報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「明日の予定」

2021-03-30 15:06:00 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月20日19:00.天候:晴 静岡県富士宮市 かめや旅館]

 夕食も終わり、そろそろ部屋に戻ろうとした時、私のスマホに電話が掛かって来た。
 電話の相手は善場主任からだった。

 リサ:「先に部屋に戻ってるねぇ」
 愛原:「ああ。はい、もしもし?」

 リサ達、女の子達は先にエレベーターに乗って行った。
 私はロビーのソファに座り、電話に出る。
 高橋はその向かいに座った。

 善場:「愛原所長、お疲れ様です」
 愛原:「おお、善場主任、お疲れ様です」
 善場:「ご旅行の最中に申し訳ありません。今、お電話よろしいでしょうか?」
 愛原:「ええ、大丈夫ですよ。何の御用でしょう?」
 善場:「今、愛原所長方は静岡県富士宮市においでということですが、これから観光の御予定等はありますでしょうか?」
 愛原:「いえ。まだ、具体的な場所は決めていません。まだ温泉に入っていないので、明日は温泉に入ろうかとは思っているんですが……」
 善場:「そうですか。では、特にバイオハザードに関係したご旅行ではないのですね?」
 愛原:「ええ、そうですが。バイオハザードがどうかしましたか?」
 善場:「以前、愛原所長がその町を訪れた時、小規模ながらバイオハザードに巻き込まれてしまったことはまだ記憶に新しいかと思います」
 愛原:「そうですね。あの時も一泊しましたが、今回は別の旅館にしましたよ」
 善場:「リサは本当にちゃんと中学校を卒業しましたね?」
 愛原:「はい」
 善場:「実は富士宮市内には、当機関の施設があるんです」
 愛原:「デイライトの施設……ですか?」
 善場:「はい。そしてそれは、私が所属する政府機関の施設でもあります」
 愛原:「でしょうね。何の施設ですか?」
 善場:「もしもリサが人並みの生活ができず、学校にも通えなかった場合の施設ですよ。そしてそれは、これから高校に入るリサに対しての警告でもあります」
 愛原:「まさか殺処分施設なんじゃ?」
 善場:「いきなりそんなことはないですよ。しかし、もしもリサがこれからも人間として高校生活も無事に過ごせそうなら、その施設は閉鎖しようという動きがあるんですよ。閉鎖されたらもう見ることはできないので、もし宜しかったら、今のうちに見学してみませんか?という誘いです」
 愛原:「なるほど。確かにまだデイライトさんの施設は、東京の事務所しか知りませんね」

 神奈川県相模原市の郊外にある国家公務員特別研修センターは、何もデイライト専用の施設というわけではない。

 愛原:「分かりました。では、お願いしてもよろしいですか?因みに所要時間としては如何ほど……」
 善場:「そうですね……。まあ、1~2時間ほど見て頂けたらと思います」
 愛原:「分かりました」
 善場:「それでは10時に旅館までお迎えに行きます。旅館の名前と場所を教えてください」
 愛原:「はい」

 私は主任に旅館の名前と場所を教えた。
 そして、電話を切った。

 愛原:「高橋、明日は善場主任がいい所に連れて行ってくれるらしいぞ」
 高橋:「いい所?どこっスか?」
 愛原:「ヘタすりゃリサを隔離しておくような施設らしい。リサにとっては、ロクでもない場所だろうな」
 高橋:「それはリサが暴走したら閉じ込めておく所ってことっスか?」
 愛原:「暴走とまでは行かなくても、狂犬みたいな感じだったらそうなるってところだ。だって暴走したら、即殺処分だろ?」
 高橋:「あ、そうか……」
 愛原:「よし。取りあえず、あのコ達に明日の予定を伝えに行こう」
 高橋:「うっス」

 私達は席を立つと、エレベーターに乗り込んだ。

〔ピーン♪ 4階です〕

 私達の泊まっている客室フロアに着くと、私はリサ達の部屋に向かった。

 高橋:「先生、俺、先に部屋に戻ってますんで」
 愛原:「ああ。分かった」

 そういえば、彼女らが部屋で過ごしているところも写真に撮って、報告書に添付した方がいいな。
 私はリサ達の部屋のドアをノックした。

 リサ:「はーい」

 リサがドアを開けてくれた。

 愛原:「明日の予定が決まったから、教えに来たぞー」
 リサ:「おー。今度はどこに連れていてくれるの?」

 部屋の奥を見ると、既に布団が敷かれているのが分かった。

 愛原:「その前に、リサと斉藤さんが部屋で寛いでいる所も撮りたいんだが、いいかな?」
 リサ:「いいよ」

 私は部屋に上がらせてもらった。
 布団は2組ずつ、頭合わせになるように敷かれていた。
 栗原姉妹が並んで寝るのは想定内だが、もっと想定内なのは、蓮華さんの向こうがリサで、愛里さんの向こうが斉藤さんだということだ。
 いざとなったら、リサを取り押さえるくらいの勢いらしいな、蓮華さんは。

 リサ:「サイトー、先生が写真撮るって」
 斉藤:「んもぅ、しょうがないですわねぇ。どんな感じでいけばよろしいのかしら?」
 愛原:「2人仲良く部屋で過ごしていますって感じで報告したいから、まあ、そんな感じ」
 リサ:「改めて言われると何か難しい」
 愛原:「そんな難しく考える必要は無いさ」
 栗原蓮華:「枕投げとか?」
 斉藤:「リサさんにガチ枕投げさせたら、ケガ人が出ますわよ」
 栗原愛里:「トランプやってるところ!」
 斉藤:「ベタ過ぎ且つ地味よ」
 リサ:「じゃあ、よくサイトーとお泊まり会やってる感じでいいかな?」

 リサは斉藤さんの布団の中に潜り込んだ。

 リサ:「こんな感じ?」

 布団を被って、頭だけ斉藤さんと一緒に出す。

 斉藤:「り、リサさんが御自ら私の布団にぃーっ!?あらまぁ、どうしましょ!?大人の階段一気に駆け登ってシンデレラかしらー!?」
 蓮華:「先生、こんな百合っプル報告して大丈夫なんですか?」
 愛原:「……っ!斉藤社長からは、仲良くやっている所をと言われてるから大丈夫だろ!」

 私は無表情でピースサインをしているリサと、萌え狂っている斉藤さんを撮影した。

 愛里:「お姉ちゃん、この人達、女子校に行った方がいいんじゃない?」
 蓮華:「女子校でもガチ過ぎてヒかれるタイプだと思う」
 リサ:「それで先生、明日の予定は?」
 愛原:「おっと、そうだった。実はさっき、善場主任から電話があって……」

 私は善場主任から、デイライトの施設見学に誘われたことを話した。

 斉藤:「そんな国家機密情報満載の施設に、私達が行っていいんですか?」
 愛原:「いいんだろうなぁ。何しろ、善場主任からの誘いだから。それに、閉鎖する予定の場所だそうだから、俺達に公開した後で閉鎖するつもりなんだろう。気が付いたら、きれいさっぱり取り壊されて更地になっているっていうオチになるってことだな。それなら、俺達の中から誰かが機密情報漏らしたところで、それを買ったヤツがいざ実際行ってみたら、更地になっているってことだと思う」

 外国なんかでも、かつては国家機密満載の施設だった場所が、時代が下ってから公開されるということはよくある。
 もちろんそれは、そこはもはやそういう施設では無くなったものの、歴史的価値があるので、公表しても国家機密的に問題無いとされるからだろう。

 愛原:「どうだい?一緒に行くかい?」
 蓮華:「私はいいですよ。普段、国家機密の施設に入る機会なんてそうそう無いですから」
 愛里:「私はお姉ちゃんと行く」
 斉藤:「リサさんはどうする?」
 リサ:「先生が行くなら、私も行く」
 斉藤:「リサさんが行くなら、私も行きます」
 愛原:「じゃあ、決まりだな」

 私はそう言って出発時刻を伝えると、部屋を後にした。
 なるほど、そういうことか。
 確かに前回この町に来た時、私達は小規模なバイオハザードに巻き込まれた。
 どうしてそこでそんなことが発生したのか、未だに謎であったが、デイライトの施設を狙ったものであったとするなら納得が行く。
 やはり善場主任は知っていたのだ。
 この町でバイオハザードが発生した理由を。
 そして今、私達に真相を話してくれようというのだろう。
 あの時と違って今は、旧・日本アンブレラの責任者だった五十嵐元社長が息子の元副社長共々逮捕されているし、日本版リサ・トレヴァーも、危険性の無い『0番』『2番』以外、基本的には全員倒したことになっている。
 表向きには贖罪と正義の活動を標榜するものの、どことなく胡散臭い“青いアンブレラ”も日本からは追い出した。
 白井伝三郎の行方はまだ分からないし、彼を取り巻く宗教テロ組織ヴェルトロのこともよく分かっていないが、話す時は今ということだと私は解釈した。
 善場主任がどれだけ話してくれるか、明日は楽しみだ。

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