報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「浅草滞在」

2019-12-11 19:38:36 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月24日15:00.天候:雨 東京都台東区西浅草 浅草ビューホテル]

 昼食会を終えたダンテ一門は、都内のホテルへ向かった。

 稲生:「こちらが次なる滞在先のホテルです」
 エレーナ:「こりゃまた高そうなホテルだな」

 稲生が早速幹事としてフロントへ向かう。
 エレーナは普段ホテルで働いているからか、何か参考になるものを探し始めた。

 ルーシー:「明らかに最上階辺りのスイートルームは大師匠様の御部屋でしょうね」
 マリア:「多分部屋割りは変わらないだろうね」
 エレーナ:「いいな。うちのホテルにも御神輿展示してみっか」
 マリア:「たたでさえ狭いロビーが余計狭くなるっての」

 しばらくして稲生が戻ってくる。

 稲生:「お待たせしました。それでは大師匠様には特別室に宿泊して頂きますので……」
 イリーナ:「あと何人泊まれるの?」
 稲生:「4人です。モダンジャパニーズルームと言いまして、座敷もある特別室です」
 イリーナ:「座敷……」
 ダンテ:「5人も泊まれるのか。では、昨日とは違う部屋割りにしようか。但し、イリーナは今回私のアテンド役だから、引き続き私と同室してもらう」
 イリーナ:「分かりました」
 ダンテ:「あとの3人は仲良く決めてくれ」

 引き続き稲生はまたシングルである。

 稲生:「トリプルルームとフォースルームがあるので、部屋割りは鬼怒川の時と同じでいいですね」
 エレーナ:「異議なーしだぜ」
 稲生:「部屋の向きがスカイツリーの方を向いたのと、都心を向いた方があります。天気が良ければ富士山も見えるそうです」
 エレーナ:「スカイツリー見える方がいいよな?」
 マリア:「私はどっちでも……」
 ルーシー:「新幹線は見えない……よね?」
 稲生:「ちょっとムリだね」

 部屋の鍵を受け取るとエレベーターで客室に上がっていく。

 稲生:「今夜は宴会無しでいいんですね?」
 イリーナ:「そう。今夜、先生はお忙しいからね。恐らく、夕食はルームサービスになるんじゃないかしら。あなた達も適当に食べに行っていいから」
 稲生:「分かりました。ホテルの中は高そうですからね。朝食ビュッフェだけ利用させてもらいますよ」
 イリーナ:「それでいいんじゃないかしら」

 稲生は自分の宿泊する部屋のフロアでエレベーターを降りた。
 そして、その部屋に入る。
 スタンダードシングルというこのホテルでは一番安い部屋であるが、それでもエレーナのホテルの凡そ5倍くらいの宿泊料金が掛かる部屋だ。

 稲生:「うーん……さすがにこの天気じゃ、富士山までは見えないか」

 稲生は残念そうに首を傾げた。

 稲生:「おっ、そうだ。今日の夕食、何食べるか検索してみよう」

 稲生はこのホテルの館内に飛び交っているWi-Fiに接続すると、それで浅草周辺の飲食店を検索した。
 と、そこへ客室内の電話が鳴る。

 稲生:「はいはい」

 電話を取ると、マリアからだった。

 稲生:「はいはい、何でしょう?」
 マリア:「今日の夕食なんだけど、ルーシー達と一緒に行く?」
 稲生:「まあ、皆で食べた方が楽しいでしょうね」
 マリア:「昼食は日本食だったでしょ?魚中心の。今度は肉がいいんだけど」
 稲生:「分かりました。肉ですね。任せてください」

 稲生は大きく頷いた。

 稲生:「他の組はどうするんでしょうね?」
 マリア:「アナスタシア組は、このホテルのレストランを利用するみたいだよ」
 稲生:「お金ありますね」
 マリア:「弟子達が全員稼ぐからね、あそこは」
 稲生:「なるほど」
 マリア:「このホテルのすぐ近くに地下鉄が通ってるんだって?」
 稲生:「東京メトロ銀座線と都営浅草線ですか?」
 マリア:「秋葉原に行くヤツ」
 稲生:「つくばエクスプレスですか!あれは地下鉄じゃないんですけど、確かにこの辺は地下を走ってますね」
 マリア:「あそこに買い物に行く組もいるらしい」
 稲生:「やっぱり」
 マリア:「私達はルーシー以外、今更観光することも無いから」
 稲生:「た、確かに。アキバで爆買いより、むしろ却ってイオンに行くくらいですからね、僕達」
 マリア:「そういうわけだから。別に、高い店じゃなくていいよ。チェーン店でもいいくらい。それでゆっくり食べれる所」
 稲生:「分かりました。後で検索して予約しておきます」
 マリア:「よろしくね」

 稲生は電話を切った。

 稲生:「それじゃ、検索してみよう」

 そして再びスマホを操作した。

[同日18:00.天候:曇 台東区浅草 某しゃぶしゃぶ店]

 ホテルから東武浅草駅の方に向かう途中の所にあるしゃぶしゃぶ店に入る稲生達。

 稲生:「4名で予約していた稲生です」
 店員:「はい、稲生様ですね」

 案内された席は4人用のテーブル席。

 稲生:「食べ放題、予約しておきましたんで」
 エレーナ:「飲み放題も?」
 稲生:「多分、皆飲むと思ってそれも付けといたよ。会費は1人5000円で」
 エレーナ:「カネ取るの?」
 マリア:「当たり前だろが」

 悪魔と契約し(または内定した)ことで肉体の成長または老化の止まった魔道士がこういう店に行くと……。

 店員:「アルコール飲み放題ですか?お客様は失礼ですが、20歳を超えていらっしゃいますか?」

 18歳で魔道士になったことで今でも20歳未満に見えるマリアと、17歳で魔道士になったことでやはり見た目年齢が変わらないルーシーが日本で酒を注文すると、よくある光景。
 よく白人は早熟なので、ハイティーンであっても日本人から見れば20代に見えてしまうと言われているが、それでもやはり……。

 マリア:「あ、ハイ。超エてまス」

 マリアは慣れた様子でパスポートを見せた。

 ルーシー:「M-Me,too.」

 ルーシーも慌ててパスポートを出す。
 どちらもイギリスのパスポートであるが、マリアだけ永住者のシールが貼られている。

 店員:「失礼しました。それでは4名様、アルコール飲み放題付きの、こちらの食べ放題コースですね」
 稲生:「はい」
 店員:「それでは最初のお肉と野菜とお飲み物をお持ち致しますので、少々お待ちください」

 店員が行ってしまうと……。

 稲生:「エレーナは二十歳未満だと疑われることは無いね?」
 エレーナ:「こう見えても入門したのは12歳の時だったんだ。さすがに悪魔との契約は20歳過ぎてからだからな。そういう年齢を疑われる煩わしさは無いぜ」
 ルーシー:「その部分だけは羨ましいね」
 エレーナ:「ていうか、オマエ達が誤解されるカッコしてるだけだと思うぜ?」

 エレーナはマリアとルーシーの服装を指さした。
 ブレザーにプリーツスカートというJKのような服装をしているのであった。

 マリア:「私は勇太のリクエストに応えてるだけだ」
 稲生:「ええっ!?僕、直接リクエストはしていないと思いますけど!?いや、あの……もちろん嬉しいですけど」
 エレーナ:「なに人のせいにしてんだよ、マリアンナ」
 ルーシー:「私は大師匠様と直接お会いするから、正装で来たまでよ。この前の旅行みたいに、ラフな格好で来るわけにはいかないからね」

 とはいえルーシーの場合、プリーツではなくタイトスカートな辺りが日本ではなく、イギリスの女子学生服のような雰囲気なのである。

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