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気が向いたら書く

萩原朔太郎 / "ぎたる弾くひと"

2019-09-05 20:07:08 | 日記

ぎたる彈くひと
萩原朔太郎


ぎたる彈く、
ぎたる彈く、
ひとりしおもへば、
たそがれは音なくあゆみ、
石造の都會、
またその上を走る汽車、電車のたぐひ、
それら音なくして過ぎゆくごとし、
わが愛のごときも永遠の歩行をやめず、
ゆくもかへるも、
やさしくなみだにうるみ、
ひとびとの瞳は街路にとぢらる。
ああ いのちの孤獨、
われより出でて徘徊し、
歩道に種を蒔きてゆく、
種を蒔くひと、
みづを撒くひと、
光るしやつぽのひと、そのこども、
しぬびあるきのたそがれに、
眼もおよばぬ東京の、
いはんかたなきはるけさおぼえ、
ぎたる彈く、
ぎたる彈く



萩原朔太郎は「月に吠える」すら読んでいないし、もともと詩そのものに親しんできたわけでもありません。
どっちかというと、小説が好きで。

でも最近、ちょっと現代詩(というの?)に興味がわいています。

先日、たまたま名前を知った、詩人の長谷川龍生氏を検索したら、その数日前にお亡くなりになっていまして(ご冥福をお祈りいたします)。
「これはシンクロニシティってやつか!」と勝手に盛り上がったんですが、その割に詩集とかは読んでないんですけど。ほとんど絶版になってるし、そもそも高いんですよね。図書館にもないし。

そんな時は青空文庫です。
著者の没後50年以上経過し、著作権の消滅した作品のみになりますが、その中で偶然見つけたのがこの「ぎたる弾くひと」です。

都市生活者の孤独と、そのすべての人に向けたやさしい目線。
たそがれどきに、窓際でつま弾かれるのは、たぶんナイロン弦なのでしょう。

今よりすこし、ゆるやかに時間が流れていたのかも知れません。
でも、人のこころの動きはそれほど変わらないのでしょう。


この詩は、朔太郎の生前には発表されておらず、おそらく習作の扱いだったらしいのですが、なんか好きです。
それにしても、光る帽子(しゃっぽ)って、なんだろう?

ぎたる彈く、
ぎたる彈く。


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