[3月20日17:00.天候:晴 静岡県富士宮市 かめや旅館]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今夜は市街地の旅館で一泊する予定だ。
この町の郊外にある大石寺というお寺に、彼岸参りに行っていた栗原姉妹が遅れて到着したので、私は1階ロビーまで迎えに行った。
愛原:「やあ、お疲れさん」
栗原蓮華:「今、着きました」
私はフロントに行って、この2人が後で到着する予定の者達だと伝えた。
愛原:「よし、部屋まで行こう」
そして私は、栗原姉妹をエレベーターに乗せた。
〔ドアが閉まります〕
愛原:「部屋はリサ達と一緒だ。大丈夫だね?」
蓮華:「ええ。あのコが何もしなければ大丈夫です」
愛原:「大丈夫だよ。改めてリサには言っておいたから」
蓮華:「分かりました」
愛原:「夕食は18時からだそうだ。食事は食堂があるから、そこらしい」
蓮華:「分かりました」
〔ピーン♪ 4階です〕
ところで、このオーチス・エレベーターのアナウンスの声優、富沢美智恵氏だって知ってた?
アニメだと“クレヨンしんちゃん”のまつざか先生とか、“サクラ大戦”の神崎すみれとか、あとロアナプラという架空の町が登場する某アニメの武装メイドさんの役とか(素直に“ブラック・ラグーン”と言わんかい!)……。
エレベーターのアナウンスの声を聞いている限りでは、全く気が付かない。
愛原:「こっちだよ」
エレベーターを降りて部屋に向かおうとするが、何故かドアに鍵が掛かっていた。
愛原:「あれ?鍵が掛かってる?おい、開けてくれ」
私は部屋をノックした。
しかし、全く開く様子が無い。
蓮華:「これは、嫌がらせでしょうか?」
愛原:「い、いや、そんなはずはない」
すると、隣の私の部屋から高橋が出て来た。
高橋:「あ、先生。あの2人、風呂に行ったんで、鍵預かってます」
と、高橋は鍵を出した。
愛原:「なにぃ?自由行動だな」
蓮華:「そういうことならいいです」
愛原:「風呂に行くなら、鍵を忘れるなよ」
蓮華:「いえ。お風呂は後で入ります。ちょうど勤行をするのに都合がいいです」
愛原:「そうか?それならまあ、いいけど……」
私は蓮華に鍵を渡して、部屋に戻った。
高橋:「お疲れ様っス」
愛原:「ああ」
高橋:「俺達も風呂行きますか?」
愛原:「ああ、そうだな」
私達は浴衣に着替えた。
愛原:「こういうのはな、着替えてナンボだろ」
高橋:「寛ぎスタイルっスね」
そして私達はタオルを持って、大浴場に向かった。
そこに行って、私はあることに気づいた。
佇まいは、温泉地にある旅館という名のホテルそのものである。
しかし、脱衣場にはよく掲げられている温泉の成分表などが掲げられていない。
つまり、温泉ではないのだ!
愛原:「佇まいは温泉なのになぁ……」
高橋:「先生、気を確かに……」
最上階にある大浴場は、確かに眺望に優れており、相変わらず頂上部分が雲に隠れているものの、富士山がよく見えるのは分かった。
高橋:「先生、お背中、お流し致します!」
愛原:「ああ。頼むよ」
高橋:「はいっ!」
私は洗い場のシャワーの前に座り、高橋に背中を流してもらった。
愛原:「こりゃ明日は、仕切り直しをしなきゃいけないかもしれんな……」
高橋:「と、仰いますと?」
愛原:「明日は本物の温泉に入らないと気が済まん」
高橋:「はい!」
愛原:「明日までに、いい温泉地を探しておこう」
高橋:「分かりました」
でもまあ浴槽は広く、街の景色もいいので、夜に入ったら夜景が楽しめるかもしれないと思った。
[同日18:00.天候:晴 同旅館・食堂]
食堂に行くと、『愛原様』と書かれた札のテーブルがあった。
高橋:「先生、どうぞ。上座へ」
愛原:「上座ってここなのか?」
因みにこの時には、既に栗原姉妹も浴衣に着替えていた。
リサ:「お~、いっぱいあるー!」
リサはテーブルに置かれた数々の料理を見て、目を輝かせた。
昼あれだけ一杯食べたのに、もうこれを完食する気満々らしい。
高橋:「先生、どうぞ」
高橋がビールを注いできた。
愛原:「ああ、悪いね」
私と高橋はビールだが、他のJK・JC達はジュースやウーロン茶である。
愛原:「それじゃ、乾杯しよう。リサと斉藤さんは、改めて卒業おめでとう。栗原さん達は進級おめでとう」
蓮華:「ありがとうございます」
愛里:「ありがとうございます」
愛原:「それじゃ、乾杯!」
乾杯してから夕食に箸をつけた。
愛原:「蓮華さん達は来月から何年生になるんだっけ?」
蓮華:「2年生です」
愛里:「2年生です」
蓮華さんは高2、愛里さんは中2というわけか。
愛原:「蓮華さん、後輩となるリサ達をよろしく頼むよ?」
蓮華:「はい。特に、リサさんにあっては、校内で人食いをしないよう監視の対象とさせて頂きます」
愛原:「はっはっは。聞いたか、リサ?鬼斬り様の監視対象だぞ」
リサ:「私は人の血肉は……じゅるっ……食わない」
高橋:「おい、一瞬涎出ただろ?」
リサ:「き、気のせい気のせい。この料理が美味しいだけ」
バリボリ!
愛原:「リサ、蟹を殻ごと食べるんじゃない!」
リサ:「えー?美味しいよ?」
蓮華:「鬼の中には、人間の骨までも食い尽くす輩がいると聞きましたが……。このコがそうですか」
リサ:「食べたこと無いから分かんない。……けど、食べるとしたら、そうなるかも」
蓮華:「どうやら、本当に食べたことが無いみたいだね」
愛原:「当たり前だろう。どうしてそう思うんだ?」
蓮華:「もし本当は食べていたのなら、『私は他の鬼と違って食い散らかさない』とか、『骨までは食べない』とか言うはずですから」
愛原:「なるほど」
誘導尋問にリサは引っ掛からなかったというわけだ。
これもリサが本当に人食いをしていなかったことの表れだろう。
しかし、本当にリサは魚も骨まで食べるんだよなぁ……。
鋭い牙でかみ砕くんだ。
フライドチキンもそんな食べ方をするものだから、リサにはKFCには行かないように言っている。
もしも行くのなら、骨付きチキン以外のものを注文するようにと……。
動物でさえ骨は残すし、人食い鬼が出て来るマンガやアニメで、人食いをするシーンが出て来ても、骨は残す描写だろうに、リサは骨まで食べそうだ。
リサ:「ん!この天ぷらもイケる!」
斉藤:「このお刺身も美味しいわよ」
愛原:「ほら、高橋。オマエも飲め」
高橋:「あざーっス!」
愛原:「おっと!写真撮らなきゃな」
私はデジカメを取り出して、リサや斉藤さんの食事風景を撮った。
娘が楽しく卒業旅行しているのを見て、クライアントの斉藤社長から報酬を頂かねば。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今夜は市街地の旅館で一泊する予定だ。
この町の郊外にある大石寺というお寺に、彼岸参りに行っていた栗原姉妹が遅れて到着したので、私は1階ロビーまで迎えに行った。
愛原:「やあ、お疲れさん」
栗原蓮華:「今、着きました」
私はフロントに行って、この2人が後で到着する予定の者達だと伝えた。
愛原:「よし、部屋まで行こう」
そして私は、栗原姉妹をエレベーターに乗せた。
〔ドアが閉まります〕
愛原:「部屋はリサ達と一緒だ。大丈夫だね?」
蓮華:「ええ。あのコが何もしなければ大丈夫です」
愛原:「大丈夫だよ。改めてリサには言っておいたから」
蓮華:「分かりました」
愛原:「夕食は18時からだそうだ。食事は食堂があるから、そこらしい」
蓮華:「分かりました」
〔ピーン♪ 4階です〕
ところで、このオーチス・エレベーターのアナウンスの声優、富沢美智恵氏だって知ってた?
アニメだと“クレヨンしんちゃん”のまつざか先生とか、“サクラ大戦”の神崎すみれとか、あとロアナプラという架空の町が登場する某アニメの武装メイドさんの役とか(素直に“ブラック・ラグーン”と言わんかい!)……。
エレベーターのアナウンスの声を聞いている限りでは、全く気が付かない。
愛原:「こっちだよ」
エレベーターを降りて部屋に向かおうとするが、何故かドアに鍵が掛かっていた。
愛原:「あれ?鍵が掛かってる?おい、開けてくれ」
私は部屋をノックした。
しかし、全く開く様子が無い。
蓮華:「これは、嫌がらせでしょうか?」
愛原:「い、いや、そんなはずはない」
すると、隣の私の部屋から高橋が出て来た。
高橋:「あ、先生。あの2人、風呂に行ったんで、鍵預かってます」
と、高橋は鍵を出した。
愛原:「なにぃ?自由行動だな」
蓮華:「そういうことならいいです」
愛原:「風呂に行くなら、鍵を忘れるなよ」
蓮華:「いえ。お風呂は後で入ります。ちょうど勤行をするのに都合がいいです」
愛原:「そうか?それならまあ、いいけど……」
私は蓮華に鍵を渡して、部屋に戻った。
高橋:「お疲れ様っス」
愛原:「ああ」
高橋:「俺達も風呂行きますか?」
愛原:「ああ、そうだな」
私達は浴衣に着替えた。
愛原:「こういうのはな、着替えてナンボだろ」
高橋:「寛ぎスタイルっスね」
そして私達はタオルを持って、大浴場に向かった。
そこに行って、私はあることに気づいた。
佇まいは、温泉地にある旅館という名のホテルそのものである。
しかし、脱衣場にはよく掲げられている温泉の成分表などが掲げられていない。
つまり、温泉ではないのだ!
愛原:「佇まいは温泉なのになぁ……」
高橋:「先生、気を確かに……」
最上階にある大浴場は、確かに眺望に優れており、相変わらず頂上部分が雲に隠れているものの、富士山がよく見えるのは分かった。
高橋:「先生、お背中、お流し致します!」
愛原:「ああ。頼むよ」
高橋:「はいっ!」
私は洗い場のシャワーの前に座り、高橋に背中を流してもらった。
愛原:「こりゃ明日は、仕切り直しをしなきゃいけないかもしれんな……」
高橋:「と、仰いますと?」
愛原:「明日は本物の温泉に入らないと気が済まん」
高橋:「はい!」
愛原:「明日までに、いい温泉地を探しておこう」
高橋:「分かりました」
でもまあ浴槽は広く、街の景色もいいので、夜に入ったら夜景が楽しめるかもしれないと思った。
[同日18:00.天候:晴 同旅館・食堂]
食堂に行くと、『愛原様』と書かれた札のテーブルがあった。
高橋:「先生、どうぞ。上座へ」
愛原:「上座ってここなのか?」
因みにこの時には、既に栗原姉妹も浴衣に着替えていた。
リサ:「お~、いっぱいあるー!」
リサはテーブルに置かれた数々の料理を見て、目を輝かせた。
昼あれだけ一杯食べたのに、もうこれを完食する気満々らしい。
高橋:「先生、どうぞ」
高橋がビールを注いできた。
愛原:「ああ、悪いね」
私と高橋はビールだが、他のJK・JC達はジュースやウーロン茶である。
愛原:「それじゃ、乾杯しよう。リサと斉藤さんは、改めて卒業おめでとう。栗原さん達は進級おめでとう」
蓮華:「ありがとうございます」
愛里:「ありがとうございます」
愛原:「それじゃ、乾杯!」
乾杯してから夕食に箸をつけた。
愛原:「蓮華さん達は来月から何年生になるんだっけ?」
蓮華:「2年生です」
愛里:「2年生です」
蓮華さんは高2、愛里さんは中2というわけか。
愛原:「蓮華さん、後輩となるリサ達をよろしく頼むよ?」
蓮華:「はい。特に、リサさんにあっては、校内で人食いをしないよう監視の対象とさせて頂きます」
愛原:「はっはっは。聞いたか、リサ?鬼斬り様の監視対象だぞ」
リサ:「私は人の血肉は……じゅるっ……食わない」
高橋:「おい、一瞬涎出ただろ?」
リサ:「き、気のせい気のせい。この料理が美味しいだけ」
バリボリ!
愛原:「リサ、蟹を殻ごと食べるんじゃない!」
リサ:「えー?美味しいよ?」
蓮華:「鬼の中には、人間の骨までも食い尽くす輩がいると聞きましたが……。このコがそうですか」
リサ:「食べたこと無いから分かんない。……けど、食べるとしたら、そうなるかも」
蓮華:「どうやら、本当に食べたことが無いみたいだね」
愛原:「当たり前だろう。どうしてそう思うんだ?」
蓮華:「もし本当は食べていたのなら、『私は他の鬼と違って食い散らかさない』とか、『骨までは食べない』とか言うはずですから」
愛原:「なるほど」
誘導尋問にリサは引っ掛からなかったというわけだ。
これもリサが本当に人食いをしていなかったことの表れだろう。
しかし、本当にリサは魚も骨まで食べるんだよなぁ……。
鋭い牙でかみ砕くんだ。
フライドチキンもそんな食べ方をするものだから、リサにはKFCには行かないように言っている。
もしも行くのなら、骨付きチキン以外のものを注文するようにと……。
動物でさえ骨は残すし、人食い鬼が出て来るマンガやアニメで、人食いをするシーンが出て来ても、骨は残す描写だろうに、リサは骨まで食べそうだ。
リサ:「ん!この天ぷらもイケる!」
斉藤:「このお刺身も美味しいわよ」
愛原:「ほら、高橋。オマエも飲め」
高橋:「あざーっス!」
愛原:「おっと!写真撮らなきゃな」
私はデジカメを取り出して、リサや斉藤さんの食事風景を撮った。
娘が楽しく卒業旅行しているのを見て、クライアントの斉藤社長から報酬を頂かねば。
コロナが収束したら、自分もこういう旅行がしたいなぁと。
しばらくは宿坊への宿泊はできないだろうから、こういう旅館に泊まって過ごすというのはどうだろうか。
温泉の無い旅館であれば、尼御前の『湯治のついで』にはならないから、御開扉も受けられるだろう。
また全便運休だって……orz