(注)本シリーズ(1~18回)は「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0474BpOil2019.pdf
BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
*BPホームページ:
http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html
(OPEC・非OPEC協調減産で上昇に転じた原油価格!)
4.指標3原油の年間平均価格と2000~2018年の価格推移
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-4-G01.pdf 参照)
ここでは国際的な原油価格の指標として使われる米国WTI(West Texas Intermediate)原油、英国北海Brent原油及びドバイ原油の3種類の原油の年間平均価格(ドル/バレル)とその推移を検証する。
2018年の3原油の年間平均価格はBrent原油が71.31ドル(バレル当たり。以下同様)、WTI原油65.20ドル、ドバイ原油69.51ドルであり、BrentとWTIの値差は6ドル11セントであった。Brent価格を100とした場合WTI原油は91、ドバイ原油は97である。
2000年以降の価格の推移をBrent原油の動きで見ると、2000年の28.50ドルから2003年までは大きな変動はなかったが、その後は上げ足を速め2004年には40ドル弱、2005年に50ドルの大台を超えるとさらに急騰、2008年の年央にはついに史上最高の147ドルに達し、同年の平均価格も100ドル目前の97.26ドルを記録している。
同年のリーマンショックで2009年には一旦61.67ドルまで急落したが、再び上昇気流に乗り2011年の年間平均価格はついに100ドルを超えて111.26ドルになり、その後2012年、2013年も平均価格は110ドル前後と原油価格は歴史的な高値を記録、これは2014年前半まで続いた。
しかしその数年前から米国のシェールオイルの生産が急激に増えた結果、市場では供給圧力が高まり、Brent原油価格は米国WTI原油に引きずられ弱含みの状況になった。これに対してOPECは2014年6月の定例総会で生産目標3千万B/Dの引き下げを見送ったため市況は一挙に急落、年末にはついに50ドル割れの事態となった。2015年前半は一時60ドルまで値を戻したが、後半はさらに値下がりし、年末には40ドルを切った。2016年に入っても値下がり傾向は止まらず、この結果2016年のBrent原油の年間平均価格は43.73ドルとなりわずか3年間で半値以下に暴落した。
暴落した最大の要因はOPECが減産調整できずサウジアラビアなど主要産油国が増産に走ったことにある。これに世界景気の停滞が拍車をかけ需給バランスが完全に崩れたのである。サウジアラビアは近年の米国シェールオイルの増産が価格崩壊の主要因と見ており、価格を低水準に抑えることでシェールオイルを抑え込む戦術を取ったとされる。
しかしOPECの戦術は功を奏さず、シェールオイルの生産業者が技術革新によりコスト削減に努めた結果、原油市場の供給圧力は収まらずOPEC産油国は財政難に陥り価格の回復或は上昇を狙って減産の機運が生まれた。そこでOPECはロシアなど非OPEC産油国を巻き込んだ協調減産体制を構築し、2017年1月以降合計180万B/Dの減産を実施した。減産効果により2017年々央40ドル台に沈んでいた原油価格は高値に転じ、2018年9月にはBrent原油が80ドル台まで高騰した。2018年は前半が高値で推移したためBrent原油の平均価格は71.31ドルとなった。
ちなみに2018年10月以降、原油価格は再び50ドル前半まで下落した。このため昨年末のOPEC総会及びロシアなど非OPEC諸国(いわゆるOPEC+)は今年1月以降も併せて120万B/Dの減産体制に入り、今年7月の会合ではこれを来年3月末まで延長することに合意している。これにより現在(7月)のBrent原油価格は60ドル台で推移している。
(続く)
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