[5月18日08:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]
稲生勇太:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」
朝の勤行を終えた勇太。
稲生:「よし、朝の勤行終わり。朝ご飯に行くか」
勇太は数珠と御経本をしまうと、階下に下りた。
因みに昨夜からルーシーもこの家に泊まっている。
ワンスターホテルを引き払った為、ベイカー師匠の迎えがあるまで宙に浮いてしまった。
その為、勇太が家に呼んだのである。
元々マリアの屋敷がそういった者の逗留先として指定されているのだが、話の舞台がこういう所になるとなかなか難しい。
ルーシー:「宿泊代は後でお支払いしますから……」
佳子:「別にいいのよ。1人も2人も同じだから」
ルーシーが勇太の母親の佳子に恐縮している。
勇太:(アナスタシア組が日本拠点として、都内のタワマン一室を買ったというけど、何だかその気持ちが分かるなぁ……)
そう思いつつ、ダイニングに入る。
勇太:「ルーシーさん、いいんですよ。門規に『相互扶助』とか『互助精神』とかありますでしょ?」
ダンテ門内の規則の中に『Mutual aid』とか『Organization theory』とかいう言葉がある。
これを日本語訳すると、『相互扶助』や『互助精神』という意味になる。
勇太:「その一環です」
エレーナの場合は、『ああ?無料とは書いてないぜ』とか言って有料にしてくるのだが。
その場合、マリアは『有料とも書いてないだろ!』と言い返してケンカになる。
ルーシー:「ありがとう」
勇太:「じゃあ早速、食べましょう」
勇太は朝食のトーストにマーガリンを塗った。
マリア:「それにしても昨日のチケット……」
勇太:「ああ、あれですか。いや、確かに本物ですよ。あれで確かに入浴料無料で入れます。ただ、場所が……」
勇太はトーストに齧りついてから言った。
勇太:「仙台の大江戸温泉物語じゃ、宿泊できませんから。マリアさんも前に行きましたよね?」
マリア:「ああ、あそこか。確か、地下鉄とバスで行ったな……」
ルーシー:「悪魔は代替品と言ってたから、宿泊もできるはずよ!?」
マリア:「勇太」
勇太:「確かにあの施設には、宿泊施設が併設されていて、それの宿泊券も入ってはいるんですよ。ただ、あくまでビジネスホテル的なもので、いわゆる観光ホテルとか旅館の類ではありません」
マリア:「マジか……」
勇太:「まあ、公式サイトを見る限りではワンスターホテルよりは高級そうですけどね」
マリア:「あれより低級なホテルはドミトリー(簡易宿所)と言うんだ」
因みに日本独自のカプセルホテルも簡易宿所の類に入る。
日本独自である為、外国人観光客が面白がって宿泊するのだとか。
マリア:「どうする?ベイカー先生がいつ迎えに来るか分からないし、今日行っちゃう?師匠に頼めば交通費くらい……」
勇太:「今日は土曜日で予約がいっぱいです。明日なら何とか……」
マリア:「明日か……。そうなると、今日どうするかだな。ルーシー、どこか行きたい所ある?」
ルーシー:「どこでもいいの?」
マリア:「日本国内なら、勇太に頼めばどこでもOKよ」
勇太:「いや、あの、自ずと限界はありますよ?」
ルーシー:「そう……。それなら1つお願いがあるの」
[同日09:30.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]
〔お待たせ致しました。次は終点、大宮駅西口、大宮駅西口でございます。どなた様もお忘れ物の無いよう、ご注意ください。本日は丸建自動車をご利用頂きまして、ありがとうございました〕
勇太の家の近所のバス停から、大宮駅に向かう路線バスに乗り込んだ勇太達。
週末午前中の道路と車内は空いていて、ほぼスムーズに終点へ向かう。
稲生:「それにしても、意外な行き先を希望しましたね」
ルーシー:「でも、聞いてくれてありがとう」
稲生が鞄の中から出したのは1枚のパンフレット。
それは昔行ったことがある鉄道博物館のものだった。
バスがアルシェ横の小道沿いにあるバス停に停車する。
外側に開くスライドドアが開くと、稲生達はバスを降りた。
勇太:「大人3人です」
運転手:「はい、ありがとうございました」
勇太は回数券を3枚千切ると、それを運賃箱の中に入れた。
勇太:「このバス停からでも鉄道博物館を通るバスには乗れるんですけど、作者が未取材の為、ニューシャトルで行きますか」
そう言って勇太は2人の魔道士を誘導した。
マリア:「勇太じゃないけど、意外だね。私は勇太の趣味を知ってて、その博物館の存在も聞かされてはいたけど、誘われはしなかったよ?」
ルーシー:「父が鉄道職員だったもので」
マリア:「そうなの!?」
この話にマリアは目を丸くした。
ルーシー:「だから、日本の新幹線の話も聞かされていたよ」
マリア:「それで先日、富士山まで行った時に乗った新幹線で、ルーシーが1番テンション高かったわけね」
勇太:「その前に寄って行きたい所があるんでいいですか?」
マリア:「いいよ」
エスカレーターで2階に上がると、稲生達はみどりの窓口に移動した。
稲生:「3人席横並びの席が空いているといいんですがね……」
指定席券売機を慣れた手つきで操作する稲生。
稲生:「あ、空いてた」
すぐにゲットする。
稲生:(仙台止まりの比較的遅い電車だから空いてるのか?)
稲生は首を傾げたが、日曜日の真っ昼間の列車というのもあるかもしれない。
稲生:「えーと、料金が……」
するとルーシーが手持ちのクレカを突っ込んだ。
稲生:「えっ?」
ルーシー:「これは私の仕組んだ旅行だから、交通費は私が出すわ」
稲生:「仕組んだって、たまたまチケットを当てただけじゃないか」
というより悪魔が仕掛けた罠を壊したどころか、更に仕掛けた本人からせしめたというのが事実だが。
稲生:「これで明日の出発が確定しました」
因みに稲生に関しては、父親の宗一郎が出してくれた。
稲生:「これでルーシーさんは東海道新幹線にプラスして、東北新幹線への乗車体験もできるというわけです」
ルーシー:「それだけでも日本へ来た甲斐があったというもの。……代償は大きかったけど」
マリア:「いや、それだけを目的にしないで。それだけだと、あまりにもゼルダとロザリーがかわいそう……」
ルーシー:「分かってる」
稲生:「キップは明日まで僕が預かります。それじゃ、今度こそ鉄道博物館に行きましょう」
みどりの窓口を出ると、3人は今度こそニューシャトルの乗り場へと向かった。
稲生勇太:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」
朝の勤行を終えた勇太。
稲生:「よし、朝の勤行終わり。朝ご飯に行くか」
勇太は数珠と御経本をしまうと、階下に下りた。
因みに昨夜からルーシーもこの家に泊まっている。
ワンスターホテルを引き払った為、ベイカー師匠の迎えがあるまで宙に浮いてしまった。
その為、勇太が家に呼んだのである。
元々マリアの屋敷がそういった者の逗留先として指定されているのだが、話の舞台がこういう所になるとなかなか難しい。
ルーシー:「宿泊代は後でお支払いしますから……」
佳子:「別にいいのよ。1人も2人も同じだから」
ルーシーが勇太の母親の佳子に恐縮している。
勇太:(アナスタシア組が日本拠点として、都内のタワマン一室を買ったというけど、何だかその気持ちが分かるなぁ……)
そう思いつつ、ダイニングに入る。
勇太:「ルーシーさん、いいんですよ。門規に『相互扶助』とか『互助精神』とかありますでしょ?」
ダンテ門内の規則の中に『Mutual aid』とか『Organization theory』とかいう言葉がある。
これを日本語訳すると、『相互扶助』や『互助精神』という意味になる。
勇太:「その一環です」
エレーナの場合は、『ああ?無料とは書いてないぜ』とか言って有料にしてくるのだが。
その場合、マリアは『有料とも書いてないだろ!』と言い返してケンカになる。
ルーシー:「ありがとう」
勇太:「じゃあ早速、食べましょう」
勇太は朝食のトーストにマーガリンを塗った。
マリア:「それにしても昨日のチケット……」
勇太:「ああ、あれですか。いや、確かに本物ですよ。あれで確かに入浴料無料で入れます。ただ、場所が……」
勇太はトーストに齧りついてから言った。
勇太:「仙台の大江戸温泉物語じゃ、宿泊できませんから。マリアさんも前に行きましたよね?」
マリア:「ああ、あそこか。確か、地下鉄とバスで行ったな……」
ルーシー:「悪魔は代替品と言ってたから、宿泊もできるはずよ!?」
マリア:「勇太」
勇太:「確かにあの施設には、宿泊施設が併設されていて、それの宿泊券も入ってはいるんですよ。ただ、あくまでビジネスホテル的なもので、いわゆる観光ホテルとか旅館の類ではありません」
マリア:「マジか……」
勇太:「まあ、公式サイトを見る限りではワンスターホテルよりは高級そうですけどね」
マリア:「あれより低級なホテルはドミトリー(簡易宿所)と言うんだ」
因みに日本独自のカプセルホテルも簡易宿所の類に入る。
日本独自である為、外国人観光客が面白がって宿泊するのだとか。
マリア:「どうする?ベイカー先生がいつ迎えに来るか分からないし、今日行っちゃう?師匠に頼めば交通費くらい……」
勇太:「今日は土曜日で予約がいっぱいです。明日なら何とか……」
マリア:「明日か……。そうなると、今日どうするかだな。ルーシー、どこか行きたい所ある?」
ルーシー:「どこでもいいの?」
マリア:「日本国内なら、勇太に頼めばどこでもOKよ」
勇太:「いや、あの、自ずと限界はありますよ?」
ルーシー:「そう……。それなら1つお願いがあるの」
[同日09:30.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]
〔お待たせ致しました。次は終点、大宮駅西口、大宮駅西口でございます。どなた様もお忘れ物の無いよう、ご注意ください。本日は丸建自動車をご利用頂きまして、ありがとうございました〕
勇太の家の近所のバス停から、大宮駅に向かう路線バスに乗り込んだ勇太達。
週末午前中の道路と車内は空いていて、ほぼスムーズに終点へ向かう。
稲生:「それにしても、意外な行き先を希望しましたね」
ルーシー:「でも、聞いてくれてありがとう」
稲生が鞄の中から出したのは1枚のパンフレット。
それは昔行ったことがある鉄道博物館のものだった。
バスがアルシェ横の小道沿いにあるバス停に停車する。
外側に開くスライドドアが開くと、稲生達はバスを降りた。
勇太:「大人3人です」
運転手:「はい、ありがとうございました」
勇太は回数券を3枚千切ると、それを運賃箱の中に入れた。
勇太:「このバス停からでも鉄道博物館を通るバスには乗れるんですけど、
そう言って勇太は2人の魔道士を誘導した。
マリア:「勇太じゃないけど、意外だね。私は勇太の趣味を知ってて、その博物館の存在も聞かされてはいたけど、誘われはしなかったよ?」
ルーシー:「父が鉄道職員だったもので」
マリア:「そうなの!?」
この話にマリアは目を丸くした。
ルーシー:「だから、日本の新幹線の話も聞かされていたよ」
マリア:「それで先日、富士山まで行った時に乗った新幹線で、ルーシーが1番テンション高かったわけね」
勇太:「その前に寄って行きたい所があるんでいいですか?」
マリア:「いいよ」
エスカレーターで2階に上がると、稲生達はみどりの窓口に移動した。
稲生:「3人席横並びの席が空いているといいんですがね……」
指定席券売機を慣れた手つきで操作する稲生。
稲生:「あ、空いてた」
すぐにゲットする。
稲生:(仙台止まりの比較的遅い電車だから空いてるのか?)
稲生は首を傾げたが、日曜日の真っ昼間の列車というのもあるかもしれない。
稲生:「えーと、料金が……」
するとルーシーが手持ちのクレカを突っ込んだ。
稲生:「えっ?」
ルーシー:「これは私の仕組んだ旅行だから、交通費は私が出すわ」
稲生:「仕組んだって、たまたまチケットを当てただけじゃないか」
というより悪魔が仕掛けた罠を壊したどころか、更に仕掛けた本人からせしめたというのが事実だが。
稲生:「これで明日の出発が確定しました」
因みに稲生に関しては、父親の宗一郎が出してくれた。
稲生:「これでルーシーさんは東海道新幹線にプラスして、東北新幹線への乗車体験もできるというわけです」
ルーシー:「それだけでも日本へ来た甲斐があったというもの。……代償は大きかったけど」
マリア:「いや、それだけを目的にしないで。それだけだと、あまりにもゼルダとロザリーがかわいそう……」
ルーシー:「分かってる」
稲生:「キップは明日まで僕が預かります。それじゃ、今度こそ鉄道博物館に行きましょう」
みどりの窓口を出ると、3人は今度こそニューシャトルの乗り場へと向かった。
それにしても、鉄子さんって本当にいるんだねぇ。
まさか本当に鉄道博物館に開館から閉館までいるとは思わなかったよ。
私のバス趣味にまでは付き合ってもらえそうにないが、再び鉄分を補充するしか無いのか?
というわけで来月の御登山、往路は久しぶりにN700系に乗ってみるかと思った次第です。