[8月12日12:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区新川 愛原公一邸(旧宅)]
金庫の中には、鍵とメモが入っていた。
愛原:「何だよ、またかよ!!」
高橋:「マジでムカつく爺さんですね」
リサ:「先生の許しがあったら、アタシがボコす!」
リサは右手の爪を長く鋭く伸ばして言った。
愛原:「まあ、待て。一応、メモを見てみよう。なになに……『この家の地下に、秘密が隠されている』だって?」
すると、この鍵はその秘密の地下室への扉の鍵なのだろうか?
しかし、私の記憶では、この家に地下室は無いはずだ。
もっとも、それは伯父さんの家だった頃の話。
日本アンブレラの手に渡ってからは、色々と増改築されたことだろう。
地下室だって、増築されたのかもしれないのだ。
愛原:「地下室の入口を探せ!」
高橋:「はい!」
私は取りあえずスマホを取り出して、善場主任に連絡を取ろうとした。
愛原:「んっ!?」
高橋:「先生、どうしました?」
愛原:「おかしいな。圏外になってる」
高橋:「マジっすか?……あっ、俺のもだ!」
リサ:「アタシのも!」
どうも家の中では、電波が入りにくいようになっているらしい。
これは日本アンブレラの研究施設では、よくあることだ。
社員や来訪者が悪意を持って外部に情報を流さぬよう、携帯電話の電波は入らないようにしているのだと。
しかし、必要な連絡の場合はどうするのかというと、通話は固定電話で、ネットは独自の光回線を使っていたのだそうだ。
愛原:「廃屋のくせに、こういう無駄な機能は残ってるんだな」
高橋:「先生、どうします?」
少なくとも奥新川駅の時点では電波は入っていたのだから、家の外に出れば電波は入るのだろう。
まだスマホが無く、ガラケーどころかPHSもあったような時代だったら、奥新川駅に行っても圏外だったのだろうが。
愛原:「取りあえず、地下室を探そう。もしかしたら、これ自体がフェイクかもしれない」
高橋:「はい」
しかし、地下室への入口は案外簡単に見つかった。
2階に上がる階段の下。
回り込むと、掃除用具入れがある。
しかしそのスペースが改造され、地下へ降りる階段室の扉になっていた。
しかも、扉は二重になっていた。
外側の扉は、掃除用具入れのドア。
内側は、鉄格子の扉となっていた。
愛原:「おい、鍵が違うぞ!?」
高橋:「ホントですね!」
その鉄格子の扉は、カードキーでしか開かない構造になっていた。
しかし、その読取機は停電しているので使えない。
結果、鍵が掛かりっ放しになっていた。
多分、カードキーはリサが持っている物で開くのだろうが……。
愛原:「ブレーカーだ!ブレーカーをONにしないと!」
高橋:「電気代払って無さそうですけど、大丈夫ですかね?」
愛原:「それでも何とかやるしかないな」
もちろん、ブレーカーの場所は私も記憶している。
どういう理由だか不明だが、昭和時代に建てられた家って、台所にあったりしないか?
平成時代初期~中期頃に建て直した私の今の実家は、浴室の脱衣所にあるのだが。
で、この家も台所にブレーカーはあった。
案の定、それはOFFになっていた。
高身長の高橋が、チェーンカッターの先でブレーカーをONにした。
愛原:「どうだ!?」
その足で先ほどの階段室に戻る。
だが、読取機は通電していなかった。
高橋:「壊れてるんじゃないスか?埃被ってますし……」
愛原:「うーん……」
私は読取機のコードを辿ってみた。
どこかで断線しているのかもしれない。
愛原:「ん?あそこか……」
電源ケーブルは、応接間に繋がっていた。
リサ:「おー、暖炉がある!」
愛原:「単なるインテリアだよ。本当に火を焚いたりしたら、火事になる」
高橋:「何だか紛らわしいっスね」
愛原:「まあ、暖炉があるにしては煙突が無いから、それで分かるだろう」
高橋:「……なるほど!」
そして、応接間の壁には分電盤があった。
愛原:「こ、これは……!」
分電盤の中には、取り外し式のヒューズが何本か収まっている。
しかし、その中に1本だけ抜けている箇所があった。
見ると、『階段』とか書いてある。
ヒューズが抜けている為に、通電していなかったのだ!
愛原:「……高橋、オマエ、針金でヒューズの代用品とか造れないか?」
高橋:「さ、サーセン。ネンショー(少年院)でも少刑(少年刑務所)でも、電気関係はやってなくて……」
愛原:「そうか……。ん?」
その時、私は閃いた。
このヒューズは取り外し式である。
要は……。
愛原:「この、『2階トイレ』とかは通電させてなくてもいいよな?」
高橋:「そ、そうっすね」
私は『2階トイレ』のヒューズを外して、『階段』に取り付けた。
幸い、このヒューズは汎用であるようだ。
愛原:「これでいいじゃん!」
高橋:「さ、さすがです、先生!」
愛原:「よし、確認に行こう!」
しかし、私は外したヒューズの選択を間違えてしまったようだ。
いや、でも普通、『2階トイレ』のヒューズって言われたら、トイレ内外の照明とか換気扇とか便座の電源とか、そういう意味だと思うじゃない?
それもあるのだろうが、もっと別の意味もあったようだ。
愛原:「ん!?」
私達が再び階段室に向かうと、2階から何か重い音が聞こえた。
何か重い物を落とすような音。
そして、その音の主と思われる物が、2階から1階への階段を滑り落ちて来た。
それは、鉄扉。
何でこんなものが落ちて来たのか?
ていうか、2階に何で鉄扉があるのだ?
まあ、日本アンブレラが何か増改築した時に付けたのだろうが。
ハンターα:「ガァァァァッ!!」
愛原:「はいーっ!?」
何と、2階からハンターαが飛び下りて来た。
アンブレラが爬虫類から改造した下級BOWである。
大きさは大人のゴリラくらい。
走る時は4足歩行になるが、歩く時は2足歩行である。
そして、リサに負けず劣らずの鋭く長い爪を持っていた。
爬虫類をベースにしたということもあり、体表は緑色の鱗で覆われている。
高橋:「お任せを!」
ハンターαは1階に飛び下りて来ると、右手を掲げて、寄って来る。
奴らの必殺技は『首狩り』。
その鋭く長い爪で、獲物の首を一気に刎ね飛ばすという即死攻撃を出してくるのである。
高橋:「うらっ!」
高橋はマグナムを撃ち込んだ。
リサ:「ガァァァッ!!」
リサも負けていない。
リサはデニムのショートパンツから伸びた足で、ハンターαを蹴り飛ばすと、自慢の爪で引き裂いた。
2人の攻撃により、私は手持ちのショットガンを1発も撃たずにハンターαを倒すことができた。
愛原:「1匹だけか!?」
高橋:「そのようです!」
愛原:「2人とも、よくやった!」
リサ:「むふー!」
高橋:「これくらい、俺のマグナムに掛かれば余裕です!」
とはいうものの、何だか2階から他にも呻き声とか雄叫びのような声が聞こえる。
まさか、他のヒューズを外していたら、別の化け物が飛び出して来ていた?
あまり、考えたくない。
愛原:「とにかく、さっさと地下に降りよう!弾は無駄にしたくない!」
高橋:「分かりました!」
幸い思惑通り、読取機は通電していた。
リサ:「カード当てるね!」
愛原:「ああ、頼む」
案の定、リサの金色に光ったカードキーで鉄格子の扉は解錠できた。
通電したのはこのカードリーダーだけでなく、階段の照明もそうらしく、スイッチを入れると電球型の蛍光灯がパッと点灯した。
どうやら、階段を下りる分にはライトは必要無さそうだ。
愛原:「よし、行くぞ」
高橋:「はい」
通過してから扉を閉めると、オートロックが掛かった。
向こうからはカードキーが無いと開かないが、階段側からはフリーで開くようだ。
よし。
これなら閉じ込められたことにはならない上、仮に2階に潜んでいる化け物がここに来たとしても、地下までは追って来れまい。
私達はコンクリート製の階段を下りた。
金庫の中には、鍵とメモが入っていた。
愛原:「何だよ、またかよ!!」
高橋:「マジでムカつく爺さんですね」
リサ:「先生の許しがあったら、アタシがボコす!」
リサは右手の爪を長く鋭く伸ばして言った。
愛原:「まあ、待て。一応、メモを見てみよう。なになに……『この家の地下に、秘密が隠されている』だって?」
すると、この鍵はその秘密の地下室への扉の鍵なのだろうか?
しかし、私の記憶では、この家に地下室は無いはずだ。
もっとも、それは伯父さんの家だった頃の話。
日本アンブレラの手に渡ってからは、色々と増改築されたことだろう。
地下室だって、増築されたのかもしれないのだ。
愛原:「地下室の入口を探せ!」
高橋:「はい!」
私は取りあえずスマホを取り出して、善場主任に連絡を取ろうとした。
愛原:「んっ!?」
高橋:「先生、どうしました?」
愛原:「おかしいな。圏外になってる」
高橋:「マジっすか?……あっ、俺のもだ!」
リサ:「アタシのも!」
どうも家の中では、電波が入りにくいようになっているらしい。
これは日本アンブレラの研究施設では、よくあることだ。
社員や来訪者が悪意を持って外部に情報を流さぬよう、携帯電話の電波は入らないようにしているのだと。
しかし、必要な連絡の場合はどうするのかというと、通話は固定電話で、ネットは独自の光回線を使っていたのだそうだ。
愛原:「廃屋のくせに、こういう無駄な機能は残ってるんだな」
高橋:「先生、どうします?」
少なくとも奥新川駅の時点では電波は入っていたのだから、家の外に出れば電波は入るのだろう。
まだスマホが無く、ガラケーどころかPHSもあったような時代だったら、奥新川駅に行っても圏外だったのだろうが。
愛原:「取りあえず、地下室を探そう。もしかしたら、これ自体がフェイクかもしれない」
高橋:「はい」
しかし、地下室への入口は案外簡単に見つかった。
2階に上がる階段の下。
回り込むと、掃除用具入れがある。
しかしそのスペースが改造され、地下へ降りる階段室の扉になっていた。
しかも、扉は二重になっていた。
外側の扉は、掃除用具入れのドア。
内側は、鉄格子の扉となっていた。
愛原:「おい、鍵が違うぞ!?」
高橋:「ホントですね!」
その鉄格子の扉は、カードキーでしか開かない構造になっていた。
しかし、その読取機は停電しているので使えない。
結果、鍵が掛かりっ放しになっていた。
多分、カードキーはリサが持っている物で開くのだろうが……。
愛原:「ブレーカーだ!ブレーカーをONにしないと!」
高橋:「電気代払って無さそうですけど、大丈夫ですかね?」
愛原:「それでも何とかやるしかないな」
もちろん、ブレーカーの場所は私も記憶している。
どういう理由だか不明だが、昭和時代に建てられた家って、台所にあったりしないか?
平成時代初期~中期頃に建て直した私の今の実家は、浴室の脱衣所にあるのだが。
で、この家も台所にブレーカーはあった。
案の定、それはOFFになっていた。
高身長の高橋が、チェーンカッターの先でブレーカーをONにした。
愛原:「どうだ!?」
その足で先ほどの階段室に戻る。
だが、読取機は通電していなかった。
高橋:「壊れてるんじゃないスか?埃被ってますし……」
愛原:「うーん……」
私は読取機のコードを辿ってみた。
どこかで断線しているのかもしれない。
愛原:「ん?あそこか……」
電源ケーブルは、応接間に繋がっていた。
リサ:「おー、暖炉がある!」
愛原:「単なるインテリアだよ。本当に火を焚いたりしたら、火事になる」
高橋:「何だか紛らわしいっスね」
愛原:「まあ、暖炉があるにしては煙突が無いから、それで分かるだろう」
高橋:「……なるほど!」
そして、応接間の壁には分電盤があった。
愛原:「こ、これは……!」
分電盤の中には、取り外し式のヒューズが何本か収まっている。
しかし、その中に1本だけ抜けている箇所があった。
見ると、『階段』とか書いてある。
ヒューズが抜けている為に、通電していなかったのだ!
愛原:「……高橋、オマエ、針金でヒューズの代用品とか造れないか?」
高橋:「さ、サーセン。ネンショー(少年院)でも少刑(少年刑務所)でも、電気関係はやってなくて……」
愛原:「そうか……。ん?」
その時、私は閃いた。
このヒューズは取り外し式である。
要は……。
愛原:「この、『2階トイレ』とかは通電させてなくてもいいよな?」
高橋:「そ、そうっすね」
私は『2階トイレ』のヒューズを外して、『階段』に取り付けた。
幸い、このヒューズは汎用であるようだ。
愛原:「これでいいじゃん!」
高橋:「さ、さすがです、先生!」
愛原:「よし、確認に行こう!」
しかし、私は外したヒューズの選択を間違えてしまったようだ。
いや、でも普通、『2階トイレ』のヒューズって言われたら、トイレ内外の照明とか換気扇とか便座の電源とか、そういう意味だと思うじゃない?
それもあるのだろうが、もっと別の意味もあったようだ。
愛原:「ん!?」
私達が再び階段室に向かうと、2階から何か重い音が聞こえた。
何か重い物を落とすような音。
そして、その音の主と思われる物が、2階から1階への階段を滑り落ちて来た。
それは、鉄扉。
何でこんなものが落ちて来たのか?
ていうか、2階に何で鉄扉があるのだ?
まあ、日本アンブレラが何か増改築した時に付けたのだろうが。
ハンターα:「ガァァァァッ!!」
愛原:「はいーっ!?」
何と、2階からハンターαが飛び下りて来た。
アンブレラが爬虫類から改造した下級BOWである。
大きさは大人のゴリラくらい。
走る時は4足歩行になるが、歩く時は2足歩行である。
そして、リサに負けず劣らずの鋭く長い爪を持っていた。
爬虫類をベースにしたということもあり、体表は緑色の鱗で覆われている。
高橋:「お任せを!」
ハンターαは1階に飛び下りて来ると、右手を掲げて、寄って来る。
奴らの必殺技は『首狩り』。
その鋭く長い爪で、獲物の首を一気に刎ね飛ばすという即死攻撃を出してくるのである。
高橋:「うらっ!」
高橋はマグナムを撃ち込んだ。
リサ:「ガァァァッ!!」
リサも負けていない。
リサはデニムのショートパンツから伸びた足で、ハンターαを蹴り飛ばすと、自慢の爪で引き裂いた。
2人の攻撃により、私は手持ちのショットガンを1発も撃たずにハンターαを倒すことができた。
愛原:「1匹だけか!?」
高橋:「そのようです!」
愛原:「2人とも、よくやった!」
リサ:「むふー!」
高橋:「これくらい、俺のマグナムに掛かれば余裕です!」
とはいうものの、何だか2階から他にも呻き声とか雄叫びのような声が聞こえる。
まさか、他のヒューズを外していたら、別の化け物が飛び出して来ていた?
あまり、考えたくない。
愛原:「とにかく、さっさと地下に降りよう!弾は無駄にしたくない!」
高橋:「分かりました!」
幸い思惑通り、読取機は通電していた。
リサ:「カード当てるね!」
愛原:「ああ、頼む」
案の定、リサの金色に光ったカードキーで鉄格子の扉は解錠できた。
通電したのはこのカードリーダーだけでなく、階段の照明もそうらしく、スイッチを入れると電球型の蛍光灯がパッと点灯した。
どうやら、階段を下りる分にはライトは必要無さそうだ。
愛原:「よし、行くぞ」
高橋:「はい」
通過してから扉を閉めると、オートロックが掛かった。
向こうからはカードキーが無いと開かないが、階段側からはフリーで開くようだ。
よし。
これなら閉じ込められたことにはならない上、仮に2階に潜んでいる化け物がここに来たとしても、地下までは追って来れまい。
私達はコンクリート製の階段を下りた。
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