[12月30日03:30.天候:曇 東京中央学園上野高校・新校舎]
稲生達は新校舎内を講堂に向かって進んだ。
ステージの裏手には、更に上に昇る階段がある。
稲生:「宿泊施設か。僕は行くの初めてだな」
マリア:「OBなのに?」
稲生:「ごく一部の部活しか使わないみたいなんです。理由は……出るそうですから」
キノ:「根性無し共が」
立入禁止の表示がしてあって、ここにも鍵が掛かっていたが、これもマリアの魔法で開錠する。
中に入って階段を登ると、そこには宿泊施設があった。
二段ベッドがずらっと碁盤の目のように並んでいて、全部で50人は泊まれるようになっている。
キノ:「で?4番ベッドはどこだ?」
稲生:「確か、奥から数えるから……」
しかも、1つのベッドで1番と数えるわけではないらしい。
下段が奇数、上段が偶数ということになっている。
稲生:「これだ」
奥の壁側から2番目にある2段ベッド。
その上段が4番ベッドだった。
稲生:「ここに寝ると、逆さ女が現れる。そして、『自分と会ったことを誰にも喋ってはいけない。喋ったら殺す』と約束させるんだ」
キノ:「あー、なるほど。とんだサイコ野郎だな。約束させなけりゃ殺せねぇヘタレか。……隠れてねぇで出てこい」
キノは右手に刀を持ち、それを右肩に担ぐようにして持っていた。
そして、ブワッと自分の妖気を放つ。
キノ:「……出てこいと言ってるんだ!」
キノが威嚇するように言うと、天井からスルスルと下りてくる者がいた。
稲生:「うわっ!」
それは白い着物を着て、逆さ吊りになった女だった。
逆さまになっているわけだから、セミロングの髪も当然下を向いている。
逆さ女:「鬼様が何の御用ですかねぇ……?」
顔立ちと声からして、そんなに若い女というわけではないようだ。
アラフィフか?
キノ:「オレは叫喚地獄、獄長の長男、蓬莱山鬼之助という」
逆さ女:「ヒイッ!?蓬莱山様……!」
何故か逆さ女が怯えている。
キノ:「ちょっと聞きてぇことがある。オレの大事な“獲物”を横取りしやがった馬鹿がいてよ、その犯人に関する情報をお前が知っているという情報を掴んだんだ。で、お前は何を知っている?」
逆さ女:「ヒイッ!そ、それだけは……!殺されてしまいますぅ……!!」
キノ:「……てことは、知ってるっつーことだな。オレはまだどんな“獲物”か何も言ってねーぞ」
逆さ女:「お、お許しください……!い、命だけはぁ……!」
だが!
稲生:「ふざけるな!!」
稲生が憤怒の形相で、逆さ女を殴り付けたのだ。
稲生:「てめぇ、今まで何人の人間を食い殺して来たんだ!えっ!?そのくせ、今度は自分が殺されるかもしれないと思って命乞いだとォ!?ふざけるなって言ってんだよ!!キノが殺す前に僕が殺してやるぞ!!」
稲生は魔法の杖で逆さ女をボコボコに殴り付けた。
これにはマリアもキノも唖然とした。
逆さ女:「アヒッ!?……ヒッ!……や、やめ……!!」
キノ:「お、おい、ユタ……。もうその辺で……。取りあえず殺すのは、こいつから情報を聞き出してからにしてくれ……」
キノが止めなかったら、稲生は逆さ女を殴り殺していただろう。
キノ:「落ち着け!取りあえずここはオレに任せろ!」
稲生:「はぁ……はぁ……!」
キノ:「まあ、そういうわけだ。確かにこいつはただの人間じゃねぇが、まあ、まだ人間に近い存在だよな。オメェはそんな人間をエサにしてきたんだろ?ところが、その人間にボコされてしまった。面目丸つぶれだ。意味が分かるか?……もう、オメェの縄張りは無ェってことだよ。エサとなる人間にボコされた妖怪なんて、他の妖怪からもバカにされんぜ?ああ?」
逆さ女:「うう……うううううう……!」
逆さ女は泣きじゃくった。
逆さまになっているので、涙は頭の上の方に流れて行く。
キノ:「さて、本題だ。オレの“獲物”、栗原江蓮はどこにいる?ついでにそれを横取りしやがった犯人はどこだ?両方かどっちか片方、いずれでもいいから教えろ」
逆さ女:「そ、それは……!」
キノ:「答えられねぇってんなら、またこいつにバトンタッチするぜ?」
稲生:「こ、こんなヤツに……!こんなヤツに、僕の友達が……!!」
マリア:「ユウタの友達がこいつに殺されたのか。なら、しょうがないな」
マリアも眉を潜めて魔法の杖を構えた。
逆さ女:(な、何てことなの……!?段々状況が悪化していく……!)
キノ:「四面楚歌ならぬ、三面楚歌だ。だが、オメェにとってはどっちでも似たようなもんだろ?」
逆さ女:「い、言います。あの人間は、プールの女子更衣室ですよぉ……!」
キノ:「プールの女子更衣室だぁ?」
キノは稲生を見た。
稲生:「女子水泳部の部室でもあるな。確かに、そこにも怖い話はある」
キノ:「ウソだったら、分かってるよな?まあ、獄卒のオレにウソつけるわけ無ェがな」
閻魔大王は亡者のウソを簡単に見分けられる。
その下で働く獄卒達に、似たような能力が無いわけではない。
マリア:「で、どうなんだ?」
キノ:「おおかた、本当のようだ。どうしてお前はそれを知っている?」
逆さ女:「あなた達より先に来た魔ほ……ぐええっ!!」
逆さ女が呻き声を上げて、天井から床に落ちた。
いつの間にか頭には、何か突き刺さっていた。
キノ:「な、何だァ!?」
稲生:「!?」
キノと稲生は目を丸くした。
逆さ女の左耳に何かが突き刺さっていたのだが、それが耳の穴から中に入って消えた。
マリア:「呪い針……!?」
マリアがその正体について知っているようだった。
キノ:「あ?何だって?」
稲生:「呪い針?どこかで聞いたような……?」
キノ:「おい、魔女。オメェは何か知ってるのか?」
マリア:「いや……。現時点ではまだ何とも言えない」
キノ:「あー!そりゃ言えねぇよなぁ!?『犯人は私の仲間です』なんてよ!」
稲生:「何だって!?言い掛かりはやめてくれ!」
キノ:「魔法使いが犯人だったとすれば、辻褄が合うだろうが!ユタ、オメェは知らねぇかもしれねーが、犯人はどうやらこいつの知り合いみてェだぜ」
稲生:「そんな!マリアさん、違いますよね!?偶然ですよね!?」
マリア:「ああ。偶然だ……」
稲生:「ほら!」
マリア:「……と、信じたい」
稲生:「ええっ!?」
キノ:「ほらよ、見たことか!で、実際に犯人は誰なんだ?」
マリア:「特定するまでには至らない。栗原氏の件に関しては、確かに魔道師なら犯行可能ということだけだ」
稲生:「取りあえず、プールの女子更衣室に行ってみよう。そこに何かがあるはずだ」
キノ:「もし犯人が魔女だったとしても、オレは遠慮無くボコボコにさせてもらうからな?」
マリア:「……勝手にしろ。だが、栗原氏は助けてあげたい」
稲生:「それはそうだね。マリアさんが褒めるくらいの人ですもんね」
メンヘラの多い魔女。
マリアのその1人であるが、そのメンヘラが褒めた人間が稲生と栗原江蓮なのである。
江蓮はマリアにとって、「なかなか話せる良い子」らしい。
3人はプールの女子更衣室へと向かった。
稲生達は新校舎内を講堂に向かって進んだ。
ステージの裏手には、更に上に昇る階段がある。
稲生:「宿泊施設か。僕は行くの初めてだな」
マリア:「OBなのに?」
稲生:「ごく一部の部活しか使わないみたいなんです。理由は……出るそうですから」
キノ:「根性無し共が」
立入禁止の表示がしてあって、ここにも鍵が掛かっていたが、これもマリアの魔法で開錠する。
中に入って階段を登ると、そこには宿泊施設があった。
二段ベッドがずらっと碁盤の目のように並んでいて、全部で50人は泊まれるようになっている。
キノ:「で?4番ベッドはどこだ?」
稲生:「確か、奥から数えるから……」
しかも、1つのベッドで1番と数えるわけではないらしい。
下段が奇数、上段が偶数ということになっている。
稲生:「これだ」
奥の壁側から2番目にある2段ベッド。
その上段が4番ベッドだった。
稲生:「ここに寝ると、逆さ女が現れる。そして、『自分と会ったことを誰にも喋ってはいけない。喋ったら殺す』と約束させるんだ」
キノ:「あー、なるほど。とんだサイコ野郎だな。約束させなけりゃ殺せねぇヘタレか。……隠れてねぇで出てこい」
キノは右手に刀を持ち、それを右肩に担ぐようにして持っていた。
そして、ブワッと自分の妖気を放つ。
キノ:「……出てこいと言ってるんだ!」
キノが威嚇するように言うと、天井からスルスルと下りてくる者がいた。
稲生:「うわっ!」
それは白い着物を着て、逆さ吊りになった女だった。
逆さまになっているわけだから、セミロングの髪も当然下を向いている。
逆さ女:「鬼様が何の御用ですかねぇ……?」
顔立ちと声からして、そんなに若い女というわけではないようだ。
アラフィフか?
キノ:「オレは叫喚地獄、獄長の長男、蓬莱山鬼之助という」
逆さ女:「ヒイッ!?蓬莱山様……!」
何故か逆さ女が怯えている。
キノ:「ちょっと聞きてぇことがある。オレの大事な“獲物”を横取りしやがった馬鹿がいてよ、その犯人に関する情報をお前が知っているという情報を掴んだんだ。で、お前は何を知っている?」
逆さ女:「ヒイッ!そ、それだけは……!殺されてしまいますぅ……!!」
キノ:「……てことは、知ってるっつーことだな。オレはまだどんな“獲物”か何も言ってねーぞ」
逆さ女:「お、お許しください……!い、命だけはぁ……!」
だが!
稲生:「ふざけるな!!」
稲生が憤怒の形相で、逆さ女を殴り付けたのだ。
稲生:「てめぇ、今まで何人の人間を食い殺して来たんだ!えっ!?そのくせ、今度は自分が殺されるかもしれないと思って命乞いだとォ!?ふざけるなって言ってんだよ!!キノが殺す前に僕が殺してやるぞ!!」
稲生は魔法の杖で逆さ女をボコボコに殴り付けた。
これにはマリアもキノも唖然とした。
逆さ女:「アヒッ!?……ヒッ!……や、やめ……!!」
キノ:「お、おい、ユタ……。もうその辺で……。取りあえず殺すのは、こいつから情報を聞き出してからにしてくれ……」
キノが止めなかったら、稲生は逆さ女を殴り殺していただろう。
キノ:「落ち着け!取りあえずここはオレに任せろ!」
稲生:「はぁ……はぁ……!」
キノ:「まあ、そういうわけだ。確かにこいつはただの人間じゃねぇが、まあ、まだ人間に近い存在だよな。オメェはそんな人間をエサにしてきたんだろ?ところが、その人間にボコされてしまった。面目丸つぶれだ。意味が分かるか?……もう、オメェの縄張りは無ェってことだよ。エサとなる人間にボコされた妖怪なんて、他の妖怪からもバカにされんぜ?ああ?」
逆さ女:「うう……うううううう……!」
逆さ女は泣きじゃくった。
逆さまになっているので、涙は頭の上の方に流れて行く。
キノ:「さて、本題だ。オレの“獲物”、栗原江蓮はどこにいる?ついでにそれを横取りしやがった犯人はどこだ?両方かどっちか片方、いずれでもいいから教えろ」
逆さ女:「そ、それは……!」
キノ:「答えられねぇってんなら、またこいつにバトンタッチするぜ?」
稲生:「こ、こんなヤツに……!こんなヤツに、僕の友達が……!!」
マリア:「ユウタの友達がこいつに殺されたのか。なら、しょうがないな」
マリアも眉を潜めて魔法の杖を構えた。
逆さ女:(な、何てことなの……!?段々状況が悪化していく……!)
キノ:「四面楚歌ならぬ、三面楚歌だ。だが、オメェにとってはどっちでも似たようなもんだろ?」
逆さ女:「い、言います。あの人間は、プールの女子更衣室ですよぉ……!」
キノ:「プールの女子更衣室だぁ?」
キノは稲生を見た。
稲生:「女子水泳部の部室でもあるな。確かに、そこにも怖い話はある」
キノ:「ウソだったら、分かってるよな?まあ、獄卒のオレにウソつけるわけ無ェがな」
閻魔大王は亡者のウソを簡単に見分けられる。
その下で働く獄卒達に、似たような能力が無いわけではない。
マリア:「で、どうなんだ?」
キノ:「おおかた、本当のようだ。どうしてお前はそれを知っている?」
逆さ女:「あなた達より先に来た魔ほ……ぐええっ!!」
逆さ女が呻き声を上げて、天井から床に落ちた。
いつの間にか頭には、何か突き刺さっていた。
キノ:「な、何だァ!?」
稲生:「!?」
キノと稲生は目を丸くした。
逆さ女の左耳に何かが突き刺さっていたのだが、それが耳の穴から中に入って消えた。
マリア:「呪い針……!?」
マリアがその正体について知っているようだった。
キノ:「あ?何だって?」
稲生:「呪い針?どこかで聞いたような……?」
キノ:「おい、魔女。オメェは何か知ってるのか?」
マリア:「いや……。現時点ではまだ何とも言えない」
キノ:「あー!そりゃ言えねぇよなぁ!?『犯人は私の仲間です』なんてよ!」
稲生:「何だって!?言い掛かりはやめてくれ!」
キノ:「魔法使いが犯人だったとすれば、辻褄が合うだろうが!ユタ、オメェは知らねぇかもしれねーが、犯人はどうやらこいつの知り合いみてェだぜ」
稲生:「そんな!マリアさん、違いますよね!?偶然ですよね!?」
マリア:「ああ。偶然だ……」
稲生:「ほら!」
マリア:「……と、信じたい」
稲生:「ええっ!?」
キノ:「ほらよ、見たことか!で、実際に犯人は誰なんだ?」
マリア:「特定するまでには至らない。栗原氏の件に関しては、確かに魔道師なら犯行可能ということだけだ」
稲生:「取りあえず、プールの女子更衣室に行ってみよう。そこに何かがあるはずだ」
キノ:「もし犯人が魔女だったとしても、オレは遠慮無くボコボコにさせてもらうからな?」
マリア:「……勝手にしろ。だが、栗原氏は助けてあげたい」
稲生:「それはそうだね。マリアさんが褒めるくらいの人ですもんね」
メンヘラの多い魔女。
マリアのその1人であるが、そのメンヘラが褒めた人間が稲生と栗原江蓮なのである。
江蓮はマリアにとって、「なかなか話せる良い子」らしい。
3人はプールの女子更衣室へと向かった。
年末年始は、登山できなかったいおなずんです。
初日の出を葛西臨海公園で見てきました。
勿論一人で
慣れっこですから。
彼女いない歴41年。
マイペースで生きていきます。
こちらこそ、今年もよろしくお願い致します。
私は寝正月を決め込んでいたもので、初日の出は見ていませんw
私も独り身ですが、信仰を辞めたことで心身共に自由になれました。
今年も自由を謳歌したいと思います。