報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「斉藤絵恋、BOW化の片鱗」

2020-03-24 16:03:33 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日02:30.天候:雨 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センターB3F研究施設入口]

 

 夜中に部屋から抜け出した斉藤絵恋。
 それに気づいたリサが絵恋を追った。
 そして背後から声を掛けたが、絵恋は全く聞こえていないかのようにそれを無視し、階段を下りたのだった。

 リサ:(一体、どこへ行く?)

 先日、早朝走り込みをしようと外に出ようとしたことがある。
 だが外出は許可されていないらしく、エントランスで管理人に止められたとのこと。
 諦め切れずにまた行こうとしているのだろうか?
 しかし外は雨だし、そもそも絵恋はスリッパをはいたままだ。

 

 リサ:「サイトー、そっちはダメだって書いてるよ!?」

 絵恋は階段を1階まで下りたが、更に下りた。
 地下階へ行こうとすると、通行止めのパーテーションがしてあって、関係者以外立入禁止の看板もあったのだが、絵恋はこれを全く無視し、更に下へ向かったのである。

 リサ:「サイトー!」

 リサが何度も呼び掛けても、絵恋は全く反応しない。
 そしてついにB3と大きく書かれた階段室のドアを開けて中に入ってしまった。
 そこは附室と呼ばれる小部屋で、もう1つ向こうにドアがある。
 『エレベーター室』と書かれていた。
 どうやらあのドアの向こうに、昨朝研究施設に向かう時に乗ったエレベーターがあるらしい。

 

 しかしそこはさすがに鍵が掛かっていた。
 絵恋はドアノブに手を掛け、ガチャガチャやっているが、全く開く気配が無い。

 リサ:「サイトー、ここはダメだよ。早く戻ろう」

 やっとリサが後ろから絵恋の肩を叩こうとした時だった。

 守衛A:「こら!何をやってるんだ!」

 後ろから警棒を持った守衛がやってきた。
 ここに入る時に手荷物検査やら身体検査をやった守衛所にいた守衛達の誰かだろう。
 警察官よりは刑務官に近いデザインの制服を着ていた。

 守衛B:「ここは立入禁止だぞ!」
 リサ:「ご、ごめんなさい。サイトー、早く戻ろう!」

 リサが絵恋の肩を掴んだ時と、絵恋がバキッとドアノブを壊してドアをこじ開けるのは同時だった。
 しかも!

 リサ:「!!!」

 この部屋を映す防犯カメラがそれで壊れたという。
 防犯カメラが最後に映したのは、強く光る絵恋の背中。
 そして、それに弾き飛ばされるリサと守衛2人であった。

 守衛A:「ぐわっ!」
 守衛B:「ぎゃっ!」

 正確には弾き飛ばされたリサの直撃を受けたのが守衛A、絵恋から放たれた高圧電流をリサや守衛Aから貰い受けて感電したのが守衛Bといったところだ。
 防犯カメラが壊れたのは、絵恋から放たれた高圧電流のせいである。

 リサ:「サイトー……!」

 リサは咄嗟に第0形態から第1形態に変化した為、大きなダメージを受けることはなかった。
 それでも、動きを再開させるのに少し時間が掛かったくらいだ。
 当然こういう展開になって、施設内が静かであるはずがない。
 館内に警報が響き渡った。

 リサ:「サイトー!何やってるの!やめて!」

 絵恋はエレベーター室から研究施設へ行く電子ロックのドアを壊そうとしていた。

 絵恋:「呼んでいる……呼ンデイル……!」
 リサ:「サイトー!」

 リサはサイトーの肩を掴んだ。

 絵恋:「邪魔スルナ……!」

 振り向いた絵恋は辛うじて人間の姿を保っていたものの、その目は赤く鈍く光っていた。

 リサ:「サイトー!」

 リサは絵恋を平手打ちした。

 絵恋:「ぎゃっ……!ぎゃああああああっ!!」

 恐らくリサに高圧電流を放つ直前だったのだろう。
 リサに平手打ちされてバランスを崩した絵恋は仰向けに倒れたが、リノリウム張りの床では電気を逃がすことができないのだろうか。
 自分が感電してしまった。

 守衛C:「おとなしくろ!抵抗したら射殺する!」

 先ほどの守衛達と違い、防弾チョッキにヘルメット、そしてショットガンを装備した守衛達が駆け付けて銃口を向けられた。
 リサにはショットガンどころか、マグナムすら小石が当たる程度なのだが、リサは両手を挙げた。

 リサ:「私はサイトーを止めただけ。そのサイトーも今は動かない」
 愛原:「リサ!第0形態に戻れ!」

 浴衣から私服に着替えた愛原達も駆け付けた。

 リサ:「うん」

 リサは言われた通り、第0形態に戻った。

 愛原:「これでリサに関しては危険はありません!」
 守衛D:「しかし一応、拘束させてもらいます」
 リサ:「!」

 リサは後ろ手に手錠を掛けられた。

 守衛E:「こっちが元凶だ!慎重に取り扱え!」
 守衛F:「はい!」
 高橋:「やっぱあのクソビアン、何か怪しいと思ってたんですよ!」
 愛原:「そう言うなって。リサもどうして俺に言わなかったんだ!」
 リサ:「ごめんなさい……」
 高野:「まあまあ、先生」

 これで愛原達は朝まで眠ることができなくなってしまった。

 リサ:「サイトーがBOWだったなんて……」
 愛原:「何だって!?」
 高橋:「ちっ、やっぱりそうか。先生、今のうちに射殺しておいた方がいいですよ」
 愛原:「今の俺達にその権限は無い」
 リサ:「お願い。サイトーは殺さないで」

 リサの懇願に、この場ですぐ頷く者はいなかった。

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