報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「人間界の旅」

2016-11-10 20:39:36 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月14日11:45.天候:晴 JR上野駅]

 ワンスターホテルの近くからタクシーに乗った稲生達。
 これで上野駅まで移動した。

 イリーナ:「勇太君、アタシのカード使って」
 稲生:「は、はい」

 助手席に座る稲生、リアシートに座っていたイリーナからブラックカードを渡された。
 稲生達が乗った大手のタクシー会社ではクレジットカードが使え、もちろんイリーナが渡したカードも使える。

 稲生:「じゃあ、すいません、これでお願いします」
 運転手:「アメリカン・エキスプレスですね。それではこちらにサインを……」

 稲生はイリーナの代わりにサインをした。
 因みにイリーナはロシア人であるが、サインは別にロシア語(キリル文字)でなくとも良い。
 稲生は英語でサインした。

 稲生君:「お待たせしました」

 稲生は控えと領収書を手にタクシーから降りた。

 イリーナ:「いいのよ」

 領収書などはマリアに渡す。
 1人前に成り立てで、まだ師匠から独立していない弟子(ロー・マスターまたはミドル・マスター)は師匠が使った金の計算をする役目もある。
 人数の多いアナスタシア組は、精力的に経済活動も行うアナスタシアへのサポート業務を各弟子に振り分けることができるが、弟子数の少ない組では活動的な師匠だと少しサポート業務が大変だったりする。
 エレーナもそうだったのだが、ポーリンがアルカディア王国の宮廷魔導師(内閣官房長官とか宮内庁長官みたいなもの)になったことで、業務負担はほとんど無くなった。
 イリーナは外国ではほとんどクレジットカードだけしか使用しない為、カード会社からの請求書を計算するだけで良かった。

 イリーナ:「お腹が空いたわね。王国の晩餐会以降、何も食べてないものね。ここ、ターミナル駅だから色々と食べる所あるでしょう?それから電車で行っても大丈夫だよね?」
 稲生:「もちろんです。上野始発の普通列車はこの時間、30分おきに出ていますので、慌てなくても大丈夫です。何がいいですか?」
 イリーナ:「晩餐会では食べられなかったもの……」
 マリア:「日本料理」
 イリーナ:「あっ、いいね!そこ、ある?」
 稲生:「じゃあ、寿司にしましょう」
 マリア:「師匠、その前に帰りの足を確保した方が……」
 イリーナ:「おー、それもそうか」

 中央改札口に行く前に、みどりの窓口に寄った。
 そこで帰りの特急のキップを購入する。
 イリーナ曰く、稲生の献血によってルーシーからは多大な恩賜を頂戴しているとのことで、帰りはグリーン車でも良いとのことである。
 恩賜の1つが金時計であるが、これはどちらかというと、王室というよりは共和党幹事長の安倍からの謝意のような感じだ。

 稲生:「明日の10時4分発、“あずさ”55号です」
 イリーナ:「おー、よく取れたねぇ」
 稲生:「まあ、グリーン車ですから」
 イリーナ:「それもそうか」
 稲生:(付属編成が連結されて無さそうに見えたけど、まあいいか)

 これもイリーナのカードで購入する。

 稲生:「じゃあ、昼食にでも行きましょうか」

 稲生は大宮までのキップを購入した後は、改札内にある飲食店に向かった。

[同日13:03.天候:晴 JR上野駅・低いホーム]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。13番線に停車中の列車は、12時30分発、普通、宇都宮行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 イリーナ:「あー、美味しかったねぇ」
 マリア:「そうですね。魚もたまに食べてみると美味しいものです」
 稲生:「良かったです」

 かつては“北斗星”や“カシオペア”が発着していたホームに行くと、10両編成の電車が発車を待っていた。
 稲生は予め購入したグリーン券を手に、4号車のグリーン車に乗り込んだ。
 いつもは乗らないが、今日はイリーナというVIPがいる為。
 因みに、大魔道師クラスで電車移動はほとんど無いらしい。
 多くが瞬間移動の魔法を使うか、あるいは専用車を持っているからである。
 アナスタシア組は日本国内での移動に、わざわざ黒塗りのゼロクラウンを購入したという。
 にも関わらずイリーナが電車移動をしているのは、それが好きな弟子の稲生に付き合っているからなのか、はたまた単なる気紛れなのか分からない。

 稲生:「先生、ここが空いています」
 イリーナ:「ありがとう。あとは2人で仲良く適当に座ってていいよ。着いたら起こしてね」
 稲生:「分かりました。……あの、先生」
 イリーナ:「ん?」
 稲生:「先生は僕の趣味に付き合って下さってるだけなんですか?」
 イリーナ:「んー?どうしてそう思うの?」
 稲生:「他の大魔道師の先生方は、滅多に電車移動されないそうです。それなのに先生はどうして……なんですか?」
 イリーナ:「マリアが瞬間移動の魔法を早くマスターしてくれたら、アタシも楽できるんだけどねぇ……。ま、お金はあるし、無駄な魔力を使わずに済むからかな」
 稲生:「本当ですか?」
 イリーナ:「日本の電車は安心して寝れるしね。じゃ、そういうことで」

 イリーナは開いている席に座るとブラインドを下ろし、座席をリクライニングした上、ローブのフードを深く被った。
 稲生達はその後ろに座る。

 稲生:「マリアさん……」
 マリア:「まあ、師匠の言ってることの半分は本当だと思うよ」
 稲生:「もう半分は?」
 マリア:「できることなら、瞬間移動の魔法を使うのがベストだってことは事実。だけど自分は使いたくないから、私や勇太のどっちか……もしくは両方使えるようになれたら、それに便乗するつもりらしいね」
 稲生:「ルーラは高度な魔法ですからねぇ……」

 ミドル・マスターになってから、ようやく使えるようになるらしい。
 但し、それでも移動できる範囲は近場のみ。
 外国へ移動できるようになるには、ハイ・マスターになってからだという。

〔この電車は宇都宮線、普通、宇都宮行きです。グリーン車は4号車と5号車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください〕

 平日昼間の空いている時間帯。
 3人の魔道師はゆったりした様子で座席に腰掛け、発車の時間を待った。

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