Cape Fear、in JAPAN

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『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

シネマしりとり「薀蓄篇」(104)

2015-01-09 02:27:39 | コラム
くーくらっくすく「らん」→「らん」ぼー(ランボー)

「乱暴」ということばが存在していたがゆえに起こった「不思議な映画史」というべきか、
スライこと、シルベスター・スタローンがベトナム帰還兵を地味に演じた地味な映画『First Blood』(82)は、『ランボー』という邦題で日本公開された。

地味ではあったものの、スライ人気も手伝ってスマッシュヒットを記録、
日本のタイトルが気に入ったスライは「じゃあ続編は、わが国でも『ランボー2』でいこう」と提案し、実際にそうなった。

さらに。
繰り返すが日本には、もともと「乱暴」ということばがある、それとヒット映画のダブルミーニングということで、『ランボー者』(87)なんていう、ふざけた邦題の映画も公開された。
(原題は『STEELE JUSTICE』)

主人公の名前を冠した外国映画を、べつのタイトルに変える―というのは「よくある話」だが、この映画の場合は「逆」だったわけ。
あぁ不思議、けれども、だからこそ面白い映画史。


思えば『ロッキー』シリーズ(76~)だって、始まりは地味だった。
ゴロツキは勝つことを目標としていたわけじゃない、最終ラウンドのゴングが鳴っても「立っていること」を目標にしていた。

続編を創るごとに派手さを増していくのは、スライに大作志向とヒーロー志向があるからだろう。
べつにそれは悪いことじゃない、実際に自分は『ロッキー』より『ロッキー2』(79)のほうが好きなのだから。
(アポロに勝つから、ではない、エイドリアンが難産だからだ!!)


ただ町を歩いていただけで危険人物視されたジョン・ランボーが暴走する第1作『ランボー』は、傷ついた帰還兵の心情に迫った名作とされている。

国のために戦ったはずなのに―森のなかでジョン・ランボーはそう嘆く、トラウトマン大佐に向かって。

哀しい。
じつに、哀しい物語。

ロシアン・ルーレットの「魔力」に取り憑かれた男。
不眠症のタクシードライバー。
自殺願望を宿す刑事。

そして、ジョン・ランボー。

ベトナム戦争は「こんなにも魅力的な、映画キャラを生み出してくれた」―と、ある識者はいったが、たしかにそうともいえるので、世の中って皮肉だな残酷だなと思う。


さて。
いっぱい映画を観ていて、なおかつスライのことが好きな映画小僧たちは、口をそろえていう。

「これ以降の物語、元凶はトラウトマンじゃね?」

それ正解!!

『ランボー2』(85)は、トラウトマンが服役中のランボーに極秘任務を持ちかけるところから物語が始まる。
特赦をちらつかせるところなんか、あんた上司だったんだろう、そんなことするな! と思った。

『ランボー3』(88)は、囚われの身になったトラウトマンをランボーが救出しようとする物語。

ランボーの視界にチョコマカ入ってきて、結果的に彼を傷つけてしまうトラウトマン。

なんてひどいヤツなんだ、彼のことは放っておいてやれ!! と、中学時代の自分は本気で怒ったものですよ笑






20年の時を経て制作された『ランボー/最後の戦場』(2008)は、スライ自らがメガホンを持った。

78年の『パラダイス・アレイ』以降、度々「兼」監督をするスライだが、彼の演出スタイルは分かり易くて嫌いじゃない。

バカそうに見える(失礼!)が、じつはそうでもないのだよね・・・たぶん。
なぜなら『最後の戦場』の戦闘シーンは、『プライベート・ライアン』(98)以降に顕著になったリアリズムを「きっちり」取り入れ、単なる英雄譚にならないよう工夫されている―ように見えるから。

スライ、やるじゃーーん!


次回のしりとりは・・・
らん「ぼー」→「ぼー」いずらぶ。

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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

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明日のコラムは・・・

『財布の中身』

コメント (2)
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