報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「リサと出迎え」

2021-03-19 15:42:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月12日08:00.天候:雨 東京都墨田区内某所 東京中央学園墨田中学校]

 斉藤絵恋:「おはよう、リサさん」
 リサ:「おはよう、サイトー」
 絵恋:「いよいよ、今日で最後だね」
 リサ:「? 明日、大掃除があるし、卒業式は15日だよ?」
 絵恋:「あ、いや、そういうことじゃなくて、普通に登校するのが最後ねってこと」
 リサ:「ああ」

 リサと絵恋は昇降口で上履きに履き替えた。

 絵恋:「この制服を着るのも、いよいよ最後……。明日は大掃除だから、ずっとジャージだし」
 リサ:「卒業式で着る。それまで」

 中高一貫校なので、中等部の生徒の大半は高等部へそのまま上がるのだが、通う校舎は変わるし、しかも東京中央学園は完全一貫校ではない。
 中等部を卒業して他の高校へ通う者や、高等部から入学してくる者も一部にはいる。
 その為、中高一貫校でも、中等部3年生の終わりには卒業式を行うし、高等部1年生最初の行事として入学式を行うのである。

 絵恋:「リサさん、今日ヒマ?」
 リサ:「今日は先生達を迎えに行く」
 絵恋:「愛原先生?今日退院なの?」
 リサ:「ん。今はまだ病院だろうけど、午前中には電車に乗って、昼過ぎに東京駅に着くはず」
 絵恋:「そうなの。じゃあ、私も一緒に行っていい?」
 リサ:「いいよ」
 絵恋:「萌えぇぇぇぇっ!!」
 リサ:(何故そこで悶絶?!)

[同日13:24.天候:雨 同区菊川 都営バス菊川駅前停留所]

 学校が終わったリサ達は昼食を取ると、一旦帰宅した。
 私服に着替えてから、また外出する。
 バス停へ向かう途中、信号待ちをしている間に絵恋が自分の傘を閉じ、リサの傘の中に入って来る。

 リサ:「何してるの?」
 絵恋:「あら、リサさん、知らないの?相合傘って言うのよ」
 リサ:「いや、知ってるけど、何でわざわざ……」
 絵恋:「これも愛の証なのよ」
 リサ:「愛の証……」

 リサは愛原と自分が相合傘をしている様子を想像した。

 リサ:「むふー。悪くないかも」
 絵恋:「でしょ?でしょ?このままバス停まで行きましょ!」

 バス停に行き、バスを待つ。

 絵恋:「新庄に頼めば、丸の内から飛んで来てくれるはずよ?どうせお父さんが仕事の最中は、地下駐車場でヒマしてるはずだから。何なら、タクシーチケットももらってるから、タクシーで東京駅まで行っても……」
 リサ:「別にいいよ。バスで行こう」
 絵恋:「リサさんがそう言うならぁ……」

 そんなことを話しているうちに、都営バスがやってきた。
 塗装はオリジナルのもので、車種自体も珍しいものではなく、全国的に見られるオーソドックスなノンステップバスである。

 運転手:「東京駅丸の内北口行きです」

 都営バスの中でもローカル線に当たる東20系統。
 時刻表で見ても、1時間に1本しか無い。
 前扉から乗って、先にPasmoで運賃を払った。
 そして、後ろの2人席に腰かけた。
 路線バスの2人掛け席は大の大人2人が座ると狭いが、中学生の少女2人が座るのにはちょうど良いサイズだった。

〔発車致します。お掴まりください〕

 前扉と中扉両方が同時に閉まり、バスが走り出す。
 外は雨なので、大きなフロントガラスの大きなワイパーが規則正しい動きで、左右に扇を描きながら雨を拭き取っていた。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは東京都現代美術館、門前仲町、日本橋経由、東京駅丸の内北口行きでございます。次は森下五丁目、森下五丁目でございます。……〕

 絵恋:「ねえ、リサさん」

 通路側に座っている絵恋が、窓側に座っているリサに話し掛ける。

 リサ:「なに?」
 絵恋:「卒業旅行なんだけどォ、どこがいいか決めた?」
 リサ:「卒業旅行……」
 絵恋:「ほら、卒業式が終わって、高等部の入学式まで2週間くらい春休みじゃない?」
 リサ:「何か、先生が、『斉藤社長から依頼があるだろう』みたいなこと言ってた」
 絵恋:「そのまさかなのよォ!お父さん、また『仕事が忙しい』って言って、旅行に連れてってくれないの!」
 リサ:「いや、春休みに休める大人っていないと思う。今月の祝日、20日の一日だけだし。しかも土曜日。勿体ない。金曜日か月曜日なら3連休なのに」
 絵恋:「そうなのよねぇ」
 リサ:「サイトーんち、金持ちでしょ?サイトーんちの金の力で、今月もう一日くらい休みを作れない?」

 リサがメチャクチャなことを言う。

 絵恋:「ごめんなさい。うちの一族、情けないから、誰一人として国会議員になってないのよォ!伯父様は公明党の推薦外されて落選したし、叔母様は万年埼玉県議会議員だし」
 リサ:「いや、親戚に県議会議員がいるだけでも凄いと思う」
 絵恋:「ありがとう!リサさん!」
 リサ:「(サイトーの叔母さん、何党の議員なんだろう?まあいいや。そんなことより……)それで、サイトーのお父さん、先生にどこへ連れてけって依頼するんだろう?」
 絵恋:「分かんないけど、多分国内だと思うわ。お父さん、色んな企業と取引している上、自分も株主だったりするし、色々と優待券とか持ってるみたいだけど……」
 リサ:「さすがに全国のホテルの優待券をトランプのようにして、先生に引かせた時には私もヒいた」
 絵恋:「うん、あれは私もドン引きしたわ。あの時はさすがのお母さんも、思いっ切り突っ込んだからね。もちろん私も」

 妻や娘に強いツッコミを入れられたら、ヘコむだろう。

 リサ:「今回も温泉だろうなぁ。先生、温泉好きだから」
 絵恋:「それ関係の優待券もあるから、それを絶対に使わせるわね。愛原先生に行き先を決めさせるだろうから、決まったら教えてちょうだいね」
 リサ:「ん。サイトーは行きたい所とか無いの?」
 絵恋:「いいのよ。私はリサさんの行く所なら、どこへでも行くから。そう、地獄の果ての果ての果てまでも」
 リサ:(サイトーにバーサーカー状態で追跡されたタイラント君、逆に怖かっただろうなぁ……)

[同日13:56.天候:雨 東京都千代田区大手町 都営バス呉服橋停留所]

〔ピンポーン♪ 次は呉服橋、呉服橋でございます。地下鉄大手町駅、東京駅日本橋口へおいでの方は、こちらでお降りください。次は、呉服橋でございます〕

 リサ:「ん、ここで降りよう」

 リサは降車ボタンを押した。

 絵恋:「そうねぇ。東北新幹線なら、終点まで乗っても歩く距離はそんなに変わらないかもね。それに、雨のせいか、段々道が混んで来たし……。渋滞に巻き込まれる前に降りた方がいいかもね」
 リサ:「ん、やっぱり」

 バスは停留所の名前にもなっている呉服橋交差点を越えた。
 そして、JRバスの降車場ではなく、永代通り沿いのバス停に停車する。

〔「呉服橋です」〕

 バスを降りると、すぐに傘を差した。

 リサ:「先生とお兄ちゃんの分もあるから大変」

 リサは自分の傘の他に、2本の傘を持っていた。

 絵恋:「さすがに帰りはタクシーじゃない?」
 リサ:「どうだろう?」

 そんなことを話しながら、2人は多くのサラリーマンが行き交う永代通りから東京駅日本橋口のロータリーへと入って行った。

 
(東京駅日本橋口。ロータリーはJRバスの到着場の為、多くのJRバスが停車している。尚、“やきそばエクスプレス”もここに到着する。聳え立つビルはJR東海丸の内中央ビル)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「愛原... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「愛原... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事