(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0473SovereignRating2019July.pdf
3.2016年7月以降の格付け推移 (続き)
(トップを続けるUAEとクウェイト、格差広がるオマーンとバハレーン!)
(2)GCC6カ国の格付け推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-02.pdf参照)
GCC6か国(UAE、クウェイト、カタール、サウジアラビア、オマーン及びバハレーン)の過去3カ年のソブリン格付けの推移を見ると、まず2017年7月時点ではUAE、クウェイト及びカタールの3か国の格付けが最も高くAAであった。サウジアラビアはこれら3カ国より4ランク低いA-であり、オマーンは投資適格で最も低いBBB-であった。有力な産油(ガス)国が多いGCCの中で石油生産量がわずかなバハレーンのソブリン格付けは非投資適格のBBにとどまっていた。
2014年年央をピークに石油価格が急落すると、経済力の弱いオマーンとバハレーンは下落傾向が止まらず、オマーンは2017年上半期から翌年上半期の間に投資不適格のBBまで転落した。またバハレーンも2017年下半期までの1年半の間にBBからB+まで格下げされている。また原油(ガス)価格に影響されない強い経済力を有するカタールは、イスラム過激派支援を理由にサウジアラビアおよびUAEから国交を断絶され、S&Pは政治的要因を理由に格付けを1ランク下のAA-に格下げされ現在に至っている。
UAE(アブダビ)とクウェイトは過去3年を通じてAA格付けを維持し、またサウジアラビアも両国とは4ランクの格差はあるものの現在までA-格付けを維持している。
このようにGCC6カ国の中ではUAE及びクウェイトが安定して高い格付けを維持し、カタールがこれら2カ国に一歩遅れ、少し離れてサウジアラビアがやや低い投資適格の格付けにとどまっている状況である。これら4カ国に対してオマーンとバハレーンは投資不適格のランクに落ちた後もそのまま回復の兆しが見えず他の4カ国との格差は広がったままである。
かつてはUAE、クウェイト、カタールと同じ格付けを保持したサウジアラビアが、GCCの盟主としてオマーン及びバハレーンを支援し、格付けの下落を食い止めていたが、サウジアラビア自身の格付けが下落し、さらにサウジアラビア、UAEが(バハレーンも含め)カタールと断交するに至り、現在のGCCにはかつての結束が見られない。ソブリン格付け機関のS&Pはそのような状況を冷徹に見透かしているようである。
以上
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp