報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「半鬼姉妹の都内観光」 7

2022-05-05 15:14:21 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月30日13:00.天候:晴 東京都江東区有明 有明パークビル2F レストラン“メヒコ”]

 有明駅で電車を降りると、すぐ近くにワシントンホテルがある。
 そこに隣接したビルの中に、今日のお目当てがあった。

 愛原:「ここです」
 善場:「これはまた、いい所を見つけましたね」
 愛原:「本当に宜しいんですか?」
 善場:「構いませんよ。私から彼女達へのはなむけです」

 レストランの中に入ると、熱帯魚の入った水槽が出迎えてくれる。

 リサ:「これを調理してくれるの?」
 愛原:「料亭の活け造りか!違う違う。これはただの観賞用だよ」
 リサ:「なーんだ」
 高橋:「熱帯魚が食えるわけねーだろ」
 リサ:「でも、美味しそうだよ」
 高橋:「だから、食うなっつの!」
 善場:「6名です」
 店員:「かしこまりました。こちらへどうぞ」

 店内には他にも、大きな水槽がある。
 リサには、活け造り用の魚が泳いでいるようにしか見えないようだ。

 愛原:「他の見方ができないのか?」
 リサ:「んー……実験用?」
 愛原:「アンブレラの研究所か!……そういえば霧生市の研究所に、空の水槽があったな……」

 席に座ると……。

 善場:「愛原所長のオススメは何ですか?」
 愛原:「もちろん、ここに来たら蟹ピラフだと思います」
 善場:「でしょうね」
 リサ:「ステーキ……」
 高橋:「蟹ピラフだっつってんだろ。先生の御心を知れよ」
 凛:「蟹ピラフ、美味しそうですね」
 リサ:「ドリンクとデザートも頼んでいい?」
 善場:「それはいいですよ」

 というわけで、料理は全員蟹ピラフを注文した。

 店員:「お待たせしました!」

 しばらくして、蟹ピラフが出来上がる。

 

 愛原:「殻付きって、こんなのなんだ……」

 もちろん、殻無しのバージョンもある。
 ただ、殻付きの場合、身を剥きながら食べないといけない。

 愛原:「では早速、頂きます」

 バリボリバリボリ!

 愛原:「ファッ!?」

 何か、大きな咀嚼音が聞こえて来たと思ったら、鬼3人娘は殻ごと食べているのだった。
 リサならともかく、上野姉妹まで!

 愛原:「キ、キミ達……」
 リサ:「ズワイガニ、美味しいね」
 凛:「ハイ!久しぶりに食べます!」
 理子:「殻の歯ごたえが素晴らしいと思いますが!」

 リサは学食では、主に肉関係を注文するので、あまり目立たないらしいのだが、たまに魚関係を注文する場合、骨ごと食べてしまうので目立つらしい。
 家でも秋刀魚や鯵の開きなんか出て来たりすると、丸ごと食べてしまうほどだ。

 愛原:「こいつら、築地で海鮮丼やたこ焼き食べて、ここでもピラフ食べてますからね?」
 善場:「リサの場合、これくらい食べないと、体内のウィルスや寄生虫の維持ができないのでしょう。寄生虫は餓死するだけですが、ウィルスの暴走だけは避けなければなりません」
 愛原:「空腹状態の方が暴走しやすいと?」
 善場:「そういうことです。今はTウィルスとGウィルスがバランス良く同居しているので、リサの与り知らぬ所で変異を続けるというようなことはありませんが、空腹状態が続くと、そのバランスが崩れる恐れがあります」

 リサがこうやって理性を保ち、人間の姿でいられ続けることは、奇跡に近いのだ。

 愛原:「なるほど、そういうものですか……」
 理子:「お姉ちゃん、お魚キレイだよ」
 凛:「魚群だね」
 愛原:「魚群!?」

 私はバッと水槽を見た。
 普通に、魚が5~6匹群れて泳いでいるだけだった。

 愛原:「カニとかエビとかタコとか……」
 高橋:「これでマリンちゃんが泳いでたら、もうサイコーって感じっスか、先生?」
 愛原:「そ、そうだな」
 リサ:「わたしで良かったら、ウリンのコスプレして泳ごうか?」
 高橋:「オマエが泳いだ後、水槽には何も残らなくなるだろうが」
 善場:「それか、Gウィルスに冒された魚がクリーチャー化する恐れがあるので、やめてください」
 高橋:「そこはTウィルスじゃねぇんだ?」
 善場:「Tウィルスは水の中では感染しません。そこで水の中でも使えるようにと開発されたのが、Tアビスなのです」
 高橋:「ゾンビどころか、別の化け物に変化させるヤツね」
 愛原:「結局、ヴェルトロはどうなったのでしょう?」
 善場:「日本での用は済んだとばかりに、もう国内にはいないかもしれませんね。それより私達が今追っているのは、“青いアンブレラ”ですので」
 愛原:「そんな犯罪組織でしたっけ?」
 善場:「暴力団や半グレ組織の如く、反社会勢力として認定するよう、政府に働きかけています」

 因みに斉藤元社長の意識は、まだ戻っていない。

[同日13:58.天候:晴 同地区内 東京ビックサイトバス停→都営バス東16系統車内]

 昼食を食べた後、善場主任とは東京ビックサイト駅で別れた。
 主任はゆりかもめに乗って、新橋へ戻るようである。
 私達はというと、東京ビックサイトのバスプールに行き、そこから都営バスに乗った。
 ここから東京駅に直通する路線バスは3つあるが、私達が乗ったのは、一番遠回りする方。
 但し、一番景色の良い所を走る路線でもある。
 JRバスならほぼ直行なのだが、本数が少なく、ちょうどいいタイミングで発車する便が無い為。
 また、バス会社が違うので、せっかくの一日乗車券も使えない。
 バスに乗り込むと、後ろの席に座った。
 この時点では、まだ乗客は少ない。

〔発車致します。お掴まりください〕

 上野姉妹にとっては、最後の都バス旅が始まった。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうござます。このバスは、豊洲駅前経由、東京駅八重洲口行きでございます。次は東京ビックサイト駅前、東京ビックサイト駅前でございます〕

 この路線のハイライトは、橋を渡るシーンのいくつか。
 特に、中央大橋を渡る時の景色の良さはオススメである。
 他にも春海橋を渡る時とか、朝潮橋を渡る時なども川向うに東京スカイツリーが見えるほど。
 最後にそういう景色を楽しんで、帰ってもらいたいものだ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「半鬼... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「半鬼... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事