報恩坊の怪しい偽作家!

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“アンドロイドマスター” 「シンディ稼働」

2014-09-12 15:17:50 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月11日15:00.㈶日本アンドロイド研究開発財団 仙台支部 森須、アリス、十条]

 マリオとルイージの持ち帰ったセキュリティトークンでもって、森須が解析を進めていたメモリーの内容が明らかになった。
 川崎町の林道や廃倉庫で現れた機械猛獣達は、ウィリーの開発したバージョン・シリーズをベースに改造されたものと判明した。
「それで行動パターンが、どことなくバージョン達に似ていたのね」
 アリスは森須から話を聞いて頷いた。
「機械剥き出しなのを何故嫌がったのかは分からんが、それに熊や狼の人造毛皮を被せただけとはな……」
 森須は首を横に振りながら呆れた。
「そのままベアーとウルフでいいらしい。何とも捻りの無いネーミングだ」
 そう続けて口元を歪めた。
 しかし十条は、
「まあ、シンプル・イズ・ベストとはよく言うがな……」
「で、ボス!ベアーとウルフを投入して、マリオとルイージを攻撃したのはどこのどいつなの?」
 アリスは食い入るように森須に質問した。
「まあ、落ち着きなさい。御多忙の主任理事に御足労頂いた理由が、ここにある」
 森須は右手を前に出してアリスを落ち着かせた後、咳払いした。
「どういうこと!?」
「理由はワシが1番知っとるからじゃ。森須君に頼んで、この席を設けてもらったわけじゃな」
「で、何なの?やっぱり、じー様絡み?」
「いや……。そのベアーとウルフ、ワシの発案じゃからじゃよ」
「What’s?!」
「南里に頼まれて、バージョン・シリーズをもっと別のことに使えんかと考えていてな。自然公園の警備に、機械剥き出しのロボットをそのまま使うのは味気無いので、動物に扮したものを発案した。密猟者達を威嚇して追い出すのに、馬や鹿は役に立たんので、思いついたのが熊と狼じゃったわけじゃな」
 アリスは不信な顔で十条を見た。
「まあ、そんな顔しなさんな。美人が台無しじゃて」
「何で今まで黙ってたの!?」
「いやー、すっかり忘れとってのー!はっはっはっ!」
「危うくテロリストに横取りされるところだったじゃない!」
「う、うむ。キミの優秀なロボット兄弟が殲滅してくれて助かったわい」
「いいのですか、十条先生?あの熊や狼も先生の御作でしょう?」
 森須が意外そうな顔をした。
「いや、元々が実験用の試作機じゃて、本来は処分する予定だったのじゃ」
「……てことは、実験失敗だったわけね。まあ、テロリスト達に牙を剥いていたわけだから、敵味方の区別が付かないっていう欠陥だっただろうけど……」
「それだけではないよ、アリス君」
「What?」
「自分でも、どうやって改造したか忘れてしまったのじゃ」
 ズッコケる森須とアリスだった。
「アンタね、キール作っといて今更……?」
 呆れるアリスだった。
「まあ、この歳になると、最近の記憶よりも昔の記憶の方が鮮明ということかな、うん」
「マリオとルイージが殲滅した数で大丈夫でしょうね?」
「いや、それもあまり……」
 十条は首を傾げた。
「十条先生。マリオ達の話によりますと、姿の消えるインビシブルタイプが存在していたようですが……」
「は?わしゃ知らんぞ、そんなこと」
「またまた……」
「いや、本当の話じゃ。そもそも、姿が消えるタイプを作ってどうしようというのじゃ?」
「そりゃ、敵に姿を悟られないように近づいて……って、それじゃアサシンよね」
「それ、キミのお祖父さんのお家芸ではないのかね?」
 と、森須。
「じー様からは何も聞いてないわ」
「そりゃマズい所は、孫に話さんで墓まで持って行こうとするじゃろう」
「何か、経験者みたいな話し方ね」
「……経験あるのだろうな。お察しください、ということにして差し上げなさい」
「勝手に墓まで持って行った後、何も知らない遺族にケツ拭かせないで欲しいわね」
「今気づいたのじゃが、インビシブルのこと、もしかしたらシンディが知ってるかもしれんぞ?」
「え?」
「シンディはお前さんより年上なのじゃし、じゃから実はお前さんよりウィリーのことは知っているはずじゃ。お前さんには内緒で墓まで持って行くつもりであっても、シンディには話しているかもしれんぞ?」
「ボス!明日、シンディを稼働させるわ!いいでしょ?」
「メモリーは適正化させたのかね?かつてのままだと困る」
「稼働実験にはワシも立ち会おう。悪友の遺品じゃから、当然じゃと思うが……」
「いざとなりましたら、緊急停止をお願いします」
「任せておけ」
 起動実験は終了している。
 その後、殺人兵器ではなく、人類の為のマルチタイプ・ガイノイドとして稼働できるかの実験だ。

[同日16:00.山形県山形市内 ミニライブ会場 敷島孝夫&初音ミク]

「もしもし?……あー、アリスか。どうした?」
 敷島は舞台裏で、アリスからの電話を受けていた。
{「明日、シンディを稼働させるからよろしく」}
「いや、よろしくって……事務職の俺に言うなよ。実験立会いの理事の皆さんには話をしてあるんだろ?」
{「違うわよ。タカオ、昔、初音ミクの稼働実験に協力したんですってね?」}
「ああ。フィールド・テストか。やったよ」
 まだミクがボーカロイドとして稼働する前のことだ。
 ボーカロイドとしての使命を与えられてから敷島のことを知った他のボカロと違い、ミクとはそれ以前からの付き合いというわけである。
 ミクだけが敷島をプロデューサーと呼ばず、名前で呼ぶのはこれが理由である。
「最後にはエミリーに追い回されて大変だったよ」
 敷島が昔のことを思い出して笑みを浮かべると、アリスは、
{「OK.じゃ、やっぱりタカオにお願いするわ」}
「何を?」
{「シンディのフィールドテスト」}
「殺す気か、コラ!」
{「だーいじょーぶだって!今ならエミリーの護衛付き」}
「アホかーい!」
 敷島は怒鳴り声を上げて電話を切った。

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