久~しぶりに岩波ホールで映画を見てきた。
イラン映画、「イラン式料理本」
モハマド・シルワーニというまだ若い監督が作った72分のドキュメンタリー。
自分の家族やその友人たちにインタビューしているのだが、カメラは固定でまるで素人の家庭ビデオのよう。
内容的にも映画と言うよりテレビのドキュメンタリー番組むきな感じだが、その視点は秀逸。
インタビューはすべて知り合いの女性たちに映画のクルー12人分の食事作りを頼むところから始まる。
何時に作り始めて、どのような手順で何を作るか。料理の仕方、それにかかる時間。さらにその合間にその女性の結婚生活がどのようなものだったかを語らせ、長い時間、多くの言葉でなくとも驚くほどたくさんのことがわかる。そしてそれは語られることの多くがイランだけのことではなく、万国共通のことだからだろう。
100歳のおばあちゃんが9歳で結婚していたり、14歳で40歳の男のもとに嫁いだりしているところこそ日本とは違うが、日本だって戦前は見合いで結婚するのが当然だった。
結婚すれば嫁ぎ先の家族との同居が当たり前で、嫁が姑にいびられるのもまた万国共通。
傑作なのは監督の義理のお母さんで、まだ健在な姑に面と向かって「昔はさんざんあんたにいびられた、もう水に流しているけど思い出しちゃうわ」と笑い飛ばしながらも恨みたっぷり(笑)にまくしたてるところ。まるで橋田壽賀子ドラマの登場人物みたい。
若い世代の代表は子育てしながら大学に通う実の妹と、おそらくは仕事を持っているのだろう監督の奥さん。親の世代のように家庭にだけ縛られたくはないとか、手作りじゃなきゃどんなものが入っているかわからないと理屈を言いながら缶詰めですませちゃうところとか、これまた日本と変わらない。
作られる料理はイランの典型的な家庭料理のようだが、どれも手間と時間がかかって大変そう。
でも特に義理のお母さんの料理とかおいしそうで、食べてみた~い。
さらに食事ができた後の男たちへのインタビューも秀逸で、4、5時間もかかって用意された食事を15分ほどで平らげ、「かかった時間は1時間ぐらいだろ?」って、これも日本の亭主どもが言いそうなことだ。
平日午前の回だったので4割ほどの入りだった観客はほとんどすべて女性、しかも平均年齢はおそらく60代半ば。
そのお客さんたちが見終わった後、「どこの国もおんなじね~」とため息を漏らしていたところにこの映画の価値がある。
アメリカあたりから悪者扱いされようが、イスラム教だろうが、イランに住む普通の人は日本に住む普通の人と何も変わらない。それがこんなにすんなり実感できるところがすばらしい。
映画の最後にはちゃんとオチも用意されていて、ユーモア感覚もあるこの映画の監督は才人だ。
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イラン映画、「イラン式料理本」
モハマド・シルワーニというまだ若い監督が作った72分のドキュメンタリー。
自分の家族やその友人たちにインタビューしているのだが、カメラは固定でまるで素人の家庭ビデオのよう。
内容的にも映画と言うよりテレビのドキュメンタリー番組むきな感じだが、その視点は秀逸。
インタビューはすべて知り合いの女性たちに映画のクルー12人分の食事作りを頼むところから始まる。
何時に作り始めて、どのような手順で何を作るか。料理の仕方、それにかかる時間。さらにその合間にその女性の結婚生活がどのようなものだったかを語らせ、長い時間、多くの言葉でなくとも驚くほどたくさんのことがわかる。そしてそれは語られることの多くがイランだけのことではなく、万国共通のことだからだろう。
100歳のおばあちゃんが9歳で結婚していたり、14歳で40歳の男のもとに嫁いだりしているところこそ日本とは違うが、日本だって戦前は見合いで結婚するのが当然だった。
結婚すれば嫁ぎ先の家族との同居が当たり前で、嫁が姑にいびられるのもまた万国共通。
傑作なのは監督の義理のお母さんで、まだ健在な姑に面と向かって「昔はさんざんあんたにいびられた、もう水に流しているけど思い出しちゃうわ」と笑い飛ばしながらも恨みたっぷり(笑)にまくしたてるところ。まるで橋田壽賀子ドラマの登場人物みたい。
若い世代の代表は子育てしながら大学に通う実の妹と、おそらくは仕事を持っているのだろう監督の奥さん。親の世代のように家庭にだけ縛られたくはないとか、手作りじゃなきゃどんなものが入っているかわからないと理屈を言いながら缶詰めですませちゃうところとか、これまた日本と変わらない。
作られる料理はイランの典型的な家庭料理のようだが、どれも手間と時間がかかって大変そう。
でも特に義理のお母さんの料理とかおいしそうで、食べてみた~い。
さらに食事ができた後の男たちへのインタビューも秀逸で、4、5時間もかかって用意された食事を15分ほどで平らげ、「かかった時間は1時間ぐらいだろ?」って、これも日本の亭主どもが言いそうなことだ。
平日午前の回だったので4割ほどの入りだった観客はほとんどすべて女性、しかも平均年齢はおそらく60代半ば。
そのお客さんたちが見終わった後、「どこの国もおんなじね~」とため息を漏らしていたところにこの映画の価値がある。
アメリカあたりから悪者扱いされようが、イスラム教だろうが、イランに住む普通の人は日本に住む普通の人と何も変わらない。それがこんなにすんなり実感できるところがすばらしい。
映画の最後にはちゃんとオチも用意されていて、ユーモア感覚もあるこの映画の監督は才人だ。
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