※厳虎独白さんがカタカナの記事タイトルで押し通しているので、こちらは英語にしてみました。何でカタカナなんだろう……?
[1月25日04:30.冥界鉄道公社の臨時列車内 稲生勇太、マリアンナ・ベルフェ・スカーレット、イリーナ・レヴィア・ブリジッド、アレクサンドラ・エヴァノビッチ(サーシャ)]
減光されている車内。
4両編成の急行形気動車は、時折ディーゼルエンジンの唸り声を上げて加速したり、静かに惰行したりと一貫性を見ない。
稲生達の貸切列車なので、ボックスシートはそれぞれ1人ずつ独り占めできる状態だ。
最初はそうしていた稲生だったが、寝る前にマリアの向かいの席に座った。
マリアもそれでいいとのことだ。
「仲がよろしいことで」
と、サーシャも口元に笑みを浮かべていた。
(稲生達が乗車している気動車のモデル。キハ58系と言えば、鉄オタなら知らぬ者はいないくらい有名な車両である。私もJR東日本仙台支社カラーの車両に乗ったことがある。とはいえ、やはりこの国鉄色の車両に……ん?何スか、ANPさん?……え?これキハ58じゃない?キハ56系ですって?……ん?キハ56って……え?じゃあ、稲生達が今向かっている所って……)
取りあえず、座っている所にあっては窓のブラインドを下ろしている。
外はまだ真っ暗闇で、どこを走っているのかは分からない。
ただ、少なくとも東京や大阪などの大都市近郊ではないことは明らかだ。
気動車で運行されることといい、明らかに地方のどこかを走っているといい、藤谷は一体どこに行ったのだろうか?
昨夜、電話を片っ端から掛けた時、ようやく日蓮正宗の知り合いに繋がった。
その時、藤谷が旅行で東京にはいないことを教えてくれた。
但し、その信徒も藤谷がどこに行ったかは分からないという。
25日なら御開扉もあるが、少なくとも気動車に乗せられた以上、身延線を走っているわけではないことから、御開扉に向かったわけではないようだ。
それに、もしそうなら、その信徒も知っているはずである。
旅行というか、仕事で地方出張にでも行っているのだろうか。
藤谷は地方の仕事はあまり取らないようにした、と言っていたのだが……。
稲生がふと目覚めた時、車内は意外に明るかった。
車内は減光されているのだが、何故か明るいのは……。
それでも車内の明かりに、外の何かが反射して……?
稲生は誰も座っていないボックスシートに移動し、ブラインドの閉められていない窓の外を見た。
(雪だ……!)
外は雪が積もっていた。
車内の明かりが外に積もっている雪に反射し、それがまた車内に差し込んでより明るさを増していたのだった。
(って、これ、よく見たら二重窓!?)
客席の窓は下から上に開けるタイプである。
最近の車両が上から下に開けるタイプとは真逆だ。
その窓が二重窓になっていたことに気づいた。
おかげで、外は極寒でも車内の保温が効いているのである。
稲生は通路に立って、デッキに出るドアの所まで行ってみた。
そこには車両の形式番号が書かれたプレートが貼られている。
プレートに書かれていたのは、『キハ56』であった。
(キハ56系って、北海道仕様の!?じゃあ、いま僕達がいる所って……!?)
すると、車内の照明が元の明るさに戻った。
〔「皆様、おはようございます。当列車は順調にJR函館本線を走行しております。あと15分ほどで、ご希望の停車駅に到着する見込みでございます。お降りの支度をして、お待ちください」〕
車内放送が車内に響いた。
「うーん……」
サーシャとマリアが伸びをした。
「腰が痛い。ちゃんとしたベッドで寝たい……」
と、マリア。
「一体、今どこを走ってるんだい?日本語だと分からないよ、稲生?」
サーシャが茫然とする稲生に話し掛けた。
「え……?藤谷班長、今どこにいるの???」
今しがた、駅を通過したが、駅名看板が雪に埋もれて何駅かが判別できなかった。
[1月25日05:00.天候:曇 JR函館本線・朝里駅 稲生、マリア、イリーナ、サーシャ]
ディーゼルエンジンの音を響かせて、まだロクに除雪もされていないホームで稲生達は降ろされた。
で、列車はすぐにドアを閉めて、発車して行ってしまった。
「ここ……どこ……?」
イリーナが寝ぼけ眼で呟いた。
幸い雪は降っていなかったが、かなり積もっている。
「め……メチャクチャ寒い!早く何とかしてよ!」
サーシャが体を震わせた。
「朝里駅って、無人駅だっけ……」
稲生達は取りあえず、駅の待合室に入った。
当然まだ列車が動いていない状態なので、待合室は暖房など入っていない。
何しろ時刻表を見ると、札幌方面の始発列車が5時49分、小樽方面にあっては6時50分という有り様だった。
「で、でも藤谷班長はこの町のどこかにいるってことですよね?電話してみましょう」
こんな朝早くに大丈夫かと思ったが、意外とすぐに藤谷は電話に出た。
{「稲生君か?どうしたんだ?こんな朝早くから……」}
「藤谷班長!もしかして今、朝里にいます?」
{「ああ。よく分かったな。藤谷組恒例の社員旅行だ。今年は俺のダーツで、北海道の朝里川温泉に決まった!」}
「ダーツで決めてるの!?……あ、いや、こんな朝早くから申し訳ないんですけど、今から迎えに来てもらうってことできますか?」
{「は?どこに?」}
「JRの朝里駅です!魔界から戻ってきたはいいんですが、この駅で降ろされちゃって!」
{「魔界に行ってたのか!てか、外はマイナス10度くらいあるぞ!?」}
「だから、一刻も早くお願いしたいんです!」
{「分かった。旅館に頼んで、車を出してもらおう!」}
「ありがとうございます!」
稲生は電話を切った。
「藤谷班長、迎えに来てくれるらしいです!」
「そう。それは良かったねぃ……」
「師匠、今寝たら死にますよ!?」
「てか、エリックは!?何でエリックのこと聞いてくれなかったの!?」
「あ゛!忘れてた……。迎えに来てくれた時、聞いてみます!」
常春の国アルカディアから、いきなり極寒の地、北海道までやってきた稲生達。
果たして、サーシャの望みは叶うのか?
どうしていきなり藤谷が鍵を持つ人物となったのか。
この時点では、まだ明らかにならなかった。
[1月25日04:30.冥界鉄道公社の臨時列車内 稲生勇太、マリアンナ・ベルフェ・スカーレット、イリーナ・レヴィア・ブリジッド、アレクサンドラ・エヴァノビッチ(サーシャ)]
減光されている車内。
4両編成の急行形気動車は、時折ディーゼルエンジンの唸り声を上げて加速したり、静かに惰行したりと一貫性を見ない。
稲生達の貸切列車なので、ボックスシートはそれぞれ1人ずつ独り占めできる状態だ。
最初はそうしていた稲生だったが、寝る前にマリアの向かいの席に座った。
マリアもそれでいいとのことだ。
「仲がよろしいことで」
と、サーシャも口元に笑みを浮かべていた。
(稲生達が乗車している気動車のモデル。キハ58系と言えば、鉄オタなら知らぬ者はいないくらい有名な車両である。私もJR東日本仙台支社カラーの車両に乗ったことがある。とはいえ、やはりこの国鉄色の車両に……ん?何スか、ANPさん?……え?これキハ58じゃない?キハ56系ですって?……ん?キハ56って……え?じゃあ、稲生達が今向かっている所って……)
取りあえず、座っている所にあっては窓のブラインドを下ろしている。
外はまだ真っ暗闇で、どこを走っているのかは分からない。
ただ、少なくとも東京や大阪などの大都市近郊ではないことは明らかだ。
気動車で運行されることといい、明らかに地方のどこかを走っているといい、藤谷は一体どこに行ったのだろうか?
昨夜、電話を片っ端から掛けた時、ようやく日蓮正宗の知り合いに繋がった。
その時、藤谷が旅行で東京にはいないことを教えてくれた。
但し、その信徒も藤谷がどこに行ったかは分からないという。
25日なら御開扉もあるが、少なくとも気動車に乗せられた以上、身延線を走っているわけではないことから、御開扉に向かったわけではないようだ。
それに、もしそうなら、その信徒も知っているはずである。
旅行というか、仕事で地方出張にでも行っているのだろうか。
藤谷は地方の仕事はあまり取らないようにした、と言っていたのだが……。
稲生がふと目覚めた時、車内は意外に明るかった。
車内は減光されているのだが、何故か明るいのは……。
それでも車内の明かりに、外の何かが反射して……?
稲生は誰も座っていないボックスシートに移動し、ブラインドの閉められていない窓の外を見た。
(雪だ……!)
外は雪が積もっていた。
車内の明かりが外に積もっている雪に反射し、それがまた車内に差し込んでより明るさを増していたのだった。
(って、これ、よく見たら二重窓!?)
客席の窓は下から上に開けるタイプである。
最近の車両が上から下に開けるタイプとは真逆だ。
その窓が二重窓になっていたことに気づいた。
おかげで、外は極寒でも車内の保温が効いているのである。
稲生は通路に立って、デッキに出るドアの所まで行ってみた。
そこには車両の形式番号が書かれたプレートが貼られている。
プレートに書かれていたのは、『キハ56』であった。
(キハ56系って、北海道仕様の!?じゃあ、いま僕達がいる所って……!?)
すると、車内の照明が元の明るさに戻った。
〔「皆様、おはようございます。当列車は順調にJR函館本線を走行しております。あと15分ほどで、ご希望の停車駅に到着する見込みでございます。お降りの支度をして、お待ちください」〕
車内放送が車内に響いた。
「うーん……」
サーシャとマリアが伸びをした。
「腰が痛い。ちゃんとしたベッドで寝たい……」
と、マリア。
「一体、今どこを走ってるんだい?日本語だと分からないよ、稲生?」
サーシャが茫然とする稲生に話し掛けた。
「え……?藤谷班長、今どこにいるの???」
今しがた、駅を通過したが、駅名看板が雪に埋もれて何駅かが判別できなかった。
[1月25日05:00.天候:曇 JR函館本線・朝里駅 稲生、マリア、イリーナ、サーシャ]
ディーゼルエンジンの音を響かせて、まだロクに除雪もされていないホームで稲生達は降ろされた。
で、列車はすぐにドアを閉めて、発車して行ってしまった。
「ここ……どこ……?」
イリーナが寝ぼけ眼で呟いた。
幸い雪は降っていなかったが、かなり積もっている。
「め……メチャクチャ寒い!早く何とかしてよ!」
サーシャが体を震わせた。
「朝里駅って、無人駅だっけ……」
稲生達は取りあえず、駅の待合室に入った。
当然まだ列車が動いていない状態なので、待合室は暖房など入っていない。
何しろ時刻表を見ると、札幌方面の始発列車が5時49分、小樽方面にあっては6時50分という有り様だった。
「で、でも藤谷班長はこの町のどこかにいるってことですよね?電話してみましょう」
こんな朝早くに大丈夫かと思ったが、意外とすぐに藤谷は電話に出た。
{「稲生君か?どうしたんだ?こんな朝早くから……」}
「藤谷班長!もしかして今、朝里にいます?」
{「ああ。よく分かったな。藤谷組恒例の社員旅行だ。今年は俺のダーツで、北海道の朝里川温泉に決まった!」}
「ダーツで決めてるの!?……あ、いや、こんな朝早くから申し訳ないんですけど、今から迎えに来てもらうってことできますか?」
{「は?どこに?」}
「JRの朝里駅です!魔界から戻ってきたはいいんですが、この駅で降ろされちゃって!」
{「魔界に行ってたのか!てか、外はマイナス10度くらいあるぞ!?」}
「だから、一刻も早くお願いしたいんです!」
{「分かった。旅館に頼んで、車を出してもらおう!」}
「ありがとうございます!」
稲生は電話を切った。
「藤谷班長、迎えに来てくれるらしいです!」
「そう。それは良かったねぃ……」
「師匠、今寝たら死にますよ!?」
「てか、エリックは!?何でエリックのこと聞いてくれなかったの!?」
「あ゛!忘れてた……。迎えに来てくれた時、聞いてみます!」
常春の国アルカディアから、いきなり極寒の地、北海道までやってきた稲生達。
果たして、サーシャの望みは叶うのか?
どうしていきなり藤谷が鍵を持つ人物となったのか。
この時点では、まだ明らかにならなかった。
1両単行のヤツでしょう?
JR東日本でも昔いましたね。
陸羽東線で走ってましたよ。
いや、実に懐かしい。