報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「探偵の年末年始」 1

2020-01-03 14:26:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月31日12:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 我が事務所も年末年始は休みだ。
 で、住み込み助手の高橋君とリサと一緒に午前中は部屋の大掃除だ。

 リサ:「先生、大掃除って要らない物を捨てたりするんでしょう?」
 愛原:「そうだけど?」
 リサ:「私、捨てたい物があるの」
 愛原:「何だい?」
 リサ:「研究所の時に着せられてた服とか仮面とか……」
 愛原:「うーん……悪いけど、それは取っておきなよ」
 リサ:「えーっ?」

 それはセーラー服と白い仮面だった。
 どうしてアンブレラの研究員は実験体として拉致・監禁した少女にセーラー服を着せたのか、未だに不明である。
 私が思うに、ただの趣味ではなかろうかと。
 白い仮面については、恐らく制御の為だと思われる。
 顔を完全に隠し、両目の部分に、横に細長い穴が開いただけの仮面。
 一時期、政府エージェントに預けられたが、しばらくして返された。
 アメリカのアンブレラ本体は、少女達を単なる実験体兼生物兵器としか見ていなかったようだが、日本の方は生物兵器としても去ることながら、『合法ロリ』として売ることも考えていたらしい。
 いやいや、実験体としてさらった時点で合法じゃないから。

 愛原:「リサにとっては悪い思い出の産物でしかないのは分かる。しかし、アンブレラの悪行を今に伝える証拠品でもあるんだ。もし何だったら、俺が預かっておくよ」
 リサ:「うん……」
 高橋:「先生、午後からは餅つきしたいと思います」
 愛原:「お前、ガチでやる気かよ……」

 私は部屋の片隅を見た。
 そこには杵と臼が置かれていた。

 愛原:「食べるのは高野君も入れて俺達だけだろ?」
 リサ:「サイトーにもあげたい!」
 愛原:「斉藤さん達は海外旅行だろ?あのセレブ一家は……」
 リサ:「サイトーだけ冬休みの宿題終わらなかったからって置いてかれたって」
 愛原:「あの放任主義ダディ、娘を何だと思ってるんだ」
 リサ:「で、仕事の依頼。この冬休み中にサイトーを旅行に連れて行くこと」
 愛原:「いや、だから俺は聞いてないって」
 リサ:「依頼書を事務所にFAXするからよろしくだって」
 愛原:「あの社長……」

 依頼書はいいけど、契約書とか報酬とかはどうするんだよ、全く……。

[同日13:00.天候:晴 同マンション屋上]

 リサから預かったセーラー服は夏服半袖しかない。
 これは私が初めてリサと会ったのが6月だったからというのもあるが、そもそも空調の効いた研究所内且つ体温の高いリサ達に長袖や冬服は不要と判断されたのか……。
 預かる前に無理を言って着てもらった。
 リサは嫌々ながら着てくれたが、よく似合っていた。
 可愛いから何を着ても似合うのだが、もしも東京中央学園の制服がセーラーだったら絶対に行かなかったと公言するほどだ。
 例えリサが自分から、「学校へ行きたい」と言ったにせよだ。
 幸い件の学校の制服はブレザーである。

 高橋:「しっかり持てよ、オラ」
 リサ:「ん!」

 高橋は臼を持っていたが、リサは杵を持った。
 それとてそれなりに重量があるはずだが、リサはそれを軽々と持っていた。
 屋上に運び、高橋は予め蒸していたもち米を臼の中に入れる。
 その手際良さに私は感心したが、やはり彼が10代の時に収監されていた所で毎年やっていたそうである。

 高橋:「俺が餅をつくから、リサはこねろ。分かるな?」
 リサ:「分かった。やってみる」
 高橋:「それじゃ先生、見ててください」
 愛原:「ああ。フザけないで真面目にやれよ」
 高橋:「分かってます。でやぁーっ!」

 高橋が餅をつき、

 リサ:「ん!」

 リサが餅をこねる。

 高橋:「うらぁーっ!」
 リサ:「ん!」
 高橋:「だぁりゃーっ!」
 リサ:「ん!」

 なかなか手際が良い。
 こりゃ美味い餅ができそうだ。
 あ、因みにさすがに今のリサはセーラー服から私服に着替えているので念のため。

[同日15:00.天候:晴 同地区内 愛原学探偵事務所」

 餅つきが終わって一休みした後、私達は事務所に向かった。
 本当は私一人だけで良いのだが、何故か高橋とリサもついてきた。

 愛原:「あ、FAX来てた」

 リサの言う通り、事務所には斉藤社長からのFAXが受信されていた。
 発信元を見ると、どうやら自宅からFAXしたらしい。
 それを見ると、契約書と報酬については娘の斉藤絵恋さんが持ってくるらしい。

 高橋:「あのクソガキに契約させられるんですか?」

 高橋は不快そうな顔をした。

 愛原:「まあ、そういうなよ。絵恋さんはあくまで代行者ってだけであって、本来のクライアントは斉藤社長なんだからさ」
 高橋:「はあ……」
 愛原:「絵恋さんはいつ来るんだ?」
 リサ:「多分夜中」
 愛原:「夜中!?」
 リサ:「サイトーから初詣に行こうって誘われた。多分、契約書や報酬もその時持って来ると思う」
 愛原:「そうなのか」
 リサ:「サイトーが着物貸してくれるって」
 愛原:「リサに?だけど、着付けはどうするんだ?」
 リサ:「メイドさんがしてくれるって」
 愛原:「なるほど。そうか」

 私はつい紅白歌合戦が終わる頃に、絵恋さんが来ると思っていたのだが……。

[同日19:20.天候:晴 愛原のマンション]

〔「パプリカ♪花が咲いたら♪晴れた空に種をまこう♪」〕(←テレビ音声)

 リサ&斉藤絵恋:「パプリカ♪花が咲いたら♪晴れた空に種をまこう♪」

 テレビの前でパプリカダンスを踊るJC2人。

 愛原:「おー、上手い上手い」
 高橋:「ちっ……」
 メイド:「それでは愛原所長、こちらが契約書と報酬の小切手でございます」

 契約書については既に斉藤社長のサイン付きで、後は私のサインを持って締結できるようになっていた。
 報酬は小切手であるが、当然銀行は年明けの6日にならなければ営業できない。
 要はその期間の間に契約内容を履行せよということだ。
 斉藤社長からすれば、小切手を渡した時点で手付金代わりとしたいのだろう。
 だが肝心の私からすれば、銀行が開くまでそれを換金することができないという……。

 メイド:「あと御嬢様とリサ様の御着物の着付けをさせて頂きたいので、お部屋をお借りしたいのですが……」
 愛原:「それならリサの部屋を使うといいですよ」
 メイド:「ありがとうございます」

 メイドさんというと、どうしてもメイドカフェのそれを思い浮かべてしまうが、このメイドさんも御多分に漏れず。
 しかしアキバのそれはどうしても萌え系に走りやすいのに対し、こちらのメイドさんはボーイッシュな感じだった。
 口調こそメイドさんのそれそのものであったが、一人称が「ボク」が似合いそうな感じだった。

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