報恩坊の怪しい偽作家!

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“愛原リサの日常” 「学校であった怖い話」 1話目からバッドエンド!?

2021-07-27 20:25:01 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月2日15:00.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校1F新聞部部室]

 愛原リサ:「私は殺していない!あなたは何か勘違いしている!」
 石上暮美:「お前だ!お前が妹を殺したんだ!!」

 騒然とする部室内。
 何故このようなことになったのか。
 1話目の語り部に立候補したのは、3年生の石上暮美という女子生徒だった。
 最初は淡々と語っていた。
 この学校には思ったほどの怪談話は存在しないだの、しかし悪霊は存在するだのという話から始めた。
 それを聞いたリサは最初、旧校舎に巣くう“トイレの花子さん”の話をするのだと思っていた。
 リサがいくつか持っている怪談ネタの1つがそれだったからだ。
 先に話されてしまうようでは、別のネタを出すしか無いなと思った。
 ところが、実際の話は違った。
 リサのクラスには、3週間ほど前に退学してしまった女子生徒がいた。
 その女子生徒はイジメの被害者で、リサも彼女がイジメられているのは知っていた。
 イジメの加害者達もまた性格が悪いもので、リサや絵恋にもちょっかいを出してきたほどである。
 しかし、リサは持ち前のスキルで逆に痛い目に遭わせてやった。
 ついでに絵恋も助けてあげたのだが、絵恋は金力で解決したかもしれない。
 とにかく、それで加害者達はリサ達にちょっかいは出して来なくなったのだが、代わりに別のターゲットを見つけた。
 それが、石上の話の中に出て来た退学者であった。
 悪霊が妹に取り憑いた為に、加害者達を誘き寄せ、それで被害を受けたのだと語った。
 さすがにそれは被害妄想だろうとリサは思ったが、石上は何故か話をリサに話すかのような語り口調になった。
 あくまでこれは新聞部の怪談特集の取材なのだから、進行役の新聞部員である田口に話すはずである。

 田口:「……イジメの被害を受けたことで、学校を辞めることになったんですね。かわいそうです」

 田口は取材メモを取った。
 しかし、石上の視線は田口ではなく、リサに向けられていた。

 石上:「妹が学校を辞めた後、どうなったかは知らないでしょう?仲良くもなかったクラスメートのことなんて、関心無いでしょうからね」
 リサ:「はあ……」
 石上:「悪霊はね、学校を辞めてからも妹に憑いてきたの。まるでそこが居場所とでもいうかのように。悪霊ってどんな顔をしていると思う?」
 リサ:「知りません」

 BOWやクリーチャーの顔なら想像は付くが、リサは悪霊に知り合いはいなかった。
 もっとも、人によっては旧校舎の“トイレの花子さん”を悪霊と呼ぶ向きもあるから、強いて言うなら彼女かもしれない。
 しかし、“花子さん”は常に白い仮面を着けている為、リサは素顔を知らなかった。

 石上:「ちょうどあんたみたいな顔をしているわ」
 リサ:「……!(まさかこいつ、私の正体を知ってるんじゃ……!?)」

 リサは身構えた。

 石上:「私と妹はね、両親が離婚したせいで、別々に暮らしているの。だから、名字が違う。でも、自分で言うのも何だけど、これでも仲良くしていた方だったんだよ……」
 リサ:「まさか……」
 石上:「妹はね、悪霊と戦ったのよ。そしたらね、悪霊は妹の体の中に入ってしまった」
 リサ:「その悪霊の名前って……」

 リサはエブリンではないかと思った。
 エブリンの操るモールデッドは、『黒いオバケ』と呼ばれていたからだ。
 見る者によっては、まるでエブリンが悪霊のように見えるかもしれない。

 石上:「それでも妹は戦った。そして、ついにあのコは……カッターで……自分の首を……!」
 リサ:「ええっ!?」

 そこまで話して、石上は涙を流した。
 確かに、ニュースで15歳の少女が自宅で首を切って自殺というニュースを観たことがあるような気がした。
 しかし、話はここで終わりではなかった。

 石上:「悪霊は今、ここにいる!それは妹のイジメたグループのリーダーの愛原リサ!お前だ!!」

 そう言って、石上はスカートのポケットから大型のカッターナイフを取り出した。

 リサ:「それは勘違いだ!私は同じクラスだけど、イジメていない。あなたの妹をイジメたリーダーは、私が痛めつけておいた」
 石上:「ウソおっしゃい!私はウソが大嫌い!やはりオマエは悪霊だ!!」

 石上はカッターナイフを振り下ろした。
 夏服半袖なので、剥き出しのリサの右手に一筋の切り傷が入る。

 田口:「きゃあーっ!!」

 田口が悲鳴を上げた。

 男子生徒A:「おい、やめろよ!」
 男子生徒B:「やめてください!こんな所で刀傷沙汰は!」
 男子生徒C:「落ち着いてください!!」

 もちろん、リサが第1形態に戻れば、簡単に石上を倒すことはできるだろう。
 だが、それは同時にリサがこの学校から離れなくてはならないことを意味する。
 リサの正体を知っていて良いのは、リサのグループにいるごく一部の者と、ごく一部の教職員だけだ。

 石上:「放せ!放して!!」
 リサ:「後でリーダーの名前を教える!だから……!」

 石上は室内にいる他の語り部男子4人のうち、3人に取り押さえられた。
 幸いそのうち2人は体育会系っぽい男子で、もう1人は力自慢の巨漢であったのが幸いだった。

 石上:「わあああああっ!!」

 石上は大泣きした後、部室を出て行った。

 男子生徒A:「だ、大丈夫か、あれ?妹の後追いしたり、しねーよな?」
 男子生徒B:「しかし、僕達には何もできないですよ。話が重すぎて……」
 男子生徒C:「キミ、愛原さんとか言ったっけ?ケガは大丈夫?」
 リサ:「大丈夫です。もう、傷は塞がってます」

 その通り、最初はパックリ割れていた腕の切り傷も、まるで嘘だったかのように傷痕すら無くなっていた。
 傷ができた際に出血した痕が残っているだけだ。

 男子生徒C:「す、凄いね!?」
 リサ:「生まれつきなんです。だから、私は大丈夫です」

 もちろん、それはウソである。
 BOW(生物兵器)に改造されたことで得た身体能力の1つである。
 今現在リサは、どこからどう見ても人間の姿をしており、将来はこれを『正体』にするのが目的であるが、今は逆だ。
 今現在の正体は、鬼娘の姿である。
 幸いここには、リサの正体を知っていそうな者はいなかった。

 リサ:「ただ……私にも責任はあります。私もイジメられそうになったので、逆に痛めつけてやりました。それであいつは私のことは諦めたんですが、代わりに石上さんの妹に目をつけたようです」
 男子生徒A:「そういうことだったのか。だが、愛原は悪くねーと思うぞ?言っちゃあ悪いが、お前は強くて、石上の妹が弱かったんだよ」
 男子生徒C:「しかし、イジメられているのが分かってて助けてあげなかったのは、『強い者』としてどうなの?」
 男子生徒A:「バーカ。頼みもされてねーのに、そんなボランティアできっかってんだ。なあ?」
 リサ:「確かに、頼まれはしませんでした。それに、あのコは私の友達でもなかったので」
 男子生徒A:「あー、そういうもんだよ。愛原は悪くねぇよ。……さて、田口とか言ったっけ?石上のあの話、1話目ってことでいいのか?」
 田口:「あ、はい。そうですね。それでは、2話目はどなたが話しますか?」
 男子生徒A:「じゃあ、俺がしよっか」
 田口:「はい、お願いします。お話の前に、自己紹介からお願いします」
 男子生徒A:「分かってるよ」

 見た目は体育会系の3年生男子(制服のワッペンの色で学年が分かる)。
 不良っぽくも見えるが、果たして彼はどんな話をしてくれるのだろうか。

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