[2月6日10時00分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]
月曜日になり、私は高橋を伴って、新橋のデイライトさんの所へ書類を持って行った。
愛原「こちらが、栃木の件やそれに関連して発生した経費の請求書です。宜しく御精査願います」
善場「かしこまりました。受領させて頂きます。精査の結果、決定した金額を例の口座に振り込ませて頂きます」
愛原「ありがとうございます」
それから、打ち合わせに入る。
あれから栃木県警やBSAAの方で大規模な山狩りをしたものの、鬼化した栗原蓮華を見つけることはできなかったという。
善場「ただ……所長方もテレビなどで聞き及んでおられるかとは思いますが、事件は発生してしまいました」
愛原「はい。それは知っています」
昨日の日曜日の深夜、群馬県の山奥にあるスキーペンションにおいて、侵入した何者かに宿泊客やスタッフらが食い殺される事件が起きた。
ニュースでは冬眠できなかった熊が侵入して……ということになっていたが……。
愛原「群馬県の山奥のペンションの事件ですね?」
善場「はい。さすが、愛原所長です」
愛原「事件の舞台となった奥日光からは、国道120号線で繋がっています。蓮華も元は人間ですから、いくら鬼化したとはいえ、あまり何も無い、ましてや雪深い山道を進むのは酷でしょう。人目に付かないようにしつつ、しかし国道からはそんなに離れずに進んだのだろうと予想できます」
善場「素晴らしい推理です。何か、根拠がありましたか?」
愛原「実はこれ、蓮華自身が言ってたことなんです」
善場「と、仰いますと?」
愛原「蓮華が鬼化するだいぶ前、1人で日本版リサ・トレヴァーを退治したことがありました。リサ・トレヴァーの一部は、西日本に潜伏していましたから」
善場「そうですね」
愛原「その時、蓮華が言ってたんですよ。さっきの私の言葉」
善場「なるほど。鬼化した場合、人間だった頃の記憶は殆ど失われると言います。但し、よほどインパクトのある言葉や、体で覚えた習慣などは身に付いたままであるとも言いますね。今は鬼狩りの剣士としての記憶は失われているようですが、しかし体では覚えているはずなので、いずれはまた剣を握るようになるかもしれませんね。つまりは、自分が鬼狩りをしていた時の作戦が記憶に残っていて、自分もそうしていると」
愛原「はい、そうです」
善場「ペンションが襲われた時、そこにあった金品も盗まれていました。だから当初、群馬県警では、人間の強盗でも押し入ったのかと思ったそうですが、しかし……」
愛原「蓮華が人間だった頃の習慣で、金品に興味を示し、持ち去った可能性もあるわけですね」
善場「そういうことです」
愛原「すると今、蓮華は群馬県にいると?」
善場「可能性はあります。今週は捜索範囲を群馬県、果ては隣県の長野県や山梨県にも広げて行う予定です」
愛原「本当に大事になりましたな」
善場「ですので栗原家、そして、栗原家に『化学肥料』を渡した愛原公一氏の罪は重いのです」
愛原「本当に伯父さん、犯人の1人なんですか?」
善場「実はここだけの話、栗原家の関係者が一斉に逮捕される予定です。もう、逮捕状は取りましたので。今は任意での事情聴取ですが、それ以降はもっと強めに事情聴取ができると思います。その時、愛原公一氏の名前が出て来るでしょう。デイライトとしては、その前に証拠を掴んでおきたいのです。今、鍵の方はどうなってますか?」
愛原「今のところ、リサと我那覇絵恋がやり取りをしている最中です。絵恋はリサに情報を渡す見返りに、物品を要求してまして、それが届くかどうか……」
その時、私のスマホにメール着信があった。
愛原「ちょっとすいません」
私はメールを確認した。
それは日本郵便からのメールだった。
どうやら無事に、リサのレターパックが我那覇家に届いたらしい。
向こうに配達がされると、そのお知らせメールが届くサービスに登録したのだ。
愛原「リサが送った情報料が、無事に絵恋の元に届いたようです。これを持って、絵恋がリサに情報を渡す手筈になっています。それがどのような形なのかは、まだ不明ですが……」
善場「なるべく急いで頂きたいものですね」
愛原「もちろん私も、リサにはそのように言っておきました。今、リサは学校で、絵恋もそうでしょうから、少しお待ちください」
善場「かしこまりました。絵恋は沖縄の沖縄中央学園那覇高校に通っているのでしたね?」
愛原「そうです。東京中央学園と違って、モノレールの沿線から離れているということもあり、スクールバスで通ってるのだとか」
善場「なるほど。そうですか」
そして、『魔王軍沖縄支部』を結成し、リサの力添えを得て、沖縄中央学園でもブルマが細々とではあるが、復活した。
善場「何か動きがありましたら、また教えてください」
愛原「承知しました。それと、1つ気になっていることがありまして……」
善場「何でしょうか?」
愛原「栗原蓮華の妹、栗原愛理のことです。今、東京中央学園中等部の3年生だと思いますが……。姉が鬼化してしまったので、さぞかしショックだろうと思います」
善場「! なるほど。それはすっかり忘れておりました。すぐに保護するよう、警察に伝えておきます」
愛原「主任?」
善場「幸いリサは一人っ子ですし、遠い親戚の上野利恵氏も鬼化しているので、あまり警戒の必要は無かったのですが……。血の繋がった兄弟ほど、血肉が美味い人間はいないと、それまで人食いをしたことのあるBOWは言うそうです」
愛原「ええっ!?」
善場「今のところは栗原蓮華も都内には戻れないわけですし、人間だった頃の記憶が曖昧化していると思いますが、警戒するに越したことはないでしょう。万が一仮に鉢合わせした場合、蓮華は間違いなく愛理さんを食らおうとするでしょう。そして、身内の血肉を食らった鬼は間違いなく強化します。恐らく、リサよりも強くなるはずです。それだけは何とか避けないといけません」
高橋「余計に化け物なるだけなんじゃねーの?」
善場「そうかもしれません。Gウィルスはともかく、特異菌については、まだまだ研究段階で分からないことが多々あるのです。所長方も、十分にお気をつけください」
愛原「承知しました」
私達は一旦ここで解散となった。
あとは午後、リサが学校から帰宅した時、絵恋がどういう動きをするのが教えてもらわなくてはならない。
※作中の日付が1日ずれていましたので、修正しました。
月曜日になり、私は高橋を伴って、新橋のデイライトさんの所へ書類を持って行った。
愛原「こちらが、栃木の件やそれに関連して発生した経費の請求書です。宜しく御精査願います」
善場「かしこまりました。受領させて頂きます。精査の結果、決定した金額を例の口座に振り込ませて頂きます」
愛原「ありがとうございます」
それから、打ち合わせに入る。
あれから栃木県警やBSAAの方で大規模な山狩りをしたものの、鬼化した栗原蓮華を見つけることはできなかったという。
善場「ただ……所長方もテレビなどで聞き及んでおられるかとは思いますが、事件は発生してしまいました」
愛原「はい。それは知っています」
昨日の日曜日の深夜、群馬県の山奥にあるスキーペンションにおいて、侵入した何者かに宿泊客やスタッフらが食い殺される事件が起きた。
ニュースでは冬眠できなかった熊が侵入して……ということになっていたが……。
愛原「群馬県の山奥のペンションの事件ですね?」
善場「はい。さすが、愛原所長です」
愛原「事件の舞台となった奥日光からは、国道120号線で繋がっています。蓮華も元は人間ですから、いくら鬼化したとはいえ、あまり何も無い、ましてや雪深い山道を進むのは酷でしょう。人目に付かないようにしつつ、しかし国道からはそんなに離れずに進んだのだろうと予想できます」
善場「素晴らしい推理です。何か、根拠がありましたか?」
愛原「実はこれ、蓮華自身が言ってたことなんです」
善場「と、仰いますと?」
愛原「蓮華が鬼化するだいぶ前、1人で日本版リサ・トレヴァーを退治したことがありました。リサ・トレヴァーの一部は、西日本に潜伏していましたから」
善場「そうですね」
愛原「その時、蓮華が言ってたんですよ。さっきの私の言葉」
善場「なるほど。鬼化した場合、人間だった頃の記憶は殆ど失われると言います。但し、よほどインパクトのある言葉や、体で覚えた習慣などは身に付いたままであるとも言いますね。今は鬼狩りの剣士としての記憶は失われているようですが、しかし体では覚えているはずなので、いずれはまた剣を握るようになるかもしれませんね。つまりは、自分が鬼狩りをしていた時の作戦が記憶に残っていて、自分もそうしていると」
愛原「はい、そうです」
善場「ペンションが襲われた時、そこにあった金品も盗まれていました。だから当初、群馬県警では、人間の強盗でも押し入ったのかと思ったそうですが、しかし……」
愛原「蓮華が人間だった頃の習慣で、金品に興味を示し、持ち去った可能性もあるわけですね」
善場「そういうことです」
愛原「すると今、蓮華は群馬県にいると?」
善場「可能性はあります。今週は捜索範囲を群馬県、果ては隣県の長野県や山梨県にも広げて行う予定です」
愛原「本当に大事になりましたな」
善場「ですので栗原家、そして、栗原家に『化学肥料』を渡した愛原公一氏の罪は重いのです」
愛原「本当に伯父さん、犯人の1人なんですか?」
善場「実はここだけの話、栗原家の関係者が一斉に逮捕される予定です。もう、逮捕状は取りましたので。今は任意での事情聴取ですが、それ以降はもっと強めに事情聴取ができると思います。その時、愛原公一氏の名前が出て来るでしょう。デイライトとしては、その前に証拠を掴んでおきたいのです。今、鍵の方はどうなってますか?」
愛原「今のところ、リサと我那覇絵恋がやり取りをしている最中です。絵恋はリサに情報を渡す見返りに、物品を要求してまして、それが届くかどうか……」
その時、私のスマホにメール着信があった。
愛原「ちょっとすいません」
私はメールを確認した。
それは日本郵便からのメールだった。
どうやら無事に、リサのレターパックが我那覇家に届いたらしい。
向こうに配達がされると、そのお知らせメールが届くサービスに登録したのだ。
愛原「リサが送った情報料が、無事に絵恋の元に届いたようです。これを持って、絵恋がリサに情報を渡す手筈になっています。それがどのような形なのかは、まだ不明ですが……」
善場「なるべく急いで頂きたいものですね」
愛原「もちろん私も、リサにはそのように言っておきました。今、リサは学校で、絵恋もそうでしょうから、少しお待ちください」
善場「かしこまりました。絵恋は沖縄の沖縄中央学園那覇高校に通っているのでしたね?」
愛原「そうです。東京中央学園と違って、モノレールの沿線から離れているということもあり、スクールバスで通ってるのだとか」
善場「なるほど。そうですか」
そして、『魔王軍沖縄支部』を結成し、リサの力添えを得て、沖縄中央学園でもブルマが細々とではあるが、復活した。
善場「何か動きがありましたら、また教えてください」
愛原「承知しました。それと、1つ気になっていることがありまして……」
善場「何でしょうか?」
愛原「栗原蓮華の妹、栗原愛理のことです。今、東京中央学園中等部の3年生だと思いますが……。姉が鬼化してしまったので、さぞかしショックだろうと思います」
善場「! なるほど。それはすっかり忘れておりました。すぐに保護するよう、警察に伝えておきます」
愛原「主任?」
善場「幸いリサは一人っ子ですし、遠い親戚の上野利恵氏も鬼化しているので、あまり警戒の必要は無かったのですが……。血の繋がった兄弟ほど、血肉が美味い人間はいないと、それまで人食いをしたことのあるBOWは言うそうです」
愛原「ええっ!?」
善場「今のところは栗原蓮華も都内には戻れないわけですし、人間だった頃の記憶が曖昧化していると思いますが、警戒するに越したことはないでしょう。万が一仮に鉢合わせした場合、蓮華は間違いなく愛理さんを食らおうとするでしょう。そして、身内の血肉を食らった鬼は間違いなく強化します。恐らく、リサよりも強くなるはずです。それだけは何とか避けないといけません」
高橋「余計に化け物なるだけなんじゃねーの?」
善場「そうかもしれません。Gウィルスはともかく、特異菌については、まだまだ研究段階で分からないことが多々あるのです。所長方も、十分にお気をつけください」
愛原「承知しました」
私達は一旦ここで解散となった。
あとは午後、リサが学校から帰宅した時、絵恋がどういう動きをするのが教えてもらわなくてはならない。
※作中の日付が1日ずれていましたので、修正しました。
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