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石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

ベトナムなど東南ア3か国が格上げ:MENAと世界主要国のソブリン格付け(2019年7月現在) (5)

2019-07-21 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0473SovereignRating2019July.pdf

 

3.2016年7月以降の格付け推移 (続き)

 

(トップを続けるUAEとクウェイト、格差広がるオマーンとバハレーン!)

(2)GCC6カ国の格付け推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-02.pdf参照)

 GCC6か国(UAE、クウェイト、カタール、サウジアラビア、オマーン及びバハレーン)の過去3カ年のソブリン格付けの推移を見ると、まず2017年7月時点ではUAE、クウェイト及びカタールの3か国の格付けが最も高くAAであった。サウジアラビアはこれら3カ国より4ランク低いA-であり、オマーンは投資適格で最も低いBBB-であった。有力な産油(ガス)国が多いGCCの中で石油生産量がわずかなバハレーンのソブリン格付けは非投資適格のBBにとどまっていた。

 

 2014年年央をピークに石油価格が急落すると、経済力の弱いオマーンとバハレーンは下落傾向が止まらず、オマーンは2017年上半期から翌年上半期の間に投資不適格のBBまで転落した。またバハレーンも2017年下半期までの1年半の間にBBからB+まで格下げされている。また原油(ガス)価格に影響されない強い経済力を有するカタールは、イスラム過激派支援を理由にサウジアラビアおよびUAEから国交を断絶され、S&Pは政治的要因を理由に格付けを1ランク下のAA-に格下げされ現在に至っている。

 

UAE(アブダビ)とクウェイトは過去3年を通じてAA格付けを維持し、またサウジアラビアも両国とは4ランクの格差はあるものの現在までA-格付けを維持している。

 

 このようにGCC6カ国の中ではUAE及びクウェイトが安定して高い格付けを維持し、カタールがこれら2カ国に一歩遅れ、少し離れてサウジアラビアがやや低い投資適格の格付けにとどまっている状況である。これら4カ国に対してオマーンとバハレーンは投資不適格のランクに落ちた後もそのまま回復の兆しが見えず他の4カ国との格差は広がったままである。

 

 かつてはUAE、クウェイト、カタールと同じ格付けを保持したサウジアラビアが、GCCの盟主としてオマーン及びバハレーンを支援し、格付けの下落を食い止めていたが、サウジアラビア自身の格付けが下落し、さらにサウジアラビア、UAEが(バハレーンも含め)カタールと断交するに至り、現在のGCCにはかつての結束が見られない。ソブリン格付け機関のS&Pはそのような状況を冷徹に見透かしているようである。

 

以上

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

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米国の原油生産、二年連続で世界一:BPエネルギー統計2019年版解説シリーズ石油篇(14)

2019-07-21 | BP統計

BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

 *BPホームページ:

http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html

 

5.世界の石油精製能力

(1億B/Dを超えた世界の石油精製能力!)

(1)   地域別精製能力

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-5-G01.pdf 参照)

 2018年の世界の石油精製能力は日量1億5万バレル(以下B/D)と史上初めて1億B/Dを突破した。地域別でみるとアジア・大洋州が3,475万B/Dと最も多く全体の35%を占め、次に多いのが北米の2,233万B/D(22%)及び欧州の1,568万B/D(16%)であった。これら3地域で世界の精製能力のほぼ4分の3を占めている。その他の地域の精製能力と世界に占める割合は、中東(970万B/D、10%)、ロシア・中央アジア(817万B/D、8%)、中南米(598万B/D、6%)、アフリカ(343万B/D、3%)である。

 

 後述する通りアジア・大洋州の精製能力は1990年代に欧州及び北米を追い抜き世界最大規模となったのであるが今後この傾向が定着することは間違いない。

 

 地域別の精製能力と石油消費量(本稿3(1)参照)を比較すると北米及びロシア・中央アジア以外の地域は消費量と生産能力の差は1%以内である。このように石油の消費量と精製能力は地域内でバランスが取れるいわゆる地産地消型が普通である。但し、北米は消費量シェア25%に対して精製能力シェアは22%と消費量シェアの方が若干高く、一方ロシア・中央アジアは消費量4%に対して精製能力シェアが8%と、精製能力が消費量を大幅に上回っている。

 

 原油は消費地でガソリン、ナフサ、灯油、重油などに精製され消費されるのが通常である(消費地精製主義)。それにもかかわらずロシア・中央アジア地域のバランスに差があるのは、石油消費の先進地であったユーラシア西域が1970~80年代に精製能力を急激に拡張し、その後の石油消費の鈍化により過剰設備を抱えてしまったためと考えられる。

 

アジア・大洋州で精製能力と消費量がバランスしているのは発展途上国が多く、増大する石油の消費と精製設備の新増設が並行しているためであろう。但し後述するように(「製油所稼働率」の項参照)消費と精製能力のバランスは同じアジア地域においても日本が過剰設備の解消に苦心する一方、インドでは慢性的な精製能力不足であるように国によって事情が大きく異なる。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

 

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