでない信仰と、
あなたの今の現実の最も厳しい事実を直視し、律を持って向き合うこととを、
混同してはいけません」
ストックデール氏のこの言葉を、
コリンズ氏は「ストックーデールの逆説」としています。
「最後には絶対にうまくいく」という楽観的な信念、
それでも、
時に厳しい目の前の現実に、地に足をつけ着実に向き合う姿勢。
こうした「逆説的な姿勢」って、
子育て生活でも、まさに大切だと思いませんか?
「この子は大丈夫。
必ず最後には、幸せに羽ばたいていく」
底のところに、こうした楽観的な信念を据える。
親の「大丈夫」といった姿勢ほど、
子どもが、安心することはありません。
それでも、
日々起こり得る、時に「厳しい現実」や「痛い出来事」を直視し、
自分なりの「律」を持って、着実に対応していくこと。
私自身、もともと能天気なところがありますから、
ストックデール氏の言う「楽観主義者」的なところがありましたし、
今も、そうした部分があります。
3歳になれば、5歳になれば、
小学校にあがれば、中学年になれば、高学年になれば、ティーンになれば、
「この区切りになれば、全てがうまくいくだろう」と。
でも、異なる区切りを越えれば異なる課題が現れます。
そして日々、様々な物事が起こり続けます。
「単なる楽観主義」では、
「思い描いたパラダイス」とのギャップに、
がっかりや、失望が、重なっていくんです。
かといって、目の前の現実に着実にたんたんと向き合うだけでは
何かが足りません。
それは、「何があろうとも、必ずこの子達はよくなっていく」という
「結末に向けての楽観的な信念」です。
そして、
目先のアップダウンに依存するのではなく、
こうした長い目で見ての「必ず大丈夫」こそが、
目の前の小さな喜びを見出す余裕や、
ユーモアや創造性の土台となる「柔らかさ」を可能としてくれる、
そんなように感じています。
この「逆説的な姿勢」が、
子育ての荒波を突き抜け、進む力を与えてくれます。
ストックデール氏は、
日々こめかみにつきつけられる銃口に、
不安や恐怖に決してのっとられないよう
「感情を調整する方法」を身につけたといいます。
←氏の場合は、マントラを唱えるとのこと。
銃口をつきつけられる恐怖とはくらべものにならないといえども、
日々の子育てでも、子供の行為を前に、
様々な不安感や恐れが湧き出るものです。
以前こちらに書いた、
・子どもの「好ましくない行為」を前に流れる「効果音」に気づく、過去でも未来でもない今のその子に向き合うために
過去の悩みや未来の不安や恐怖といった「効果音」に気づき、
影響を受けない姿勢も、
こうした「感情を調整する方法」あってこそです。
戦争や囚人などの極限的な状況と、
子育て生活とが重ならない方もいるかもしれませんが、
チャレンジングな特性を持つ子どもと暮す方、
もしくは、強烈に感じすぎる性質を持つ方など、
私のように、助けになることもあるのじゃないかなと、
私自身の内面の支えを書いてみました。
「今がどうであろうと、この子達は、必ず最後には大丈夫」
そうした信念を芯に据え、温もりと微笑みをもって、
目の前の事実に、現実的に対応していきたい、そう思っています。
一つ前の記事には、
昨日のティーンの日常がつづってあります。
・昨日のティーンの日常風景:「この子達は、必ず最後には大丈夫」と信じつつ、その都度大切なことを伝え続けるということ
「目先のアップダウン」に翻弄されることなく、
長い目で見た信念を胸に。
今夜は、バルコニーになんと!アライグマが遊びに来ました。
というか、置いてあったゴミを食べに来たんですが。
2階なんですけどね。
さて、怒涛の週末。
明日から「プログレッシブ教育」トレーニングも始まり楽しみです。
みなさん、温もり溢れる週末を!
追記:ストックデール氏の考え方の背景について。”捕虜になる前、1959年にストックデールは海軍の命令でスタンフォード大学へ赴き、国際関係論とマルクス主義を学んで、修士号を取得するにいたった。1962年、自らの希望により、同大学でフィリップ・ラインランダー(Philip H. Rhinelander|)教授から哲学の個人教授を受け、古代ローマ人エピクテトスのストア哲学を紹介される。エピクテトスはローマ時代に皇帝ネロの奴隷としての不遇から身を興した哲学者であり、後年、捕虜になった時に、エピクテトスの哲学が助けになったと述懐している。”(ウィキペディア)