報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスターⅡ” 「イベント最後の日」

2019-05-17 21:49:27 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月5日18:00.天候:晴 宮城県宮城郡利府町 セキスイハイムスーパーアリーナ]

 MEIKO:「空を鳳凰が往く〜♪昇る不死の煙〜♪堕ちる芥が飽和して♪冷めた月が笑う〜♪」

 初音ミク:「ドドンパ♪ドドンパ♪思いのままに〜♪」

 KAITO:「汚された司法♪被告の貧富で♪決まる罪状♪法廷の主たる♪私が望む物は♪正義より金♪」

 全員で歌う“千本桜”から始まり、その後はボーカロイド達が次々と持ち歌を披露していく中、敷島達が会場に戻ったのはライブも終盤になってからだった。

 初音ミク:「皆さーん!今日は本当にありがとうございますー!私達、御覧のようにボーカロイドです。人間ではありません。それでも人間のアイドルと同じように歌わせて下さる皆さんに感謝の気持ちを込めて、一生懸命歌っています!」
 巡音ルカ:「『機械に歌わせるなんて』という声が今もございますが、機械だからこそできることも皆さんにお見せしたいと思っています」

 最後にトークが行われている中、敷島達が戻る。

 敷島:「平賀先生!」
 平賀:「おっ、敷島さん。お疲れ様でした。やはり犯人は吉塚家の人間で……」
 敷島:「ええ。エミリーもがっかりしてましたよ。せっかく育てりゃ私の後継者になれそうな人間だと思ったのに……」
 平賀:「狂った科学者は死ぬまで狂っている、ということですかね。家族にも迷惑を掛けるということに留意しないといけないんですがね」
 敷島:「そうですね。それで、ライブの方は?」
 平賀:「お陰様で順調ですよ。こりゃ大成功に終わりそうだ」
 敷島:「それは良かった……」
 平賀:「敷島さんの営業は、ピカ一ですからね」
 敷島:「いえいえ、平賀先生の整備などのおかげです」

 初音ミク:「……私達の使命を全うさせて下さっている事務所の皆さん、そして科学者の皆さんにも感謝しています」

 敷島:「んっ?」
 平賀:「ほお……。最近のAIはお世辞まで言えるようになったか……」
 敷島:「お世辞じゃなく、本心であることを願いますよ」
 平賀:「自分もそう思います。ボーカロイドはそうでしょうけどね」

 平賀は後ろに立つエミリーやシンディをチラッと見た。

 平賀:「敷島さん以外の人間にはお世辞すらも言わない彼女らを何とかしないといけませんね」
 敷島:「別に、そういう用途のロイドでもないでしょう。あいつらは……」

 初音ミク:「それじゃ最後に皆さんで歌いましょう。“Vocaloid M@ster”!」

[同日20:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町 とある飲食店]

 ライブが大成功に終わった敷島達は東北随一の繁華街、国分町に移動して打ち上げをやっていた。

 平賀:「明日はボーカロイド達の整備をして、それから帰京ですね?」
 敷島:「そうです。よろしくお願いしますよ。アリスはトニーを連れて、さっさと帰っちゃったし」
 平賀:「新幹線は動いてるんですか?」
 敷島:「今は動いてますよ。ボーカロイド達の整備の為に、明日帰る選択にして良かったですよ」
 平賀:「本当にねぇ……」

 と、そこへ……。

 村上:「おお!やはりここじゃったか!さすがはロイのGPSじゃな」
 ロイ:「シンディさんにいくらブロックされようが、私の愛のGPSはそれを打ち破る……」
 シンディ:「おい、犯罪者!ストーカー野郎!半径50メートル以内に近づくなっつったろーが!」
 敷島:「エミリー、この2人を外に摘まみ出せ!」
 エミリー:「かしこまりました」
 シンディ:「えっ?ちょっと姉さん!殺生過ぎるわよ!?助けて!」
 エミリー:「アンドロイドマスターの命令は絶対」
 ロイ:「敷島社長!エミリー様!ありがとうございます」
 エミリー:「アンドロイドマスターの命令は絶対」
 敷島:「ロイ、シンディの好きな花はラフレシアだ」
 ロイ:「ラフレシアでございますね!ありがとうございます!」
 シンディ:「社長、テキトーなこと言わないでください!何ですか、ラフレシアって!」
 ロイ:「アフリカまで摘みに行って参ります!」
 シンディ:「とっとと逝きやがれ!」

 エミリーに店外に出された執事ロイドとマルチタイプ。

 村上:「フム。しかし妹だけ彼氏ができるのも、かわいそうじゃ。エミリーにも造ってやろうか?」
 敷島:「そんな簡単に……」
 エミリー:「村上博士、お気遣い恐れ入ります。ですが私は、今はそれを望んでおりません」
 平賀:「さすがにキールの件で懲りたか?」
 エミリー:「今は社長のお傍にお仕えできる喜びを噛み締めたいのです」
 村上:「それは良い心掛けじゃ。あー、ワシにもビールを持って来てもらえかんの?」
 エミリー:「かしこまりました」

 ここでコンパニオン役をやっていたエミリーとシンディだった。

 村上:「ああ、そうそう。実はここに来る前、大学に寄って来たよ。南里志郎記念館だな」
 敷島:「うちのボーカロイド達に会ったんですか」

 今、ボーカロイドはそこに保管されている。
 ついでに整備も明日、そこで行われる。

 村上:「敷島社長に対する感謝の言葉を言っていたよ。ボーカロイドにとって、歌って踊ることは最上の使命じゃからな」
 敷島:「それで儲けさせてくれている私の方が感謝しなければなりませんよ。うちの会社、親会社などにアイドル事業を行っている所もあるんですが、やはり人間は裏切るものですね」

 今回のライブに来場したファンのアンケートにも、同じようなことが書かれているという。
 ボーカロイドは人間のアイドルのように劣化したりしないし、スキャンダルの心配も無い。
 このブレない安心感が素晴らしいとか、そんな感じだ。

 平賀:「東京の方も上手く行ったようですし、井辺プロデューサーも優秀ですね」
 敷島:「ありがとうございます。今や立派なボーカロイドマスターです。しかし、アンドロイドマスターにはなれないようです……」
 平賀:「ま、そこは後々考えて行きましょう。どうぞ、もう一杯」
 敷島:「ありがとうございます」

 テロはもう組織立っては行われなくなったもよう。
 今のところはまだ人間の暴走によるテロであるが、最前線にいる者はAIの謀叛に警戒している。
 本来それを防止する役の人間が敷島1人だけというのは、心許ないことであるが、対策が追い付かないのが実情である。

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