[7月2日18:00.天候:雨 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校1F新聞部部室]
外は雨が降ってきた。
雷の混じったゲリラ豪雨だ。
夏のホラー展開と言えば、雷であろう。
真冬なら吹雪か。
もちろん、地域によっては雷付きのゲリラ豪雪が降る所もある。
栗原蓮華:「まもなくこの部室にやって来る本当の7人目の名前は神田拓郎。3週間前に死んだ3年生の男子です」
古堂真:「冗談じゃねぇぞ、おい!何であいつがここに来るんだよっ!?」
蓮華:「古堂先輩は神田先輩のことを御存知なんですか?」
古堂:「そりゃ、知ってなくもねぇよ。……同じクラスだったからな。だから3週間前に自殺したってことも知ってる」
笠間:「名前だけならボクも知ってる。見た目はボクよりもフツメンのくせに、あれが『母性本能をくすぐるタイプ』っていうの?それで結構、女子にモテてたって聞いたね」
さすがは自称イケメンの遊び人、笠間は同じモテ男子のことはクラス違いでも知っているようだ。
笠間:「でも、イジメの噂は聞かなかったな。まあ、モテる男子に僻んで嫌がらせするヤツとかはいたみたいだけど、石上さんが話した妹さんのイジメとは全然違ったな」
蓮華:「その神田先輩のことなんですけどね……。笠間先輩の仰る通り、モテる方だったそうで、彼女さんもいらっしゃったそうです。ところが、その彼女さんというのが、とても嫉妬深い人で、束縛するタイプだったそうです。毎晩、直接電話して家にいるかどうか確かめたりとかもしていたとのことです。そんなのLINEで済む話なんでしょうけど、SNSだと誤魔化しやすいということで、毎日電話だそうです」
笠間:「でも、そのくらいならまだ許容範囲じゃない?ライバルが多いと、どうしてもそうなっちゃうよ。あいつはあいつで、それなりにモテてたからね」
蓮華:「そうですね。でも、他の女子が近づいただけでしつこく問い詰めたり、ヒステリーを起こしたりと異常だったそうです」
リサ:「因みに栗原……先輩は、どうしてその話を知ってるんですか?」
蓮華:「神田さんは男子剣道部員だったから。私は女子剣道部だからね、色々と噂を聞いてたからだよ」
リサ:「なるほど」
古堂:「そういやあいつ、剣道部だったな。三段とか四段とか、そんな猛者だったんじゃなかったか?見た目は優男なのによ」
蓮華:「四段ですよ」
リサ:「先輩は?」
蓮華:「私は三段。……話を戻すね。神田さんは、そんな彼女さんに恐怖を感じるようになって、別れたいと思ったそうです。そんな時、神田さんのことが好きだという女子が現れたんです。それでその女子は、神田さんに近づくようになったそうです。もちろん、それを知った彼女さんは物凄くキレたそうです。それでも神田さんは、彼女さんの目を盗んで、新しい彼女と付き合うことにしたそうですよ。ところが、今度はその女子に片思いをする男子が現れましてね、当然彼は神田さんをとても憎らしく思ったそうです。さっき笠間先輩が仰った、『嫌がらせされた』というのは多分そのことじゃないかと」
笠間:「そうかもしれないね」
蓮華:「それから何日かして、神田さんは死にました。線路を枕代わりにして、睡眠薬を飲んでそのまま眠ったそうです。そこに電車がやってきて、車輪に頭を轢かれて死んだそうです。頭はもうグシャグシャに潰されて、いわゆる『潰れたトマト』のような状態だったそうです。自殺ということで片付いたそうですけど、真実は不明です。……一応、ここまでが私の知っている話です」
古堂:「おいおい、もう終わりか!?中途半端だろう!?」
蓮華:「剣道部で知り得た情報は、ここまでだったので。で、どうして神田さんがここに来るか分かりますか?」
リサ:「その前に、栗原先輩は、どうして神田さんがここに来るって知ったの?」
蓮華:「これを見てくれる?」
蓮華はスマホを見せた。
蓮華のスマホも、漏れなく『圏外』になっていた。
その中にある『アルバム』から、画像を出す。
蓮華:「これは男子剣道部の部室にあった申し送りノートだよ」
そこには赤い字で、『新聞部に犯人がいるぞ!』『復讐してやる!』『俺の頭をかえせ!』と、書き殴られていた。
蓮華:「これは昨日、部室で発見されたものです。調べてみたら今日、このような集まりがあるということで、もしかしたらここの参加者に、神田さんを殺した犯人がいるかと思って来てみたんです」
リサ:「でも、自殺だったんでしょ?」
蓮華:「警察は、そう判断した。だけど、イジメもそうだけど、自殺する人間には、そこまで追い込まれた背景がある。もしかしたら、誰かに睡眠薬を飲まされて線路の上に寝かされたのかもしれないしね」
古堂:「だったら俺、1番怪しいヤツを知ってるぞ」
そう言って古堂は石上を見た。
古堂:「石上。お前、神田と付き合ってだろう?俺、何度も神田がオマエと仲良くしている所を見てたからな。否定はさせねーぞ。オマエが急いでここまで戻って来たのも、そういうことだろう?」
石上:「さあ、どうかしら。古堂君も、あまり他人の噂とかを簡単に信じない方がいいよ?私と神田は、たまたま家が近いから一緒に帰ってただけ。そもそも、あいつに特定の彼女がいたなんて話、たった今知ったくらいよ。私が戻って来たのも、強い霊気を感じただけ。さすがに私1人だけ生き残るのも何だと思ったからね。もっとも、さすがにカッターでも勝てない相手だったことに気づいたのはショックだったけど。それより、田口さんだっけ?あなた、神田のことが好きだったらしいね?最近、神田が新しい彼女を作ったって聞いたけど、確か名前が田口真由美……」
田口:「ちょっと待って!あんた、先輩だからっていっていいことと悪いことがあるよ!私のせいで、神田さんが自殺したっていうの?確かに、私が神田さんのこと好きだったのは認めるよ!でも、他に原因は絶対あったはず!私が、その原因だとでもいうの?!彼が死んで一番悲しかったのは私なのに!そんなこといって……、私は知ってるもの!自分の罪を人になすりつけようなんて、とんでもないやつ!神田さんは自殺なんかじゃない。お前が、彼を殺したんだ!」
リサ:「タグチ……!?」
リサは呆気に取られた。
リサに『捕食』された田口が、物凄い形相で石上のことを睨み付けている。
だが、それを受け止める石上も負けていない。
石上:「……証拠は?あんた、私が殺したっていうんだったら、証拠を見せてみなさいな。ヘタなこと言うと、あんたのこと、殺してもいいのよ?」
そう言って石上は、スカートのポケットの中から大型のカッターナイフを取り出した。
刃が多少赤く染まっているのは、先ほどリサを斬り付けた時のものだろうか。
そこへ間に入ったのは、巨漢の2年生、太田友治だった。
太田:「まあまあ、2人ともそんなに怒らないでくださいよ。皆、変な想像をするのはやめましょう。誰が殺したとしても、ここでは関係のないことじゃないですか。そんなこと言い合って何になるっていうんです?皆で仲よくしましょうよ。ね?」
だが、ここで新井がゴホンと咳払いして発言した。
新井:「僕はその話よく知らないんですけど、何だか複雑そうですね。ところで太田君って、もしかして田口さんのこと好きなんじゃないですか?これは、あくまでも想像ですけどね。あなたここに来てから、ずっとチラチラと田口さんのこと見てたでしょ?何かあるんじゃないですか?」
新井は探るような目で太田を見た。
太田:「いやっはっはっは!ばれちゃったかな?実は僕、1年生にタイプのコが来たなぁなんて、ずっと田口さんのこと見てたんだよね。もっとも、片思いだけど……。まさか、今日こうして一緒に話ができるなんて思ってもみなかったよ。いや、恥ずかしいなあ!」
太田は照れ笑いを浮かべて頭をかいた。
ところが、笠間が席を立つ。
笠間:「……馬鹿らしい。多かれ少なかれ神田に関係のある奴ばかりじゃないの。こりゃ、新聞部の部長が仕組んだ罠だろ?あいつ、神田と仲が良かったからね。もうこれ以上、茶番につき合ってられないから。ボクは帰るからね。あとは君たちで探偵ごっこでもしてなよ」
蓮華:「待って!神田さんがこっちに向かっているって言ったでしょ!?それまでは帰っちゃダメ!」
笠間:「はあ?だったら、尚更遭遇する前に帰った方がいいじゃないの?」
蓮華:「ダメ!今、ドアを開けたら殺されますよ!もう、神田さんは来てるんだから!そして、その扉の向こうに立ってるんだから!」
笠間:「何だって!?」
リサ:(BOWの臭いはしない。だけど、確かにドアの向こうに何かいる。“花子さん”がいる時点で幽霊がいることは認めるけど、何でこんなことに……。さすがに幽霊相手じゃ、私は勝てないかもしれない)
果たして、リサ達の運命や如何に!?
外は雨が降ってきた。
雷の混じったゲリラ豪雨だ。
夏のホラー展開と言えば、雷であろう。
真冬なら吹雪か。
もちろん、地域によっては雷付きのゲリラ豪雪が降る所もある。
栗原蓮華:「まもなくこの部室にやって来る本当の7人目の名前は神田拓郎。3週間前に死んだ3年生の男子です」
古堂真:「冗談じゃねぇぞ、おい!何であいつがここに来るんだよっ!?」
蓮華:「古堂先輩は神田先輩のことを御存知なんですか?」
古堂:「そりゃ、知ってなくもねぇよ。……同じクラスだったからな。だから3週間前に自殺したってことも知ってる」
笠間:「名前だけならボクも知ってる。見た目はボクよりもフツメンのくせに、あれが『母性本能をくすぐるタイプ』っていうの?それで結構、女子にモテてたって聞いたね」
さすがは自称イケメンの遊び人、笠間は同じモテ男子のことはクラス違いでも知っているようだ。
笠間:「でも、イジメの噂は聞かなかったな。まあ、モテる男子に僻んで嫌がらせするヤツとかはいたみたいだけど、石上さんが話した妹さんのイジメとは全然違ったな」
蓮華:「その神田先輩のことなんですけどね……。笠間先輩の仰る通り、モテる方だったそうで、彼女さんもいらっしゃったそうです。ところが、その彼女さんというのが、とても嫉妬深い人で、束縛するタイプだったそうです。毎晩、直接電話して家にいるかどうか確かめたりとかもしていたとのことです。そんなのLINEで済む話なんでしょうけど、SNSだと誤魔化しやすいということで、毎日電話だそうです」
笠間:「でも、そのくらいならまだ許容範囲じゃない?ライバルが多いと、どうしてもそうなっちゃうよ。あいつはあいつで、それなりにモテてたからね」
蓮華:「そうですね。でも、他の女子が近づいただけでしつこく問い詰めたり、ヒステリーを起こしたりと異常だったそうです」
リサ:「因みに栗原……先輩は、どうしてその話を知ってるんですか?」
蓮華:「神田さんは男子剣道部員だったから。私は女子剣道部だからね、色々と噂を聞いてたからだよ」
リサ:「なるほど」
古堂:「そういやあいつ、剣道部だったな。三段とか四段とか、そんな猛者だったんじゃなかったか?見た目は優男なのによ」
蓮華:「四段ですよ」
リサ:「先輩は?」
蓮華:「私は三段。……話を戻すね。神田さんは、そんな彼女さんに恐怖を感じるようになって、別れたいと思ったそうです。そんな時、神田さんのことが好きだという女子が現れたんです。それでその女子は、神田さんに近づくようになったそうです。もちろん、それを知った彼女さんは物凄くキレたそうです。それでも神田さんは、彼女さんの目を盗んで、新しい彼女と付き合うことにしたそうですよ。ところが、今度はその女子に片思いをする男子が現れましてね、当然彼は神田さんをとても憎らしく思ったそうです。さっき笠間先輩が仰った、『嫌がらせされた』というのは多分そのことじゃないかと」
笠間:「そうかもしれないね」
蓮華:「それから何日かして、神田さんは死にました。線路を枕代わりにして、睡眠薬を飲んでそのまま眠ったそうです。そこに電車がやってきて、車輪に頭を轢かれて死んだそうです。頭はもうグシャグシャに潰されて、いわゆる『潰れたトマト』のような状態だったそうです。自殺ということで片付いたそうですけど、真実は不明です。……一応、ここまでが私の知っている話です」
古堂:「おいおい、もう終わりか!?中途半端だろう!?」
蓮華:「剣道部で知り得た情報は、ここまでだったので。で、どうして神田さんがここに来るか分かりますか?」
リサ:「その前に、栗原先輩は、どうして神田さんがここに来るって知ったの?」
蓮華:「これを見てくれる?」
蓮華はスマホを見せた。
蓮華のスマホも、漏れなく『圏外』になっていた。
その中にある『アルバム』から、画像を出す。
蓮華:「これは男子剣道部の部室にあった申し送りノートだよ」
そこには赤い字で、『新聞部に犯人がいるぞ!』『復讐してやる!』『俺の頭をかえせ!』と、書き殴られていた。
蓮華:「これは昨日、部室で発見されたものです。調べてみたら今日、このような集まりがあるということで、もしかしたらここの参加者に、神田さんを殺した犯人がいるかと思って来てみたんです」
リサ:「でも、自殺だったんでしょ?」
蓮華:「警察は、そう判断した。だけど、イジメもそうだけど、自殺する人間には、そこまで追い込まれた背景がある。もしかしたら、誰かに睡眠薬を飲まされて線路の上に寝かされたのかもしれないしね」
古堂:「だったら俺、1番怪しいヤツを知ってるぞ」
そう言って古堂は石上を見た。
古堂:「石上。お前、神田と付き合ってだろう?俺、何度も神田がオマエと仲良くしている所を見てたからな。否定はさせねーぞ。オマエが急いでここまで戻って来たのも、そういうことだろう?」
石上:「さあ、どうかしら。古堂君も、あまり他人の噂とかを簡単に信じない方がいいよ?私と神田は、たまたま家が近いから一緒に帰ってただけ。そもそも、あいつに特定の彼女がいたなんて話、たった今知ったくらいよ。私が戻って来たのも、強い霊気を感じただけ。さすがに私1人だけ生き残るのも何だと思ったからね。もっとも、さすがにカッターでも勝てない相手だったことに気づいたのはショックだったけど。それより、田口さんだっけ?あなた、神田のことが好きだったらしいね?最近、神田が新しい彼女を作ったって聞いたけど、確か名前が田口真由美……」
田口:「ちょっと待って!あんた、先輩だからっていっていいことと悪いことがあるよ!私のせいで、神田さんが自殺したっていうの?確かに、私が神田さんのこと好きだったのは認めるよ!でも、他に原因は絶対あったはず!私が、その原因だとでもいうの?!彼が死んで一番悲しかったのは私なのに!そんなこといって……、私は知ってるもの!自分の罪を人になすりつけようなんて、とんでもないやつ!神田さんは自殺なんかじゃない。お前が、彼を殺したんだ!」
リサ:「タグチ……!?」
リサは呆気に取られた。
リサに『捕食』された田口が、物凄い形相で石上のことを睨み付けている。
だが、それを受け止める石上も負けていない。
石上:「……証拠は?あんた、私が殺したっていうんだったら、証拠を見せてみなさいな。ヘタなこと言うと、あんたのこと、殺してもいいのよ?」
そう言って石上は、スカートのポケットの中から大型のカッターナイフを取り出した。
刃が多少赤く染まっているのは、先ほどリサを斬り付けた時のものだろうか。
そこへ間に入ったのは、巨漢の2年生、太田友治だった。
太田:「まあまあ、2人ともそんなに怒らないでくださいよ。皆、変な想像をするのはやめましょう。誰が殺したとしても、ここでは関係のないことじゃないですか。そんなこと言い合って何になるっていうんです?皆で仲よくしましょうよ。ね?」
だが、ここで新井がゴホンと咳払いして発言した。
新井:「僕はその話よく知らないんですけど、何だか複雑そうですね。ところで太田君って、もしかして田口さんのこと好きなんじゃないですか?これは、あくまでも想像ですけどね。あなたここに来てから、ずっとチラチラと田口さんのこと見てたでしょ?何かあるんじゃないですか?」
新井は探るような目で太田を見た。
太田:「いやっはっはっは!ばれちゃったかな?実は僕、1年生にタイプのコが来たなぁなんて、ずっと田口さんのこと見てたんだよね。もっとも、片思いだけど……。まさか、今日こうして一緒に話ができるなんて思ってもみなかったよ。いや、恥ずかしいなあ!」
太田は照れ笑いを浮かべて頭をかいた。
ところが、笠間が席を立つ。
笠間:「……馬鹿らしい。多かれ少なかれ神田に関係のある奴ばかりじゃないの。こりゃ、新聞部の部長が仕組んだ罠だろ?あいつ、神田と仲が良かったからね。もうこれ以上、茶番につき合ってられないから。ボクは帰るからね。あとは君たちで探偵ごっこでもしてなよ」
蓮華:「待って!神田さんがこっちに向かっているって言ったでしょ!?それまでは帰っちゃダメ!」
笠間:「はあ?だったら、尚更遭遇する前に帰った方がいいじゃないの?」
蓮華:「ダメ!今、ドアを開けたら殺されますよ!もう、神田さんは来てるんだから!そして、その扉の向こうに立ってるんだから!」
笠間:「何だって!?」
リサ:(BOWの臭いはしない。だけど、確かにドアの向こうに何かいる。“花子さん”がいる時点で幽霊がいることは認めるけど、何でこんなことに……。さすがに幽霊相手じゃ、私は勝てないかもしれない)
果たして、リサ達の運命や如何に!?
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