[8月31日08:30.天候:晴 JR大宮駅西口→構内]
朝ラッシュで多くの車が行き交う中、タクシー乗り場の横に1台のタクシーが到着した。
運転手:「ありがとうございます。ちょうど1000円です」
稲生:「はい」
助手席に座る稲生は財布の中から1000円札を出した。
その間にリアシートに乗っていたイリーナとマリアが降りる。
運転手:「ありがとうございました」
稲生:「どうもでした」
駅前や構内も多くの人で賑わっている。
稲生:「本当に大きな荷物が無いんですねぇ……」
イリーナ:「ここに一杯入るからね」
イリーナは着ているローブを指さした。
稲生:「それじゃ、電車の乗り場はこっちです」
タクシーが発着する場所のすぐ近くには、エレベーターとエスカレーターがある。
そこを昇って行く。
稲生:「それじゃ、これがキップです」
イリーナ:「ありがとう」
稲生:「いいんですか?空港までお送りしますよ。弟子として」
イリーナ:「いいのいいの。本当は見送りなんて不要なくらいよ」
稲生:「いえ、そういうわけには……」
イリーナ:「勇太君は真面目でいいね。マリアも見習なさい」
マリア:「すいませんね、不真面目で」
マリアは不機嫌な顔をした。
稲生:「まあまあ」
3人の魔道師は南改札からコンコースに入った。
イリーナ:「この駅も賑わってるねぇ」
稲生:「埼玉県のターミナル駅ですから。(だけど、県庁や市役所の最寄り駅じゃない……)」
さいたま市民あるあるネタ。
年に1回は大宮駅周辺で、県庁や市役所を探す人を目撃する。
で、浦和駅が最寄りだヨと教えてあげると大抵驚かれる。
でも、今はだいぶマシだ。
ネットが発達してググれば分かるようになってるし、今は湘南新宿ラインですら浦和駅に止まるようになったのだから。
ポテンヒットさんなら、きっと御存知だろう。
かつては高崎線や宇都宮線ですら、ロクに浦和駅に止まらなかったというのだから。
まだ、浦和駅が地上にあった頃の話だろう。
稲生:「“成田エクスプレス”は7番線です」
7番線は高崎線の上り副線ホームである。
今は東京方面に向かう利用客達で混んでいる為、本線の6番線から乗ろうとする利用者達でごった返していた。
まだ電車は入線していない。
稲生:「先生、“成田エクスプレス”はグリーン車ですが、飛行機はファーストクラスですか?」
イリーナ:「違うわよ。ファーストクラスに乗るのは、ダンテ先生よ。私はビジネスクラス」
稲生:「さすがです」
イリーナが手にしている航空チケットを見せてもらうと、12時55分に成田を離陸してイギリスのロンドンに向かうことになっている。
稲生:「9時9分発の“成田エクスプレス”、空港第2ビル着が10時54分ですので、2時間ほどの待ち時間がありますが……」
イリーナ:「それでいいのよ。あとは向こうでマターリしてるからね」
マリア:「ターミナルで寝過ごさないで下さいよ」
稲生:「ロンドンですか。マリアさん絡みで?」
イリーナ:「“魔の者”がうるさくてね。時々、鞭やローソクが必要になることがあるのよ」
稲生:「は、はあ……。(どういう意味か知りたいような、知りたくないような……)」
しばらくすると、7番線に“成田エクスプレス”が入線してきた。
最大12両編成になる電車だが、今は半分の6両編成である。
この時点では先頭車となる6号車にグリーン車がある。
旅客機の場合、その最高クラスはファーストクラスである。
日本の鉄道の場合は、グリーン車……ではない。
何故なら、グリーン車の表記は2等車を表す『ロ』でからである。
在来線の車両の側面にあるカタカナ記号のこと。
普通車は『ハ』である。
これはイロハで分けられている。
1等車は『イ』、2等車は『ロ』、3等車は『ハ』である。
稲生:「『イ』にダンテ先生が乗られるわけですか」
イリーナ:「そういうこと」
稲生:「“ななつ星”とか、“瑞鳳”とかですね。でもあれ、全部『イ』だから僕達は乗れないなぁ……」
“四季島”に関しては、何故かカタカナ記号が無いので何とも言えない。
稲生:「新幹線だとグランクラスですね」
グランクラスはグリーン車よりもっと上のランクとなっているので、新幹線としては1等車になるのだろう。
稲生:「あ、すいません。実は昨日、マリアさんと乗り鉄旅に出た時、帰りの電車、グリーン車に乗っちゃいました」
イリーナ:「といっても、あれでしょ?」
イリーナは他のホームに停車している中距離電車の2階建てグリーン車を指さした。
朝ラッシュのピークは過ぎたと思うが、余波がまだまだ残っている為、グリーン車はパッと見、満席のようだった。
稲生:「そうです」
イリーナ:「あれはこっちの列車より安いし、だいたい、勇太君のお小遣いで乗ったわけでしょう?」
稲生:「そうです」
イリーナ:「それなら問題無いよ」
稲生:「ありがとうございます」
もっとも、上下関係がとても厳しい組だと、笑って許してもらえるかどうか分からない。
イリーナ組だからこその話かもしれない。
[同日09:09.天候:晴 JR大宮駅7番線]
発車の時刻が刻々と迫って来る。
稲生:「先生。“成田エクスプレス”は車内販売が無いので、取りあえずこれで」
稲生は近くのキオスクからコーヒーを買って来た。
イリーナ:「あら?お気遣いありがとう」
JR東日本管内においては、運営会社がJR東日本リテールネットに変わった為、呼称も『キヨスク』から『キオスク』に変わったというトリビア。
そして、発車メロディが構内に鳴り響く。
〔「7番線から9時9分発、特急“成田エクスプレス”15号、成田空港行きが発車致します。次は、池袋に止まります。お見送りのお客様は、黄色い線までお下がりください」〕
イリーナ:「それじゃ2人とも、仲良くやるのよ」
稲生:「は、はい」
マリア:「言われるまでもないです」
〔7番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕
〔「ドアが閉まります。ご注意ください」〕
鴨居部に付いている赤ランプが点滅し、ドアが閉まった。
最近のJR東日本では、鴨居部に赤ランプを取り付けて光らせるのがブームらしい。
インバータの音を響かせながら、イリーナを乗せた空港特急は発車して行った。
稲生:「先生のお見送りも終わりましたし、次はどうしましょうか?」
マリア:「勇太に任せる」
稲生:「それなら、まだ観てない映画があるので、それでも観に行きますか」
マリア:「行こう行こう」
今度は京浜東北線のホームに移動する大魔道師の弟子達であった。
朝ラッシュで多くの車が行き交う中、タクシー乗り場の横に1台のタクシーが到着した。
運転手:「ありがとうございます。ちょうど1000円です」
稲生:「はい」
助手席に座る稲生は財布の中から1000円札を出した。
その間にリアシートに乗っていたイリーナとマリアが降りる。
運転手:「ありがとうございました」
稲生:「どうもでした」
駅前や構内も多くの人で賑わっている。
稲生:「本当に大きな荷物が無いんですねぇ……」
イリーナ:「ここに一杯入るからね」
イリーナは着ているローブを指さした。
稲生:「それじゃ、電車の乗り場はこっちです」
タクシーが発着する場所のすぐ近くには、エレベーターとエスカレーターがある。
そこを昇って行く。
稲生:「それじゃ、これがキップです」
イリーナ:「ありがとう」
稲生:「いいんですか?空港までお送りしますよ。弟子として」
イリーナ:「いいのいいの。本当は見送りなんて不要なくらいよ」
稲生:「いえ、そういうわけには……」
イリーナ:「勇太君は真面目でいいね。マリアも見習なさい」
マリア:「すいませんね、不真面目で」
マリアは不機嫌な顔をした。
稲生:「まあまあ」
3人の魔道師は南改札からコンコースに入った。
イリーナ:「この駅も賑わってるねぇ」
稲生:「埼玉県のターミナル駅ですから。(だけど、県庁や市役所の最寄り駅じゃない……)」
さいたま市民あるあるネタ。
年に1回は大宮駅周辺で、県庁や市役所を探す人を目撃する。
で、浦和駅が最寄りだヨと教えてあげると大抵驚かれる。
でも、今はだいぶマシだ。
ネットが発達してググれば分かるようになってるし、今は湘南新宿ラインですら浦和駅に止まるようになったのだから。
ポテンヒットさんなら、きっと御存知だろう。
かつては高崎線や宇都宮線ですら、ロクに浦和駅に止まらなかったというのだから。
まだ、浦和駅が地上にあった頃の話だろう。
稲生:「“成田エクスプレス”は7番線です」
7番線は高崎線の上り副線ホームである。
今は東京方面に向かう利用客達で混んでいる為、本線の6番線から乗ろうとする利用者達でごった返していた。
まだ電車は入線していない。
稲生:「先生、“成田エクスプレス”はグリーン車ですが、飛行機はファーストクラスですか?」
イリーナ:「違うわよ。ファーストクラスに乗るのは、ダンテ先生よ。私はビジネスクラス」
稲生:「さすがです」
イリーナが手にしている航空チケットを見せてもらうと、12時55分に成田を離陸してイギリスのロンドンに向かうことになっている。
稲生:「9時9分発の“成田エクスプレス”、空港第2ビル着が10時54分ですので、2時間ほどの待ち時間がありますが……」
イリーナ:「それでいいのよ。あとは向こうでマターリしてるからね」
マリア:「ターミナルで寝過ごさないで下さいよ」
稲生:「ロンドンですか。マリアさん絡みで?」
イリーナ:「“魔の者”がうるさくてね。時々、鞭やローソクが必要になることがあるのよ」
稲生:「は、はあ……。(どういう意味か知りたいような、知りたくないような……)」
しばらくすると、7番線に“成田エクスプレス”が入線してきた。
最大12両編成になる電車だが、今は半分の6両編成である。
この時点では先頭車となる6号車にグリーン車がある。
旅客機の場合、その最高クラスはファーストクラスである。
日本の鉄道の場合は、グリーン車……ではない。
何故なら、グリーン車の表記は2等車を表す『ロ』でからである。
在来線の車両の側面にあるカタカナ記号のこと。
普通車は『ハ』である。
これはイロハで分けられている。
1等車は『イ』、2等車は『ロ』、3等車は『ハ』である。
稲生:「『イ』にダンテ先生が乗られるわけですか」
イリーナ:「そういうこと」
稲生:「“ななつ星”とか、“瑞鳳”とかですね。でもあれ、全部『イ』だから僕達は乗れないなぁ……」
“四季島”に関しては、何故かカタカナ記号が無いので何とも言えない。
稲生:「新幹線だとグランクラスですね」
グランクラスはグリーン車よりもっと上のランクとなっているので、新幹線としては1等車になるのだろう。
稲生:「あ、すいません。実は昨日、マリアさんと乗り鉄旅に出た時、帰りの電車、グリーン車に乗っちゃいました」
イリーナ:「といっても、あれでしょ?」
イリーナは他のホームに停車している中距離電車の2階建てグリーン車を指さした。
朝ラッシュのピークは過ぎたと思うが、余波がまだまだ残っている為、グリーン車はパッと見、満席のようだった。
稲生:「そうです」
イリーナ:「あれはこっちの列車より安いし、だいたい、勇太君のお小遣いで乗ったわけでしょう?」
稲生:「そうです」
イリーナ:「それなら問題無いよ」
稲生:「ありがとうございます」
もっとも、上下関係がとても厳しい組だと、笑って許してもらえるかどうか分からない。
イリーナ組だからこその話かもしれない。
[同日09:09.天候:晴 JR大宮駅7番線]
発車の時刻が刻々と迫って来る。
稲生:「先生。“成田エクスプレス”は車内販売が無いので、取りあえずこれで」
稲生は近くのキオスクからコーヒーを買って来た。
イリーナ:「あら?お気遣いありがとう」
JR東日本管内においては、運営会社がJR東日本リテールネットに変わった為、呼称も『キヨスク』から『キオスク』に変わったというトリビア。
そして、発車メロディが構内に鳴り響く。
〔「7番線から9時9分発、特急“成田エクスプレス”15号、成田空港行きが発車致します。次は、池袋に止まります。お見送りのお客様は、黄色い線までお下がりください」〕
イリーナ:「それじゃ2人とも、仲良くやるのよ」
稲生:「は、はい」
マリア:「言われるまでもないです」
〔7番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕
〔「ドアが閉まります。ご注意ください」〕
鴨居部に付いている赤ランプが点滅し、ドアが閉まった。
最近のJR東日本では、鴨居部に赤ランプを取り付けて光らせるのがブームらしい。
インバータの音を響かせながら、イリーナを乗せた空港特急は発車して行った。
稲生:「先生のお見送りも終わりましたし、次はどうしましょうか?」
マリア:「勇太に任せる」
稲生:「それなら、まだ観てない映画があるので、それでも観に行きますか」
マリア:「行こう行こう」
今度は京浜東北線のホームに移動する大魔道師の弟子達であった。
バス会社のサイトを見ると、新規路線の開設を進めていたところ、何か事情があって延期となっているらしい。
何かよく分からんが、地元から話題にならない辺り、実は歓迎されていないのかも……。