“ユタと愉快な仲間たち”より。鬼族のキノが電話しているシーンから、思いついたネタ。ちょっと、ホラーチックに……。
[7日 23:00.さいたま市中央区 ユタの家 稲生ユウタ]
ユタは自室でノートPCのキーボードを叩いていた。数日後に迫った大学のレポート提出の為である。
こんな時、威吹はユタの気が散らないよう、部屋の外にいる。家の見回りをしているわけである。両親共に忙しいため、今夜もまた広い家にユタが1人だけである。
「よし。あと、少しだ」
その時だった。突然、机の上に置いていたスマホが鳴り出した。
「おっと!な、何だ?」
画面を見ると、公衆電話からだった。こんな時間に、誰だろう?ユタの知り合いで、公衆電話から掛けてくる者などいないはずだが……。
いや、確か、前に藤谷班長がケータイ忘れてきたと言って、公衆電話から掛けてきたことがある。
「はい、もしもし?」
ユタは電話を取った。しかし、向こうから声がしない。
「もしもし?どちら様ですかー?」
無言電話だろうか。ユタが一旦、スマホから耳を話して、もう1度耳に付けた。
「!」
その時、何とか声がした。
{「もしもし。わたし、ミクよ。今、北与野駅にいるの」}
「はあ?」
若い女性……というより、10代の少女らしいアニメキャラクターのような声が聞こえてきた。
{「まだケータイ持ってないから、公衆電話からしか掛けられないけど、持ったらあなたのお家に行くからね。待っててね」}
「ちょ、ちょっと!何かの間違いじゃあ?」
しかし、電話が切れてしまった。
「???」
ユタは首を傾げた。
その時、部屋のドアがノックされた。
「うわっ!」
びっりしていると、ドアの外から、
「ユタぁ、入っていい?」
威吹の声がした。
「あっ、ああ。いいよ」
ユタが許可すると、ドアが開いて威吹が入って来た。
「外回りは異常無いよ」
「あ、ああ。ありがとう」
「信州の魔女ほどではないけど、この家も結構広いな。大しょう人が住むくらいの広さはある」
「大聖人様が滞在された屋敷というと、池上宗仲の家かな?あそこ、あいにくと今は別の日蓮宗の寺に……」
「何の話?」
威吹は首を傾げた。
「だって今、大聖人って……」
「いや、違うよ。大店構えている裕福な商人って意味で、大商人って……」
ズコーッ!!
「日の本言葉(日本語)って難しいね」
「てか、僕が漢字変換ミスっただけか……」
その晩はそれだけで終わった。
[9日 01:00.同場所 稲生ユウタ]
ユタの枕元に置いたスマホが鳴り出す。
「んん……」
ユタは寝ぼけた状態で、スマホを手に取った。
ガラケーと違い、ユタのスマホは画面をスライドさせないと通話することができない。その為、自然と画面に目が行くようになる。
(公衆電話……!?)
またもや公衆電話だった。
「も、もしもし?」
{「もしもし。わたし、ミクよ。今、マルエツの前にいるの。少し、あなたのお家に近づいたかしら?」}
「ぼ、僕に何の用なの?」
しかし、少女らしき声はユタの質問に答えない。
{「でも残念ね。ここから先、あなたのお家の近くまで公衆電話があるかしら?ふふ……。最後の公衆電話に着くまで、あなたが私にしたことを、胸に手を当てて思い出すのね」}
「ええっ!?」
そこで電話が切れた。
「な、何なんだ、一体?」
[9日 12:00.都内某所にあるユタの通っている大学の学食 稲生ユウタ&威吹邪甲]
「ユタ、ちょっといいかい?」
ユタが学食のラーメンを食べていると、威吹が話しかけてきた。
「なに?」
「実は“妖狐の里”から数人……3人くらいなんだけど、ボクの配下が見識を広げるために、人間界に滞在したいらしいんだ。ユタの御両親、しばらく留守みたいだから、それまでの間だけでいいんだけど、寝泊りさせてもらえないかな?」
「威吹に配下なんているんだ?」
ユタが目を丸くしていると、
「ほら、これこれ」
威吹が指差した所、着物の左胸の部分と左袖の所に、ワッペンが縫い付けられていた。そのワッペンは縦菱形で、黒地に赤字で『第六隊 班長』と書かれていた。
「うわ、何か顕正会男子部の組織みたい。つまり、威吹の配下というと、班員か」
「正しくは班士と呼んでる。隊単位で言うと、ボク達は隊士だ」
「何か、新撰組とか彰義隊みたい。まあ、いいよ。空いてる部屋使ったら」
「ありがとう!」
威吹は喜んだ。
「その、威吹の配下達ってのは強いのかい?」
「んー、ボクの下にいるわけだから、ボクよりは弱いけど。まあ、この前、寺の前に図々しくも現れた蜘蛛や蛇のバケモノなんかは、軽くあしらえるよ」
「そうか」
「もちろん、ボクの前では好き勝手なことはさせない。ユタにも迷惑掛けないから」
「それならいいけど……」
逆にユタは、少し安心した。
続く
[7日 23:00.さいたま市中央区 ユタの家 稲生ユウタ]
ユタは自室でノートPCのキーボードを叩いていた。数日後に迫った大学のレポート提出の為である。
こんな時、威吹はユタの気が散らないよう、部屋の外にいる。家の見回りをしているわけである。両親共に忙しいため、今夜もまた広い家にユタが1人だけである。
「よし。あと、少しだ」
その時だった。突然、机の上に置いていたスマホが鳴り出した。
「おっと!な、何だ?」
画面を見ると、公衆電話からだった。こんな時間に、誰だろう?ユタの知り合いで、公衆電話から掛けてくる者などいないはずだが……。
いや、確か、前に藤谷班長がケータイ忘れてきたと言って、公衆電話から掛けてきたことがある。
「はい、もしもし?」
ユタは電話を取った。しかし、向こうから声がしない。
「もしもし?どちら様ですかー?」
無言電話だろうか。ユタが一旦、スマホから耳を話して、もう1度耳に付けた。
「!」
その時、何とか声がした。
{「もしもし。わたし、ミクよ。今、北与野駅にいるの」}
「はあ?」
若い女性……というより、10代の少女らしいアニメキャラクターのような声が聞こえてきた。
{「まだケータイ持ってないから、公衆電話からしか掛けられないけど、持ったらあなたのお家に行くからね。待っててね」}
「ちょ、ちょっと!何かの間違いじゃあ?」
しかし、電話が切れてしまった。
「???」
ユタは首を傾げた。
その時、部屋のドアがノックされた。
「うわっ!」
びっりしていると、ドアの外から、
「ユタぁ、入っていい?」
威吹の声がした。
「あっ、ああ。いいよ」
ユタが許可すると、ドアが開いて威吹が入って来た。
「外回りは異常無いよ」
「あ、ああ。ありがとう」
「信州の魔女ほどではないけど、この家も結構広いな。大しょう人が住むくらいの広さはある」
「大聖人様が滞在された屋敷というと、池上宗仲の家かな?あそこ、あいにくと今は別の日蓮宗の寺に……」
「何の話?」
威吹は首を傾げた。
「だって今、大聖人って……」
「いや、違うよ。大店構えている裕福な商人って意味で、大商人って……」
ズコーッ!!
「日の本言葉(日本語)って難しいね」
「てか、僕が漢字変換ミスっただけか……」
その晩はそれだけで終わった。
[9日 01:00.同場所 稲生ユウタ]
ユタの枕元に置いたスマホが鳴り出す。
「んん……」
ユタは寝ぼけた状態で、スマホを手に取った。
ガラケーと違い、ユタのスマホは画面をスライドさせないと通話することができない。その為、自然と画面に目が行くようになる。
(公衆電話……!?)
またもや公衆電話だった。
「も、もしもし?」
{「もしもし。わたし、ミクよ。今、マルエツの前にいるの。少し、あなたのお家に近づいたかしら?」}
「ぼ、僕に何の用なの?」
しかし、少女らしき声はユタの質問に答えない。
{「でも残念ね。ここから先、あなたのお家の近くまで公衆電話があるかしら?ふふ……。最後の公衆電話に着くまで、あなたが私にしたことを、胸に手を当てて思い出すのね」}
「ええっ!?」
そこで電話が切れた。
「な、何なんだ、一体?」
[9日 12:00.都内某所にあるユタの通っている大学の学食 稲生ユウタ&威吹邪甲]
「ユタ、ちょっといいかい?」
ユタが学食のラーメンを食べていると、威吹が話しかけてきた。
「なに?」
「実は“妖狐の里”から数人……3人くらいなんだけど、ボクの配下が見識を広げるために、人間界に滞在したいらしいんだ。ユタの御両親、しばらく留守みたいだから、それまでの間だけでいいんだけど、寝泊りさせてもらえないかな?」
「威吹に配下なんているんだ?」
ユタが目を丸くしていると、
「ほら、これこれ」
威吹が指差した所、着物の左胸の部分と左袖の所に、ワッペンが縫い付けられていた。そのワッペンは縦菱形で、黒地に赤字で『第六隊 班長』と書かれていた。
「うわ、何か顕正会男子部の組織みたい。つまり、威吹の配下というと、班員か」
「正しくは班士と呼んでる。隊単位で言うと、ボク達は隊士だ」
「何か、新撰組とか彰義隊みたい。まあ、いいよ。空いてる部屋使ったら」
「ありがとう!」
威吹は喜んだ。
「その、威吹の配下達ってのは強いのかい?」
「んー、ボクの下にいるわけだから、ボクよりは弱いけど。まあ、この前、寺の前に図々しくも現れた蜘蛛や蛇のバケモノなんかは、軽くあしらえるよ」
「そうか」
「もちろん、ボクの前では好き勝手なことはさせない。ユタにも迷惑掛けないから」
「それならいいけど……」
逆にユタは、少し安心した。
続く
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