報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「探偵の年末年始」 2

2020-01-03 21:12:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月31日23:45.天候:晴 東京都江東区富岡 富岡八幡宮]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は皆で初詣にやってきた。

 新庄:「それでは皆様、私は後でお迎えに参りますので」
 斉藤絵恋:「うん、ありがとう、新庄」

 都営バスが出ているかどうか心配だったが、斉藤家のお抱え運転手の新庄氏が送迎してくれた。
 しかも全員乗れるよう、ワンボックスまでレンタルしてくれて。

 高野:「私まで付き合っちゃって、本当にいいんですか?」
 高橋:「アネゴまで着物着てきやがって、今更何言ってやがる」

 高野君は赤い服を好んで着るが、着物まで赤いものを着ている。

 高野:「あら?斉藤さんにリサちゃんもよく似合ってるねぇ!?」
 絵恋:「ありがとうございます」
 リサ:「むふー」
 高橋:「先生、あっちで甘酒配ってますよ」
 愛原:「おーっ、やっぱこういう所に来たら甘酒だよな」

 私は甘酒を飲みながら、ふと気づいた。

 愛原:「そういえば高橋、冬コミはどうしたんだ?」
 高橋:「後輩達のサークル、2日目なんで。とっくに終了っス」
 愛原:「売り上げは?」
 高橋:「おかげさまで完売っス!」
 愛原:「さすが大手サークルですなぁ……」

 JC達はJC達で……。

 絵恋:「ねー、見て見てリサさん!お守りきれいね!」
 リサ:「うん」

 日蓮正宗にはこんなもの謗法以外の何物でもないが、芸術品として見る分にはいい。

 愛原:「2人とも、買ってあげようか?」
 絵恋:「えっ、いいんですか?」
 愛原:「ああ。何がいい?」
 絵恋:「こ、ここ、この……え、ええ、縁結びとか……」
 高野:「はいはい、2人とも、中学生なんだから学業御守ね」
 リサ:「うん。サイトーと御揃い」
 高野:「いっぱい勉強して、一流のエージェントになるのよ」
 リサ:「はーい」
 絵恋:「ええーっ!(で、でもリサさんと御揃いならいいかも……)」
 高橋:「先生!俺達もお揃いで買いましょう!この縁結びとか!」
 愛原:「お前、今の流れで空気読めよ。俺は別のを買う」
 高橋:「ええっ!?」
 愛原:「俺が見繕ってやるから」

 私が買ったのは商売繁盛の御守、そして高橋には……。

 高橋:「交通安全……」
 愛原:「今、あおり運転の取締り厳しいんだから、それで免停食らわないように」
 高橋:「先にあおり運転しやがったのは、相手チームですよ!」

 スリリングな運転を行う走り屋達であるから、彼らの車にはカメラは付いていない。
 自分達の首を絞めることになるからだ。
 ではどうして高橋君だけ捕まったのかというと……。

 愛原:「都営バスのカメラに映ってたのが、君の車だったんだよ」
 高橋:「俺はハメられたんス!」
 愛原:「相手の挑発に乗った時点で負けだよ」

 特に公営バスは『走る監視カメラ』として、同じ公務員の警察にすぐに映像を提出できる状態になっているので、皆さん気を付けましょう。

 女性参拝客A:「ちょ、もうすぐじゃね?」
 女性参拝客B:「本当だ~」

 近くにいた女性達が自分のスマホを見て言った。
 私も見てみると、確かにまもなく日付けが変わろうとしている。

 愛原:「よし!皆でカウントダウンだ!」
 高橋:「ウイッス!!」
 高野:「アイアイサー!」

 5……4……3……2……1……!

 愛原:「明けましておめでとう!」
 高橋:「おめでとうございます!」
 高野:「おめでとうございます」
 絵恋:「リサさん、今年もよろしくお願いします!」
 リサ:「よろしくお願いします……」

 高橋はおみくじ売り場に向かった。

 高橋:「先生!今年の運勢占いましょう!」
 愛原:「そうだな」

 私達はおみくじを引いた。

 絵恋:「私は吉か。……あ、スゴーイ!大吉じゃない!」
 メイド:「メイドの身には過ぎたる幸福。これは是非とも御嬢様に……」
 絵恋:「いいのよ。これはあなたの大吉なんだから」
 高橋:「先生、俺のおみくじ代わりに引いちゃってください」
 愛原:「オマエ、そういうのは自分で引くもんだよ」

 そう言いつつ、私は高橋の分のおみくじを引いた。
 そこから出てきたのは……大凶!
 だ、大凶……。
 は、初めて見た。
 待ち人……来ず。
 失せ物……見つからず。
 うん……何か知らんけど、確かに大凶っぽい。
 私の小吉と交換してあげたいくらい。

 高橋:「ど、どうっすか、先生?俺の運勢は!?」
 愛原:「えーと……。『あなたの好みの異性に助けてもらってください』とあるぞ?」
 高橋:「なに言ってんスか!俺は先生一筋ですよ!」
 愛原:「まあ、いいから。これを木の枝にさっさと縛り付けてしまおう」

 私はおみくじを木の枝に縛り付けながら考えた。
 高橋に合う女性とは誰なのだろう、と。
 取りあえず男が好きみたいだから、男みたいな女の人って、都合良くいるのか。
 高野君は女傑とも言えるが、高橋君にとってはお姉さんみたいなもので、とても恋愛に発展しそうにない。
 と、なると……。

 メイド:「皆様、参拝が終わりましたら、車を回してもらいますので」
 愛原:「ああ、こりゃどうも……。!」

 その時、私はメイドさんに着目した。
 この人の年齢は高橋君と同じくらい。
 声はアルトの高さで、ボーイッシュだ。
 女子校では同性にモテるタイプだろう。
 ということは、男が好きな高橋君もこれはと思うのでないか。

 高橋:「先生、早くお参りしましょう。俺と先生の永遠の仲を神に誓うのです」
 愛原:「変な祈願したら、死んだ神主さんに祟られるからな?」

 私が高橋にツッコミを入れていると、リサが駆け寄って来た。

 リサ:「先生、サイトーを誘っていい!?サイトーを泊めてあげようかと思って」
 愛原:「俺はいいけど、いいの?」
 メイド:「旦那様からは御嬢様の好きにして良いとの仰せです」
 愛原:「変な所で娘を甘やかすなぁ……。まあ、いいよ」
 メイド:「おせち料理も作ってございますので、皆さんでどうぞ召し上がってください」
 愛原:「へぇ!そりゃ助かる!」

 私達は参拝を終えると、新庄運転手の車の乗りこんだ。
 それで私のマンションへと帰宅した。

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