報恩坊の怪しい偽作家!

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“愛原リサの日常” 「鬼の血」

2023-12-02 20:21:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月3日00時00分 天候:雪 栃木県日光市某所]

 リサ「鬼の血を使うって、そんなことしていいの?あんた達、鬼が嫌いなんでしょ?」

 リサは不審そうな顔で、老婆と栗原蓮華を見た。

 老婆「ご覧ください。このコは鬼によって左足を食い千切られ、そして、鬼によって肌を焼かれてしまいました。このままでは不憫過ぎます。聞けば、あなた様は一切人食いをしていないとのこと。そして、これからも不食人の誓いを立てているのだとか……」
 リサ「そりゃそうだけど……」
 老婆「鬼とは不老不死の存在。そしてその血には、たちどころに傷を癒やす効果があるとの言い伝えがございます」
 リサ「自分専用だよ、それは……」

 リサはそこまで言って、善場が前に言っていたことを思い出した。
 今の自分の血の内容は、ちょうどそのような薬を造るのに良い塩梅なのだと。

 リサ「……スパイでもしてたの?わたしのこの情報は国家機密のはずだけど?」
 老婆「お咎めは受けます。それよりも、このコに普通の娘と同じ体に戻してあげたいのです」
 リサ「いや、だから、やめといた方がいいって。デイライトだって、使えるかもしれないって言ってるだけで……」
 老婆「薬そのものは既に作ってあります」
 リサ「は?」
 老婆「あとは鬼の血を混ぜるだけ……」
 リサ「え?え?え?どういうこと?それ、いいの?」
 栗原蓮華「多分、政府的にはアウトだと思う。だからあなたには、こっそりここに来てもらった。恐らく、そろそろBSAAが乗り込んで来ると思う。今、上空にそれらしいヘリコプターが飛んでるんだって。この建物は表向き、栗原家の道場とか合宿所、あとは旅館みたいな感じになっているけど、ある程度の情報を向こうが手にしていたら、ここは怪しいと思う」
 リサ「……どうなっても知らないよ?わたしだって、自分の血を気持ち悪いと思うことがあるんだから」
 老婆「もちろん、あなた様に責任を追及するようなことは致しません」
 リサ「うーん……。分かった。そこまで言うのなら……。試験管10本分くらいだっけ?」

 リサは右腕を出した。

 老婆「いえ。それが今、少し、事情が変わりまして……」
 リサ「事情?」
 老婆「あなた様の首そのものでございます」

 その時、天井から1人の刀剣を持った剣士が現れてリサの首を刎ね飛ばした。

 リサ「かはっ……!」

 リサの首から血が噴き出す。

 老婆「早く採取を!」
 剣士「おう!」
 医師「この鬼の血と、こちらの薬を混ぜて、プロセッサーに……」

 リサの首から噴き出ていた血が、まるでバルブを締めるかのように見る見る止まって行く。

 老婆「く、首を刎ねられても死なぬのか!?」
 剣士「大江山の酒呑童子もまた、首を刎ねられても尚、源頼光公に立ち向かったそうです。首だけで」
 蓮華「こいつは酒呑童子や茨木童子の更に上を行く力を持つ鬼です。油断しないで」
 剣士「ははっ!」
 医師「できました!すぐに投与致します」

 医師は赤茶色に変色した薬を蓮華に見せた。

 医師「これを早速注射します」

 医師は太い注射を3本も蓮華に投与した。

 栗原蓮華「ぅあぁああぁあ……!」

 そして、すぐに効果が表れた。

 医師「す、凄い!左足が再生し始めている!」
 老婆「火傷した皮膚も、みるみるうちに元通りに……!」
 剣士「数百年もの長きに渡って、栗原家の悲願だった鬼の大将首を刎ねられた上、妙薬まで完成させられるとは……!」
 蓮華「やった!やったやったやったーっ!両足で……また普通に歩けるなんて……!」
 老婆「婆やも嬉しゅうございます。早速、大旦那様にこの姿をお見せしましょう」
 剣士「女将殿!この鬼は如何致しましょう?」
 老婆「放っておきましょう。もう2度と、起き上がって来ることはございません」
 剣士「ははっ!」

 4人は大広間から出て行った。
 ピシャッと襖が閉められると、常夜灯や非常口誘導灯以外の照明が消される。
 しかし、それを合図にするかのように、リサの体が動いた。
 胴体から噴き出た血と、頭部から噴き出た血が繋がっていたのだ。
 鬼形態になっていたリサは、赤くなった瞳をギョロリと動かすと、体も動いた。
 そして、両手が離れた頭部を掴む。
 その後、それを自分の首に装着した。
 見る見るうちに、首と頭部が繋がって行く。
 ついに、切断部すら見えなくなるほどに回復した。

 リサ「理不尽理不尽理不尽理不尽理不尽理不尽理不尽理不尽!絶対に許さない!!」

 リサは襖を開けると、エレベーターの方へ走って行った。

 リサ「!」

 しかし、ちょうど4人がエレベーターに乗り込んだところだった。

 リサ「ガァァァァッ!!」

 リサは右手の爪を鋭く長く伸ばしてエレベーターに飛び掛かった。

 剣士「あの鬼!やはり!」
 老婆「今は母屋に向かう時です」

 老婆はレバーを操作して、エレベーターを上昇させた。
 リサの爪は間に合わず、エレベーターの鉄扉を引っ掻いただけだった。
 火花が発生するほどの衝撃である。
 それから、館内にジリジリジリと火災報知器のベルのような物が鳴り響く。
 恐らく、鬼狩り隊にリサを退治するよう、指令が出たのだろう。

 リサ「ちっ!」

 リサは天井のダクトに侵入した。
 と、同時に非常階段の方から、鬼狩り隊達が侵入してくる。

 鬼狩り隊A「鬼はどこだ!?」
 リサ(まずは地上に戻らないと……。エレベーターは使えない。かといって、非常階段にも鬼狩り隊はいる。どうしたものか……)

 リサがダクトの中で思案していると、微かに何かの爆発音が聞こえたような気がした。

 リサ「?」

 それは鬼狩り隊達にも聞こえていたらしく、何事かとなっている。
 そして、手持ちのインカムに何か指令が来たらしく、鬼狩り隊達はバタバタと非常階段の方に戻って行った。

 リサ(何だろう?……あっ、そうか!きっとBSAAが駆け付けたんだ!)

 リサはこれ幸いと、エレベーターのボタンを押した。
 そして、エレベーターが上から下りて来る。
 リサは手動で外側の鉄扉と、内側の蛇腹鉄格子の扉を開けてエレベーターに乗り込んだ。
 そして、扉を閉める。

 リサ「えーと……あのお婆さん、確か、こっちにレバーを引いてたよね」

 よく見ると、『上』とか『下』とか書いてある。

 リサ「こっちに引くと、上に行くのか」

 すると、エレベーターが上昇した。
 1階まで上昇すると、そこでエレベーターが止まった。
 どうやら最上階まで行くと、安全装置が働いて、自動的に止まるようになっているらしい。
 扉を開けると……。

 リサ「そ、そうだ!着替えておこう」

 さすがに浴衣姿のままではアレだと思い、リサは寝室に行って、着ていた制服に着替えようと思った。

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