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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「サブクエスト」

2025-08-12 18:20:21 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月22日15時00分 天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 全ての授業が終わり、リサは帰る準備をしようとしていた。

 リサ「フーム……」

 帰る前に、ある事を思いつく。

 淀橋「魔王様、一緒に帰ろー」
 小島「魔王様ー」
 リサ「……なぁ、2人とも」
 淀橋「なーに?」
 リサ「占いで愛原先生の居場所、分かると思う?」
 淀橋「ええっ?」
 小島「占いに走るの?」
 リサ「どうだろうか?」
 淀橋「もしかして、占い部の事、言ってる?」
 リサ「そこはどう?」
 小島「う、うーん……。確かに、よく当たると評判だけどォ……」
 淀橋「部長が変わった人だもんね。顧問の先生もだけど……」
 リサ「よく当たるのか。よし、占ってもらおう」
 淀橋「テンション低いと占ってもらえないってよ」
 リサ「料金は?」
 淀橋「それはさすがにタダでしょ。学校でお金取ったらカツアゲじゃん!」
 リサ「なるほど。それもそうか。よし、行ってみるぞ。部長の名前は?」
 小島「3年5組の稲生万梨阿さんって言ったっけ。顧問は科学の入名先生」
 リサ「分かった。行くぞ、今すぐに!」

 リサは『魔王軍』の幹部を引き連れて、教室をあとにした。

 小島「あっ」

 その時、1人の男子生徒とすれ違う。

 淀橋「なに?どうしたの?」
 小島「今の、新聞部の朝比奈君じゃない?」
 淀橋「それがどうしたの?」
 小島「稲生部長が好きだって噂だよ?」
 淀橋「へー、意外w」
 小島「ねー!」
 リサ「いいから行くぞ」

 校舎の外に出て、クラブ棟へ向かう。

 小島「ここ……だよね?」

 入口が占いの館っぽく、エキゾチックな雰囲気になっている。

 稲生万梨阿「今日は閉店だ。帰れ」

 黒いローブにフードを被った万梨阿は、不機嫌そうに言った。

 淀橋「はあ!?まだ下校時刻前でしょ?」
 小島「だったら何で部室開けてんの!」
 万梨阿「うるさい!とにかく、閉店ったら閉店だ!帰れ!」
 淀橋「ざっけんじゃねーよ!せっかく来たのに!」
 小島「リサからも何か言って!」
 リサ「……オマエの職務怠慢を新聞部にチクる」

 リサは赤い瞳をボウッと光らせて言った。

 万梨阿「新聞部!?」

 万梨阿はビクッと体を震わせ、目を丸くした。

 リサ「部長の朝比奈を私は知ってるからな、占い部の職務怠慢を今度の学校新聞に書いてもらう」
 淀橋「ハハッ!いいね、それ!!」
 小島「うちの魔王様、怒らせると怖いんだから!じゃあね!」
 万梨阿「ちょ、ちょっと待って!」

 万梨阿は椅子から立ち上がると、リサの腕を掴んだ。

 リサ「何だ?」
 万梨阿「朝比奈君のこと、知ってるの?」
 リサ「『学校の七不思議特集』は、オマエも知ってるだろう?わたしは新聞部じゃないけど、語り部として参加したから知ってるんだよ」
 万梨阿「名前は……?」
 リサ「愛原リサ。3年3組だよ」
 万梨阿「あ、あの……朝比奈君に会ったら宜しくね?」

 万梨阿はモジモジしながら言った。
 それに勘づくリサ。

 リサ「(なるほど……)分かったよ。オマエの事は、よろしく伝えておく」

 リサはそう言って、占い部の部室を出た。

 淀橋「リサ?」
 リサ「サブクエスト開始だ。新聞部に行くぞ」
 小島「本当に占い部の事を書いてもらうの!?」

 新聞部は占い部と違い、伝統ある部の為、校舎の中に部室がある。

 リサ「頼もー!」
 朝比奈「あ、あれ!?あなたは確か……」
 リサ「『学校の七不思議特集』ナンバーワン語り部の愛原リサ!再登場!」
 朝比奈「な、何の用ですか?今年はもう『七不思議特集』は終わりましたよ?」
 リサ「それは残念。せっかく語り部2人連れて来たのに」
 淀橋「ちょw 怖い話なんて知らないよ!?」
 小島「また適当な事言って……」
 朝比奈「それより、今日は何の用ですか?」
 リサ「占い部の稲生万梨阿は知ってるだろ?」
 朝比奈「え、ええっ!?か、彼女がどうかしたんですか?!」
 リサ「わたしが口利きしといてやる。今すぐラブレター書いて。あと、わたしがあいつの占いを受けられるよう、紹介状も書いて」
 朝比奈「な、な、な……!?」
 淀橋「あー、そういうことw」
 小島「朝比奈君、ストライクゾーン、ズレてるねぇ?」
 朝比奈「お、大きなお世話です!」
 リサ「2人とも、黙ってて。どうする?こんなチャンス、滅多に無いよ?わたしはあのコの占いを受けたい。協力してくれたら、わたしが口利きしといてやるよ」
 淀橋「こう見えても、人心掌握術は学園イチの魔王様だからね、協力して損は無いよ」
 小島「そうそう」
 朝比奈「わ、分かりました。ちょっと待っててください」

 さすがは新聞部。
 ペンを取ると、スラスラとラブレターの文章を書き始めた。
 それとは別に、紹介状。

 朝比奈「こ、これでどうですか!?な、中は見ないでくださいよ!?」
 リサ「ありがとう。必ず渡しておくよ」

 リサはラブレターと紹介状の2通を手に、新聞部をあとにした。

 淀橋「中身、見ちゃおうか?」
 小島「新聞部の部長だから、きっと文学的な事が書いてあるよ?」
 リサ「いいから、余計な事はするな。わたしが占い受けられなくなっちゃう」
 淀橋「あっ、ゴメン!」
 小島「そうだったね」

 再び占い部の部室へ。

 万梨阿「また来たのか……」
 淀橋「だったら、店じまいすりゃいいでしょーが!」
 小島「メンドくさ……」
 リサ「まあまあ。これで、わたしを占ってくれ」

 リサは万梨阿にラブレターと紹介状を渡した。

 リサ「新聞部のアサヒナ、アナタにベタ惚れみたいだよ?」
 万梨阿「!!!」

 万梨阿はすぐにラブレターの封筒を開け、中身を確認した。

 万梨阿「こ、この字は本当に朝比奈君の……」
 リサ「紹介状もある。アサヒナからの紹介だ。これでわたしを占ってもらえないだろうか?」
 万梨阿「そ、そういうことなら……。そこに座って。何を占って欲しいの?」
 リサ「ダーリン。愛原学先生が今どこにいるか、それを占って欲しい」
 万梨阿「……難しい依頼ね。まあ、頑張ってみる」

 万梨阿は水晶玉を取り出した。

 淀橋「すっごい、本格的~!」
 万梨阿「入名先生の備品だよ」

 そして占いの結果は……。

 万梨阿「福島県……。福島県……西部……」
 リサ「福島!?福島の西部のどこ!?」
 万梨阿「ごめんなさい。そこまでは……」
 淀橋「マジ!?それでもそこまで分かるんだ!」
 小島「福島県の西部というと、会津若松とかかな?中等部代替修学旅行で行った」
 淀橋「あそこか!」
 リサ「……分かった。ありがとう」

 リサは部室から出ようした。

 万梨阿「ちょっと待って!」

 部室から出ようとするリサの腕を掴んで引き留める万梨阿。

 リサ「今度は何だ?」
 万梨阿「すぐに返事を書くから、持っていてくれる!?」
 淀橋「LINEにしろよ、LINEに!」
 小島「テレグラムでも可!」
 リサ「お、おかしいな。サブクエストは完了したはずなのに……」
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“私立探偵 愛原学” 「会津若松市内で過ごす」

2025-08-07 21:11:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月22日07時00分 天候:晴 福島県会津若松市白虎町 会津若松ワシントンホテル・客室]

 スマホを没収されているので、目覚ましはベッドの時計を利用した。
 私が外部に連絡しないよう、私の部屋の電話機も没収されており、モーニングコールも掛けられない状態だった。
 これが安いビジネスホテルだったら、ベッドにも時計が付いていない事が多いが、このホテルはそこまでケチではないらしく、ちゃんとデジタル時計とアラームが付いていた。
 尤も、アラーム音がブー!というブザー音なので、これはちょっとビックリする。
 まあ、起きられるわけだが。
 これで起き上がり、バスルームに向かう。
 昨夜は最上階のレストランで夕食を取った。
 高野君が監視役なので付き合ってくれたが、ステーキフェアでもやっているのか、リサに食べさせてあげたいと思った。
 リサ宛ての手紙を書いて、レターバックで送ったが、案の定、集配の時間は終わっており、今日に集配されるようだ。
 今日集配されたら、届くのは明日か。
 予定通りなら、明日に帰るので、あまり意味の無い手紙となってしまったか。
 だが、まあいい。
 宛先はリサにしてあり、実際にリサ宛てに書いた手紙もあるのだが、実は善場係長に宛てた手紙も同封している。
 斉藤元社長の言う通り、高野君による検閲は無かったので、それをそのまま同封した。
 “青いアンブレラ”がどれだけの力を持っているのかは不明だが、まさか1度ポストに投函された郵便物を勝手に回収して破棄できるような事は無いだろう。
 私はコンビニで買った乾電池式シェーバーで髭を剃った。
 昨日の旅館では備え付けの使い捨て安全カミソリで髭を剃ったが、やはり使い慣れてないと剃りにくい。
 因みにレターパックを投函したポストがホテル近くのコンビニの前だったので、ついでにそこのコンビニで足りない物を購入した。
 その1つが、乾電池式のポケットシェーバーだったわけである。

 洗顔が終わって、私服に着替える。
 上は長袖の白ワイシャツ。
 たまたまコンビニで売っていた。
 下は黒いチノパンなので、まあ、服のコントラストとしてはおかしくないか。
 長袖のワイシャツで昼間は過ごせる季節で良かった。
 着替えが終わると、部屋の外に出た。

 高野「おはようございます。先生」
 愛原「あ、ああ。おはよう」

 高野君こそ、人外なのではなかろうか。
 私が部屋から出てくるタイミングを見計らって、隣の部屋から出てくるのだから。
 それとも、盗撮・盗聴されてる?

 高野「朝食ですね。同行しましょう」
 愛原「ああ……」

 エレベーターに乗り込み、最上階のレストランへ。

[同日09時00分 天候:晴 同ホテル→某診療所]

 ホテルの朝食会場は、ベタな法則でバイキングだった。
 高野君の話では、これから私はまた検査を受けることとなっているようだ。
 にも関わらず食事をして大丈夫なのかと聞くと、『会社の健康診断とは違うので』という理由でOKであった。

 高野「タクシーを呼んでおきました。これで向かいましょう」
 愛原「同じ組織の人が車で迎えに来るんじゃないんだ?」
 高野「まあ、そうですね」

 私はつい、桧枝岐村みたいにキャンピングカーで来るのかと思ったくらいだ。
 地元のタクシーがホテルの前にやってきた。

 高野「予約した高野です」
 運転手「高野様ですね。どうぞ」
 高野「では先生、どうぞ」
 愛原「う、うん」
 高野「○×町の西若松クリニックまでお願いします」
 運転手「かしこまりました」

 白い帽子を被った運転手はピッピッとナビをセットした。
 行先は名前からして、個人病院っぽい。
 マイナーな所だから、運転手も聞き慣れない行き先だったのだろう。
 それから車が走り出す。

[同日09時30分 天候:晴 会津若松市某所 西若松クリニック]

 ホテルからタクシーで行くこと、およそ10分。
 車はクリニックの前に着いた。
 確かに、個人経営のクリニックといった感じ。
 それでも規模はやや大きく、院長1人だけではなく、何人かの医師が診療に当たっているといった感じ。
 私はここで、またもや検査を受けた。
 先日と同様、胸のレントゲンを採られ、採血と採尿があった。
 更には医師による問診。
 聴診器を当てられるが、リサの場合はとんでもない音が聞こえるらしい。
 何しろ、Gウィルスの化け物となっているリサには、複数の脳(の素)と心臓(の素)がある為である。
 複数の脳や心臓がある為、1つを壊されても死なない。
 しかもGウィルスの特徴の1つで、その位置が動くのだから。
 アメリカのアンブレラ研究所にて研究段階の時、それは長い触手や大きな目玉として現れていたが、特異菌と融合させたリサはそれを脳や心臓に変えたようである。
 そのメカニズムは全く知られていない為、今でもリサは定期的に身体検査を受けている。

 医師「はい、口を大きく開けてください」
 愛原「あい」

 医師はアイスの棒みたいな、木製のヘラの包み紙を破った。
 そして、ペンライトで喉の奥を照らす。
 Gウィルス感染者で制御不能となった者は、喉の奥にも目玉が現れるらしいが、医師が何の反応もしないところを見ると、私の身にそれは起きていないようだ。

 愛原「今度は少し眩しくなります」

 と、今度はペンライトで本物の両目を照らされる。

 医師「まあ、いいでしょう」

 どうやら、私の体に異常は起きていないようだ。
 最後に心電図の検査を受けたが、こちらも何とも無いようだった。

 高野「お疲れ様でした。またタクシーを呼んでありますので、それでホテルに戻りましょう」
 愛原「ホテルに戻るというが、昼飯はどうするんだ?」
 高野「駅の近くでしたら、どこでも結構ですよ」
 愛原「どこでもと言われてもなぁ……」
 高野「何か食べたい物でもありますか?」
 愛原「そうだなぁ……。どうせ夜はまたホテルのレストランでステーキになるんだろう?だったら、昼は魚の方がいいな。ラーメンは昨日食べたし」
 高野「かしこまりました。それでは、和食のお店を探しておきます」
 愛原「ああ、頼むよ」

 リサに会えないんだ。
 どうせだったら、リサがいない時に食える物を頂いておこう。
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤秀樹との再会」

2025-08-07 15:45:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月21日14時30分 天候:晴 福島県会津若松市白虎町 会津若松ワシントンホテル]

 NewDaysで着替えと便箋を購入し、それから駅前の郵便局でレターパックを購入した。
 それから駅前のホテルに向かい、チェックイン。
 その後で、斉藤元社長の待つ部屋へと向かった。

 高野「失礼致します」
 斉藤「どうぞ」

 部屋の中に入ると、私の部屋はシングルルームだったのに対し、元社長の部屋はトリプルルームだった。
 まさか、3人部屋を1人で使うつもりなのだろうか?
 それとも……。

 斉藤「やあ、愛原さん!お久しぶりです!確か、群馬の山奥でお会いした以来ですな!」

 元社長がにこやかに出迎えてくれる。

 愛原「ど、どうも……」
 斉藤「9月も下旬に入りましたが、外は少々蒸しますな。冷たいお茶でもどうぞ」
 愛原「お、お構いなく……」

 元社長は冷蔵庫の中から、ペットボトル入りのお茶を出してくれた。
 室内には3脚の椅子と、それで囲むようにして丸テーブルがある。
 そこに座った。

 斉藤「今回は何日もお付き合い頂いて、本当にありがとうございます。この御礼と、突然の非礼に対するお詫び、必ずさせて頂きます」
 愛原「それで、私はいつ解放されるのですか?」
 斉藤「何も無ければ、明後日にはお帰り頂きます」
 愛原「明後日ですか?明日ではなく?」
 斉藤「ええ。そうですね……先に、証拠をお渡ししておきましょうか。キミ、愛原さんに例の物を渡してあげなさい」
 高野「本当に宜しいのですか?」
 斉藤「愛原さんなら大丈夫だ」
 高野「……かしこまりました」

 高野君は自分のバッグから、何かを取り出した。
 それは午前中、バスターミナルの窓口で購入したバスのチケットだった。

 高野「どうぞ」
 愛原「俺に?」

 受け取ると、それは高速バスのチケット。
 日付は明後日の午前中、件のバスターミナルからバスタ新宿行きだった。

 愛原「これは……?」
 斉藤「愛原さんに差し上げます。明後日出発の便のはずです」
 愛原「た、確かに……」
 高野「予定では当日お渡しすることになってました」
 愛原「そうなんだ……。で、私のスマホと財布は……」
 斉藤「それは当日お返しします」
 愛原「ですよね」
 斉藤「実は私共が愛原さんをこのようにしているのには、ちゃんとした理由があるんですよ」
 愛原「それは?」
 斉藤「数値上、あなたは化け物だからです」
 愛原「……ファッ?」
 斉藤「あなたが体内に有しているGウィルスの濃度的に、あなたは化け物になっているはずなんです。そんな存在を、日本の首都に帰すわけにはいきませんでしょう?そういうことです」
 愛原「いや、私は人間ですよ!?私がいつ化け物になりました?!」
 高野「見た目は殆ど化けていません。ですが、思い当たる節はございませんか?例えば、同じくGウィルスの権化、リサちゃんの様子がおかしかったとか、変に食欲が増大したとか……」
 愛原「リサの様子……そういえば……。食欲……そういえば……」
 高野「リサちゃんは、あなたに化け物の姿を見ていたんですよ。先生の見た目は確かに人間のままです。しかし、リサちゃんには先生が化け物に見えてしまったのでしょうね」
 愛原「そ、そんなこと言われても……」

 私は席を立って、室内にある鏡に自分の姿を映してみた。
 そこにあるのは、40年以上も見慣れた自分の姿だ。
 どこにも化け物の兆候や痕跡など見当たらない。

 斉藤「昨日、桧枝岐村で身体検査をしましたね?」
 愛原「ええ」
 斉藤「その結果によりますと、あなたの数値はほぼ人間レベルです」
 愛原「じゃあ、やっぱり人間なんじゃないですか。一体、何なんですか?」
 斉藤「愛原さん、霧生市の探索中に事故に遭いましたよね?」
 愛原「ええ」
 斉藤「その直後、霧生市には化け物が発生しました。まあ、高野が上手い事、あなたを脱出させたわけですが」
 愛原「そこは感謝しています」

 私が大人しく彼女らの指示に従っているのは、その部分も大きい。

 斉藤「どうして化け物が発生したか、お分かりですか?」
 愛原「いいえ。アンブレラの施設にいた化け物が脱走したとか?」
 斉藤「いいえ、違います」
 愛原「違う?」
 斉藤「DNAを調べたところ、愛原さんのそれと一致しました」
 愛原「え?え?え?どういうことですか?」
 斉藤「化け物は愛原さん本人だったということです」
 愛原「本人って……。じゃあ、ここにいる私は何なんですか?」
 斉藤「あなたが本体でいいのでしょうね。多分」
 愛原「本体!?じゃあ、化け物が分身ということですか?」
 斉藤「まあ、今のところはそういう認識で良いのかと」
 愛原「どうしてそんな事が……あ!」
 斉藤「思い当たる節がありますか?」

 爆発に巻き込まれた私は、壁や床に体を叩きつけられた。
 その時、体は大きく傷ついたはずなのだが、意識が朦朧とする中、何故か傷が見る見るうちに癒えて行ったのを思い出した。
 そして、急に吐き気を催し、何度も嘔吐した。
 その際、白い塊のような物が私の体から出たのを覚えている。
 その後、意識を失ったのか、そこから先は覚えていない。
 私はそれを斉藤元社長に話した。

 斉藤「それがG生物ですね。人間の状態の時に、瀕死の重傷を負うようなケガをしたことで、傷は回復させたものの、G生物にとって良くない事が起きたのでしょう。それで、慌てて愛原さんの体から出て行ったのかもしれません」

 G生物は幼体を吐き出しながら成長し、ついにゴジラみたいな生物に成長したのだろうと。
 それが斉藤元社長の見解だった。

 斉藤「数値が今や人間と大して変わらぬ状態になっているのは、あの時、吐き出したからでしょうね」
 愛原「そうだったのですか……」
 斉藤「ですが、まだ油断はできません。明日、再検査を受けて頂きます。それで大丈夫なら、そのままそのチケットでバスに乗って頂き、帰京なさって結構です。ですが、また数値が上昇しているようなら……もっと別の場所まで御同行願います」
 愛原「ええ……」
 斉藤「逃げても無駄ですよ。数値が上がって、数字上、人間ではなくなったあなたは、BSAAからもデイライトからも追われることになるでしょう。今はたまたま私達、“青いアンブレラ”があなたを保護しているだけなのです」
 愛原「そ、そうなんですか……」
 斉藤「これが他の組織だったら、あなたは薄暗い地下室に監禁されているでしょうね」
 愛原「はあ……」
 斉藤「でも、私達は違います。愛原さんには、このホテルで過ごして頂きます。食事代なども、こちらで負担しますから、何の心配もありませんよ」
 愛原「それはどうも……」
 斉藤「何か質問はございますか?」
 愛原「リサに手紙を書きたいのですが、もうホテルの外には出られませんか?」
 斉藤「高野君と一緒に行く分には結構ですよ」
 愛原「ありがとうございます」

 レターパックの集荷は、どうもしていないらしい。
 しょうがないのでポストに出そうかと思うが、恐らく午後の集配も終わっているだろう。
 17時までなら、郵便局に直接出せば、明日には届くかもしれない。
 だが、それを見透かされたのか……。

 斉藤「手紙の内容は検閲することはしませんが、その代わり、差し出しは郵便ポストにお願いします」

 と、釘を刺されてしまった。
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“私立探偵 愛原学” 「会津若松に戻る」

2025-08-07 10:59:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月21日13時51分 天候:晴 福島県喜多方市町田下無番地 JR喜多方駅→磐越西線230D列車・先頭車内]

 喜多方駅には無事に着いた。
 そこから駅に近い喜多方ラーメンの店に入り、私はチャーシュー麺を注文した。
 太いちぢれ麵が特徴の喜多方ラーメンだが、まさか現地で食べる機会があるとは思わなかった。
 食べてからしばらく市内を散策していたが、高野君から、そろそろ駅に戻るよう促され、再び駅に戻った。
 券売機でキップを買ってもらい、改札口でキップを切ってもらう。
 喜多方駅は自動改札口ではない為、駅員に改札印を押してもらう形となる。

 高野「会長が到着したそうです。私達も次の列車で戻りましょう」
 愛原「ああ、分かった」

 跨線橋を渡って、ホームに向かう。
 待合室の発車票では、【2両 ワンマン】と表示されていたから、つい往路の時に乗ったキハ110系が来るものだと思っていたのだが……。

 

 実際に来たのは新型車両のGV-E400系とやらのハイブリット気動車。
 だからなのか、旧型のキハ110系よりも確かに音は静かだ。
 この列車は当駅始発ではなく、先客が乗っていた為、ボックスシートは空いておらず(虫食い状態では空いていた)、ドア横のロングシートに座った。
 ボックスシートもロングシートも暖色系のモケットで、座り心地は首都圏の中距離電車のそれと何ら変わらない。

〔「この列車は磐越西線上り、普通列車の会津若松行きです。各駅停車で参りましたが、当駅より先、通過駅がございます。停車駅は塩川、会津若松の順です。会津豊川、姥堂、笈川、堂島は通過致します。停車駅にご注意ください。まもなくの発車です。ご乗車になりまして、お待ちください」〕
〔「2番線から、磐越西線上り、普通列車の会津若松行き、まもなく発車致します」〕

 運転士が乗務員室の窓から顔を出し、ピイッと手笛を吹いてドアを閉めた。
 各駅でそうしているわけではなく、往路の塩川駅では運転席に座ったまま運転台のドアスイッチを操作していたことから、線内で大きな駅のみ、ホームに顔を出して出発監視をするらしい。
 ドアチャイムが鳴ってドアが閉まる。
 その音色は首都圏のJR電車の3回鳴るチャイムと同じだった。
 まるで、都営新宿線の都営の車両も同じドアチャイムなので、それを思い出してしまった。

 愛原「早く帰りたい……」
 高野「もう少しの辛抱です。まずは、会長とお話しなってください」

 キハ110系がディーゼルエンジンを唸らせながら走り出すのに対し、こちらはまるで電車のように、スーッと静かに走り出す。

〔この列車は、森と水とロマンの鉄道、磐越西線上り、普通列車、会津若松行き、ワンマンカーです。これから先、塩川、終点、会津若松の順に停車致します。それ以外の駅には、停車致しませんので、ご注意ください。【中略】次は、塩川です〕

 自動放送の文言はだいたい同じだが、声優が違うようだ。
 あと、こちらは英語放送も追加されている。

 愛原「リサはどうしているか、分かるか?」
 高野「博士からは何の連絡もありません」
 愛原「大丈夫なのか?」
 高野「『便りが無いのは元気な証拠』とは言いますが……」
 愛原「本当に大丈夫なのか……」

 その時、私はふと思いついた。

 愛原「なあ、高野君」
 高野「何でしょう?」
 愛原「多分、俺はこれからまたホテルに泊まることになるんだろう?」
 高野「その予定ですが?」
 愛原「で、宿泊中は俺はホテルの外には出られないんだったよな?」
 高野「なるべく外出はお控え頂きたいですね」
 愛原「会津若松に着いたら、ホテルに行く前に1軒立ち寄りたい所があるんだが、いいか?」
 高野「会長がお待ちですよ」
 愛原「分かってる。そんなに時間は取らせんよ」
 高野「そうですか……」

[同日14時08分 天候:晴 会津若松市駅前町 JR会津若松駅→若松駅前郵便局]

 列車は無事に走行している。
 通過駅や踏切を通過する際、列車は警笛を鳴らしたのだが、往路のキハ110系がピィーッという汽笛だったのに対し、GVの方は電子警笛だった。
 何というか……京王電車っぽい?警笛だ。
 何となく、都営地下鉄新宿線に乗り入れてくる京王電車が鳴らす警笛に似ているような……?

〔まもなく終点、会津若松に到着致します。会津若松では、全てのドアが開きます。お近くのドアボタンを押して、お降りください。磐越西線、猪苗代、郡山方面、只見線、西若松、会津川口、只見方面と会津鉄道会津線はお乗り換えです。今日もJR東日本、森と水とロマンの鉄道、磐越西線をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 列車が会津若松駅に接近する。
 運転席からATSの警報音が聞こえてくると、地方の路線だなと思ってしまう。
 そして、列車がホームに停車した。

〔あいづわかまつ、会津若松、会津若松。……〕

 ホームからの駅名歓呼の自動放送に迎えられ、列車を降りた。
 1番線と2番線は頭端式となっている為、車止めを回り込む形で改札口まで並行移動することができる。
 ここは自動改札口となっているので、キップはそこに入れて改札を出た。
 この辺りは乗車駅で自動改札機を通っていなくても、出ることができるのだろう(改札印を自動改札機が読み取って入場履歴の有無を判断している?)。
 それから、駅の外に出た。
 本来なら、これから宿泊するホテル兼斉藤元社長との待ち合わせ場所に向かうところだが……。

 愛原「ちょっとNewDaysと郵便局立ち寄らせてくれ」
 高野「分かりました」

 NewDaysに立ち寄るのは着替えを買う為だ。
 着替えの入った大きな荷物はBSAAに預けたままとなっている。
 その為、換えの下着だけでもここで買えないかと思ったのだ。
 案の定、ここでシャツやパンツ、靴下は買えた。
 少々高いが、これも高野君から出してもらう。
 それから郵便局へ向かった。
 ここでレターパックを買って、リサ宛ての手紙を書いて出そうと思うのだ。
 レターパックなら速達扱いだし、集荷もしてくれるので、ホテルの外に出ずに済む。
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“私立探偵 愛原学” 「喜多方ラーメンを食べに」

2025-08-06 22:11:40 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月21日11時25分 天候:晴 福島県会津若松市駅前町 JR会津若松駅→磐越西線4255D列車・先頭車内]

 

 磐越西線の喜多方行きの列車が出るまで、少し時間があった。
 その為、私達は会津若松駅で時間を潰した。
 キップは高野君に買ってもらい、それで自動改札機を通る。
 喜多方方面のホームには、2両編成のディーゼルカーが停車していた。
 残念ながら、ワンマン列車である。
 何が残念なのかというと、会津若松駅はオリジナルの発車メロディが採用されているのだが、JRは基本的に車掌扱いとなる為、ワンマン運転では鳴らない事が多い。
 反面、会津鉄道はワンマン運転であっても、運転士が発車メロディを鳴らしにホームに降りるので、会津鉄道ではワンマン運転でも発車メロディが流れる。
 この前、陸羽東線で乗った気動車と似たような内装であるが、向こうは2両で1編成タイプだったのが、こちらでは1両1編成タイプを2両連結したタイプ。
 2人用のボックスシートに向かい合わせになって座る。

〔「ご案内致します。この列車は11時25分発、磐越西線下り、普通列車の喜多方行きです。停車駅は塩川、終点喜多方の順です。途中の堂島、笈川、姥堂、会津豊川は通過となっております。停車駅にご注意ください。次の塩川には11時34分、終点喜多方には11時42分の到着予定です。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 ワンマン列車なので、運転士がマイクで車内放送を行う。
 殆どの駅を通過するのだから、快速でいいと思うのだが、あくまで列車種別は『普通』である。
 しかし、同区間を走る『快速』も同じ停車駅である。
 通過駅は、朝夕しか停車列車が設定されていない。

〔ピンポーン♪ ご案内致します。この列車は、森と水とロマンの鉄道、磐越西線下り、普通列車の喜多方行き、ワンマンカーです。塩川、終点、喜多方の順に止まります。それ以外の駅には停車致しませんので、ご注意ください。まもなく、発車致します〕

 発車の時間が迫り、運転士が乗務員室の窓を開けて、いない車掌に代わり、出発監視を行う。

〔「お待たせ致しました。11時25分発、普通列車の喜多方行き、まもなく発車致します」〕

 手笛をピイッと吹いて、車掌スイッチでもって乗降扉を閉扉する。
 全ての扉が閉まったことを確認すると、運転士は運転席に座ってハンドルを操作した。
 陸羽東線の時と同じく、ガガガガと大きなディーゼルエンジンの唸り声を上げ、列車は定刻通りに発車した。

〔ピンポーン♪ 今日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は、森と水とロマンの鉄道、磐越西線下り、普通列車の喜多方行き、ワンマンカーです。これから先、塩川、終点、喜多方の順に止まります。それ以外の駅には、停車致しませんので、ご注意ください。【中略】次は、塩川です〕

 愛原「前から気になっていたことがある」
 高野「何でしょう?」
 愛原「キミは……エイダ・ウォンのコピーなのか?善場係長が、キミを『エイダ・ウォンのコピー』だと言ってるな」
 高野「ああ、それですか。本物のエイダ・ウォンは、今現在の年齢は【お察しください】」
 愛原「まあ、本物は俺より年上だな。ややもすれば、リサの実年齢と同じくらいじゃないのか?」
 高野「そうかもしれませんね。でも私は、彼女より年下です。もちろん、先生よりも」
 愛原「それはそうだが……」
 高野「整形はしているかもしれませんね」
 愛原「そういうことか。組織の命令?」
 高野「想像にお任せします」

 否定しないということは、私の質問を肯定するということだ。
 本物のエイダ・ウォンがどこの組織に所属しているかは不明だ。
 しかし、彼女を模したエージェントがここにいるということは、“青いアンブレラ”と遠くない場所にいるのだろう。

 高野「それより、向こうではどのように食べますか?食べ歩きですか?」
 愛原「そんなに食えないよ。リサじゃあるまいし」
 高野「そうですか?今の先生なら、リサちゃんほど食べられるかと思いますが?」
 愛原「その想像はどこから?それに、そんなにゆっくりもしてられないのだろう?だったら1軒だけにして、また会津若松にトンボ返りするくらいの方がいいだろう」
 高野「分かりました」
 愛原「まあ、チャーシュー麺の1杯なら行けるだろうね」
 高野「了解しました」

 高野君はそう言うと、スマホを取り出し、どこかへメールを打ち始めた。
 そのスマホにはGPSが入っていないのだろうか?
 パールやレイチェルは重傷だが、善場係長は軽傷とのこと。
 しかも彼女はリサと同様、すぐに傷が回復するGウィルスの遺伝子を持っているから、とっくに復帰されているはずである。
 善場係長に見つかったりしないのだろうか?

 愛原「ちょこちょこスマホを使っているが、GPSでデイライトやBSAAにバレたりしないのか?」
 高野「これですか?ええ、これは大丈夫ですよ」
 愛原「ふーん……」
 高野「デイライトは先生の事を捜しているでしょうが、明後日の所を捜していますね」
 愛原「どうして明後日の方向を捜してるんだ?」
 高野「私達の流す偽情報の正確さ、といったところでしょうか」
 愛原「ふーん……」
 高野「今頃、デイライトは港湾を捜しているところでしょうね。無駄な事を」
 愛原「港湾?何でだ?」
 高野「今年の夏は暑かったですね」
 愛原「どうした、急に?」
 高野「2005年のテラグリジア・パニックや、クイーン・ゼノビア号事件の時に使われた人口太陽衛星レギア・ソリスってまだ稼働してましたっけ?」
 愛原「知らんよ、そんなの」
 高野「……という情報を流したら、何か港湾を捜し出したみたいです。『クイーン・ゼノビア=船=港湾』ということじゃないでしょうか」
 愛原「安直だが、そう簡単に騙されるような組織でもなかろう」
 高野「と、言いますと?」
 愛原「振り込め詐欺の対応策に、『騙されたフリ作戦』もあるだろ?」
 高野「ああ、なるほど、そういうことですか。デイライトは人員も限られているので、それはできないでしょうね」

 “青いアンブレラ”の組織の規模は知らないが、デイライトの規模を笑うくらいだから、そこよりも大きいということなのだろうか?
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