報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“魔女エレーナの日常” 「エレーナの仕事ぶり」

2020-01-27 19:39:28 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月27日16:00.天候:曇 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 エレーナ:「本日から2泊のご利用ですね。それでは、こちらがルームキーでございます。4階の402号室を御用意させて頂きました。ごゆっくりお過ごしください。お食事ですが、ロビーの奥にレストランがございます。創作料理がメインですが、朝食はバイキングです。是非ご利用ください」

 エレーナはフロントに立ち、宿泊客の相手をしていた。
 レストランはエレーナの先輩で、ポーリン組のOGであるキャサリンが切り盛りしている。
 ホテルにはテナントとして入居している。
 宿泊客が鍵を受け取って、エレベーターに乗ろうとした時だった。

 宿泊客:「おっと!」
 リリアンヌ:「フヒッ!?」

 ドアが開いた瞬間、ぶつかりそうになった。

 リリアンヌ:「・・・・・・!」

 びっくりした為に自動通訳魔法具の効果が切れ、リリアンヌの言葉は元のフランス語になった。

 エレーナ:「申し訳ありません」

 エレーナがフロントから出て来た。
 宿泊客は特にクレームも付けず、そのままエレベーターで上がって行った。

 エレーナ:「こら、リリィ。いきなり飛び出すなっての」
 リリィ:「フヒ、ごめんなさい……」
 エレーナ:「学校は……あ、そうか。魔界とは時差があるからな。今日が休みなのか」
 リリィ:「そうなんです……」

 リリアンヌは魔界の学校の制服を着ている。
 セーラー服とブレザーを折衷したかのようなデザインだ。

 リリィ:「今日、先輩の部屋に泊めてください」
 エレーナ:「ああ、分かった。上段ベッド使いな」
 リリィ:「フヒッ、ありがとうございます」
 エレーナ:「ほら、部屋の鍵とエレベーターの鍵」

 エレーナは自室の鍵とエレベーターを地下まで動かす為の起動キーを渡した。
 地下室から乗る分にはエレベーターは地下まで下りてくるのだが、地上階から地下階へはキーが無いと行けないようになっている。
 地下階は基本的に機械室やボイラー室しか無く、エレーナの部屋はかつてのボイラー技士室を改装したものであった。

 リリィ:「お世話になります……」

 魔界への出入口はホテルの地下階にある。
 学校が休みの日、リリィは寮を出てここに来るのが日課になっていた。

 鈴木:「やあ、こんにちは。美人魔道士」
 リリィ:「フヒッ、ムッシュ鈴木……」
 エレーナ:「御予約の鈴木様ですね。こちらに御記入をお願い致します」
 鈴木:「そんな他人行儀な……」
 エレーナ:「私は今仕事中なんだから、当たり前だろ」
 鈴木:「それもそうだ」

 鈴木は宿泊者シートに慣れた手つきでボールペンを走らせた。

 リリィ:「ムッシュ鈴木、また泊まる……ですか?」
 鈴木:「そうだよ。俺はこのホテルの常連だからね」
 エレーナ:「いつもご利用ありがとうございます」
 鈴木:「明日は都内で2cm雪が積もるらしいよ。雪かき手伝おうか?」
 エレーナ:「お客様はどうぞ気になさらず、ごゆっくりお寛ぎください」
 鈴木:「明日は夜勤明けだろ?もし良かったら、一緒に何か食べに行かない?」
 エレーナ:「お客様、ただいま勤務中ですので」
 鈴木:「そうか。それじゃしょうがない。リリィちゃん、俺と行くか?」
 リリィ:「フヒッ!?わ、わらひとですか!?」
 エレーナ:「ロリペド野郎はお断りだぜ、あぁっ!?」
 鈴木:「リリィちゃん、もう14歳だろ?ロリって歳でも……」
 エレーナ:「見た目はほぼJSだから似たようなもんだっ、この!」
 リリィ:「先輩、ヒドい……」
 鈴木:「マリアさんにしろ、リリィちゃんにしろ、年齢の割には小さく見えるコ、多くない?俺達日本人からすれば、こういう外国人って早熟で、実年齢より上に見えるものなんだけど……」
 エレーナ:「私はいくつに見える?」
 鈴木:「俺と同じくらい?」
 エレーナ:「はい、ブブー。アンタより100歳以上年上」
 鈴木:「ウソだぁ!……ってか、もしそうだとしてもだよ?結局、『実年齢より幼く見える』ことに変わりは無いじゃないか」
 エレーナ:「それもそうか」
 リリィ:「先輩。せっかくムッシュ鈴木が御馳走してくれると言ってるんで、皆で行きましょう。フヒヒヒ……」
 エレーナ:「オマエも言えるようになったなぁ……。まあ、いいや。せっかくだから、奢らせてやるぜ」
 鈴木:「そう来なくちゃ。(でもぶっちゃけ、エレーナと2人きりになりたいんだけどな……)」
 リリィ:「先輩、夕食は……?」
 エレーナ:「私は賄いがあるからな。リリィ、適当に食べて来い」
 鈴木:「俺と一緒に食うか?」
 リリィ:「フヒッ!?」
 エレーナ:「おい、鈴木。勝手に……」
 鈴木:「そこのレストランならいいだろ?キミの先輩が経営していることだし」
 リリィ:「キャシー先生のレストラン……」
 エレーナ:「まあ……それならいいけど……」
 鈴木:「是非とも『飴玉婆さん』の武勇伝について聞いてみたいものだ」
 エレーナ:「いいのか?人間側から聞けば、恐らく不愉快な内容だと思うぞ?」

 舐めれば幸せになる魔法の飴玉を無償で高校生達に配っていたキャサリン。
 しかし中には逆に不幸になるハズレの飴玉があったり、不遜な態度を取って来たクソガキには復讐をかましたりとの伝説もある。
 今はそういう飴玉は作っていないとのことだが……。

 鈴木:「もし良かったら、俺にも作ってもらおうかなぁ……なんて。もちろん、お金は出す」
 エレーナ:「その材料を知ったら、絶対メシマズになること請け合い」
 鈴木:「何か言った?」
 エレーナ:「いや、何でもない。キャサリン先輩も話好きのオバサンだから、せいぜい話聞いてあげて」
 鈴木:「りょーかい。……あ、そうそう。今日、稲生先輩が帰国したんだってね。今頃、家にいるのかな」
 エレーナ:「ウラジオストクに住んでる親戚の家を訪ねたらしいな。稲生氏にとっては親戚宅、マリアンナ達に取っては同門の士訪問か」

 リリィが先に鍵を操作してエレベーターを地下まで行けるようにした。

 エレーナ:「いらっしゃいませー」

 次の宿泊客が入って来たので、エレーナは再び接客モードへと切り替えた。
 今度は中国語を話す客だったので、エレーナは持ち前のバイリンガルで対応した。

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