報恩坊の怪しい偽作家!

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“アンドロイドマスター” 「リベレーションズ」

2014-09-08 13:09:39 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月8日18:00.宮城県柴田郡川崎町郊外 林道入口 平賀太一、マリオ、ルイージ]

「こんな時に雨なんて、ツイてないなぁ……」
 国道286号線を走行する1台のワンボックスカー。
 車内にはバージョン5.0アリス・オリジナル・ヴァージョンと銘打った2機のロボットがいた。
 普段はアリスの研究所で雑用係を務めているが、元がテロリズム用ということもあり、実は戦闘力は高い。
「大丈夫デス、副理事。雨クライ、ドウッテコトアリマセン」
 マリオが右手を振った。
「水ノ中デモ、足ノ裏のスクリューでスイスイッテナモンデス」
 ルイージも言う。
「そいつは頼もしい。さー、着いたぞ」
 車が国道から林道への接点に到着する。
 アプローチ部分は舗装されているが、そこから先は未舗装だ。
 ここには既に平賀奈津子も到着していて、林道の入口を財団のセキュリティ・ロボットが2機、見張りをしていた。
「ナツ!」
「やっと来た。遅かったじゃない」
「いや、悪い。山形道が事故で通行止めになっちゃってさ。国道でひたすらだよ。南里先生の隠しアジトに、未調査区域が?」
「そうらしいのよ。元々が廃倉庫を改造した建物だったから、詳細は不明だけどね」
 南里志郎に師事していたこの夫婦。
 南里もまたかつては世界を轟かすマッド・サイエンティストであり、隠しアジトを持っていたことは公然の秘密であった。
 無論、この2人の弟子も存在自体知ってはいた。
 ただ、既に場所は放棄されていることも知っている。
 だから、今まで関心が無かったのである。
 それが急に関心を持ったのは、敷島達が例の廃ホテル地下の秘密研究所で見た、あの映像。
 チェス盤がテーブルの下に引っ込むという仕掛けを、この2人の弟子は知っていた。
 それが、南里の隠しアジトにあったことも……。
 危険なので、今回はマリオとルイージに出動してもらった次第。
「ああ、2人とも」
 平賀太一は2機の兄弟ロボットを呼んだ。
「ここから先は2人だけで行ってもらう。これが入口の鍵だ。中には対侵入者用の色々な仕掛けが施されているが、それの対応法はお前達のメモリーにインストールしておいた。それでも危険と判断された場合は、すぐに戻ってきてくれ」
「了解シマシタ!」

 

 マリオは平賀太一から、隠しアジト入口の鍵を受け取った。
「それと、組織名は不明だが、謎のテロ組織もウィリーや南里先生の遺産・遺品を狙ってるらしい。多分ここは大丈夫だと思うが、万が一のこともあるから、それも注意してくれ」
「了解デス!」

[同日18:30.同町内の林道 マリオ&ルイージ]

 1車線の幅しか無く、しかも未舗装の砂利道を進むバージョン5.0アレンジ版の兄弟。
 傘が無いと厳しいくらい降りしきる雨の中、目標に向かって突き進む。
「ダイブ暗クナッタナ……」
「このホラーチックな展開、我々ノ出番デスヨ、アニキ!」
 赤い塗装のマリオ、緑の塗装がルイージである。
「ホラーって、オ前ナァ……」
 しかしこの2人、エミリーとはまた違う機械チックな喋り方ではあるが、他のバージョン・シリーズよりもセリフが多い。
 なるべく喋る機能を付加したくなったウィリーに対し、この部分もアリスのアレンジした所なのだ。
 林道入口から30分ほど小走りに進んだ時だった。
「目標マデ、アト300メートルですヨ!アニキ……」
「待テ!何カ来ル!」
 林道の向こうから、向かって来るものがあった。
 それは1台のトラック。
 コンビニ配送もしくは引っ越し屋のトラックのサイズだったが、今にも路肩からはみ出そうなくらいだ。
 車線目いっぱい使って突き進むそのトラックは、林道を行き来する、材木を積んだトラックなどではなかった。
 それこそ、コンビニや引っ越しに使うようなタイプのトラックで、しかも……。
「アッ!?」
 ハンドル操作を誤ったわけではなさそうだ。
 トラックは急なカーブを、そこがまるで直線道路と誤認したかのようにそのまま路肩を飛び出し、谷底に転落していった。
「マジっスカ!?」
「落チタ……ヨ?」
{「どうした、2人とも?」}
 平賀から無線が飛んできた。
「副理事、大変デス!林道ノ向コウカラ来たトラックが、タッタ今、路肩ヲ飛ビ出シテ、谷ニ転落シマシタ!」
{「なに!?この時間、林業関係者の作業は無いはずだ。地元の営林局にも確認したぞ」}
「デスガ、本当デス!」
{「仕方が無い。一旦、アジトへの調査は中断。生存者の救助に当たれ」}
「了解シマシタ!」
 兄弟はトラックが転落した谷へ向かった。
 谷といっても、道から何十メートルも離れているわけではない。
 せいぜい10メートルってところか。
 しかし、トラックはあまり原型を留めていなかった。
「アニキ、コレ生存者イマスカネ?」
「トニカク、遺体ダケデモ回収シテダナ……」
 2人の兄弟機はキャブの運転席のドアをこじ開けた。
「オット!」
 開けると、血まみれの運転手が飛び降りて来た。
 自らの意思で飛び出てきたのではなく、トラックの傾き具合のせいで勝手に落ちて来たといった方が正解だ。
「脈無シ、意識無シ、呼吸無シ……。死ンデイマス。南無……」
 ドンッ!ドンドンッ!
「!!!」
 トラックのコンテナの中から、明らかに何か意識のある者が、内側から観音扉を叩く音がした。
「スキャンを……」
 ルイージがコンテナの中をスキャンしようとした時だった。

 バンッ!(内側からコンテナのドアがこじ開けられた)

「ウウウ……!」
「何ダ、コイツは!?」
 ヒグマと狼を足して2で割ったような姿の猛獣が、そのトラックには3匹積まれていた。
「ガアアアッ!」
「ウオオオッ!」
「アオォォォォン!!」
「撃テ、ルイージ!何かヤバそうダ!」
「了解!」
 兄弟機は間合いを取り、右手に装備された火器を取り出した。
 マリオはマシンガン、ルイージはショットガンだ。
 折しも雨は強さを増し、雷が周囲に轟いていた。

 テロ・ロボットとして設計された兄弟機にとっては、例え相手が熊数匹でも敵ではなかった。
 が、ただの猛獣ではなかった。
 倒された猛獣は爆発したからだ。
 爆発といっても、爆弾が爆発したようなものではなく、例えば車が事故に遭った時、漏れた燃料に引火して……みたいな爆発だ。
 猛獣が爆発?
「アニキ、コイツラ、生物反応がアリマセン!」
「ロボットか?」
 そこへ、また平賀から無線が飛んできた。
{「2人とも、聞いてくれ。事故の件は警察に一報した。だけども、この大雨と場所柄、すぐには出動できないそうだ。お前達はそのまま調査を続行してくれ」}
「了解!」
{「林業関係者しか本来出入りしない道路だ。恐らくはそのトラック、南里先生のアジトから来たものだろう。もしかすると、本当に今、テロ組織がそこを押さえてるのかもしれない。十分気をつけろよ」}
 兄弟機は豪雨の中をもろともせず、林道を突き進んだ。

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