[7月9日23:30.天候:曇 宮城県仙台市太白区某所 国道286号線上]
私の名前は愛原学。
今日は仕事以外でこの町にやってきた。
何でも、バイオハザードたけなわだった霧生市から一緒に脱出した仮面の少女が私達に敵対し、そいつがこの町にいるのだと高橋が言ったからだ。
私の記憶はまだまだ曖昧で、何が起こったのかは思い出せない。
だが、少しずつ記憶は戻っているようで、その断片的な記憶から推測するに、どうも何か誤解があったのではないかと思う。
ただ、分からないのは、霧生市脱出後、日本政府に保護されたはずの彼女が、どうしてあの船に乗っていて、どうして私達に敵対したのかだ。
それと、もう1つ不安なのは、その彼女の強さは尋常ではないということ。
船の中でどのように戦ったのかの記憶が無いので、霧生市のバイオハザードの時を思い返してみよう。
タイラントと共に行動し、しかもタイラントの方が従属的な立場だったはずだ。
そこはアメリカの話と全く違う。
高橋:「ん?……おい、こんな道あったのか?」
私が考え事をしていると、リアシートに私と並んで座る高橋が前を見ながら言った。
佐藤:「ああ、バイパスっスね。だいぶ前からありましたよ」
高橋:「ふーん……」
千葉:「でも学校は、そっちの旧道の方にあるっス」
高橋:「そうか」
愛原:「ん?学校?……あ、そうか。廃校って行ってたっけ」
高橋:「そうです」
恐らくは車検に通らないであろう青白いヘッドランプを灯したストリームが、旧道の方にハンドルを切る。
確かにバイパスと比べて、車の通りは少ないようだ。
佐藤:「で、こっちと……」
何か知らんが、朽ちたブロック塀などに、明らかに暴走族の落書きとかがしてあるのだが……。
実は本当に暴走族の抗争会場に行くんじゃないのか。
千葉:「おー、もうあいつら来てる」
高橋:「見張りを頼んだからな」
朽ちたブロック塀に錆びついた校門。
そして月明かりに照らされて、木造校舎が見えて来る。
確かに、こんな所に旧アンブレラの研究施設が隠されているとは誰も思うまいな。
それにしても、ホラーチックな雰囲気だ。
よくこんな所見っけてきたものだ。
私がそれを指摘すると……。
佐藤:「地元じゃ、ちょっとしたホラースポットなんスよ。俺らみたいなのが、よく肝試しに行くんス」
とのことだ。
ああ、やっぱり。
いるんだよな、こういう無謀な若者たちが。
高橋:「俺の仲間に地元が仙台ってヤツがいまして、そいつがぼんやり言ってたことがヒントになったんですよ」
愛原:「キミ、俺より人脈あるな……」
車が仲間の車2台の前に止まる。
だが、仲間の車が来たというのに、誰も降りてこない。
愛原:「なあ。あの車、誰か乗ってるのか?」
高橋:「クソッ!俺達が来るまで待ってろと言ったのに!」
佐藤:「一服でもしてんじゃないスか?」
千葉:「便所にでも行ってるんスよ、きっと」
愛原:「皆で連れション、連れタバコかい?それにしても、俺達が向かってるってのは知ってるんだから、誰かしら残っててもいいだろうに」
高橋:「ええ。後で殴り聞かせておきますので、どうか先生、お怒りを鎮めてください……」
愛原:「いや、まずキミの怒りを収めようか」
とにかく私達は車を降りた。
そして、先に来て待っているはずの高橋の仲間の車に近づいた。
止まっているのは赤いスカイラインと青いレガシー。
どちらも、走り屋さんが乗りそうな車だ。
実際そのように改造されている。
愛原:「うーん……スカイラインは誰も乗っていなさそうだなぁ……」
私は運転席を覗き込んだ。
走り屋さんの車だと、窓にスモークが貼っていたりするから、尚更車内を覗き込みにくい。
もっとも、それが狙いで貼っているのだろうが。
佐藤:「あっ、いましたいました!」
愛原:「えっ?」
レガシーの方を見ると、助手席に誰かが乗っていた。
シートを倒し、しかもうつ伏せになっているので、スモークガラスに隠れて分からなかったのだ。
千葉:「寝てたのかよ、ケンのヤツ!w」
千葉君は笑いながら助手席のドアを開けた。
千葉:「おい、ケン!起きろ!高橋さん達、着いたぞ!」
千葉君はケン君という仲間を揺り起こした。
高橋:「留守番を任されていたものの、退屈で寝てしまったってところですかね」
愛原:「それならしょうがないじゃん」
千葉:「おいケン!ケンってば!おい!!」
だが、何だか様子がおかしい。
佐藤:「どうした?」
千葉:「いや、ケンが起きねぇんだ」
佐藤:「酔っ払って寝ちまったのか?」
千葉:「酒の臭いはしねぇよ。……ケン、起きろよ!」
ケン:「ウウウ……!」
佐藤:「おっ、やっと起きたじゃん。しょうがねぇなぁ……」
佐藤君が苦笑いをしている。
だが、私は何だか嫌な予感がした。
いや……その……ケン君とやらが放った呻き声……これって……。
ケン:「ゥアアアアアッ!!」
千葉:「ぎゃあああっ!!」
佐藤:「な、何だァ!?」
愛原:「ゾンビ化してる!?どういうことだ!?」
高橋:「くっ……!」
高橋は車の中に積んであった長いレンチを取り出すと、それでケン君の頭を殴り付けた。
ケン君はお構いなしに千葉君の肉に食らい付いている。
千葉:「がぁ……!あぁあ……!!」
佐藤:「……!!」
佐藤君は放心状態だった。
私も何か武器になるものを探したが、あいにくと見つからない。
そうこうしているうちに、高橋君がケン君の頭を叩き割った。
ケン:「アァアッ……!」
高橋:「はぁ……はぁ……!何てこった……!」
私は千葉君に駆け寄ったが、千葉君は目を見開いたまま微動だにしなかった。
もう死んでしまったことは明らかだった。
高橋:「佐藤、お前は逃げろ。逃げてサツに通報してくれ」
愛原:「そ、そうだな。それがいい」
だが、佐藤君は腰が抜けて立てないようだった。
高橋:「チッ、弱虫め」
愛原:「いや、しょうがないよ。てか、何でゾンビ化!?別に、街は何とも無かったのに……」
高橋:「あのクソガキのせいでしょう。船の時と同じだ」
愛原:「ええっ?……とにかく、何の武器も無いんじゃしょうがない。佐藤君を連れて、一旦引き返そう。バイパスとの分岐点にコンビニがあっただろ。あそこまで行けば……」
私がどうしてそんなことを言ったのかというと、スマホが何故か圏外になっていたからだ。
私のも高橋のも、そして佐藤君のも……。
山深い所だからなのか、或いは……。
それでも、コンビニには固定電話がある。
店の入口の横に公衆電話もあるだろうから、そこから通報すれば良い。
そう思ったのだ。
だが、それはできなかった。
もう、私達は逃げられない。
何故なら……。
ゾンビA:「アァァ……!」
ゾンビB:「ウゥウ……!」
ゾンビC:「アァア……!」
高橋:「こ、こいつら……!」
高橋の仲間達は、ちゃんと私達を待っていたのだ。
ゾンビ化し、私達の血肉を食らう為に……!
私の名前は愛原学。
今日は仕事以外でこの町にやってきた。
何でも、バイオハザードたけなわだった霧生市から一緒に脱出した仮面の少女が私達に敵対し、そいつがこの町にいるのだと高橋が言ったからだ。
私の記憶はまだまだ曖昧で、何が起こったのかは思い出せない。
だが、少しずつ記憶は戻っているようで、その断片的な記憶から推測するに、どうも何か誤解があったのではないかと思う。
ただ、分からないのは、霧生市脱出後、日本政府に保護されたはずの彼女が、どうしてあの船に乗っていて、どうして私達に敵対したのかだ。
それと、もう1つ不安なのは、その彼女の強さは尋常ではないということ。
船の中でどのように戦ったのかの記憶が無いので、霧生市のバイオハザードの時を思い返してみよう。
タイラントと共に行動し、しかもタイラントの方が従属的な立場だったはずだ。
そこはアメリカの話と全く違う。
高橋:「ん?……おい、こんな道あったのか?」
私が考え事をしていると、リアシートに私と並んで座る高橋が前を見ながら言った。
佐藤:「ああ、バイパスっスね。だいぶ前からありましたよ」
高橋:「ふーん……」
千葉:「でも学校は、そっちの旧道の方にあるっス」
高橋:「そうか」
愛原:「ん?学校?……あ、そうか。廃校って行ってたっけ」
高橋:「そうです」
恐らくは車検に通らないであろう青白いヘッドランプを灯したストリームが、旧道の方にハンドルを切る。
確かにバイパスと比べて、車の通りは少ないようだ。
佐藤:「で、こっちと……」
何か知らんが、朽ちたブロック塀などに、明らかに暴走族の落書きとかがしてあるのだが……。
実は本当に暴走族の抗争会場に行くんじゃないのか。
千葉:「おー、もうあいつら来てる」
高橋:「見張りを頼んだからな」
朽ちたブロック塀に錆びついた校門。
そして月明かりに照らされて、木造校舎が見えて来る。
確かに、こんな所に旧アンブレラの研究施設が隠されているとは誰も思うまいな。
それにしても、ホラーチックな雰囲気だ。
よくこんな所見っけてきたものだ。
私がそれを指摘すると……。
佐藤:「地元じゃ、ちょっとしたホラースポットなんスよ。俺らみたいなのが、よく肝試しに行くんス」
とのことだ。
ああ、やっぱり。
いるんだよな、こういう無謀な若者たちが。
高橋:「俺の仲間に地元が仙台ってヤツがいまして、そいつがぼんやり言ってたことがヒントになったんですよ」
愛原:「キミ、俺より人脈あるな……」
車が仲間の車2台の前に止まる。
だが、仲間の車が来たというのに、誰も降りてこない。
愛原:「なあ。あの車、誰か乗ってるのか?」
高橋:「クソッ!俺達が来るまで待ってろと言ったのに!」
佐藤:「一服でもしてんじゃないスか?」
千葉:「便所にでも行ってるんスよ、きっと」
愛原:「皆で連れション、連れタバコかい?それにしても、俺達が向かってるってのは知ってるんだから、誰かしら残っててもいいだろうに」
高橋:「ええ。後で殴り聞かせておきますので、どうか先生、お怒りを鎮めてください……」
愛原:「いや、まずキミの怒りを収めようか」
とにかく私達は車を降りた。
そして、先に来て待っているはずの高橋の仲間の車に近づいた。
止まっているのは赤いスカイラインと青いレガシー。
どちらも、走り屋さんが乗りそうな車だ。
実際そのように改造されている。
愛原:「うーん……スカイラインは誰も乗っていなさそうだなぁ……」
私は運転席を覗き込んだ。
走り屋さんの車だと、窓にスモークが貼っていたりするから、尚更車内を覗き込みにくい。
もっとも、それが狙いで貼っているのだろうが。
佐藤:「あっ、いましたいました!」
愛原:「えっ?」
レガシーの方を見ると、助手席に誰かが乗っていた。
シートを倒し、しかもうつ伏せになっているので、スモークガラスに隠れて分からなかったのだ。
千葉:「寝てたのかよ、ケンのヤツ!w」
千葉君は笑いながら助手席のドアを開けた。
千葉:「おい、ケン!起きろ!高橋さん達、着いたぞ!」
千葉君はケン君という仲間を揺り起こした。
高橋:「留守番を任されていたものの、退屈で寝てしまったってところですかね」
愛原:「それならしょうがないじゃん」
千葉:「おいケン!ケンってば!おい!!」
だが、何だか様子がおかしい。
佐藤:「どうした?」
千葉:「いや、ケンが起きねぇんだ」
佐藤:「酔っ払って寝ちまったのか?」
千葉:「酒の臭いはしねぇよ。……ケン、起きろよ!」
ケン:「ウウウ……!」
佐藤:「おっ、やっと起きたじゃん。しょうがねぇなぁ……」
佐藤君が苦笑いをしている。
だが、私は何だか嫌な予感がした。
いや……その……ケン君とやらが放った呻き声……これって……。
ケン:「ゥアアアアアッ!!」
千葉:「ぎゃあああっ!!」
佐藤:「な、何だァ!?」
愛原:「ゾンビ化してる!?どういうことだ!?」
高橋:「くっ……!」
高橋は車の中に積んであった長いレンチを取り出すと、それでケン君の頭を殴り付けた。
ケン君はお構いなしに千葉君の肉に食らい付いている。
千葉:「がぁ……!あぁあ……!!」
佐藤:「……!!」
佐藤君は放心状態だった。
私も何か武器になるものを探したが、あいにくと見つからない。
そうこうしているうちに、高橋君がケン君の頭を叩き割った。
ケン:「アァアッ……!」
高橋:「はぁ……はぁ……!何てこった……!」
私は千葉君に駆け寄ったが、千葉君は目を見開いたまま微動だにしなかった。
もう死んでしまったことは明らかだった。
高橋:「佐藤、お前は逃げろ。逃げてサツに通報してくれ」
愛原:「そ、そうだな。それがいい」
だが、佐藤君は腰が抜けて立てないようだった。
高橋:「チッ、弱虫め」
愛原:「いや、しょうがないよ。てか、何でゾンビ化!?別に、街は何とも無かったのに……」
高橋:「あのクソガキのせいでしょう。船の時と同じだ」
愛原:「ええっ?……とにかく、何の武器も無いんじゃしょうがない。佐藤君を連れて、一旦引き返そう。バイパスとの分岐点にコンビニがあっただろ。あそこまで行けば……」
私がどうしてそんなことを言ったのかというと、スマホが何故か圏外になっていたからだ。
私のも高橋のも、そして佐藤君のも……。
山深い所だからなのか、或いは……。
それでも、コンビニには固定電話がある。
店の入口の横に公衆電話もあるだろうから、そこから通報すれば良い。
そう思ったのだ。
だが、それはできなかった。
もう、私達は逃げられない。
何故なら……。
ゾンビA:「アァァ……!」
ゾンビB:「ウゥウ……!」
ゾンビC:「アァア……!」
高橋:「こ、こいつら……!」
高橋の仲間達は、ちゃんと私達を待っていたのだ。
ゾンビ化し、私達の血肉を食らう為に……!
ガチ勢:山内折伏、布教講演参加、昼食後は御影堂で唱題、奉安堂には開場前に並ぶ。
エンジョイ勢:三門前で記念撮影、布教講演参加、昼食中は食レポ、昼食後は売店(仲見世)で買い物、開場後に奉安堂に向かう。
傍観勢:上記の勢力のいずれかについて行くだけ。
ガチ勢:数珠を手にかけ、小声で唱題。
エンジョイ勢:同行者と楽しく会話。
傍観勢:寝てる。