石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

米国の原油生産、二年連続で世界一:BPエネルギー統計2019年版解説シリーズ石油篇(13)

2019-07-20 | BP統計

(注)本シリーズ(1~18回)は「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0474BpOil2019.pdf

 

BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

 *BPホームページ:

http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html

 

(OPEC・非OPEC協調減産で上昇に転じた原油価格!)

4.指標3原油の年間平均価格と2000~2018年の価格推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-4-G01.pdf 参照)

 ここでは国際的な原油価格の指標として使われる米国WTI(West Texas Intermediate)原油、英国北海Brent原油及びドバイ原油の3種類の原油の年間平均価格(ドル/バレル)とその推移を検証する。

 

 2018年の3原油の年間平均価格はBrent原油が71.31ドル(バレル当たり。以下同様)、WTI原油65.20ドル、ドバイ原油69.51ドルであり、BrentとWTIの値差は6ドル11セントであった。Brent価格を100とした場合WTI原油は91、ドバイ原油は97である。

 

 2000年以降の価格の推移をBrent原油の動きで見ると、2000年の28.50ドルから2003年までは大きな変動はなかったが、その後は上げ足を速め2004年には40ドル弱、2005年に50ドルの大台を超えるとさらに急騰、2008年の年央にはついに史上最高の147ドルに達し、同年の平均価格も100ドル目前の97.26ドルを記録している。

 

 同年のリーマンショックで2009年には一旦61.67ドルまで急落したが、再び上昇気流に乗り2011年の年間平均価格はついに100ドルを超えて111.26ドルになり、その後2012年、2013年も平均価格は110ドル前後と原油価格は歴史的な高値を記録、これは2014年前半まで続いた。

 

 しかしその数年前から米国のシェールオイルの生産が急激に増えた結果、市場では供給圧力が高まり、Brent原油価格は米国WTI原油に引きずられ弱含みの状況になった。これに対してOPECは2014年6月の定例総会で生産目標3千万B/Dの引き下げを見送ったため市況は一挙に急落、年末にはついに50ドル割れの事態となった。2015年前半は一時60ドルまで値を戻したが、後半はさらに値下がりし、年末には40ドルを切った。2016年に入っても値下がり傾向は止まらず、この結果2016年のBrent原油の年間平均価格は43.73ドルとなりわずか3年間で半値以下に暴落した。

 

 暴落した最大の要因はOPECが減産調整できずサウジアラビアなど主要産油国が増産に走ったことにある。これに世界景気の停滞が拍車をかけ需給バランスが完全に崩れたのである。サウジアラビアは近年の米国シェールオイルの増産が価格崩壊の主要因と見ており、価格を低水準に抑えることでシェールオイルを抑え込む戦術を取ったとされる。

 

 しかしOPECの戦術は功を奏さず、シェールオイルの生産業者が技術革新によりコスト削減に努めた結果、原油市場の供給圧力は収まらずOPEC産油国は財政難に陥り価格の回復或は上昇を狙って減産の機運が生まれた。そこでOPECはロシアなど非OPEC産油国を巻き込んだ協調減産体制を構築し、2017年1月以降合計180万B/Dの減産を実施した。減産効果により2017年々央40ドル台に沈んでいた原油価格は高値に転じ、2018年9月にはBrent原油が80ドル台まで高騰した。2018年は前半が高値で推移したためBrent原油の平均価格は71.31ドルとなった。

 

 ちなみに2018年10月以降、原油価格は再び50ドル前半まで下落した。このため昨年末のOPEC総会及びロシアなど非OPEC諸国(いわゆるOPEC+)は今年1月以降も併せて120万B/Dの減産体制に入り、今年7月の会合ではこれを来年3月末まで延長することに合意している。これにより現在(7月)のBrent原油価格は60ドル台で推移している。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

 

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ベトナムなど東南ア3か国が格上げ:MENAと世界主要国のソブリン格付け(2019年7月現在) (4)

2019-07-20 | その他

 

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

 

http://mylibrary.maeda1.jp/0473SovereignRating2019July.pdf

 

 

3.2016年7月以降の格付け推移

  ここでは2016年7月以降現在までの欧米・アジア主要国及びGCC6か国のソブリン格付けの推移を検証する。

 

(1)   欧米・アジア主要国の格付け推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-01.pdf参照)

2016年7月以降のドイツ、米国、英国、中国、日本、インド、ロシア、ブラジル、ギリシャ9か国の格付けの推移は以下の通りである。

 

ドイツは過去3年間常に最高のトリプルAの格付けを維持している。米国はドイツより1ランク低いAA+を、また英国はさらに1ランク低い格付けAAを過去3年間続けている。中国及び日本はドイツ、米国、英国に比べさらに低い格付けである。中国は2016年7月にはAA-であったが、2017年下期に下方修正されたため現在は日本と同じA+である。

 

新興経済国BRICsを構成しているブラジル、ロシア、インド及び中国のうち、2016年7月現在は、中国がAA-と最も高く、日本(A+)より上位であった。インドは投資適格では最も低いBBB-であり、ロシアとブラジルは投資不適格のBB+及びBBであった。その後、ブラジルの経済が悪化、昨年上半期にはBB-に格下げされた一方、ロシアは同期間中にインドと同じ投資適格最低ランクのBBB-に格上げされた。インドは過去3年間格付け変動は無かった。

 

欧州金融危機の引き金となったギリシャの2016年7月時点の格付けはB-であった。S&Pの定義では格付けBは「現時点では債務を履行する能力を有しているが、「BB」に格付けされた発行体よりも脆弱である。事業環境、財務状況、または経済状況が悪化した場合には債務を履行する能力や意思が損なわれ易い」とある。ギリシャは危機的状況にあったが、その後EU、IMF等の勧告に沿って経済改革を進めた結果、昨年上半期に格付けはB+にアップし、MENA諸国のトルコ、ヨルダンなどと同等の格付けとなっている。

 

(続く)

 

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石油と中東のニュース(7月20日)

2019-07-20 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・米のイラン・ドローン撃墜報道で原油価格反騰。Brent $62.75, WTI $55.91

・イラン、ホルムズ海峡で2隻目の英国タンカー拿捕

・パキスタンの10年間、総額60億ドルLNG購入入札に伊Eni、中PetroChinaが応札。8/2に価格オープンの予定

(中東関連ニュース)

・サウジ、米軍駐留再開。外務省がツイートで明かす

・米議会、サウジ向け武器売却案を否決。大統領は三度目の拒否権発動の意向

・アブダビ皇太子、来週訪米

・カタール、外資誘致のため投資促進庁設立




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今週の各社プレスリリースから(7/14-7/20)

2019-07-20 | 今週のエネルギー関連新聞発表

7/16 出光興産 

人事異動に関するお知らせ 

https://www.idss.co.jp/content/100025744.pdf

7/16 国際石油開発帝石 

インドネシア共和国 アバディ LNG プロジェクト(マセラ鉱区)における 改定開発計画の承認について  

https://www.inpex.co.jp/news/pdf/2019/20190716.pdf

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