報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「新たな仕事を受けて……」

2023-08-16 20:22:32 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月7日16時00分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 善場主任との話が終わり、解散することになった。
 主任の部下が車で送ってくれるそうなので、それまでの間、高橋はまた喫煙所に行き、リサはトイレに向かった。
 私はというと、電話で民宿さのやに電話した。

 愛原の伯母「お電話ありがとうございます。民宿さのやでございます」
 愛原「あ、伯母さん。学です。愛原学です」
 伯母「学?ああ、久しぶりね!」
 愛原「お久しぶりです。明けまして、おめでとうございます」
 伯母「おめでとう。今年もよろしくね」
 愛原「よろしくお願いします。それより伯母さん、急な話で申し訳無いんだけど、明日、部屋空いてる?」
 伯母「えっ?泊まりに来るのかい?」
 愛原「そうなんだ。実はね……伯父さんに話があって」
 伯母「あんなヤドロクを訪ねても、何もいいことないよ。学は立派な探偵さんになって、御両親も喜んでるわねぇ……」
 愛原「いや、ハハハ……。それで、どうなの?やっぱり情報を仕入れに行くのなら、客として泊まるのが筋だと思うんだけど?」
 伯母「いい心掛けね。うちのヤドロクにも見習って欲しいわ。……ええ、部屋なら空いてるわよ。学と……あと、何人来るの?」
 愛原「えーと……」

 私は一瞬、パールをどうしようかと思った。
 そして、出した答えは……。

 愛原「4人。俺と助手の男が2人、あとはスタッフの女性が2人の4人」
 伯母「男性2人、女性2人ね。部屋は別々の方がいいの?」
 愛原「別々にできるの?」
 伯母「2部屋空いてるからね。こっちとしては、部屋は埋まってくれるとありがたいのさ」
 愛原「じゃあ、2人ずつで」
 伯母「あいよ。で、何泊するの?」
 愛原「1泊。2食付きでヨロシクです」
 伯母「あいよ。じゃあ、待ってるからね」
 愛原「よろしく。……因みに、伯父さんには替われる?」
 伯母「多分、今はムリだと思うよ」
 愛原「何で?」
 伯母「地下室に籠って、何かまた変な研究してるのよ。変な薬作って、また警察の御厄介にならないといいんだけどね」

 正に、その一歩手前ですよ、伯母さん。
 私はその言葉を喉元で抑えた。
 無関係な伯母さんを巻き込むわけにはいかない。
 表向きには、愛原学探偵事務所の1泊2日の社員旅行って感じのテイで行こうと思う。

 愛原「と、とにかく、伯父さんによろしくね。ちょっと……伯父さんに大事な話があるから、逃げないでねって言ってくれる?」
 伯母「分かってるわよ。アタシからキツく言っとくからね」
 愛原「う、うん。ありがとう。それじゃ、よろしくお願いします」

 私は電話を切った。

 愛原「ふう……」
 善場「どうですか?所長の御親族、容疑者にならずに済みそうですか?」
 愛原「あ、あとは伯父さん次第です。伯父さんに反省の気持ちがあるのなら、きっと大丈夫です」
 善場「そうですか。一応、静岡県警察本部には連絡済みですので、地元の警察署……。富士宮警察署ですか。そこを通じて、いつでも手配できるようにはなっていますので。もし何でしたら、そのようにお伝えして頂いても結構です」
 愛原「わ、分かりました。私も親族として、警察の皆さんに余計な仕事をさせてしまうのは忍びないので、何としてでも、この任務、完遂してみせます」
 善場「頼もしい限りです。……はい」

 その時、主任が耳に着けているインカムで誰かと交信した。

 善場「了解。……車が事務所の前に着いたそうです。部下には新しい事務所の住所を教えてありますので、そのまま車にお乗りください」
 愛原「分かりました。ありがとうございます」

 私達は事務所をあとにすると、真ん前の通りに停車している黒塗りのミニバンに乗り込んだ。

 部下「事務所まで、お送りさせて頂きます」
 愛原「お手数お掛けします」
 部下「確認の為にご住所ですが、墨田区菊川2丁目○番×号でよろしいですか?」
 愛原「はい。よろしくお願いします」

 主任の部下は車のナビに、新しい事務所の住所を入力した。

〔実際の交通規則に従って、走行してください〕

 車が走り出した。

 高橋「……えっ、パールも連れて行ってくれるんスか?」
 愛原「ああ。表向きには、うちの事務所の慰安旅行ということにする。それなら伯父さんも、そんなに警戒しないだろう」
 高橋「……どうっスかね?あの爺さん、結構な食わせ者って感じっスよ。先生が泊まりに来るってなっただけで、もう気づくんじゃないスか?」
 愛原「……かもな。まあ、対外的にも、そう言う事にしておいた方がいいだろう」
 高橋「対外的?」
 愛原「どうもな、伯父さんも1人でやったように思えないんだ。どこかで、俺達や伯父さんを監視している連中がいる。そんな気がするんだよ」
 高橋「……アネゴんとこの組織っスか?」
 愛原「まあ、それもそんな組織の1つだろうな」

 民営BSAAとも言える“青いアンブレラ”だが、元は“赤いアンブレラ”だっただけに、まだ私は信用できない。
 対外的には、世界的なバイオハザードの火種を1番最初に撒いた責任と贖罪の為に“青いアンブレラ”を開業したらしいが。
 表向きには伯父さんが逃亡した時の為に、いつでも警察を出動させられるようにしたということだが、それは考えようによっては、私達以外に伯父さんに接触しようとする組織の人間を警戒する為とも言える。

[同日16時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家]

 車で送ってもらった為、とても楽に帰ることができた。
 パールはガレージを開けてくれていたらしく、車は一旦そこに入ってもらう。
 そして、私達は善場主任の部下に礼を言って、車から降りた。
 車がガレージを出るのを確認した後、私は内側からボタンを押してシャッターを閉めた。

 愛原「また、新しく車を借りなきゃな……」

 車は鬼の兄妹達に壊された。
 これをレンタカー会社に報告しないといけないが、ただの交通事故ではない為、色々と書類などを用意するのが大変だ。
 まあ、それは明日の仕事が終わったら改めて処理することにしよう。
 エレベーターに乗り込んで、3階と4階のボタンを押す。
 セキュリティ上、エレベーターは通常、2階の事務所にしか止まらない設定にしてあるが、表のシャッターを閉めれば、もう外から誰かが来て勝手に乗られる心配は無くなる。

 愛原「ただいまァ」
 パール「お帰りなさいませ。愛原先生、よく御無事で」
 愛原「ああ。そう簡単に殺されてたまるかってんだ」

 パールは台所で、夕食を作っていた。
 何か揚げ物をしているらしく、それの匂いが漂って来る。

 愛原「明日また急に仕事の依頼が入ってな。今度はパールにも来てもらう」
 パール「私もですか」
 愛原「何か予定あったか?」
 パール「いえ、何もございません。お供させて頂きます」
 愛原「そうか。高橋も喜ぶよ」
 パール「は?」
 愛原「まあ、いいや。詳しいことはまた後で。俺も荷物置いてくる」
 パール「か、かしこまりました」

 私は今度はエレベーターに乗らず、ビル側の階段を上って、自室のある4階へ向かった。

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