報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「南端村の一夜」 2

2022-08-01 11:55:40 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月15日00:00.天候:晴 アルカディアシティ南端村 魔界稲荷・大広間]

 勇太:「……というわけでありまして、僕達は何とかして魔界の穴を塞ぎ、東京中央学園上野高校における怪奇現象の数々を封じたのであります」

 マリアが休んだ後、勇太は結局、昔語りを行うことになってしまった。
 威吹は最初渋ったが、愛娘や愛弟子達の強い希望により、まず勇太が折れたことで、ついに『講演会』を許可せざるを得なかったのである。
 で、勇太はおよそ2~3時間ほど喋らされることとなったのである。

 勇太:「そういうわけでありますから、こちらの安倍首相の、向こうの世界における安倍元総理暗殺事件に対する抗議行動として、『魔界の穴を開く』という事に関しては、何としてでも断念して頂きたいと考えており、僕とマリアはこうして、またこのアルカディアに来たわけなのであります」

 聴衆は興味津々に聴いている。

 勇太:「どうか皆さん、僕達に力を貸してください。以上を持ちまして、本日の講演を終了したいと思います。御清聴、ありがとうございました」

 勇太が締めくくると、聴衆からは大きな拍手が起きた。
 本当はもっと早く締めたかったのだが、聴衆からの質問が相次ぎ、延長に次ぐ延長をせざるを得なかったのである。

 勇太:「ふう……。つ、疲れた~……」

 大広間から出た勇太を、威吹が出迎えた。

 威吹:「ユタ、お疲れ様」
 勇太:「あ、あんなに喋ったの、久しぶり~……」
 威吹:「はい、水」
 勇太:「あ、ありがとう……」

 演台にも水は置かれていたのだが、それはとっくに飲み干してしまっていた。

 勇太:「顕正会時代を思い出すなぁ……」
 威吹:「あの時代の事も、喋ってくれたね」
 勇太:「ハハハ……まずかった?」
 威吹:「いや、いいけどさ」

 顕正会ガチ勢会員だった勇太は、誓願(という名のノルマ)を達成する為、威吹の妖術(催眠術)を使い、道端の人々を騙して会館に連れ込み、形だけの入信勤行をさせていたという悪事を行っていたことがある。
 しかし、邪教の信心による『魔の通力』のおかげで、勇太の霊力は右肩上がり。
 そこだけは威吹にとって、美味しい所であった。
 勇太の仏罰としては、初恋の人を交通事故で失ったばかりか、その亡霊に追い回されるというものだった。

 弟子A:「俺も人間界に『留学』したくなってきた!」
 弟子B:「わっちも!」
 弟子C:「あたいも!」
 坂吹:「くぉらっ!」
 勇太:「何か、不穏な声が聞こえて来たよ?」
 威吹:「一時の気の迷いさ。妖狐はなかなか直情的な性格が多いからね」
 美狐:「アタシが『留学』する!」
 威吹:「それは断じて認めん!!」

 威吹、娘の『留学』宣言に対し、真っ先に反応した。

 勇太:「さて、僕もお風呂入って寝ようかな……」

 勇太は一度客間に戻って、着替えやタオルを取って来ようと思った。

 さくら:「稲生さん」
 勇太:「あっ、さくらさん」
 さくら:「手ぬぐいと浴衣は、お風呂に用意したので、それを使ってください」
 勇太:「どうも、すいません!」

 客間に戻ると、室内はもう暗い。
 マリアが既に布団に入って寝ているからだ。
 因みに、部屋は一緒。
 マリアの布団の隣に、自分の布団が敷かれている。
 威吹は……。

 威吹:「えっ?だって2人とも、祝言上げるんだろ?それならいいじゃないか」

 とのこと。
 確かに、その通りなのだが……。
 とにかく、今は……。

 勇太:「先に風呂に入っておこう」

 というわけで、賑やかな本館を通って、湯殿へ向かう。
 賑やかなのは、未だに勇太の講演に興奮冷めやらぬからだと思われる。
 まるで、総幹部会の後の会場周辺だ。

 美狐:「お父さん、アタシも人間界に『留学』したーい!」
 威吹:「アホか!」
 勇太:(余計なこと、喋り過ぎたかなぁ……?)

 湯殿に行って、早速入浴する。

 勇太:(久しぶりに、足の伸ばせる風呂に入ったような気がする)

 ワンスターホテルの客室の風呂は狭いし、実家の湯船もギリギリ寸足らず。
 ここの風呂は、大浴場貸切である。

 勇太:「さーて、そろそろ体でも洗……」
 美狐:「はいはい、失礼しまーす!」
 勇太:「ええーっ!?」

 そこへ湯女の恰好をした美狐が入って来た。

 美狐:「お客様の接待の為、お背中お流ししまーす!」
 勇太:「ええー……?それは助かるけど……うわなにをするやめr……」

 勇太、美狐に無理やり風呂桶から出されると、そのままストンと洗い場の椅子に座らされた。

 美狐:「今なら洗髪も御奉仕します!」
 勇太:「それは助かるけど……」
 美狐:「更に今なら、下半身もお流しします!」
 勇太:「それも助かるけd……って、ええっ!?」
 美狐:「さあ、足を大きく開いて!はぁ、はぁ……」(*´Д`)
 勇太:「キミ、まだ子供だろ!?」
 美狐:「妖狐にそんな言葉は蛇足なのです!大丈夫!おチ【ぴー】なら、既にお父さんのを見てますから!」
 勇太:「ちょ、ちょちょっ……待っ……!」
 美狐:「更に更に!今なら、湯船も一緒に入っちゃいます!」(;゚∀゚)=3ハァハァ
 勇太:「威吹、何とかしろーっ!!」
 美狐:「稲生さん!是非、稲生さんの口から、私に『留学』の許可を!」
 勇太:「それが目的か!」
 美狐:「報酬は体で払います!」
 勇太:「こらーっ!」

[同日01:00.天候:晴 魔界稲荷 威吹の書斎]

 威吹:「不快でござったか?」
 勇太:「ロリ妖狐に何発も抜かれたでござる」
 威吹:「あの娘、いつの間にどこでそんな性技を……」
 勇太:「そんな暢気なことを言ってる場合か!キミの娘が、他人の男と一緒に風呂に入ったんだよ!?」
 威吹:「他人といっても、ユタだろう?娘がそうしたかったのなら、ボクは何も言わないよ?」
 勇太:「ええーっ!?」
 威吹:「前にも言った通り、ボクは元々人食い妖狐。そして、娘はボクの血を引いている。女の人喰い妖狐は、美しい人間の女に化け、人間の男を獲物として食い漁るわけだ。もちろんさくらは反対だし、キミも反対だろうけど、ボクは反対する権利も義務も無いんだ。ただ、娘がそうしたいのなら、それに任せるってことでね」
 勇太:「いや、しかしだね……!」
 威吹:「人間の男を獲物として食い漁る為の性技の鍛錬を、キミでしてしまったか。それに関しては親として謝るし、後で娘には注意しておく。すまなかった」
 勇太:「普通、父親として娘の貞操は気にしない?」
 威吹:「娘が他の妖狐と姦通しているとあらば、それは由々しき事態だが、人間となるとなぁ……。『獲物として捕食した』と言われたら、それまでだし」
 勇太:「逆に強い人間に返り討ちされて、強姦されるようなことがあったら?」
 威吹:「それも娘の責任だね。相手の強さを見誤り、蛮勇を出したことが運の尽きと相成ったのは、偏に本人の責任」
 勇太:「厳しいのか冷たいのか……」
 威吹:「むしろボクとしては、ユタが娘に勝って、貞操を奪うくらいしてくれた方が、良い灸になると思うんだけどな」
 勇太:「そんなことしたら、マリアに殺されます」
 威吹:「何だ、魔女の世界も一夫一婦制なのか?妾制度は?」
 勇太:「そんなものありません。一夫一婦制です」

 こうして、魔界稲荷の夜は更けて行った。

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