[3月12日08:00.天候:雨 東京都墨田区内某所 東京中央学園墨田中学校]
斉藤絵恋:「おはよう、リサさん」
リサ:「おはよう、サイトー」
絵恋:「いよいよ、今日で最後だね」
リサ:「? 明日、大掃除があるし、卒業式は15日だよ?」
絵恋:「あ、いや、そういうことじゃなくて、普通に登校するのが最後ねってこと」
リサ:「ああ」
リサと絵恋は昇降口で上履きに履き替えた。
絵恋:「この制服を着るのも、いよいよ最後……。明日は大掃除だから、ずっとジャージだし」
リサ:「卒業式で着る。それまで」
中高一貫校なので、中等部の生徒の大半は高等部へそのまま上がるのだが、通う校舎は変わるし、しかも東京中央学園は完全一貫校ではない。
中等部を卒業して他の高校へ通う者や、高等部から入学してくる者も一部にはいる。
その為、中高一貫校でも、中等部3年生の終わりには卒業式を行うし、高等部1年生最初の行事として入学式を行うのである。
絵恋:「リサさん、今日ヒマ?」
リサ:「今日は先生達を迎えに行く」
絵恋:「愛原先生?今日退院なの?」
リサ:「ん。今はまだ病院だろうけど、午前中には電車に乗って、昼過ぎに東京駅に着くはず」
絵恋:「そうなの。じゃあ、私も一緒に行っていい?」
リサ:「いいよ」
絵恋:「萌えぇぇぇぇっ!!」
リサ:(何故そこで悶絶?!)
[同日13:24.天候:雨 同区菊川 都営バス菊川駅前停留所]
学校が終わったリサ達は昼食を取ると、一旦帰宅した。
私服に着替えてから、また外出する。
バス停へ向かう途中、信号待ちをしている間に絵恋が自分の傘を閉じ、リサの傘の中に入って来る。
リサ:「何してるの?」
絵恋:「あら、リサさん、知らないの?相合傘って言うのよ」
リサ:「いや、知ってるけど、何でわざわざ……」
絵恋:「これも愛の証なのよ」
リサ:「愛の証……」
リサは愛原と自分が相合傘をしている様子を想像した。
リサ:「むふー。悪くないかも」
絵恋:「でしょ?でしょ?このままバス停まで行きましょ!」
バス停に行き、バスを待つ。
絵恋:「新庄に頼めば、丸の内から飛んで来てくれるはずよ?どうせお父さんが仕事の最中は、地下駐車場でヒマしてるはずだから。何なら、タクシーチケットももらってるから、タクシーで東京駅まで行っても……」
リサ:「別にいいよ。バスで行こう」
絵恋:「リサさんがそう言うならぁ……」
そんなことを話しているうちに、都営バスがやってきた。
塗装はオリジナルのもので、車種自体も珍しいものではなく、全国的に見られるオーソドックスなノンステップバスである。
運転手:「東京駅丸の内北口行きです」
都営バスの中でもローカル線に当たる東20系統。
時刻表で見ても、1時間に1本しか無い。
前扉から乗って、先にPasmoで運賃を払った。
そして、後ろの2人席に腰かけた。
路線バスの2人掛け席は大の大人2人が座ると狭いが、中学生の少女2人が座るのにはちょうど良いサイズだった。
〔発車致します。お掴まりください〕
前扉と中扉両方が同時に閉まり、バスが走り出す。
外は雨なので、大きなフロントガラスの大きなワイパーが規則正しい動きで、左右に扇を描きながら雨を拭き取っていた。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは東京都現代美術館、門前仲町、日本橋経由、東京駅丸の内北口行きでございます。次は森下五丁目、森下五丁目でございます。……〕
絵恋:「ねえ、リサさん」
通路側に座っている絵恋が、窓側に座っているリサに話し掛ける。
リサ:「なに?」
絵恋:「卒業旅行なんだけどォ、どこがいいか決めた?」
リサ:「卒業旅行……」
絵恋:「ほら、卒業式が終わって、高等部の入学式まで2週間くらい春休みじゃない?」
リサ:「何か、先生が、『斉藤社長から依頼があるだろう』みたいなこと言ってた」
絵恋:「そのまさかなのよォ!お父さん、また『仕事が忙しい』って言って、旅行に連れてってくれないの!」
リサ:「いや、春休みに休める大人っていないと思う。今月の祝日、20日の一日だけだし。しかも土曜日。勿体ない。金曜日か月曜日なら3連休なのに」
絵恋:「そうなのよねぇ」
リサ:「サイトーんち、金持ちでしょ?サイトーんちの金の力で、今月もう一日くらい休みを作れない?」
リサがメチャクチャなことを言う。
絵恋:「ごめんなさい。うちの一族、情けないから、誰一人として国会議員になってないのよォ!伯父様は公明党の推薦外されて落選したし、叔母様は万年埼玉県議会議員だし」
リサ:「いや、親戚に県議会議員がいるだけでも凄いと思う」
絵恋:「ありがとう!リサさん!」
リサ:「(サイトーの叔母さん、何党の議員なんだろう?まあいいや。そんなことより……)それで、サイトーのお父さん、先生にどこへ連れてけって依頼するんだろう?」
絵恋:「分かんないけど、多分国内だと思うわ。お父さん、色んな企業と取引している上、自分も株主だったりするし、色々と優待券とか持ってるみたいだけど……」
リサ:「さすがに全国のホテルの優待券をトランプのようにして、先生に引かせた時には私もヒいた」
絵恋:「うん、あれは私もドン引きしたわ。あの時はさすがのお母さんも、思いっ切り突っ込んだからね。もちろん私も」
妻や娘に強いツッコミを入れられたら、ヘコむだろう。
リサ:「今回も温泉だろうなぁ。先生、温泉好きだから」
絵恋:「それ関係の優待券もあるから、それを絶対に使わせるわね。愛原先生に行き先を決めさせるだろうから、決まったら教えてちょうだいね」
リサ:「ん。サイトーは行きたい所とか無いの?」
絵恋:「いいのよ。私はリサさんの行く所なら、どこへでも行くから。そう、地獄の果ての果ての果てまでも」
リサ:(サイトーにバーサーカー状態で追跡されたタイラント君、逆に怖かっただろうなぁ……)
[同日13:56.天候:雨 東京都千代田区大手町 都営バス呉服橋停留所]
〔ピンポーン♪ 次は呉服橋、呉服橋でございます。地下鉄大手町駅、東京駅日本橋口へおいでの方は、こちらでお降りください。次は、呉服橋でございます〕
リサ:「ん、ここで降りよう」
リサは降車ボタンを押した。
絵恋:「そうねぇ。東北新幹線なら、終点まで乗っても歩く距離はそんなに変わらないかもね。それに、雨のせいか、段々道が混んで来たし……。渋滞に巻き込まれる前に降りた方がいいかもね」
リサ:「ん、やっぱり」
バスは停留所の名前にもなっている呉服橋交差点を越えた。
そして、JRバスの降車場ではなく、永代通り沿いのバス停に停車する。
〔「呉服橋です」〕
バスを降りると、すぐに傘を差した。
リサ:「先生とお兄ちゃんの分もあるから大変」
リサは自分の傘の他に、2本の傘を持っていた。
絵恋:「さすがに帰りはタクシーじゃない?」
リサ:「どうだろう?」
そんなことを話しながら、2人は多くのサラリーマンが行き交う永代通りから東京駅日本橋口のロータリーへと入って行った。
(東京駅日本橋口。ロータリーはJRバスの到着場の為、多くのJRバスが停車している。尚、“やきそばエクスプレス”もここに到着する。聳え立つビルはJR東海丸の内中央ビル)
斉藤絵恋:「おはよう、リサさん」
リサ:「おはよう、サイトー」
絵恋:「いよいよ、今日で最後だね」
リサ:「? 明日、大掃除があるし、卒業式は15日だよ?」
絵恋:「あ、いや、そういうことじゃなくて、普通に登校するのが最後ねってこと」
リサ:「ああ」
リサと絵恋は昇降口で上履きに履き替えた。
絵恋:「この制服を着るのも、いよいよ最後……。明日は大掃除だから、ずっとジャージだし」
リサ:「卒業式で着る。それまで」
中高一貫校なので、中等部の生徒の大半は高等部へそのまま上がるのだが、通う校舎は変わるし、しかも東京中央学園は完全一貫校ではない。
中等部を卒業して他の高校へ通う者や、高等部から入学してくる者も一部にはいる。
その為、中高一貫校でも、中等部3年生の終わりには卒業式を行うし、高等部1年生最初の行事として入学式を行うのである。
絵恋:「リサさん、今日ヒマ?」
リサ:「今日は先生達を迎えに行く」
絵恋:「愛原先生?今日退院なの?」
リサ:「ん。今はまだ病院だろうけど、午前中には電車に乗って、昼過ぎに東京駅に着くはず」
絵恋:「そうなの。じゃあ、私も一緒に行っていい?」
リサ:「いいよ」
絵恋:「萌えぇぇぇぇっ!!」
リサ:(何故そこで悶絶?!)
[同日13:24.天候:雨 同区菊川 都営バス菊川駅前停留所]
学校が終わったリサ達は昼食を取ると、一旦帰宅した。
私服に着替えてから、また外出する。
バス停へ向かう途中、信号待ちをしている間に絵恋が自分の傘を閉じ、リサの傘の中に入って来る。
リサ:「何してるの?」
絵恋:「あら、リサさん、知らないの?相合傘って言うのよ」
リサ:「いや、知ってるけど、何でわざわざ……」
絵恋:「これも愛の証なのよ」
リサ:「愛の証……」
リサは愛原と自分が相合傘をしている様子を想像した。
リサ:「むふー。悪くないかも」
絵恋:「でしょ?でしょ?このままバス停まで行きましょ!」
バス停に行き、バスを待つ。
絵恋:「新庄に頼めば、丸の内から飛んで来てくれるはずよ?どうせお父さんが仕事の最中は、地下駐車場でヒマしてるはずだから。何なら、タクシーチケットももらってるから、タクシーで東京駅まで行っても……」
リサ:「別にいいよ。バスで行こう」
絵恋:「リサさんがそう言うならぁ……」
そんなことを話しているうちに、都営バスがやってきた。
塗装はオリジナルのもので、車種自体も珍しいものではなく、全国的に見られるオーソドックスなノンステップバスである。
運転手:「東京駅丸の内北口行きです」
都営バスの中でもローカル線に当たる東20系統。
時刻表で見ても、1時間に1本しか無い。
前扉から乗って、先にPasmoで運賃を払った。
そして、後ろの2人席に腰かけた。
路線バスの2人掛け席は大の大人2人が座ると狭いが、中学生の少女2人が座るのにはちょうど良いサイズだった。
〔発車致します。お掴まりください〕
前扉と中扉両方が同時に閉まり、バスが走り出す。
外は雨なので、大きなフロントガラスの大きなワイパーが規則正しい動きで、左右に扇を描きながら雨を拭き取っていた。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは東京都現代美術館、門前仲町、日本橋経由、東京駅丸の内北口行きでございます。次は森下五丁目、森下五丁目でございます。……〕
絵恋:「ねえ、リサさん」
通路側に座っている絵恋が、窓側に座っているリサに話し掛ける。
リサ:「なに?」
絵恋:「卒業旅行なんだけどォ、どこがいいか決めた?」
リサ:「卒業旅行……」
絵恋:「ほら、卒業式が終わって、高等部の入学式まで2週間くらい春休みじゃない?」
リサ:「何か、先生が、『斉藤社長から依頼があるだろう』みたいなこと言ってた」
絵恋:「そのまさかなのよォ!お父さん、また『仕事が忙しい』って言って、旅行に連れてってくれないの!」
リサ:「いや、春休みに休める大人っていないと思う。今月の祝日、20日の一日だけだし。しかも土曜日。勿体ない。金曜日か月曜日なら3連休なのに」
絵恋:「そうなのよねぇ」
リサ:「サイトーんち、金持ちでしょ?サイトーんちの金の力で、今月もう一日くらい休みを作れない?」
リサがメチャクチャなことを言う。
絵恋:「ごめんなさい。うちの一族、情けないから、誰一人として国会議員になってないのよォ!伯父様は公明党の推薦外されて落選したし、叔母様は万年埼玉県議会議員だし」
リサ:「いや、親戚に県議会議員がいるだけでも凄いと思う」
絵恋:「ありがとう!リサさん!」
リサ:「(サイトーの叔母さん、何党の議員なんだろう?まあいいや。そんなことより……)それで、サイトーのお父さん、先生にどこへ連れてけって依頼するんだろう?」
絵恋:「分かんないけど、多分国内だと思うわ。お父さん、色んな企業と取引している上、自分も株主だったりするし、色々と優待券とか持ってるみたいだけど……」
リサ:「さすがに全国のホテルの優待券をトランプのようにして、先生に引かせた時には私もヒいた」
絵恋:「うん、あれは私もドン引きしたわ。あの時はさすがのお母さんも、思いっ切り突っ込んだからね。もちろん私も」
妻や娘に強いツッコミを入れられたら、ヘコむだろう。
リサ:「今回も温泉だろうなぁ。先生、温泉好きだから」
絵恋:「それ関係の優待券もあるから、それを絶対に使わせるわね。愛原先生に行き先を決めさせるだろうから、決まったら教えてちょうだいね」
リサ:「ん。サイトーは行きたい所とか無いの?」
絵恋:「いいのよ。私はリサさんの行く所なら、どこへでも行くから。そう、地獄の果ての果ての果てまでも」
リサ:(サイトーにバーサーカー状態で追跡されたタイラント君、逆に怖かっただろうなぁ……)
[同日13:56.天候:雨 東京都千代田区大手町 都営バス呉服橋停留所]
〔ピンポーン♪ 次は呉服橋、呉服橋でございます。地下鉄大手町駅、東京駅日本橋口へおいでの方は、こちらでお降りください。次は、呉服橋でございます〕
リサ:「ん、ここで降りよう」
リサは降車ボタンを押した。
絵恋:「そうねぇ。東北新幹線なら、終点まで乗っても歩く距離はそんなに変わらないかもね。それに、雨のせいか、段々道が混んで来たし……。渋滞に巻き込まれる前に降りた方がいいかもね」
リサ:「ん、やっぱり」
バスは停留所の名前にもなっている呉服橋交差点を越えた。
そして、JRバスの降車場ではなく、永代通り沿いのバス停に停車する。
〔「呉服橋です」〕
バスを降りると、すぐに傘を差した。
リサ:「先生とお兄ちゃんの分もあるから大変」
リサは自分の傘の他に、2本の傘を持っていた。
絵恋:「さすがに帰りはタクシーじゃない?」
リサ:「どうだろう?」
そんなことを話しながら、2人は多くのサラリーマンが行き交う永代通りから東京駅日本橋口のロータリーへと入って行った。
(東京駅日本橋口。ロータリーはJRバスの到着場の為、多くのJRバスが停車している。尚、“やきそばエクスプレス”もここに到着する。聳え立つビルはJR東海丸の内中央ビル)
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