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クィーン (映画)

2007年04月22日 | 映画
(C) Granada Screen (2005) Ltd / Pathe Renn Productions SAS / BIM Distribuzione.

クィーン』 The Queen
(2006年 英仏伊合作)

1997年8月31日。ダイアナ元皇太子妃がパリで自動車事故によって急逝した─。
あの事故から10年。本作品は、今まで決して語られることのなかった事故直後の英国王室ロイヤル・ファミリーの混乱、首相になったばかりの若きブレアの行動、そして女王の苦悩と人間性を描いた作品である。同時に、ダイアナの事故直後の7日間のエリザベス女王の"本当の姿"、そしてダイアナとエリザベス女王の間に確実に存在した確執というデリケートな題材を、はじめて描いた作品ともいえる。

映画は1997年5月、イギリス総選挙。今世紀最年少の首相候補として注目を浴びるトニー・ブレアが大勝利を収めたことをからはじまる。"過去300年で最大の憲法の近代化を行う"と公約したブレアが国民に選ばれ、首相として認めなくてはいけない女王の心境は複雑だ。
やがて、女王の承認を得るため、ブレア夫妻が宮殿に向かう際、王室廃止論者のブレア夫人と、改革を掲げながらも王室存続論者のブレア首相の会話シーンが、今のイギリスの考え方を端的に表していて面白い。
また、承認式での女王への挨拶の仕方、発音までの伝統的な作法が示されるのも庶民には知る由もない事柄で一見の価値はある。特に、女王にはお尻を向けてはいけないため、首相夫妻が悪戦苦闘するシーンは思わず笑ってしまう。
そんなコミカルなシーンもつかの間、問題のダイアナ元妃の交通事故のシーンに舞台は移っていく。とかく最近の映画では、実際の映像を盛り込む傾向があるが、今回はダイアナ元妃に関する事故や慈善活動などのシーンはニュースなどの実際の映像が盛り込まれ、記憶を呼び覚ます手助けをしてくれている。
ここから、本作は急速に展開していく。
就任早々、大事件への対処を余儀なくされた首相がとった行動とは。何故エリザベス女王がバッシングを受けながらも沈黙を通し、毅然と信念をつらぬいたか。そして、チャールズ皇太子の思惑、他のロイヤルファミリーの浮世離れした感覚などが交差し・・・。

本作はアカデミー賞最優秀主演女優賞やゴールデングローブ賞主演女優賞、ヴェネチア国際映画祭最優秀主演女優賞をはじめ、各映画祭で数多くの賞を受賞したダイアナ事故死直後の混乱の中で苦悩するエリザベス女王を人間性豊かに演じたヘレン・ミレンが、多くの映画祭で最優秀主演女優賞を受賞している。
1989 『コックと泥棒、その妻と愛人』(ピーター・グリーナウェイ監督)の演技が印象深い彼女だが、年輪を重ね、エリザベス女王という現在実際に王位にある人物という難役を、この年齢・実力だからこそ演じきることができた。
ちなみに、彼女は英国王室より2003年に大英帝国の爵位を授与されている。私生活では、1997年に『レイ』などの監督デイラー・ハックフォードと結婚しており、夫婦ともどもオスカー受賞者となった。
エリザベス女王の威厳や、最終的にはブレア首相と母子のように意思を通じ難局に当たっていく姿を体現できたたことを思えば、やはりヘレン・ミレンなくしては、この映画は成功しなかったように思うのだ。

「クィーン」公式サイト=http://www.queen-movie.jp<シャンテ シネ、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー >


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