石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

米国の原油生産、二年連続で世界一:BPエネルギー統計2019年版解説シリーズ石油篇(12)

2019-07-19 | BP統計

BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

 *BPホームページ:

http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html

 

(石油自給率が改善する米国、悪化する中国!)

(5)石油の需給ギャップおよび自給率の変化(2000年~2018年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-3-G04.pdf 参照)

(http://bpdatabase.maeda1.jp/1-3-G05.pdf 参照)

 石油生産国の中でも人口が多く産業規模の大きな国は同時に多くの石油を消費する。例えば米国と中国はそれぞれ世界1位と8位の産油国であるが、消費量では世界1位と2位である。両国を合わせた世界シェアは生産量で20%、消費量では34%に達する。両国とも消費量が生産量を上回るため、米国は1965年以前から既に石油の輸入国であり、中国は1990年代前半に輸入国に転落している。

 

米国の場合2018年は生産量1,531万B/Dに対して消費量は2,046万B/Dであり、差し引き515万B/Dの需要超過で石油自給率は75%となる。1965年に78%であった米国の石油自給率は年々低下し1990年代には50%を切り、そして2000年代は40%を割るなどほぼ一貫して低下してきた。しかし同国の自給率は2007年の33%を底に改善しつつあり、2018年にはついに75%に達している。現在米国は必要な石油の4分の3を自国産原油で賄っていることになる。

 

一方、中国の場合1992年までは生産量が消費量を上回り自給率100%であったが、その後純輸入国に転じている。しかも生産と消費のギャップは年々広がり、2010年に537万B/Dであった需給ギャップが2018年には973万B/Dに拡大している。この結果2010年には43%であった自給率も2018年は28%まで落ち込んでいる。米国と逆に中国は必要な石油の7割を輸入に頼っていることになる。

 

インドも中国同様に年々需給ギャップが拡大している。2010年の同国の需給ギャップは248万B/Dであり、自給率は27%であった。その後需給ギャップは年々拡大しており、2018年は429万B/Dに達している。その結果2018年の自給率は17%にまで低下している。

 

近年産油国としての存在感を示しつつあるブラジルは、2010年は生産213万B/Dに対して消費量は271万B/Dで自給率は78%であったが、2016年以降は90%近くに達している。

 

(石油篇消費量完)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

 

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ベトナムなど東南ア3か国が格上げ:MENAと世界主要国のソブリン格付け(2019年7月現在) (3)

2019-07-19 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0473SovereignRating2019July.pdf

 

2.7月現在の各国の格付け状況 (続き)

(表:http://menadabase.maeda1.jp/1-G-3-01.pdf 参照)

 

(投資不適格のトルコ、エジプト、イラク!)

(3) MENA諸国の格付け

GCC6カ国のうちクウェイトおよびアブダビ(UAEは首長国単位の格付けでありドバイは格付けされていない)はAAである。カタールは一昨年6月にサウジアラビア、UAEなどが同国と断交し、陸路・海路が封鎖された結果、同年下半期に格付けは1ランク下がりAA-になっている。これは台湾と同じであるが中国、日本よりは1ランク上である。

 

GCC最大の経済規模を誇るサウジアラビアは二年前まではこれら3か国と同じランク(AA)であったが、現在はA-であり、UAE、クウェイトとは4ランク、カタールとは3ランクの差がある。同国の財政は必ずしも楽観を許さず外貨準備高が減少、7年ぶりに国債発行を余儀なくされている。財務改善のめどが立たないことに対し格付け機関は厳しい評価を下している。

 

同じGCC加盟国の中で財務状況が悪化しているオマーンは昨年上期まで連続して格下げされ、投資適格から同不適格に転落し、現在はBBにとどまっている。またGCC6か国の中で非産油国のバハレーンは経済が脆弱であり、また政治的にも不安定要因を抱えているためもともと他の5か国より格付けが低く、現在はトルコ、ギリシャと同格のB+に格付けされている。現在も経済危機のため周辺国から金融支援を仰いでいる状況であり、更なる格下げの脅威に晒されている。GCC6カ国はクウェイト、UAE(アブダビ)、カタールの3か国が比較的安定しているのに対し、オマーン及びバハレーンが投資不適格のBBまたはB+に格付けされ格差は大きい。そしてサウジアラビアは両者の中間に位置し、格上げよりも格下げ圧力が強い不安定な状況にあると言えよう。

 

 その他のMENA諸国ではイスラエルがAA-であるがこれは台湾と同格で日本、中国(A+)より1ランク上である。モロッコはBBB-でかろうじて投資適格の格付けを維持している。これに対してトルコは投資不適格であり、B+である。エジプトの格付けはトルコよりも低いBである。ヨルダンはトルコ、ギリシャと同じB+である。またレバノン及びイラクはエジプトより1ランク下のB-にとどまっている。

 

(フィリピン、インドネシア、ベトナムが揃って格上げ!)

(4) BRICsおよびアジアの発展途上国の格付け

アジア・オセアニア地域ではオーストラリア及びシンガポールが独、スイスなど西欧諸国に並ぶ最上級AAAの格付けであり、東南アジア諸国ではタイがBBB+、インドは投資適格で最も低いBBB-である。フィリピンは今年上半期にBBBからBBB+に上方修正されタイと並び、またインドネシアもインドと同じであったBBB-からBBBに上がっている。BBBはS&Pの格付け定義では「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」とされ、投資適格の中で最も低いランクである。

 

BRICsの一角を占めるブラジル及び南アフリカはそれぞれBB-、BBでありいずれも投資不適格とされ、同じBRICsのロシアあるいはインド(共にBBB-)より2乃至3ランクの格差がある。ベトナムは昨年までブラジルと同じBB-であったが、今年上半期にBBに格上げされている。

 

(続く)

 

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