[9月14日07:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]
稲生:「ねむ……」
マリア:「ユウタはまだ寝てても良かったんじゃないの?」
稲生:「いや、まだそういうわけには……。何しろ、先生が起きてますんでね」
イリーナ:「うんうん」
マリア:「師匠が珍しく私に起こされずに起きたところが、何だか恐ろしいです」
イリーナ:「うるさいわねぇ……」
稲生:「それよりマリアさんの水晶球、どうするんですか?」
イリーナ:「どうもこうもないよ。新しいのを調達しなきゃ」
稲生:「どこで手に入るんです?」
イリーナ:「ドコモショップ?」
稲生:「それ、僕のスマホです」
スマホで事足りる稲生。
水晶球要らずである。
イリーナ:「日本じゃ手に入らないから、イギリスに注文して空輸してもらうしかないわね」
稲生:「そんなに?」
イリーナ:「在庫があればいいんだけど……」
稲生:「在庫!?」
稲生は、まるでAmazonに注文でもするのかのようなイメージを持った。
イリーナ:「最後にはエレーナが運んでくれるだろうね」
稲生:「魔女宅できるの、エレーナくらいのものでしょ」
マリア:「あいつ、吹っ掛けてくるからなぁ……」
イリーナ:「稲生君は、なるべく早く屋敷に帰る為の手段を講じてちょうだい」
稲生:「分かりました」
朝食が済むと、3人の魔道師はそれぞれ行動を開始した。
稲生は自室に戻ると、ネットで交通手段の検索。
大抵のルートは高速バスか中央本線特急になるのだが、他にもネタがあったりする。
稲生:「週末に臨時の“あずさ”が運転されるか……。うん。先生と一緒ならグリーン車で移動できるな。第一候補としてエントリーしておこう。あとは……」
イリーナは自分の水晶球を使って、マリアの新しい水晶球を探していた。
イリーナ:「よし。イギリスに在庫があったわ。これを注文するわよ。『お急ぎ便』で」
マリア:「Amazonですか!……在庫なんて、そう簡単に見つかるものなんですか」
イリーナ:「水晶球ってのは壊れやすいからね。職人さんが多めに作ることがあるのよ」
マリア:「なるほど。だけど、『3時の魔道師』は、どうして契約の照会をされることを嫌がったんでしょうか?」
イリーナ:「そうだねぇ……。多分、もし今後『3時の魔道師』が判明したとしても、このことについては追及しても答えないでしょうね。『私は何もしていない。水晶球は偶然割れた』なんて言ってね」
マリア:「確かに証拠はありませんが……」
イリーナ:「私達の業界、『偶然』も『故意』も同じようなものなのにね」
マリア:「魔法で偶然を作り出すってわけですからね」
そこへ客間を稲生が訪れた。
稲生:「先生、マリアさん。もし良かったら、お昼はさいたま新都心に行きませんか?そこの駅で、帰りの乗車券も購入したいと思いますし」
イリーナ:「おっ、それはいいねぇ……」
マリア:「分かった」
[同日12:00.天候:晴 さいたま市中央区・大宮区 さいたま新都心]
一口に『さいたま新都心』と言っても、大宮区と中央区に跨っている。
最初、稲生達は駅の方に行った。
さいたま新都心駅には“みどりの窓口”がある。
稲生:「うん、これこれ。なかなか、大糸線まで直通する電車も無いからなぁ……」
イリーナ:「はい、ユウタ君。カード」
稲生:「あ、ありがとうございます」
稲生は指定席券売機で帰りの電車のキップを購入した。
指定席券売機では、クレジットカードも使える。
イリーナが渡して来たアメリカンエクスプレスも、もちろん使える。
イリーナ:「じゃあ、カードは一応返して。チケットはユウタ君が持ってて」
稲生:「分かりました」
稲生は券売機の前に置いているチケット入れにキップをしまった。
乗車券と特急券・グリーン券が別々に出て来たのだから、結構な枚数だ。
稲生:「それじゃ、次はお昼ですね」
イリーナ:「うん」
けやきひろばに行く。
因みにこれ、さいたまスーパーアリーナの施設の1つ。
作者はさいたま新都心駅の施設の1つだと思っていた。
店員:「お待たせしました。健美豚ロースかつ定食です」
稲生:「どうも〜」
イリーナ:「ユウタ君のことだから、日本食レストランに行くだろうと思っていたけど、こことはね」
稲生:「寿司屋もあるんですが、マリアさんが生魚が苦手ということもあるので」
克服したかのように思えたが、よくよく考えてみたら、それは単なる酒の力だったようだ。
生魚が苦手な理由は、人間時代に迫害を受けた際、川に突き落とされ、そこで泳いでいた魚が口の中に飛び込んで来たというトラウマがある為。
稲生:「『3時の魔道師』、昨夜も襲って来ることは無かったですね。もしかしたら、本当に夜中の3時に……と思っていたんですが」
イリーナ:「もう殆ど足が付いているようなものだから。ユウタ君を『敵対者』と誤解して襲い掛かった時点で、もう2度と現れることはないでしょう」
マリア:「師匠は本当に『3時の魔道師』が誰なのか分からないんですか?」
イリーナ:「本当に特徴の無い装飾だからね。似たような装飾というのなら、私の知っている者達だけで、何人かいるわ。しかもその全員が、普段は日本を拠点にしていない。足が付いたと分かった時点で、もう国外逃亡しているでしょうね」
マリア:「このまま泣き寝入りですか……」
イリーナ:「泣き寝入りにはしないわ。同門の弟子を間違えて襲ったのは事実ですもの、そのことに関しては反省してもらわないとね」
もし他門の魔道師であったとしたら、それは間違い無く稲生を殺したであろうという。
同門だからこそ、証拠隠滅として稲生を殺そうとしたものの、それと知って慌てて殺害を中止し、逃げ去ったというのがオチだろうとイリーナは推理した。
日蓮正宗の『同門の徒を謗るは重罪』以上に、それに抵触することを魔道師達は恐れているのである。
イリーナ:「いずれそれが誰だか分かる時が来るでしょう。だけどユウタ君」
稲生:「分かってます。許せと仰るんでしょう」
イリーナ:「それはユウタ君に任せるわ。そうじゃなくて、あなたの後輩を殺したこと」
稲生:「だから、それも許せと仰るんでしょう?」
イリーナ:「……許す、許さないの問題じゃないの。もし『3時の魔道師』が契約に基づいてそうした行動だと証明された場合、諦めて欲しいの。運が悪かったと。それでもあなたを襲う理由にはならないから、それに関しては責めていいと思う」
稲生:「ちゃんと『3時の魔道師』が誰か分かるようになるんですか?」
イリーナ:「ええ。私の見立てだと、私達が屋敷に帰る前に分かるんじゃないかしら」
稲生:「そうですか……」
マリア:「契約内容を同門に公表しなくてはならないことになっているのに、それを阻止しようとしたのですから、私はロクな内容ではないと思いますね。それこそ、ユウタの後輩を殺したことについても責めて良いような気がします」
イリーナ:「ま、それについてもいずれ分かるわ」
イリーナはそう言うと、ロースかつの一切れを口に運んだ。
イリーナ:「んー、美味しい!」
稲生:「ねむ……」
マリア:「ユウタはまだ寝てても良かったんじゃないの?」
稲生:「いや、まだそういうわけには……。何しろ、先生が起きてますんでね」
イリーナ:「うんうん」
マリア:「師匠が珍しく私に起こされずに起きたところが、何だか恐ろしいです」
イリーナ:「うるさいわねぇ……」
稲生:「それよりマリアさんの水晶球、どうするんですか?」
イリーナ:「どうもこうもないよ。新しいのを調達しなきゃ」
稲生:「どこで手に入るんです?」
イリーナ:「ドコモショップ?」
稲生:「それ、僕のスマホです」
スマホで事足りる稲生。
水晶球要らずである。
イリーナ:「日本じゃ手に入らないから、イギリスに注文して空輸してもらうしかないわね」
稲生:「そんなに?」
イリーナ:「在庫があればいいんだけど……」
稲生:「在庫!?」
稲生は、まるでAmazonに注文でもするのかのようなイメージを持った。
イリーナ:「最後にはエレーナが運んでくれるだろうね」
稲生:「魔女宅できるの、エレーナくらいのものでしょ」
マリア:「あいつ、吹っ掛けてくるからなぁ……」
イリーナ:「稲生君は、なるべく早く屋敷に帰る為の手段を講じてちょうだい」
稲生:「分かりました」
朝食が済むと、3人の魔道師はそれぞれ行動を開始した。
稲生は自室に戻ると、ネットで交通手段の検索。
大抵のルートは高速バスか中央本線特急になるのだが、他にもネタがあったりする。
稲生:「週末に臨時の“あずさ”が運転されるか……。うん。先生と一緒ならグリーン車で移動できるな。第一候補としてエントリーしておこう。あとは……」
イリーナは自分の水晶球を使って、マリアの新しい水晶球を探していた。
イリーナ:「よし。イギリスに在庫があったわ。これを注文するわよ。『お急ぎ便』で」
マリア:「Amazonですか!……在庫なんて、そう簡単に見つかるものなんですか」
イリーナ:「水晶球ってのは壊れやすいからね。職人さんが多めに作ることがあるのよ」
マリア:「なるほど。だけど、『3時の魔道師』は、どうして契約の照会をされることを嫌がったんでしょうか?」
イリーナ:「そうだねぇ……。多分、もし今後『3時の魔道師』が判明したとしても、このことについては追及しても答えないでしょうね。『私は何もしていない。水晶球は偶然割れた』なんて言ってね」
マリア:「確かに証拠はありませんが……」
イリーナ:「私達の業界、『偶然』も『故意』も同じようなものなのにね」
マリア:「魔法で偶然を作り出すってわけですからね」
そこへ客間を稲生が訪れた。
稲生:「先生、マリアさん。もし良かったら、お昼はさいたま新都心に行きませんか?そこの駅で、帰りの乗車券も購入したいと思いますし」
イリーナ:「おっ、それはいいねぇ……」
マリア:「分かった」
[同日12:00.天候:晴 さいたま市中央区・大宮区 さいたま新都心]
一口に『さいたま新都心』と言っても、大宮区と中央区に跨っている。
最初、稲生達は駅の方に行った。
さいたま新都心駅には“みどりの窓口”がある。
稲生:「うん、これこれ。なかなか、大糸線まで直通する電車も無いからなぁ……」
イリーナ:「はい、ユウタ君。カード」
稲生:「あ、ありがとうございます」
稲生は指定席券売機で帰りの電車のキップを購入した。
指定席券売機では、クレジットカードも使える。
イリーナが渡して来たアメリカンエクスプレスも、もちろん使える。
イリーナ:「じゃあ、カードは一応返して。チケットはユウタ君が持ってて」
稲生:「分かりました」
稲生は券売機の前に置いているチケット入れにキップをしまった。
乗車券と特急券・グリーン券が別々に出て来たのだから、結構な枚数だ。
稲生:「それじゃ、次はお昼ですね」
イリーナ:「うん」
けやきひろばに行く。
因みにこれ、さいたまスーパーアリーナの施設の1つ。
作者はさいたま新都心駅の施設の1つだと思っていた。
店員:「お待たせしました。健美豚ロースかつ定食です」
稲生:「どうも〜」
イリーナ:「ユウタ君のことだから、日本食レストランに行くだろうと思っていたけど、こことはね」
稲生:「寿司屋もあるんですが、マリアさんが生魚が苦手ということもあるので」
克服したかのように思えたが、よくよく考えてみたら、それは単なる酒の力だったようだ。
生魚が苦手な理由は、人間時代に迫害を受けた際、川に突き落とされ、そこで泳いでいた魚が口の中に飛び込んで来たというトラウマがある為。
稲生:「『3時の魔道師』、昨夜も襲って来ることは無かったですね。もしかしたら、本当に夜中の3時に……と思っていたんですが」
イリーナ:「もう殆ど足が付いているようなものだから。ユウタ君を『敵対者』と誤解して襲い掛かった時点で、もう2度と現れることはないでしょう」
マリア:「師匠は本当に『3時の魔道師』が誰なのか分からないんですか?」
イリーナ:「本当に特徴の無い装飾だからね。似たような装飾というのなら、私の知っている者達だけで、何人かいるわ。しかもその全員が、普段は日本を拠点にしていない。足が付いたと分かった時点で、もう国外逃亡しているでしょうね」
マリア:「このまま泣き寝入りですか……」
イリーナ:「泣き寝入りにはしないわ。同門の弟子を間違えて襲ったのは事実ですもの、そのことに関しては反省してもらわないとね」
もし他門の魔道師であったとしたら、それは間違い無く稲生を殺したであろうという。
同門だからこそ、証拠隠滅として稲生を殺そうとしたものの、それと知って慌てて殺害を中止し、逃げ去ったというのがオチだろうとイリーナは推理した。
日蓮正宗の『同門の徒を謗るは重罪』以上に、それに抵触することを魔道師達は恐れているのである。
イリーナ:「いずれそれが誰だか分かる時が来るでしょう。だけどユウタ君」
稲生:「分かってます。許せと仰るんでしょう」
イリーナ:「それはユウタ君に任せるわ。そうじゃなくて、あなたの後輩を殺したこと」
稲生:「だから、それも許せと仰るんでしょう?」
イリーナ:「……許す、許さないの問題じゃないの。もし『3時の魔道師』が契約に基づいてそうした行動だと証明された場合、諦めて欲しいの。運が悪かったと。それでもあなたを襲う理由にはならないから、それに関しては責めていいと思う」
稲生:「ちゃんと『3時の魔道師』が誰か分かるようになるんですか?」
イリーナ:「ええ。私の見立てだと、私達が屋敷に帰る前に分かるんじゃないかしら」
稲生:「そうですか……」
マリア:「契約内容を同門に公表しなくてはならないことになっているのに、それを阻止しようとしたのですから、私はロクな内容ではないと思いますね。それこそ、ユウタの後輩を殺したことについても責めて良いような気がします」
イリーナ:「ま、それについてもいずれ分かるわ」
イリーナはそう言うと、ロースかつの一切れを口に運んだ。
イリーナ:「んー、美味しい!」
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