羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』が昨日手元に来て、2時間弱で読んだ。 読み易い文章と内容だったのでスラスラ読めた。
本の帯に書かれた紹介文は以下のとおり。
《「早う死にたか」 毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。 日々の筋トレ、転職活動。 肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して……。 閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説の誕生!》
全く新しい家族小説というよりも “現在さらに今後、日本の家庭と社会が抱えてゆく課題”が物語の骨格を成しているから、現代を象徴する家族小説と捉えるが良かろう。
自己都合での退職以来、日々花粉症及び無気力に苛まれている主人公の健斗は28歳。 最初の間、彼の姿はその昔あった「シラケ世代」にやや似ている。 容姿と気立て共に残念なカノジョが居て、ごくフツーといえる友人達が居て、特に貧しくも恵まれてもいない。 父親こそ早く亡くしているが、それなりの親戚づきあいもある。 健斗の境遇や周囲の人間、更に彼を取巻く社会情勢に関して等は物語の後半ぐらいまでを使って、巧妙に描かれている。
数か月前から同居するようになった高齢の祖父は体調不良の言葉をひたすら繰り返す。 家族に対する遠慮深い態度は卑屈に近い時すらあって決して厄介な年寄りではないが、“お迎えが来ること”を望む言葉を健斗は同居以来ずっと聞かされている。
ふと、健斗は思い至る。 自分が今まで祖父の魂の叫びを形骸化した対応で聞き流していたのではないかと。 「死にたい」というぼやきを理解する真摯な態度が欠けていたと。 斯くして健斗は祖父の究極の自発的尊厳死に協力する決意を固めるのである。
ここで “思い遣り”がゆえの空恐ろしい計画が企てられるかと思いきや、これまた途轍もなく稚拙というか超消極というか、兎にも角にも祖父を徹底して甘やかせて筋力と体力を奪い、食物も食べたいものを好きなだけ与えるといった滑稽な行動にいそしむのだ。 もちろん、祖父の娘である健斗の母はそんな計画を知る由もなく、実父に対してならではの厳しい態度で我が親に接し続ける。 その辺りの対比が人間の機微を突いている。 徹底して衰えさせようとする健斗と中途半端に自発を促す母との対比はコントの世界に近い。
健斗自身はといえば、打沈むばかりの気分から逃れようと始めた筋トレにより体力と気力が充実し、転職活動に励むようになる。 「スクラップ」と化してゆく祖父の側で「ビルド」される健斗。 やがて、年齢の割に(?)単純で幼い思考回路の彼も、祖父の実態めいた姿と本音を垣間見て、自分が大きな思い違いをしていたかもしれぬと気づく。
退化する或いは退化してゆくかに見えている老人と、不安要素満載ながらも独り立ちの道を歩み出す若者の話といった捉え方も出来ようが、どうもそんな簡単な代物ではないと思う。 家族再生物語とかの有りがちな人情噺でもない。 滑稽且つ未練たらしく、弱いくせに強かな部分を持ち、物事に真面目に向き合おうとするほど空回りしてしまうという、人間の悲喜劇がそこにある。
本の帯に書かれた紹介文は以下のとおり。
《「早う死にたか」 毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。 日々の筋トレ、転職活動。 肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して……。 閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説の誕生!》
全く新しい家族小説というよりも “現在さらに今後、日本の家庭と社会が抱えてゆく課題”が物語の骨格を成しているから、現代を象徴する家族小説と捉えるが良かろう。
自己都合での退職以来、日々花粉症及び無気力に苛まれている主人公の健斗は28歳。 最初の間、彼の姿はその昔あった「シラケ世代」にやや似ている。 容姿と気立て共に残念なカノジョが居て、ごくフツーといえる友人達が居て、特に貧しくも恵まれてもいない。 父親こそ早く亡くしているが、それなりの親戚づきあいもある。 健斗の境遇や周囲の人間、更に彼を取巻く社会情勢に関して等は物語の後半ぐらいまでを使って、巧妙に描かれている。
数か月前から同居するようになった高齢の祖父は体調不良の言葉をひたすら繰り返す。 家族に対する遠慮深い態度は卑屈に近い時すらあって決して厄介な年寄りではないが、“お迎えが来ること”を望む言葉を健斗は同居以来ずっと聞かされている。
ふと、健斗は思い至る。 自分が今まで祖父の魂の叫びを形骸化した対応で聞き流していたのではないかと。 「死にたい」というぼやきを理解する真摯な態度が欠けていたと。 斯くして健斗は祖父の究極の自発的尊厳死に協力する決意を固めるのである。
ここで “思い遣り”がゆえの空恐ろしい計画が企てられるかと思いきや、これまた途轍もなく稚拙というか超消極というか、兎にも角にも祖父を徹底して甘やかせて筋力と体力を奪い、食物も食べたいものを好きなだけ与えるといった滑稽な行動にいそしむのだ。 もちろん、祖父の娘である健斗の母はそんな計画を知る由もなく、実父に対してならではの厳しい態度で我が親に接し続ける。 その辺りの対比が人間の機微を突いている。 徹底して衰えさせようとする健斗と中途半端に自発を促す母との対比はコントの世界に近い。
健斗自身はといえば、打沈むばかりの気分から逃れようと始めた筋トレにより体力と気力が充実し、転職活動に励むようになる。 「スクラップ」と化してゆく祖父の側で「ビルド」される健斗。 やがて、年齢の割に(?)単純で幼い思考回路の彼も、祖父の実態めいた姿と本音を垣間見て、自分が大きな思い違いをしていたかもしれぬと気づく。
退化する或いは退化してゆくかに見えている老人と、不安要素満載ながらも独り立ちの道を歩み出す若者の話といった捉え方も出来ようが、どうもそんな簡単な代物ではないと思う。 家族再生物語とかの有りがちな人情噺でもない。 滑稽且つ未練たらしく、弱いくせに強かな部分を持ち、物事に真面目に向き合おうとするほど空回りしてしまうという、人間の悲喜劇がそこにある。
書籍を読んで感想文を書く行為は高校時代以来です。
ネタバレになったらいけないと工夫して感想書くのも、そこそこしんどいものですワ。
気軽に読めますから、お時間があればどうぞ!
図書館に予約してみよ~
ブラック・ユーモア小説ではないです。
突き刺さる毒気や不気味な表現は全然ありません。
ユーモア小説であり、読後感もむしろ穏やかですよ。
シルバーウィーク、ワタシも休みだもんねー♪
しかし、人出が凄まじそう。
シルバーウィークも休みだぜ