報恩坊の怪しい偽作家!

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“新アンドロイドマスター” 「早くも大仕事」

2015-03-29 11:04:41 | アンドロイドマスターシリーズ
[3月25日10:00.都内の映画スタジオ 敷島孝夫、MEIKO、KAITO]

「あー、もしもし?……おう、ミクか。ご苦労さん。ああ、大丈夫だよ。……相談?何だそれ?」
 敷島はベテランボーカロイドの映画撮影に同行していた。
 ちょうどKAITOとMEIKOがセリフを喋っている。

「豪華客船“クイーン・アッツァー”号は沈没したのではなかった!未だに太平洋上を彷徨っているんだ!!」
「だけど、あそこに積まれていた財宝はどこに?そもそも、乗員や乗客が数百人もいたのに、忽然と消えるなんて……おかし過ぎるわ!」
「はい、カットー!」

「……ああ、そういうことならいいよ。その辺は井辺君に任せるから。まだ研修中だけど、ミク達も面倒見てやってよ。もし渋るようなら、俺から話すから。……ああ、それじゃ」
 敷島は電話を切った。

[同日同時刻 敷島エージェンシー 井辺翔太、初音ミク、未夢、Lily、結月ゆかり]

「私達がライブ出演!?」
 宣材写真を撮り終えたばかりの新人ボーカロイド3人は、ミクの話に驚いた。
「そ。今度の定期ライブで、わたしがソロで歌う所があってね、そのバックダンサーをお願いしたいの」
「社長もOKだそうです」
 と、一海がにこやかに言った。
「……当初は、人間のバックダンサーを頼むという話だったようですが?」
 井辺は首を手をやった。
 表情は相変わらず無いままだったが、少し困った様子が見て取れる。
「わたしのバックを務めるコ達がいなかったので、仕方なく……でした。でも、ちょうどイメージに合うのがこのコ達なんです。何とかお願いします」
「私としては、宣材を撮り終えたばかりで、少し早い気がします。Lilyさんは劇場時代の固定ファンもいるので……」
「私とミクさんとでは、そもそも流れが違うけどね。私がバックを務めたところで、大勢に影響は無いと思うけど」
 と、Lily。
「……もう1度、社長に確認してみます」
 井辺は机の上の電話機に手を伸ばした。

[同日11:00.都内の映画スタジオ 敷島孝夫、MEIKO、KAITO]

 1時間も掛かったのは、敷島が電話に出られず、やっと繋がったのがその時間帯だったからだ。
 この頃には撮影シーンも変わっている。

 KAITOが深刻な顔で、調査委員会の上司と緊迫したやり取りをしているところである。
「ボス、一体どういうことですか!?」
 無線機のマイクに向かって喋るKAITO。
 上司役の俳優が無線で返す。
「ああ。船会社を調べたところ、新たな情報が入った。“クイーン・アッツァー”号は我々の目を誤魔化す為に、わざと太平洋上を漂流させていた。クリーチャーを跋扈させるなどの罠を仕掛けてな。我々の追うべき真相は、別の船にあった」
「別の船!?」
「至急、インド洋に向かってくれ。あそこを航行中のクルーズ船、“バーク・サイ”号を押さえるんだ。こちらの調査だと、消えた財宝と人質達はそこに捕えられている」
「了解!」

「……ああ、ゴメンゴメン。何だって?」
 敷島が電話に出る。
「……何だ、その話か。いいよ。キミの気持ちも分かるけど、そういう流れも有りだと思うよ。遅かれ早かれ、彼女達もいずれはステージに立つんだからさ。ある意味、それも注目を浴びると思うんだ。……ああ。心配要らんよ。彼女達に任せてみるといい。悪いようにはならないはずだ。……ああ。それじゃ」
 敷島は電話を切り、そしてまたスタジオセットの方を見る。
 こちらの撮影は順調に進んでいるようだった。

[同日同時刻 敷島エージェンシー 井辺翔太、初音ミク、未夢、Lily、結月ゆかり]

「……一海さん、今度のライブの資料を用意してください」
 電話を切った井辺は、近くにいた一海に言った。
「はい」
 にこやかに頷く一海。
 喜ぶボーカロイド達。
「ありがとうございます。プロデューサーさん」
「いいえ。それでは、こちらも調整しますので、初音さんは彼女達のダンスレッスンを行ってください」
「分かりました。頑張りましょうね!」
「はい!」
「頑張ります!」
「よろしくお願いします」

 こうして新プロジェクトは、思わぬ展開で進む。

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