ゴルフィーライフ(New) ~ 龍と共にあれ

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どうすれば人を創れるか

2011年08月06日 | 人間と宇宙~哲学を科学する

asimoくんのようなロボットには好感は持てても、恋はできないだろう。
産業用ロボットの姿・動きだからである。

どうすれば「人」を創れるか―アンドロイドになった私
石黒 浩
新潮社

百聞は一見にしかず。
アンドロイドにインタビューしたジャーナリストは、アンドロイドが微笑んで喋ると、
一緒に微笑んで、目を見つめてしまったという。
Android Video

これは愛知万博で展示されたという、NHKアナウンサーの藤井彩子アナウンサーをモデルにしたアンドロイド。
シリコン製の皮膚を持ち、空気アクチュエーターと呼ばれる機械音の出ないコンプレッサーを遠隔操作することによって、
人間の動きや表情に近い見た目を実現する。

この遠隔操作技術が進歩し、人間の脳波でロボットを制御する「ブレイン・マシン・インターフェース」が完成すると、
映画「サロゲート」の世界が現実になる時代がくる、らしい。
(「映画「アバター」のようなバイオエンジニアリングを使った地球外惑星での話ではなく、地球の近未来の話。)

石黒教授は、自身をモデルにしたアンドロイドを製作し、
実在の女性をモデルにして、ジェミノイドFというアンドロイドも製作した。
(対話機能のみを重視した最小限のメカニズムで設計されたジェミノイドFは、1千万円程度のコストで製作できたそうである。)

とはいえ、まだまだ不気味な感じもあって、暗がりで会ったら怖いように思えるが、技術は進歩する。
近未来には、高級車を買うように、アンドロイドを購入するのが当たり前になるのではないか。

Female Android Geminoid F

石黒教授は、自身、そしてジェミノイドFのモデルとなった女性が
自分そっくりなアンドロイドの出現によって得た体験から、次のように語ります。

人間とは、もはや身体で定義されるものではない。手足がなくとも義手や義足を使えばよい。
いわば、そうした肉体からの解放を極端に進めたのがジェミノイドであり、サロゲートであろう。
肉体にアイデンティティを求める時代は終わった。
無論、脳を置き換えることは非常に難しいが、脳の指令を機械の身体に伝えれば、
その機械の体が遠隔操作されているのか、自律的に判断して行動しているのか、
表面的には区別がつかない。
そうして、技術の進歩と共に、人間と機械の境界は曖昧になってゆく。

技術は、歴史的にも人間の肉体の様々な機能を機械に置き換えてきた。
そして、機械に置き換えられた部分は、人間を定義するのに必要がない部分とされてきた。
人類は、新しい技術を発明するたびに、人間の定義をより深化させ、
人間とは、単に肉体によって定義されるものではないことを実証してきたのである。

このように、技術の進歩と共に、より深い人間の定義を求めることこそが、
技術によって進歩する人間の存在価値であり

人間として生き続けることの真の意味だと私は考えている。

ジェミノイドFのモデルになり、実際にジェミノイドFの遠隔操作を行なったモデルの女性は、

感情に左右されずに振る舞うことができ、背筋がぴんと張っていて姿勢を崩すこともなく、
人間の肌よりもツルっと美しい肌を持っているジェミノイドFを見て、
自分のお手本がいるように感じた、と言います。

そして1年が経ち、ジェミノイドFが若くきれいな見かけを維持しているのを見ると、
自分自身も髪を切ったりして若く見えるように努力し、
ジェミノイドをお手本にしているうちに姿勢まで良くなったそうです。
単純に今の自分が目の前にいるというより、理想の自分が目の前にいるように感じられ、
「(自分そっくりの)ジェミノイドに何かを諭されたら、いうことを聞いてしまいそうだ。」とも。

アンドロイドが演劇を生身の人間と演じ合ったシーンにえもいわれぬ情緒を感じたので抜き書きしておきます。
アンドロイドの主(あるじ)の女性との会話です。

女性は「あなたは世界に何体あるの?」と聞く。

アンドロイドは
「20万体位あると思うんですけど、壊されたものもあるので…。
私を壊してすっきりするならそれもお役に立てたということで…。」と答える。

続いて女性が
「壊したらすっきりするかな?」とアンドロイドに聞くと、
「大抵の方は後悔するようです。」とアンドロイドは答えます。

女性はドイツ語でカール ブッセの詩を読み、それをアンドロイドが日本語で読み返す。
~ 山のあなたの空遠く さいはひ住むと人のいふ。

「日本人は寂しさのない国を探します。ドイツ人は幸せのある国を探します。」
女性は問う。
「あなたはどっち? 寂しさをなくしてくれる? それとも幸せをくれる?」

「アンドロイドにはわかりません。寂しさがなくなれば幸せじゃないんですか?」

最後に女性は、
「たぶん私は、あなたを壊さないと思う」と言って眠りにつく。

アンドロイドは眠る女性を前に最後の詩を読みます。

~ このままずっと歩いていくと何処にでるのだろう
   知らないうちに わたしはおばあさんになるのかしら
   きょうのことも忘れてしまって お茶をのんでいるのかしら
   ここよりももっと遠いところで

   そのときひとりでいいから すきなひとがいるといいな
   そのひとはもうしんでててもいいから
   どうしても 忘れられないおもいでがあるといいな

なんだか、アンドロイドが愛おしくなってきた。

Toto's 99


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