報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「6番街最後の日」

2020-05-24 16:12:13 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月7日11:00.天候:晴 アルカディアシティ6番街カブキンシタウン 三星亭(Three Stars Inn)→エリックス・ジム]

 深夜に宿に戻って来た稲生達。
 起床時間は遅く、それ故朝食も遅い時間に取った。

 マリア:「横田理事から報奨が届くって話だけど、何が届くのやら……」
 稲生:「良くて金一封、普通に賞状とか盾とか金杯とか?悪くて……『お見舞いの品』と称して、マリアさんに新品のJK下着、先生には新品のランジェリーを送りそうな気がします」
 マリア:「……っ!思いっ切り有り得そうだ!」

 2人は1階の食堂にいる。
 マリアは稲生の話を聞いて、テーブルの上に置いた両手で拳を作り、口元を歪めながら突っ伏すような体勢になった。

 マリア:「しかもサイズがピッタリだったりね!」
 稲生:「ええ……」

 鈴木がエレーナに新品のブラショーツを送った時も、サイズがピッタリだったのでエレーナが驚いていたそうだ。
 もっとも、そのサイズの情報を鈴木が聞き出した相手は横田だというのだから驚きだ。
 魔界共和党の変態理事で通っている横田だが、その情報収集能力の高さは飽きれを通り越してしまう。
 彼の能力のその高さは人間だけではなく、魔界の住人ならではの亜人(デミ・ヒューマン。人間と似た姿をした人外のこと。例:エルフ、洋の東西不問で鬼族、妖狐、天狗など)からも一目置かれているほどだ。

 ジーナ:「先輩方、失礼します」

 そこへこの宿屋で住み込みの従業員をしているジーナがやってきた。
 エレーナとは同郷のウクライナ出身で、所属組は違うものの、エレーナの真似をしている為に見た目は似ている。

 稲生:「何だい?」
 ジーナ:「先ほどエリックス・ジムから電話がありました。役所から書類が届いたので、取りに来て頂きたいと……」
 稲生:「例の報奨のことかな?」
 マリア:「何だ。届けてくれるんじゃないのか」
 稲生:「ま、いいじゃないですか。先生はまだ寝てらっしゃいますし。僕達で取りに行きましょう」
 マリア:「そうだね。ジーナ、うちの先生が起きて来たらジムに向かったって伝えといて」
 ジーナ:「分かりました。行ってらっしゃい」

 2人は宿屋を出てジムに向かった。
 ここからジムまでは、歩いて行ける距離にある。
 ジムに到着すると……。

 クリス:「エッヘヘヘ!私の勝ちだね」
 ジョニー:「何故だ!?何故この俺様が女に負けるのだぁぁぁっ!?」
 ノラン:「いいか、ジョニー!筋肉は量ではなく質だ!そうやってまた見た目で相手を判断する!その慢心こそが今回の敗因であり、キミの大いに反省すべきところだ!」
 ジョニー:「うぉぉぉぉぉぉっ!!」

 プロレスラー並みの筋肉質ながらオネェ的な言動をしていたノランが、今はトレーナーらしく、会員を厳しく指導していた。
 どうやらジョニーという名の男性会員が、クリスと何か練習試合でもしたらしい。

 稲生:「あ、あのー、こんにちはー。ちょっといいですかー?」
 ノラン:「ん?……おおっ、これはこれは稲生君とマリアンナさん、いらっしゃい。すぐに会長達を呼んでくるわね」
 マリア:「私達宛ての書類が役所から届いてるって聞いたんで、取りに来たんだけど?」
 クリス:「だーかーらぁ、それを会長達が預かってるんだって」

 クリスは笑みを浮かべながら汗を拭いていた。
 彼女はスポブラとビキニショーツだけの恰好になっている。
 鍛えられた女性アスリートの如く、露出した肌から引き締まった筋肉が目に飛び込んで来る。

 稲生:「何をしていたの?」
 クリス:「ジョニーと筋肉勝負さ。スクワットと懸垂ね。どっちも私が圧勝したけど」
 ジョニー:「うぉぉぉぉぉぉっ!」orz
 クリス:「あ、私と勝負してみる?」
 稲生:「い、いや。僕は文科系だから遠慮しておくよ」
 クリス:「じゃあ、マリアンナ」
 マリア:「私もムリ」

 そんなことを話していると、奥からエリックがやってきた。

 エリック:「やあ、どうも。御足労ありがとうございます」
 稲生:「こんにちは。サーシャは?」
 エリック:「サーシャは一段と腹が大きくなったんで、奥で休ませてますよ」
 稲生:「4人目、元気に生まれるといいねぇ」
 エリック:「へへ、どうも。稲生さん達は何人くらい作る御予定で?」
 稲生:「えっ?」
 マリア:「なっ……!」

 稲生は困惑し、マリアは顔を赤らめた。

 稲生:「ま、まだ未定……ははは……」
 エリック:「正式に結婚したら教えてくださいよ?うちのジム総出でお祝いさせてもらいますからね」
 稲生:「お、お気遣いなく……」
 マリア:「それよりエリック、早いとこ書類を」
 エリック:「おっと、こりゃ失礼。見たところ、目録のようです。役所の使いの話によると、これを持って共和党本部事務所に行くようにとのことです。この書類と引き換えに報奨金を渡すとか……」
 稲生:「へえ、金一封なんだ。活躍したのは僕達だけじゃなく、クリスもなんだけど……」
 エリック:「クリスの分も含まれてるので、クリスも一緒に連れて行ってやってください。何しろ共和党本部なんて、そんな御大層な場所、俺には分かりませんでねぇ……」
 稲生:「1番街でしょ?魔王城の近くの。僕は知ってるよ」

 直接事務所に行ったことはないが、魔王城に出入りしていれば何となく分かるものだ。

 クリス:「何ゴッズ貰えるかな~?へへへ……」
 ノラン:「良かったわね。額によっては、新しい剣が買えるわよ」
 稲生:「うーん……金一封程度なら、そんなに期待しない方がいいかもね」

 少なくとも、日本国内における捜査報償費はそうだ。

 稲生:「あくまでも、新しい剣を買う足しにするくらいの感じの方がいいかも」
 クリス:「何だ、そうか」
 稲生:「どういった剣が欲しいの?」
 クリス:「鋼の剣かな」
 ノラン:「レイピアじゃなく、もっと重い鋼の剣が装備できるのは副会長とあなたくらいよ」

 副会長とはサーシャのことである。

 クリス:「筋肉を鍛えているのはその為さ」
 ジョニー:「それでも男の剣士が持つ物よりは小せぇヤツだろ?」
 クリス:「うるさいな。私は気に入った物を使うの!」
 稲生:「分かった。じゃあ、これから1番街まで行ってくる」
 エリック:「ああ、気をつけてな」
 稲生:「サーシャによろしく」
 エリック:「了解。クリスもこの方達の護衛頼むな?」
 クリス:「分かってますよ、会長」

 稲生達は『目録』を入手した。
 そしてジムをあとにした。

 稲生:「先生が起きてるかどうか、まずは宿屋に戻ってみよう」
 マリア:「寝てる方に一票」
 クリス:「えー?さすがに起きてるだろー?もう昼近くだよー」
 マリア:「魔道士をナメるな」
 クリス:「はー、サーセン」

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