純白のバレンタイン・デーに

　当地は窓からの景色が純白に光るバレンタイン・デーとなった。

　日本各地で降積雪、さらに荒天により明日も交通網などが乱れるようだ。　自分は家に籠っておれば済むという有難い状態だから、他家の屋根に積もってゆく雪、ベランダの手摺りの小さな氷柱、やがてそれらが気温の上昇に伴なって溶けてゆく様を、窓越しに眺めていただけの日中であった。
　この風雪の被害が限りなく最小でありますようにと、ひたすら祈るしかない。

　ソチ・オリンピックで好調な羽生結弦選手のＳＰを、昼間のＴＶでフルバージョンで観ることができた。　前半はやや緊張が伝わってくる内容だったが、真白なリンクを踊る完璧な演技に魅了された。
　使用曲『パリの散歩道』はシン・リジィ時代の故ゲイリー・ムーアの秀逸な演奏であり、選曲の巧拙はフィギュア・スケートに大きく関係する。　フィギュア・スケートに携わる方々はそれをもっと知って欲しい。

鬼は心の内に棲むというが

　“自称”作曲家のＳが全くの似非であったことをゴーストライターが公表し、記者会見を行なった模様を見た。　18年間も長々と関係を続けたゴーストの人も如何なものかと思うが、虚像に踊らされて或いは利用して周囲を煽る片棒を担ぐ結果になったメディア等の業界については嗤うしかない。
　障がい者を装っていたと確定すればＳは詐欺罪に問われる。　かつて幾つかのTV局が彼のことを放映した際、2つの様子に違和感を感じた。　ひとつは臆せず自己演出をしているような芝居がかったポーズ。　もうひとつは、その　“声”である。　ちっとも　“くぐもって”いなかったのである。　聴覚に長年の支障があるとき、声に特徴が出る場合が多いのだが、彼にはそれが欠片もなかった。
　Ｓやゴーストの人間に音楽的素養が有るか無いかはこの際置いといて、耳が全く聴こえない悲運を演じた罪、さらに別の大きな悲劇を自己顕示と売名に使った罪は消えない。

　映画音楽で名を売ったのちにゲーム『鬼武者』の音楽も担当していたＳの心に鬼が棲んでいた。　「鬼は外」の日を終えても未だ極寒に身を震わす世間に、更なる寒気が入り込んだみたいに思えてくる。