[5月4日22:00.天候:曇 北海道札幌市中央区 京王プラザホテル札幌]
エミリーが敷島達と共にレストランに入ったので、シンディは1人で店の外で待っていた。
シンディ:(随分話し込んでるねぇ……。マルチタイプの試作機か……。ウィリアム博士も、そんなことは言ってなかったな。きっともうこの世に無いと思われていたのでしょう)
試作機に関して、シンディは何か特別な思いがあるということは無い。
何しろ、ポッと出の話だったので、何の実感も湧かないのだ。
ボーカロイドやメイドロイドにも試作機があったように、マルチタイプにも試作機は存在した。
確かに常識で考えれば分かる。
だが、それが現存しているかどうかとなれば話は別だ。
量産機たる7姉弟ですら、現存しているのは2機だけなのだから。
8号機のアルエットはフルモデルチェンジであり、現在稼働のメドが立っていない9号機のデイジーはオリジナルモデルのアレンジ版(正直言って劣化版)である。
その試作機がミクの持ち歌の歌詞の中にヒントが隠されており、それを解明したところ、北海道のどこかに埋まっているという。
旧ソ連製のマルチタイプの、それも試作機がどうして日本の北海道に埋められているのかは不明だ。
敷島の予想では、恐らくKR団(ケイン・ローズウェル財団。公式には代表らの死と1人だけ残っていた女性科学者が老齢で死亡し、ザコしかいなくなった為に崩壊した)が持ち込んだものと予想しているが……。
シンディ:「ん?」
その時、ロビーの方から1機のロボットが慌てた様子で入って来た。
見たところ、バージョン5.0のようだ。
4.0まではテロロボットとしての用途が大きく、世間のイメージも頗る悪かった上に頭もあまり良くなかった為に、ここ最近になって5.0が量産化されるようになると、それに大きく取って替わるようになった。
4.0との違いは、それまでずんぐりむっくりした体型からよりスマートなものになり、動きも滑らかで俊敏、喋り方もより滑らかなものになっている。
但し、見た目は明らかに金属剥き出しのロボットであるので、アンドロイド(ロイド)と呼ばれることはない。
5.0:「シンディ様!大変です!」
シンディ:「何か用?」
シンディは腕組みをしたままで答えた。
バージョン・シリーズはヴァージョン・アップが進もうとも、シンディらマルチタイプと比べれば下位機種とされている。
5.0:「平賀博士に、すぐお会いできますでしょうか!?」
シンディ:「最初から説明しろ!……んっ?」
シンディが言葉足らずの新型ロボットを睨みつけたが、すぐにまた別のロボットの反応があって、そちらに視線を映した。
エントランスから入って来たのは、ロボットではなくロイドだった。
但し、別の5.0に支えられて、ようやく歩いているといった状態。
シンディ:「あなた確か……ボーカロイドのGUMIとか言ったわね。どうしたの?」
GUMI:「お願いです……助けてください……。頭が熱い……」
シンディ:「チッ、しょうがない。ちょっとそこで待ってな」
シンディはすぐに平賀と同席している姉のエミリーに、通信を送った。
すると、すぐに中から平賀が出て来た。
平賀:「ボーカロイドが“急患”として来たって!?」
シンディ:「そうなんです」
平賀:「多分、冷却関係に異常だな。エミリー、すぐに私の部屋まで運んでくれ」
エミリー:「かしこまりました」
シンディ:「いいんですか?大事なお話の最中でしょうに」
敷島:「いや、もうだいたい話は終わっていたところだから別に大丈夫だ。あれは『Megpoid』のGUMIだな。所属事務所が……千田プロか。そこのプロデューサーに電話しておこう。シンディも運ぶのを手伝ってくれ」
シンディ:「は?GUMIなら姉さん1人で十分だと思いますが……」
敷島:「違う!……井辺君だ!」
シンディ:「また酔い潰れたんですか!……おい、お前ら!厄介事持って来たんだから手伝え、オラ!」
5.0A:「は、はい!」
5.0B:「分かりました!」
[同日23:00.天候:晴 同ホテル・ロビー]
平賀:「ラジエーターの故障が原因でした。GUMIもなかなかダンサブルな持ち歌が多いですから、衝撃とかには気をつけた方がいいですよ」
プロデューサー:「大変お手数をお掛けしました」
GUMI:「お世話になりました」
GUMIは深々と頭を下げた。
平賀:「明日、披露するんだっけ?“少年と魔法のロボット”(作詞・作曲・編曲:40㍍P。2013年8月発表。NHK“みんなのうた”で放送された)あれは泣けるね。楽しみにしてるぞ」
するとGUMIはパッと顔を明るくした。
GUMI:「はい!頑張ります!」
そして、プロデューサーと共にホテルをあとにした。
平賀:(ライデンよりはまだまともな整備状態ではあったけれども、敷島エージェンシーと比べればまだまだだな。ラジエーターが故障しやすいことくらい、ボーカロイドを扱う事務所なら知ってるはずだけど……)
それでもGUMI辺りの世代からは、まともなラジエーターが取り付けられたという。
初音ミクはボディを交換しているが、平賀が組み立てた時はラジエーターなど取り付けられておらず、敷島がダンスをさせた時は壊れるかと思ったくらいだ。
当初のボーカロイドは、本当にただの歌うだけのアンドロイドだと思われていたのだ。
自動車用のラジエーターならまだ衝撃に強いのだが、それは大き過ぎる。
かといってPC用だと小さいし、衝撃に弱い。
ようやくデイライト・コーポレーションで、ボーカロイド用のラジエーターが発明されていて、今はそれが標準装備となっている。
ただ、値段が高い為、それより前に造られたボーカロイドにはまだ取り付けられていないことがある。
今回のGUMIもそうだった。
別に無理して付ける必要は無いのだが、その場合、きめ細かいメンテがより一層必要となる。
GUMIの所属事務所は悪質ではないのだが、かといって良心的と言えるわけでもない所だったようだ。
エミリー:「良いのですか?修理費用、だいぶ格安でお引き受けになりましたけど……」
平賀:「自分はロイドの整備役・修理役で付いて来たんだ。それなりの報酬なら、既に敷島さんからもらっている。ロイドがまた元気に人間の役に立つようになってくれればいいさ」
エミリー:「殊勝です。早く部屋に戻りましょう。そろそろお休みになりませんと」
平賀:「分かってる」
平賀とエミリーと共に、エレベーターに乗り込んだ。
平賀:「歌えない少年の為に、歌うロボットを作ってあげた博士のような博士になりたい」
エミリー:「平賀博士ならなれます。必ず」
平賀:「ところで、あの5.0達は帰ったか?」
エミリー:「見てませんね」
エレベーターが客室フロアに到着する。
降りて客室に向かった。
平賀:「何か嫌な予感がするんだが……」
部屋に戻ると……。
5.0A:「お帰りなさいませ。お風呂にお湯を張っておきました。お茶が美味しい温度です」
5.0B:「私はベッドを温めておきました。良い汗が掛けますよ」
平賀:(;゚Д゚)
エミリー:「消え去れ、キサマら!」
ジャキッとエミリーは右手をレーザーガンに変形させた。
そして、5.0達を追い出したのだった。
エミリーが敷島達と共にレストランに入ったので、シンディは1人で店の外で待っていた。
シンディ:(随分話し込んでるねぇ……。マルチタイプの試作機か……。ウィリアム博士も、そんなことは言ってなかったな。きっともうこの世に無いと思われていたのでしょう)
試作機に関して、シンディは何か特別な思いがあるということは無い。
何しろ、ポッと出の話だったので、何の実感も湧かないのだ。
ボーカロイドやメイドロイドにも試作機があったように、マルチタイプにも試作機は存在した。
確かに常識で考えれば分かる。
だが、それが現存しているかどうかとなれば話は別だ。
量産機たる7姉弟ですら、現存しているのは2機だけなのだから。
8号機のアルエットはフルモデルチェンジであり、現在稼働のメドが立っていない9号機のデイジーはオリジナルモデルのアレンジ版(正直言って劣化版)である。
その試作機がミクの持ち歌の歌詞の中にヒントが隠されており、それを解明したところ、北海道のどこかに埋まっているという。
旧ソ連製のマルチタイプの、それも試作機がどうして日本の北海道に埋められているのかは不明だ。
敷島の予想では、恐らくKR団(ケイン・ローズウェル財団。公式には代表らの死と1人だけ残っていた女性科学者が老齢で死亡し、ザコしかいなくなった為に崩壊した)が持ち込んだものと予想しているが……。
シンディ:「ん?」
その時、ロビーの方から1機のロボットが慌てた様子で入って来た。
見たところ、バージョン5.0のようだ。
4.0まではテロロボットとしての用途が大きく、世間のイメージも頗る悪かった上に頭もあまり良くなかった為に、ここ最近になって5.0が量産化されるようになると、それに大きく取って替わるようになった。
4.0との違いは、それまでずんぐりむっくりした体型からよりスマートなものになり、動きも滑らかで俊敏、喋り方もより滑らかなものになっている。
但し、見た目は明らかに金属剥き出しのロボットであるので、アンドロイド(ロイド)と呼ばれることはない。
5.0:「シンディ様!大変です!」
シンディ:「何か用?」
シンディは腕組みをしたままで答えた。
バージョン・シリーズはヴァージョン・アップが進もうとも、シンディらマルチタイプと比べれば下位機種とされている。
5.0:「平賀博士に、すぐお会いできますでしょうか!?」
シンディ:「最初から説明しろ!……んっ?」
シンディが言葉足らずの新型ロボットを睨みつけたが、すぐにまた別のロボットの反応があって、そちらに視線を映した。
エントランスから入って来たのは、ロボットではなくロイドだった。
但し、別の5.0に支えられて、ようやく歩いているといった状態。
シンディ:「あなた確か……ボーカロイドのGUMIとか言ったわね。どうしたの?」
GUMI:「お願いです……助けてください……。頭が熱い……」
シンディ:「チッ、しょうがない。ちょっとそこで待ってな」
シンディはすぐに平賀と同席している姉のエミリーに、通信を送った。
すると、すぐに中から平賀が出て来た。
平賀:「ボーカロイドが“急患”として来たって!?」
シンディ:「そうなんです」
平賀:「多分、冷却関係に異常だな。エミリー、すぐに私の部屋まで運んでくれ」
エミリー:「かしこまりました」
シンディ:「いいんですか?大事なお話の最中でしょうに」
敷島:「いや、もうだいたい話は終わっていたところだから別に大丈夫だ。あれは『Megpoid』のGUMIだな。所属事務所が……千田プロか。そこのプロデューサーに電話しておこう。シンディも運ぶのを手伝ってくれ」
シンディ:「は?GUMIなら姉さん1人で十分だと思いますが……」
敷島:「違う!……井辺君だ!」
シンディ:「また酔い潰れたんですか!……おい、お前ら!厄介事持って来たんだから手伝え、オラ!」
5.0A:「は、はい!」
5.0B:「分かりました!」
[同日23:00.天候:晴 同ホテル・ロビー]
平賀:「ラジエーターの故障が原因でした。GUMIもなかなかダンサブルな持ち歌が多いですから、衝撃とかには気をつけた方がいいですよ」
プロデューサー:「大変お手数をお掛けしました」
GUMI:「お世話になりました」
GUMIは深々と頭を下げた。
平賀:「明日、披露するんだっけ?“少年と魔法のロボット”(作詞・作曲・編曲:40㍍P。2013年8月発表。NHK“みんなのうた”で放送された)あれは泣けるね。楽しみにしてるぞ」
するとGUMIはパッと顔を明るくした。
GUMI:「はい!頑張ります!」
そして、プロデューサーと共にホテルをあとにした。
平賀:(ライデンよりはまだまともな整備状態ではあったけれども、敷島エージェンシーと比べればまだまだだな。ラジエーターが故障しやすいことくらい、ボーカロイドを扱う事務所なら知ってるはずだけど……)
それでもGUMI辺りの世代からは、まともなラジエーターが取り付けられたという。
初音ミクはボディを交換しているが、平賀が組み立てた時はラジエーターなど取り付けられておらず、敷島がダンスをさせた時は壊れるかと思ったくらいだ。
当初のボーカロイドは、本当にただの歌うだけのアンドロイドだと思われていたのだ。
自動車用のラジエーターならまだ衝撃に強いのだが、それは大き過ぎる。
かといってPC用だと小さいし、衝撃に弱い。
ようやくデイライト・コーポレーションで、ボーカロイド用のラジエーターが発明されていて、今はそれが標準装備となっている。
ただ、値段が高い為、それより前に造られたボーカロイドにはまだ取り付けられていないことがある。
今回のGUMIもそうだった。
別に無理して付ける必要は無いのだが、その場合、きめ細かいメンテがより一層必要となる。
GUMIの所属事務所は悪質ではないのだが、かといって良心的と言えるわけでもない所だったようだ。
エミリー:「良いのですか?修理費用、だいぶ格安でお引き受けになりましたけど……」
平賀:「自分はロイドの整備役・修理役で付いて来たんだ。それなりの報酬なら、既に敷島さんからもらっている。ロイドがまた元気に人間の役に立つようになってくれればいいさ」
エミリー:「殊勝です。早く部屋に戻りましょう。そろそろお休みになりませんと」
平賀:「分かってる」
平賀とエミリーと共に、エレベーターに乗り込んだ。
平賀:「歌えない少年の為に、歌うロボットを作ってあげた博士のような博士になりたい」
エミリー:「平賀博士ならなれます。必ず」
平賀:「ところで、あの5.0達は帰ったか?」
エミリー:「見てませんね」
エレベーターが客室フロアに到着する。
降りて客室に向かった。
平賀:「何か嫌な予感がするんだが……」
部屋に戻ると……。
5.0A:「お帰りなさいませ。お風呂にお湯を張っておきました。お茶が美味しい温度です」
5.0B:「私はベッドを温めておきました。良い汗が掛けますよ」
平賀:(;゚Д゚)
エミリー:「消え去れ、キサマら!」
ジャキッとエミリーは右手をレーザーガンに変形させた。
そして、5.0達を追い出したのだった。
ってさ、”良い汗が掛けますよ”って一体・・・
ちょっと考えてしまういおなずんでした。
最新型になっても執事ロイドとはまた違うので、認識系統が不完全なのでしょう。
まだPepper君の方が高性能と言えるかと。
>”良い汗が掛けますよ”って一体・・・
5.0は寝ながらにしてサウナ気分を味わえるという認識でサービスしたつもりだったようですが、人間から見れば別の意味で認識してしまうものです。
それで平賀も呆れ、それを見たエミリーの怒りに触れたのでしょう。